あれ、お、おかしいな? 何かここ数日が異様にアクセス多いぞ? どういうことだ? 驚くやら嬉しいやら…。
揺り返しが来ないといいな~、とか心配する今日この頃。変なところで弱気な作者です。
マスターが魔術師でなくなったとき、サーヴァントはどうなるんだろう?
そう疑問を抱いたけど、思い返してみれば四次も五次もキャスターのマスターは一般人だったな、と。
そもマスターからの魔力供給って必要なんかな?
サーヴァントが行動したり宝具使ったりするのを賄ってるって感じだけど、到底足りない気がひしひしと。
まぁ何にしろ最新話です。
原作とこれ以上無いほど乖離しますので、そういった展開が気に入らない方は読まれない事をお薦めします。
ホントに、ほんっとーに原作どころではありません。これはもう、どうやったって原作の展開には成り得ません。まぁ原作に近い異世界という設定を心の中で思い返し、ここは一つ納得してくださいませ。
さて、目の前には本日得た捕虜が並べられている。
ここにいるのは俺だけ。バゼットは一応の警戒、メデューサはサクラさんと一緒に部屋に居る。
板張りの床に陸揚げされたマグロの如く転がるのは三人の主従。負傷は癒えたが魔力が危険域まで低下したため未だ目を覚まさないセイバーに、屋敷で待ち構えていたバゼットに襲われ、ぐるぐる巻きに捕縛された少年少女。
唯一、アーチャーだけが撤退に成功している。
森を逃げ隠れしながら攻撃するアーチャーにメデューサがかなり
これはメデューサの失態というよりも、逃げ切ったアーチャーがおかしい。
本人は死ぬほど嫌っているが、メデューサは最上級の魔眼持ちだ。
神話にあるゴルゴンの石化の魔眼。この世界でも非常に強力とされる『宝石』ランクに分類され、知識によれば『宝石』以上の魔眼は、惑星の全ての生物を殺しつくせる星の意思の具現、アルテミット・ワンのタイプ・ムーンが所持したとされる『虹』のみ。
要するに実質、現存する最高位である。
魔眼を開放した状態のメデューサなら、アーチャーの対魔力Dでは視界に入った段階で問答無用で石化する。メデューサの勝利条件は恐ろしく簡単だ。
にも拘らず、森に潜んだとはいえ機動力で圧倒的に勝るライダークラスを相手に視認すら許さないとは……
知識では二流とか才能無いとかあるが、努力したといってもこの領域まで来れるんなら十分以上に凄いだろうに。
まぁ、あのなんか凄い弓兵は放って置こう。
とりあえずは目の前の事だ。
バゼットが大分手加減したのか、割りとすぐに意識を取り戻した衛宮と遠坂さんペア。
どうも昨日の戦闘では、二人纏めて一瞬で制圧されたらしい。無理も無い、相手は人間の限界を超えた身体能力を持ち、未熟ながらも錬気まで使うようになった歴代最強の封印指定執行者だ。むしろ抵抗できていたらそっちの方がびっくりだ。
二人ともおっかない顔でこっちを睨みつけている。これは猿轡は外したら
特に衛宮君の方は意識不明のセイバーの血を見てから物凄い殺気立ってる。
「あー……、君達は我々の捕虜になったわけだが、とりあえずすぐに殺したりはしないと告げておこう」
「んー! んぅーー!!」
少年が何か
バゼットに本式の捕縛術で縛り上げられたから、声も全く意味を聞き取れない。
まぁ魔術師捕まえるなら必須技術なんだろうね。
「まったく、何が不満なんだ? お前ら殺しがデフォルトの戦争で捕まったんだぞ。泣いて喜ぶところだろうに」
ちなみにバゼットとライダー、サクラさんも交えて彼らの処遇は既に決めてある。
サーヴァント含めて殺しは無し。少々灸を据えてから放置しておけば、隙を見てアーチャーが勝手に助けていくだろう。
まさかアーチャーもそれが目的とはいえ、縛られている相手を斬って捨てたりはするまい。
もしやっちまったら? まぁ……未来の自分がやった事という事で。
サクラさんは魔術に関わってるのをどうしても衛宮に知られたくないらしく、一室に閉じ込めておくフリをして、あいつ等が脱出する時に一緒に助け出される形にする事になった。
また会う機会があるか分からないから、一足先に別れの挨拶を済ませておいたが、体の事やらで此方が逆に気まずくなるくらいに感謝された。
(俺はアンタの爺さん殺したんだがな)
夜の知識検索で、あの爺さんが孫達の事を本心では大切に思っていたのを知った。だからどうしたという事でもないし、あんな扱いを受けた彼女に教えるつもりがある訳でもない。
ただそれを、聖杯に狂った事情も知った俺くらいは、爺さん死んでバンザイって思わないでおこうというだけ。
殺した俺の偽善というだけだ。
「……ふむ」
少年のもごもご言ってるのが止まらない。
とりあえず遠坂さんの方が理性的なんで、彼女だけ猿轡を外す。
「ぷはっ、…ハア、ふぅ、けほっ」
ああなるほど、縛りをきつくして魔術を使う余裕を上手く削ってるのか。
どうやってんだろう、後で教えてもらおうかな?
「アンタたち、桜は無事なんでしょうね?」
「――ほんと、肝が据わってるね遠坂さん」
「答えなさい!」
「まだ何もしちゃいないよ」
俺の言葉に堪えきれない安堵が浮かぶ。
だが、その顔も続く台詞に凍りつく。
「あの女の子にはしない。
が、お前等は別だ」
「ちょっと!? さっき殺さないって言ってっ、……まさか」
途中で気付いたらしい強張った声。
俺は衛宮少年の猿轡を外しながら肯定する。
「別に
そうだな、衛宮少年、君からはその特別な才能を貰おう。ああ、これは君の呼び出した彼女の命も含めておこう。若干のサーヴィスだ。
遠坂さんの方は、――その
「………何の事だよ、特別な才能って?」
凄まじい仏頂面ながら聞き返してくる。全く心当たりの無い事を言われてやや興奮が収まったらしい。セイバーの呼吸が安定していて、傍目には眠っているようにしか見えないのも落ち着く一因かな?
「君の物造りの才能さ。それを剥ぎ取れば君は魔術が使えなくなるが、死ぬはずの命に比べれば安いもんだろう?」
「……本当にセイバーも殺さないんだな?」
「それは絶対に約束しよう。何なら契約を結んでも良い」
「―――わかった。何で魔術が関係あるのか分からないけど」
うん、彼の性格なら乗るよな。
という事で、善は急げとミノムシ衛宮君の体の中へ手を沈めてまさぐる。
ごそごそ、うごうご……
ずるりと引き抜いた手に握られている網の様なものは魔術回路そのものであり、彼の固有結界を構築する全ての要素。流石に精神的な部分は引っこ抜くと壊れてしまうので、そういう辺りはちょちょいとコピーをば。
だがそれを見てはっきり顔色が変わったのが脇に転がる遠坂凛。
体に馴染んだ魔術刻印など、ましてや魔術回路など簡単に取り外せるような代物ではない。仮に外せたとしても、それらの移殖は準備を万端に整えた上で日を選び、執り行うような難易度の高い行為。
代々の魔術研究の結晶たる“魔術刻印”を貰うと言っても、それには移殖するに見合う準備期間が掛かるのが普通だ。
ブラフか、そうでなくてもアーチャーが助けに入るだけの時間が十分にあると高を括っていたのだろう。
彼女にとっての誤算は、俺がその難事を軽くやってしまう存在だった事だ。
完全に蒼白になっている。
手に持った薄く光る網をぐるぐると手の上でこねて丸める。
出来たのはビー玉サイズの光る玉。
固有結界『無限の剣製』そのものだ。
生憎と今は覗き込んでも剣なぞ欠片も見当たらないが。
エクスカリバーと同じくホールを開口、放り込む。
「さて」
…ほう?
振り返ってみれば遠坂さんは色を失った顔ながら、気丈にも睨みつけてらっしゃる。
ほんと、気が強いにもほどがあんだろ。
いや、これはただの意地っ張りなのかねぇ?
どちらにしろ、子供ながらたいしたもんだ。
ゆっくりやるのも可哀想なんで、痛みが無いようにさっさと引き摺りだす。
ずるずると出てきたのは衛宮少年のとは比べ物にならないくらいの大きさの刺青。シールのヤツみたいにその形のままで綺麗に取れた。
少年のと同じように丸めてホール行きへ。
「にしても、子供が殺し合いに首を突っ込むもんじゃないぞ。
挙句に死ぬ覚悟も殺す覚悟も出来てないとか…、ホント何やってんのキミら?」
「殺す覚悟って何だよ!? 俺は殺し合いなんて馬鹿な事を止めさせる為に参加したんだ!!!」
心底呆れたって口調でぼやいたら、即座に少年が食って掛かってきた。
目の奥には固い意志が垣間見える。が、硬いだけで
「へー」
「へー、って、まじめに聞いてんのかよ!」
「あぁわりぃ、
「たわごとって、ふざけんな! オレはッ」
「戯言だ」
いい加減やかましいやつだな。
血反吐の痕がべったり黒々と残るセイバーを指す。
「だったら何でそこに寝てる女は俺に瀕死にされた?」
泣いているのか、あれから
「だったら何でそこに転がってる魔術師は一族数百年の努力を丸ごと全部失った?」
最後に衛宮少年本人を指す。
「だったら何で、お前は無力に転がっている?」
淡々と残酷な言葉の刃で敗者を切り刻む。
「お前は殺し合いを止めると言っているが、すぐ隣にいる仲間の参加すら止めてないじゃないか。その挙句が勝者による敗者としての
いくら心的原風景が火災による地獄絵図とはいえ、法治国家日本で悠々と暮らしてきた十代の少年にはトラウマになりかねない抉り方。だが彼が原作のように『正義の味方』を目指すなら、ここで一度圧し折った方が良い。
助ける相手も、周りの仲間も、そして守るべき身内も、しかと目を見開いて直視出来ないようでは赤い弓兵のようなざまをさらす事になる。
「殺す覚悟ってのはな、殺さなきゃならない時に
仲間が殺されそうな時、最速で敵の息の根を止める。
爆弾を起爆しようとするアホの脳髄を一撃で消し飛ばす。
そういう一瞬の躊躇も無い必殺の覚悟だ」
現実は冷酷で残酷で純粋な法則で回っている。
越えられない壁など砂の数ほどあり、
叶えられない夢など星の数ほどある。
「殺される覚悟ってのは、そうやって殺そうとした相手に、そいつを助けようとした仲間に殺される覚悟だ」
それでも。
「清も濁も無い。生と死の天秤は吊り合っている。
そうやって俺達みたいな戦う人間は殺し殺される」
それでもだ。
「少年。誰かを助けたいなら、まず自分を助けな。
溺れている人間が溺れている人間にくっ付いたところで、水死体が二つになるだけだ。
外に手を伸ばす前にまず自分の足場を、拠り所となる場所を創りな。
でないと手を伸ばした相手を支える事も出来ないのだから」
そういう世界が、生まれた世界なんだから。
「視点を高く持て。
精一杯、やれる事からやるべきだ。
「身近な所から手を付けろ。なに、仲間が増えればやれる事は広がる」
―――やれやれ、俺も何言ってんだか。
知識があるってのもこうなると考え物だな。
青臭い事言うのは良いんだが、いや良くないのか? とにかく恥ずかしいよ。
「余計な事を言ったな。まぁ、そもそも誰より安全な俺が死の覚悟をどうこう言えるもんじゃないが……」
若干呆気にとられて二人ともこっちを見ている。
口を開こうとした衛宮少年を手で制して告げた。
「流石に拘束を直ぐには解けんが、これから一日ほど全員が出払う。アーチャーにパスで伝えるなりして迎えに来てもらいな」
言うだけ言って返事も聞かず部屋を出る。
セイバーが上手い事早目に目を覚ませば、アーチャーが来るより早く逃げられるだろ。
廊下を歩きつつ首を
「さてはて、混迷を深める物語はこれからどうなるやら」
なんて、愉快犯的に事態をややこしくしてる節のある俺が言うこっちゃないかねぇ?