無と無限の落とし子(にじファンより移転)   作:羽屯 十一

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※後書きで、人によっては非常に不愉快になられる場合があります。特にいい加減な事、細かい事が嫌いな方、Fateシリーズが好きな方などは読む事をオススメできません。ご配慮ください。

※2 この作品では、サーヴァントの能力を数年前にやったPCノベル版の記憶を参考に妄想で書かれています。突っ込みどころはやさしくつついて♪


・転載に当たってのお知らせ
 今回の転載で、後半部分の行間を詰めてみました。
 台詞と地の分の間などです。
 縦書きの正式な書き方だとこうなるんでしょうけど、横書きだと読み難いかもしれません。
 もしよろしければ、どちらが読み易いといった感想をいただけたなら幸いです。




第参章 5 世は情け、旅は道連れ (Fate編)

 

 Main Side ??? In.

 

 

「ハァ……、ハァ……、ハァ……」

 

 熱い、体の内側が酷く熱い。

 熱は体力を奪ってゆく。

 だから、早く冷まさないと。

 水……

 水がほしい。

 この乾ききった喉を潤す為の、血が砂にでもなったかのように重く熱い体を冷やす為の水を。

 早く起きて探さないと。

 起きないと。

 起きないと、このままでは死んでしまう(・・・・・・)

 

 

「ッはァっ――ゴホッゲホ、はっ、ゴホッごほっ」

 

 グ、喉が、焼ける!

 私はどれ位水を飲んでいない?

 ……駄目だ、意識がハッキリしない。

 視界が霞み気持ち悪く揺れている。体も碌に動かない。

 

「み、みず―――」

 

 何とか声を絞り出すが、その酷く擦れたしゃがれ声に返答はない。

 霞む目で周りを探すが、明るい室内には水も人影も、どちらもどこにも見当たらない。

 もう頭には水の事しかなかった。

 毛布も退けずに這い出そうとし、ベッドから上手く降りれずに、転がり落ちてしまう。

 だが、その痛みも取るに足りない瑣事だ。

 よろめきながらも立ち上がり、滅すべき亡者に似た動きでフラフラと扉まで動く。

 途中で踏んだ何かが、足の裏でカサついた音を立てたが構わない。

 閉まっている扉のドアノブを両手で(・・・)握り、なけなしの力で開く。

 

「………!」

 

 何処かの廊下だろう、その廊下の空気に求めていた物の匂いがあった。

 生まれ持った資質と生と死を綱渡りするような常軌を逸した鍛錬によって、遥かな高みへと引き上げられた肉体が、その嗅覚で生命の維持に必要なエネルギーと水分の在処(ありか)を嗅ぎ分けていた。

 再びよろふらと進みだす。

 半ば壁に寄りかかり、体重を預けながら死なない為に体は歩く。

 

 一分?

 それとも五分?

 普段なら例え寝ぼけていようが失わない時間の感覚が分からない。

 両開きの、片側だけが開いている扉が目の前にあった。

 匂いはこの中からしている。

 入り口をくぐる。

 食堂であろう、その部屋のテーブルの上。

 そこに自分が、体が求めていた物が載っていた。

 

 

 

 

 

 

 

「はぁぁぁ……」

 

 正気付いたのはそこにあった物を食べ尽し、飲み干した後だった。

 一家庭分はシチューが入っていた鍋は空になり、コップはそのままで、氷の浮いた水がたっぷり入っていたピッチャーだけが、中身を失い横倒しに転がっていた。

 

 それから私はしばらくの間茫然自失となり、そのまま魂が抜けたかのように椅子の背凭れに寄りかかっていた。

 危機的な熱量、水分の欠乏という状況から抜け出した反動なのだろうか?

 それでも摂取した食物が栄養として吸収されるに従い、頭もようやく回りだす。

 

「私は、生きているのですね……」

 

 最初の言葉はどこか呆然とした、信じられないという響きをもっていた。

 虚脱していた体に力を入れ、両の手を眼前へ持ち上げる。

 両手共に違いはないが、服の袖が鋭利な切り口を見せてバッサリと無くなっている。

 当然だ。

 あの時、信頼していた相手に不意を衝かれて切り落とされたのだから。

 ランサーと令呪を奪うついでに此方の反撃を封じる為だろう、令呪の宿った手の甲だけでなく、左腕を丸ごと肩から落とされた。

 その場で後腐れなく止めを刺されなかったのは、放置しても助けを得られずに死亡するのが目に見えていたのと、ランサーが自身の鞍替えと引き換えに庇ってくれたから。

 やり取りは朦朧とした意識の中でも聞こえていた。

 

 覚えず、歯が軋る。

 身が砕けるほどに悔しかった。

 ランサーに止められたにも関わらず相手を信用し、あっさりと信頼を裏切られて致命傷を負い、令呪も奪わた。その挙句に立つ事も声を出すことすらも出来ず、共に戦おうと告げ、背中を任せられる相棒と言ってくれた憧れの英雄に庇われた。

 何が歴代最強の封印指定の執行者だ。

 持ち上げられた挙句に信頼する相手すら計れず、自分はこのザマだ。

 しかし、後悔を幾ら噛み締めても時間は戻らない。

 ランサーは言峰神父と共に去り、自身は大量の出血でもはや動く事すらままならない。

 場所は山中の廃屋の一室。

 とても死亡までの僅かな時間に助けが現れるとも思えない。

 

 死にたくはなかった。

 

 どうしようもない。

 そんな状況になって初めて、心の底から、魂の全てが、死にたくないと叫んでいた。

 執行者なんてしていれば、幾ら最強などと呼ばれてもいつかは殺されてしまう。

 今まではそれでも良かった。

 良いと思っていた。

 覚悟が出来ていると思っていた。

 でも、完全にここまで詰んだ状態で死を待つ時間が与えられれば、やはり死にたくは無かった。

 それも今更だ。

 死にたくない、そう繰り返すうち、やがて出血で鈍った思考すら維持できなくなり、成す術無く意識を失い死んだ。

 

 

 そのはずだった。

 

 

 だが、今自分の両腕は完全な形で変わらずそこにあり、体調は致命傷を受けて瀕死だったとは思えないほど、それこそ奇妙なほどに快調。

 特に両腕だ。

 完全な再生を遂げている。それも格闘を主体として戦闘を行う魔術師である私をもっとしても、ほんの些細な違和感すら感じ取れない。

 まるで切り取られた事実など無かったといわんばかりに。

 一瞬はあの蒼崎製の義手も疑ったが、義手はあくまでも義手。

 自信の腕かどうか位は分かる。

 

 それにしても、私を助けてくれたのはいったい誰なのだろうか。

 唯でさえ欠損部の再生は大魔術。それに見合った魔力も消費する。

 その上でこれだけの腕だ。

 世界でもそうそうは居ない。

 ましてや、此処は東の果ての島国。

 まぁ最近この国も、27祖を二人も葬る一般人が居たりとかなり物騒らしいが……

 

 それでもだ、丁度良くこの町に居る高位魔術師といったら確実に聖杯戦争の関係者だろう。

 それが何故私を助けた?

 決して少なくない代償を支払ったはず。

 それに私、『バゼット・フラガ・マクレミッツ』の名は知れていても、その顔を知っている者はそうは多くない。

 魔術師が、見ず知らずの人間を其処までして助けるだろうか?

 

(やはり直接会ってみない事には、どうにも分かりませんね)

 

 

 行動方針さえ決まってしまえばそこは武闘派、行動に迷いがない。

 バゼットはすぐさま自身の寝ていた部屋へ取って返した。

 すると探すまでも無く、部屋を入った所に若干皺のついた書置きが残っていた。

 

「何か踏んだような気がしたのはコレでしたか」

 

 拾い上げてみる。

 そこには、起きた時の為の食料をキッチンに置いておく、と書いてあった。

 それだけだ。

 

 一応部屋を探索したが、他には何もなかった。

 それこそ埃一つ(・・・)すら。

 廊下は廃屋らしく埃まみれにも関わらず。

 魔術を使ったのだろうか?

 汚れ取りに?

 もしそうなら、奇人変人狂人を数多く知るバゼットからしてちょっと信じられない感性だった。

(これは素晴らしいほどの偏屈者かもしれない)

 やや戦々恐々としながら、キッチンの探索に移る。

 此処にもやはり書置きが残してあった。

 元はテーブルの上に置いてあったのだろうが、夢中で食事をしている間に床に払い落としてしまったらしい。

 手にとって見れば、そこには自身が玄関近くの一室で休養を取っていると書いてある。

 また、治療の事で伝える事があるとも記してあった。

「とりあえず会ってみましょう」

 未だ休養中かもしれないが、この町は現在聖杯戦争の舞台であり、一般人、それに魔術師にとっても危険な地。行動は速ければ早いほど良いに決まっている。

 踵を返し、玄関へと向う。

 

 

 玄関の直ぐ傍、人の気配のする部屋は簡単に見つかった。

 扉の前に立ち、礼儀としてノックする。

 しかし返答が無い。

 もう一度ノックするが、やはり扉の中から動きは無かった。

 

(気配はする。寝ているのか?)

 

 入るか否か迷ったその時、扉の中から硬質で透き通った、まるで水晶のような印象の女性の声で返答があった。

 

『入室を許可します』

 

 起きていたか。

 ほっとしつつノブを握り扉を開く。

 開いて――――言葉に困った。

 

 部屋の中央。

 自分の寝ていた部屋と同じく、病的に綺麗にされているその床で一人の青年が毛布に包まって丸くなり、寝こけていた。

(声は女性ではなかったか?)

 そう思うが、他に人の気配は無い。

 潜んで此方を伺っているという訳ではなく、この部屋には彼以外の存在の痕跡が無いのだ。

 彼女の戸惑いを察したのか、再びあの声が響いた。

『私は彼の使い魔のようなもの。今起こしますので』

 納得する。

 一応警戒させない為に部屋の端まで後退する。

 恐らくパスを通じてやり取りをしているのだろう、やがて毛布の中で青年がもぞもぞと動き出した。

 彼が私を治療した魔術師なのだろう。

 年はだいたい二十歳を少し越えたくらいだろうか?

 死徒で無い事は雰囲気で分かっているが、逆にこの年であれ程の治癒術の腕を持つとは、正に資質を備えた天才なのだろう。

 

「うぅん……。ぬるぅ、もう少しねててもいいじゃんよ~」

 

 ――そう見えなかったとしても気のせいだ。

 そう信じたい。

 

 

 Main Side バゼット out.

 

 

 

 

 

 

 

 

 Main Side 黒川冬理 In.

 

 

 ヌルに起こされると、既に室内に助けた彼女は居た。

 寝ぼけていた姿を見られたのだろう、何とも言い難い表情を微かに覗かせている。

 

「ヌル、近くに来たら起こしてっていったよな」

 

『はい。ですので”近くに来てから”起こしました』

 

「…………」

 

 コイツは……

 悪戯なのか、俺の寝起きの悪さをつついてるのかどっちだよ。お前の声分かり難いんだよ。

 ったく。取り敢えずは置いといて、隅で所在なさそーに突っ立ってるあいつだ。

 毛布を退けて起き上がる。

 

「えっと、それでアンタの名前は?」

 

「バゼットです。バゼット・フラガ・マクレミッツ」

 

「ばぜっとバゼット。ん、オーケー。

 で、バゼットさん飯は食った?」

 

 まあ喰ってなかったらこんなしてられないだろうけど。

 

「あ、はい。治療して頂いた事も含め、ありがとうございました」

 

 姿勢を正し、真剣な表情で礼を言われた。

 

「はいはい。

 それで? 俺はランサーに教えられて来たんだが、何であんな所で転がってたん?」

 

「ランサーが……そうですか。

 そういう貴方は、ランサーを知っているという事は聖杯戦争の関係者ですね?

 分かりました、話しましょう」

 

 

 

「あー、要するに元仲間に不意打ち食らって令呪ごと腕もがれたと」

「はい」

 裏切られた事にか、それともランサーへの申し訳なさか、どちらにしろやはり気落ちしているようだ。

 表情が随分と暗い。

「ふむ、それにしても仮死状態にしても二日は経ってるのに良く生きてたね。よっぽど体鍛えてたのかな?」

「ええ、私も生き残るとは思っていませんでした。その事ですが、書置きに体について伝える事があると書いてありましたが……」

 おお、それそれ。忘れてた。

「君の体ね、腕無かったから新しく生やす事にしたんだわ。それで手っ取り早く君の体を、腕が生えて来る様な体に改造したんだ」

「腕が生えてくる、って―――ちょっと待ってください!」

「なに?」

「それは私を死徒にしたという事ですか!?」

「は?」

 しとってなに?

 この世界特有の生物だろうか。

 でも腕があって、もげても生えてくるってどんな生き物よそれ?

 少なくても人間がなれるような生物らしいが……

 つーか、自然でそんなのいたら怖いよ。

「え? 貴方ほどの魔術師が死徒を知らない?」

 あ、やっべ、魔術師の常識だったか?

 ちっ。そうだな、どうせ聖杯戦争の関係者だろうし、例の設定に手を加えて知らなくても良い事にしよう。

「いやいや、俺魔術師じゃないし」

「え!? いえしかし私の腕はこの短時間で直っている。科学技術はそこまで来ていない以上、魔術しかないと思いますが」

「俺は聖杯自体に呼ばれたサーヴァントさ。

 七騎のサーヴァントは出揃い、聖杯戦争は既に開幕している。その後に召還された八騎目のサーヴァントだ」

 という事にした。たった今。

 これならイレギュラーとして納得して貰える、かな?

「八騎目の、サーヴァント!? 聖杯に呼ばれたとはどういう――」

「どう言ったもんかな。

 俺には聖杯とやらに叶えて貰うような望みなんて無いのさ。ところが聖杯が七騎のサーヴァントを選んだ後で俺を見つけて、そんでもって何が気に入ったのか俺を強制的にこの戦争に送り込みやがったって事。

 お陰で召還主も居なければ、この時代の知識も殆んど無し。それでさっきの死徒ってのも分からなかったんだ。

 それにそもそもが俺、英霊とかいう幽霊じゃないしね」

 あー、バゼット女史、頭が痛そうな顔して頭抱えてる。眉間に皺まで寄せてるや。

 まぁね。

 イレギュラーにも程があるっつー考えは俺にもわかる。全部あの黒いのが悪い。

 バゼットの方は、万能の力を生み出す為のシステムであるはずの聖杯が、そのように自発的にイレギュラーを起こしたというのが、更なる頭痛の種なんだろう。

 そんな事が起こったって事自体が、聖杯戦争のシステムの破綻を端的にハッキリと表しているのだから。

 

「……聞きたい事は幾つかありますが、まず英霊でないというのはどういう事でしょうか?」

「それは簡単。俺が生きていて生身だからさ」

 あ、眉間の皺が更に増えた。

「……貴方は魔術師ではないと言いました。では私の腕を直したのはどうやってですか?」

「俺は数千年は未来の人間なんだけどね、その科学技術」

 むぅ、バゼットがとうとう黙り込んでしまった。

 そういえば、アレをまだ教えてなかったな。丁度良いや。

「今思い出したんだけど、君に伝える事ってのはそれなんだ。

 完全に違和感無く腕を再生させるには、君の体の方も弄らないとでね」

 体を弄る(・・・・)。この不吉な言葉に先が何となく予想できたのか、バゼットさん顔色が悪くなってる。

「全身を細胞単位で書き換えたんだ。

 エンジェルって言う遺伝子単位で手を加えられた未来の改造人間だね。向こうだと一般人は殆んどエンジェルなんだけど、今の君と同じく人間より遥かに強靭な生命体だよ」

 

 がっくりと膝を着くバゼットさん。

 なんか『助かったと思ったのに……』とか『人間じゃなくなっていたなんて……』とか、ぶつぶつと呟いている。今の彼女にタイトルをつけるとしたら、そうだな。“どんぞこ”なんてどうだろう?

 にしても、リアルにこのリアクションするとは、面白いなこの人。

 

 

 やがて自己の中で何やら決着でも着いたのか、ふるふると頭を振って両足で立った。

 うん、膝が小鹿の様だったのは見なかった事にしてあげよう。

「エンジェルというのはどういう生物なのですか?」

 お、前向きなのは良い事だ。

「まず身体能力が段違いだね。これに関しては君自身が確認した方がいいだろう。

 次に再生因子と呼ばれる因子を保有していて、体に穴が開こうが手足が切り落とされようが、自身の熱量の許す限り再生する。あぁ、熱量の保持量自体も大きいな。

 そして最後。先の二つと似ているけど、生命力が凄く強い。これを利用して未来だと格闘は気功がメインとなっている。そこらの格闘家でも生木を圧し折り岩を砕くレベルだ

 例を示すと――うん、アレでいいかな?」

 右腕に錬気の陽炎を纏い無造作に腕を一振り。その場で虚空を打撃する。

 その瞬間、部屋の壁一面にひびが入り、その中央は鉄球でも減り込んだかの如く陥没していた。

 バゼットは流石に言葉が出ない様で固まっている。

 当然だろう。20世紀の格闘家でこれ程の遠当てが出来る人間はいまい。

「今のが単純な遠当て。他にも発剄に浸透剄、硬気功に軽身功、果ては履水功まで多岐にわたる。アンタは直ぐには気功を使えないだろうが、身体能力と再生因子だけでも十分戦えるだろうな」

「未来では一般人で、それ程の事が出来るのですか……」

「そうだね。エンジェルならサイキックも多いし。

 俺はエンジェルとはまた違った存在で、あの世界では1・2を争う単体戦力だったんだが、こっちに来てランサーと戦った感じ、同じレベルの速度の奴らも向こうには結構いたしね。まぁそれはあくまでアイツが手加減した速度だけで、技術は天地の差があるけど」

「最速の英霊に近い速さを持つ者が結構居た? ――未来だから、と言ってしまえれば気が楽なんですが」

 

 まぁまぁ。

 

「君の場合は元の身体能力が非常に優れていたからね。あちこちに掛けられているブーストを除いても超一級だ。エンジェルの改変遺伝子との相性もかなり良いから、錬気が出来るようになればサーヴァントとでも戦えるよ。

 ただし、宝具とやらはどうだか知らんけど」

「何かデメリットはあるのですか?」

 うん、やっぱり自分の体としてそこは気になるよね。

 ここまでメリットだらけだと逆にデメリットも大きいと普通は考える。

「あ~、デメリットか。

 沢山食べるようになるのと、熱量の貯蔵が底をついてるのに再生因子を起動すると、熱量の欠乏でぽっくり逝っちゃう事くらいだな。後は寿命も何も皆同じ」

「―――分かりました。

 改めて、命を救って頂いた事、感謝します」

 硬い、硬いね。

 律儀なひとと言えばそうなんだがな。

 

 それよりもこれを聞かなきゃならない。

「これからどうすんの?」

「聖杯戦争に参加しようと思います。令呪が無い以上、他のサーヴァントと再契約する事も出来ませんが、それでもあのように無様に負けたまま去る事は出来ません。」

 ほう、俺をサーヴァントとして頼るより先にその言葉が出るか。

 いいね。

 これは少し付き合ってみるか?

「ならさ、サーヴァントとかマスターとかじゃなくて、俺と一緒に行動しない?」

「それは――助かりますが、私はマスターにはなれません。魔力を含め貴方に渡せる物がありません」

「いや別にいいよ、その方が面白そうだし。それで護衛の対価にしよう。

 それに俺の知識の方も穴だらけなんだ。正直に言えば分からない事が多すぎる。助けてくれたら俺もありがたい」

 少し考えていたようだが、どちらにしろ彼女には戦力が足りない。

 己の体の把握も済んでおらず、現状でサーヴァントと戦闘になれば命が無い。それはバゼットも解っているはずだ。

 

 やがて顔を上げ、決然と此方を見る。

 

「貴方の申し出を受けましょう。それにこの聖杯戦争はおかしい。互いに生き残れるよう助け合いましょう」

 にやりと少々意地の悪そうな笑みを浮かべ、利き手を差し出す。

 これからよろしく、バゼット? 聖杯なんぞ欲しくもないが、精々楽しませて貰おうや」

「ええ、此方こそよろしく。えっと……」

「あぁ悪い、名は黒川冬理だ。クラスは無い。好きに呼んでくれ」

「分かりました、ではクロカワと。よろしく」

 硬く握手が交わされる。

 

 良いね、こういうノリ。

 熱くなれる展開は大歓迎だ

 あのクソッタレの聖杯なんぞに思うようにさせてたまるかよ。

 

 

 Main Side 黒川冬理 Out.

 

 

 





※繰り返しますが、この先、人によっては非常に不愉快になられる場合があります。特にいい加減な事、細かい事が嫌いな方、Fateシリーズが好きな方などは読む事をオススメできません。









主人公とサーヴァントの戦闘を書くに当たって、サーヴァントとは実際どんなもん? と疑問が出てきた。これが判らない事には比較できない。

うーむ、サーヴァントって詳しい設定を調べてみると殆んど具体的な資料が無いが、一応敵キャラwikiに載っていたセイバーオルタを参考に考えると矢鱈と凄い。
セイバーだと超音速で移動し亜光速で反応・攻撃できる上に、魔力放出で低ランクの武器なら粉砕できるとか。

いやいや、無いって。これ本当か? 正式な設定なのか?

そんなのが街中で戦ってたら、衝撃波で周りが阿鼻叫喚の地獄絵図になってしまうのでは……。近くに居るマスター死んじゃう。あと、
移動    超音速(最大で見てマッハ5、1800m/秒)
反応・攻撃 亜光速(光速の80%として、24万km/秒)
――何この速度差。万の上にキロ、単位まで違うし。
この資料がもし本当だったら、彼女は最大限集中した時、自分の体がミリどころかミクロン単位でしか動いていないように感じるんじゃないだろうか?
これでセイバーの敏捷ランクはB。

正式な資料ってどっかに無いだろうか?


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