無と無限の落とし子(にじファンより移転)   作:羽屯 十一

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本当に短いです。
ですからゆるして。



書いてしまった小話『痛ましい事件』

 

 

 

 

 

 

 

 

ちょっとやってみたかったのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 知識として、様々な物語が俺の頭の中にはある。

 怪訝に思うかもしれないが、それらは思い浮かべようと思うまで、俺自身内容を知らない。

 何故と問われれば長くなってしまう。故に此処では割愛させてもらおう。

 

 さて、その中には趣味的小説家とでも呼べる人達が、情報ネットワーク上で公開していた物語も存在する。

 質はピンからキリまで、天から地まで。

 しかし量はとにかく有る。

 そしてちょっとした創作物で、やはりこういう場所にも流行り廃りがあって、その中でも比較的長い期間ポピュラーに当たるジャンルがあった。

 

 いわゆる『転生モノ』というヤツだ。

 

 アニメや漫画など熱中した物語に、己が想像した主人公を挿入し、過程や結末を思うようにする。

 実に浅薄と評していい。

 だが人間、熱中すればちょっとやそっとの逆境は知らない内に跳ね飛ばしてしまう事があるのだ。

 このジャンルにおいても全てとは言えないが、時に傑作、あるいは原型となった物語を上回るのでは、という一つの作品が生まれる事も確かにあった。

 

 

 

 つまり、なんだ。

 読んでたら影響されたのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 何やら混乱する死者を前に、ボイスチェンジャー(厳かver)で声だけを届ける。

 典型なる様式美に則った転生モノというやつだ。

 勿論、死者といっても今の彼は生きている。死んだのは確かだが、ちゃんと造ったのだ、体を。しっかり体がある。人間魂だけで喋る様な器用さは無い訳で、これは至極もっともな対応だったろう。

 失敗だったのはその先だ。

 テンプレートは幾つかあるのだが、そのなかでもコテコテのパターンを選んだのが、俺の失敗だった。

 

『別の世界に生き返そう』

『おう』

『じゃ、いってらっしゃい』

 足元に穴が出現。

『ふざけんなぁぁぁぁぁぁーーーーー………』

 

 これが大まかな流れだ。

 こうなる筈。

 ところがこう(・・)なった。

 

『別の世界に生き返そう』

『おう』

『じゃ、いってらっしゃい』

 足元に穴が出現。

『ッ!?』

 足元が抜けた瞬間、咄嗟に声も出ず穴の淵へ掴まろうと腕を上げ、前に突き出す。

 とにかく落ちるまいと、上体も前へ。

 しかし人間足裏から腋の下まで1メートルと3・40センチ。体重50キロとして、その重量がこの距離自由落下した衝撃で腕を押し上げられて、耐えられるものではない。

 

 結果――

 

 ゴヅッ!(アゴ強打)

 ガキッ!(開いていた口が閉まる)

 ブヅッ (舌千切れる)

 ひゅおう(万歳したまま白目を剥き、闇の底へと消えてゆく男) 

 

 

 

 

 





『呆然と見送る事しか出来なかった』

 一日出かけて、帰ってくるなりそう黒川は言った。
 最近情緒というものを学習していたヌルは、学んだ結果を今まさに示すべきかと思案する事となる。



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