無と無限の落とし子(にじファンより移転)   作:羽屯 十一

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●本日の戯言未満

 最近少し悩んでいます。
 無双物としての定めなのですが、主人公というキーマンがある程度完成しているお陰で物語規模の大きなリズムと言いますか、緩急つけたうねりが表現出来ないのです。
 ……肝心の中心が動かないのだから、それも当たり前なのですが。

 解決策としては、これからの指針とした章単位を小さくする事で、章そのものを上下させてリズムをとる方法なのですが。う~~む、悩ましい……
 まぁ、ひとえに作者の未熟なんですけどね?


※追伸 最近とみに暑さが厳しくなって参りました。湿度も高く、快適とは申し難い日々ではありますが、どうか皆さんも御身体に気をつけてお過ごしください。



第参章 エピローグ 因果応報(下) (Fate編)

 

「さて。やって来ました時計塔」

 

 勿論のこと、かの有名なビッグ・ベンではない。

 今いる場所は、イギリスは倫敦の大英博物館の門前だ。

 世界に名だたる大博物館であり、人類史における貴重な文明遺産の墓所でもある。

 

 通称『イギリス泥棒博物館』や『盗品博物館』。

 収蔵品は、いずれもが大変に貴重な物品ばかりでありながら、そのほとんど全てが武力による略奪品だからだ。悪意的に言うなら、入場料がただなのはそのせいだとも。逆にそうでなければ文化遺産は現在まで保存されず、朽ち果てていたか、盗掘マーケットに流れて歴史から失われただろうとも言われる。

 なんにしろ、素晴らしい文化遺産の守り手として一定の評価をうける博物館だ。

 

 しかし、その裏っかわは魔術師の巣窟であり、魔術師の自衛・管理団体である魔術協会のひとつ、『時計塔』と呼ばれる組織の本拠だ。

 学術的な場所をろくでなし共が住処にしているってのは腹立たしいが、まぁこの世界の魔術礼装や概念武装といった古い物品を扱うのに、これほど目立ち難い場所もあるまい。これだけ大きければ、それ相応の貴重な物品でも収蔵できるだろうし、買い込む名目も立つだろう。

 そう考えるならば、ここを本拠とするのは理に適う選択だ。

 いや……、調べたところに拠れば、時計塔の長は二千年ほど生きているっぽいし、そうなると元々あった組織が博物館を建てたのか?

 

 

 うむ、真相究明は後にしよう。

 どちらにしろ、俺はこれからここを、正確には此処に巣食う俺にとっての害悪を排除するのだから。

 

『あ、あー。(てすてす)えー、こちら黒川、突然の放送失礼します』

 

 自身を隠蔽したまま作成したマイクを使い、一方的な放送を“協会全体”へ響かせる。

 勿論だが、この声やマイクを叩く音は一般市民には聞こえない。

 それどころか、協会内部の地下深くに無数にある隔離空間内にすら声が通る。

 概念による防御機構?

 問題にもならない。

 

『本日の用件ですが、先日より随分とこちらの魔術師に襲撃を受けてまして。私としても、懲りたり諦めたりする事の無いのを相手にするのも、いい加減面倒になってきました。ですので後腐れが無いよう、これより魔術協会三大部門が一、時計塔への破壊活動を行います』

 

 超感覚は地上建造物内から、地下深く、数えるのが面倒になるほど敷かれた防御の向こう側、地下迷宮最深部までの全域を把握。地上部分にいる未熟な魔術師の馬鹿にした嘲りから、最深部にておそらく宝具だろう多重結界に篭った、時計塔院長を始めとした偉そうな数人の囁きまで、ひとつ残さず捉えた。

 適度に聞き流しつつ、『宣告』を続ける。

 

『もちろん魔術師の全滅を望んでいる訳ではありません。よって、これより三十分の猶予をおきます。転移・転送の類いは妨害しますので、徒歩にて敷地内より出てください。

 では、三十分後に』

 

 大きな大きな三十分砂時計をデンと置き、その上にどっかと腰を下ろしてため息をついた。

 建物内はようやく騒がしくなりだしている。

 同時に幾つかの転移と通信の魔術的反応。

 両方とも適当に座標をずらした。

 通信は当然ながら繋がらないだろうし、転移した人員に至っては此方の指定した座標、『宇宙全体でランダム』な場所へ運試しする事になるだろう。

 元の座標が地上だった事、それなりの装備だった事から、まず確実に付近にいる此方を確保・始末するための刺客だろうから、一切の躊躇も同情も無く放り出せる。彼等の装備が宇宙遊泳に対応しているかは……まぁ言わぬが花だ。意外と宇宙に触れて悟りを開くかもしれん。

 

 とにもかくにも、だ。

 

 言った事が本当であり、同時にそれだけの力があると分かったのだろう。ようやっとトップ辺りが本気で危機感を持ったようだ

 それ以外は……と見れば、知識にある顔のひとつ、四次聖杯戦争の参加者であるウェイバー・ベルベットが。幾分歳をとった顔を歪め、慌てて生徒を罵りながら荷物を纏めさせている。

 彼は時計塔で唯一と言っていい英霊との直接接触経験者だ。

 彼らがどれほど驚異的な存在かは身に染みているのだろう。

 

 はて?

 今更ながら、英霊と名乗った名前が何故イコールで繋がったのだろう?

 

 ……あぁ、そうか。

 残存する英霊の事実確認の段階で、おそらく聖杯戦争の地、冬木市の魔術的管理者である遠坂嬢へ問い合わせたのか。だとすれば納得が出来る。

 そう考えるなら、先程の放送は噂に聡い人間にしか分からないだろう。

 随分と不親切だったかもだが、そもそも親切するような相手でもないかと思い直す。

 思い直したのだが……。

 

「いや、別に受付の人とかまで殺そうとか考えてないしねぇ」

 

 とりあえずマイクを手に取り、もう一度放送を流すのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ~三十分後~

 

 

 手持ち無沙汰で広げていたペーパーブックを閉じる。

 うん、実に面白い話だ。知識に無い話を検索して手元にコピーしたのだが、いやはやどうして、なかなかに続きが気になる魅力だ。

 いっそ時計塔などほって置いて続きが気になるほどに。(※1)

 

 しかし、決めた事はやらねばならん。それが楽しみに直結するなら尚更だ。

 しぶしぶ本を格納空間へ放り込み、立ち上がる。

 砂時計は落ちきっていた。

 

 先に確認した時計塔の全容を改めて走査する。次空間を捻じ曲げ造り上げられた特殊な隠し空間も、入るたびに形が変わるトラップ満載の魔術迷宮の最秘奥もだ。

 宣言を受けて急遽施したのだろう幾多の防壁はすり抜ける。

 単純に、防壁が感知する対象でなければ問題は無いのだから。

 

(少ないながらも脱出した人はいるか)

 

 それぞれ大した物は持ち出せていない。

 相応の代物は、厳重に厳重を重ねてしまわれている。時間が足りなかったのだろう。

 しかしウェイバー・ベルベットとその生徒は敷地から少し離れた地点で、持ちきれないほどの研究資料の紙束を抱えて時計塔本部の様子を窺がっている。一番多くの身内を連れ、一番多く物を持ち出せているのは流石だ。

 

 ちなみに退避勧告だが、地面を見据えた先、迷宮を越えた先の地下深くにいるお偉方は対象外だ。唯の一人とて逃げていない。いや、三十分の中途から身動きひとつとれないよう魂もろとも拘束している。一部が魂だけ退避させようとしたからだ。

 

 

「さてと。やりますか」

 

 やる事自体は簡単だ。

 ただ、現在ヌルがいない。

 永劫破壊による『形成』によって再び形を成したメデューサのナビゲートとして、彼女の時間越えを視野に入れた姉探しに付き合って貰っている。

 何が言いたいかといえば、あまり細かいのは面倒クサイという事で。

 

 

 

 

 

 

 1、限定的だった遮蔽を完全に立ち上げ、協会施設を一つ残らず密閉する。

 

 この段階で、魔術によって異空間の部屋や空間を弄って広くした部屋などが、一気に通常の空間に戻る。前者は空間の繋ぎ目の場所へ無理矢理現れ、後者は元の広さに無理繰り詰め込んだ状態へとなった。

 資材はまだ良かった。だが、こういった部屋に少なからず居た魔術師はかなり悲惨かつ、凄惨な死を遂げる羽目になった。

 

 

 2、密封された内部を人間が即死しかねない濃度の魔力で洗い流す。

 

 と言っても標的は魔術師ではない。狙いは“道具”だ。

 魔術協会は今の形になるのこそ遅かったが、魔術師自体は聖堂教会なんぞ鼻で笑えるくらい古くから存在する。そしてそれだけ力ある道具が数多く残っており、協会が設立されてよりの年月で多数の力ある物品が協会地下へと収集されている。

 これらの品には、極秘だが宝具も多数存在し、使い手のいないまま死蔵されている。

 意外かもしれないが、なにせコーンウォールを掘れば聖剣の鞘が完全な状態で出土する世界だ。アレだけが特別ではない。

 

 そして道具には須らく“限度”というものがある。

 限度を大きく逸脱した魔力により、物品に刻まれた回路や概念を塗り潰すのだ。

 

 黒い颶風が吹き荒れる。

 協会地下深くに封印された物も含めた術具は、よほど特殊な物を除く大半が機能を破壊された。

 

 

 

 3……。

 

 

「最後の仕上げは、と」

 

 すでに内部は阿鼻叫喚の渦となっている。

 心血注いで作り上げた魔術の道具や、それに類する物品の悉くが崩れ去ってゆくのだ。何もかもを捨てて根源を目指す研究に打ち込む魔術師には、あまりにもショッキングな光景だろう。

 罵声に怒声、恨み辛みに絶望の悲嘆まで。

 これでもかと負の感情が渦を巻いている。

 唯一逆の声といえば、神秘の保存の名目でホルマリン漬けの標本にされていた者達が、保存の術具の停止によって完全に崩れ去る際の、微かな感謝の言葉くらい。

 

 

「ああいうのを見ると、今更ながら出してくれとか言ってる奴等に情けをかける気にはなれんな」

 

 さくさくと最後の仕上げをなす。

 別に難しくもない。

 ほんの十メートルばかりの大きさで門を開き、三秒ほど余所と繋げるだけだ。

 

「ん」

 

 門が開く。

 

 同時に、協会内部を灼熱の奔流が埋め尽くした。

 

 

 

 ――――音は聞こえなかった。

 

 

 繋げた場所が場所。唯の一人も生きてはいまい。

 

 

 しばらく置いて、封を解く。

 探査には、生命反応も、動体反応も検出されず。

 あるのは半ば固まりつつある溶岩溜りのみ。猛烈な熱気のみがゆらゆらと立ち昇っている。

 

 そう、門の先は地底だ。それも生半可な深度ではない。あれは地球の核といって過言ではない場所へと繋がっていた。

 門は大きいといえど、所詮は十メートル程度。

 対して封をした協会内部の大きさは、浅い階層を含めればちょっとした城程度はあり、深さも驚いた事に百メートル以上あった。

 

 にも関わらず、その全てはたった三秒で溶岩の海に呑み込まれた。

 

 それもそうだろう。

 れっきとした星の中心圧を、直で噴射したのだ。

 超高圧から解き放たれたマントルは、時速四千キロを超える白熱した噴霧と化して施設を駆け廻り、そこにある人も物も残さず焼き尽くした。

 

 更に暴虐は繰り返される。

 ここはマントルとは比べ物にならないほど地表に近い。

 つまり、水分が多い。

 強烈な熱はその水分を瞬時に気化させた。

 結果として、封の内部では溶岩が固まる間も無く爆砕するだけの水蒸気爆発が頻発し、何もかもを砕いて混ぜ合わせてしまった。

 

 確かに極少数ながらも、破壊を免れた防御的な礼装もあった。

 生き残っていた、それも意識明瞭なままだった魔術師もいた。

 次なる攻撃に備え、彼らは咄嗟ながら出来得る限りの防御を敷いていた。

 

 しかし、大原則を忘れるなかれ。

 神秘は、より強い神秘によって打ち消される。

 

 概念と違い、純粋な神秘は経年によって積み上げられる。(※2)

 後の地球となる岩石塊が、次々と着弾する隕石による超高熱で溶融したマントルだ。内包する神秘は、それこそ地表を這う竜脈の比ではない。いや、竜脈こそ太陽に対するフレアのようなもの。星から漏れ出した、ほんのささやかな(・・・・・・・・)エネルギーの飛沫なのだ。

 

 彼らの死への抵抗は、僅かなりとも報われる事なく元始の火に沈んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ウェイバーベルベット。かつての少年は青年となり、今はロードエルメロイ二世と敬称される一角の人物へと成長していた。

 彼は時計塔が滅ぶさまを、成す術無く見ていた。

 いや、彼には透視などの魔術が使えないため、直接観測する事はできなかったが。

 

「ファック! 噂を聞いた時から嫌な予感がしてたんだ!」

 

 英霊が聖杯戦争の終結後も残っている、それはまだいい。まだ理解できる。時計塔で教鞭をとる立場になり、多少なりとも広がった知識には、それを可能に出来るかもしれないというほどの秘宝も幾つかある。もちろん伝説にあるような物品で、とても手に出来る品でないのは確かだが。

 しかし若干の興味とあわせ、念のためにと、冬木の管理者である遠坂家から上がってきた報告書を閲覧して、嫌な予感が一気に膨れ上がるのを確信するはめになった。

 

 報告書に書かれている、一騎のサーヴァントについての記述。

 

 圧倒的なまでの単騎戦力。

 気まぐれな気質。

 それでいて力を見せ付け、戦いを楽しむような振る舞い。

 

 その記述は、自分が参加した第四次聖杯戦争にいた、自分の王の蹂躙を圧倒的破壊力で粉砕した最古の英雄王を、否応無しに思い起こさせた。

 

 英霊は仮にも英雄。過去の勇者だけでなく、自身の主君である征服王のように、一国の王という立場の者も珍しくない。プライドや矜持も強烈なものをもっているだろう事は、予想に固くない。

 いわんや、今回の相手はあの英雄王と似ているっぽいのだ。

 あの傲慢極まりない性格、かと言えばあの征服王(バカ)の酒盛りに付き合う気まぐれを発揮し、それでいて気に入らないからと圧倒的な力を振るって敵を叩き潰す、唯我独尊としか形容できない英雄王と。

 

「アレと似たような英霊だと!?

 しかもそんなもの相手に仕掛けるだと!?

 ファック! 絶対に反撃してくるに決まってるだろう! そんなことも分からんのかこの低脳どもが!!」

 

 頭を掻きむしりながら吐き捨てる。

 実際に英霊と共に行動、いや、破天荒なパートナーに振り回された経験者としては、考えるまでもない結論だ。天気予報などとは比べ物にならない確率で起こりうる未来予想図に絶望が止まらない。

 

 

 案の定、次々と見掛けなくなっていく住人。そういった連中は決まって、過去に自分を見下していたようなエリート連中だ。

 最初はざまぁみろと喝采を挙げたが、しばらくして連中の所属がここ(・・)という事が何を招き寄せるかに気付き、研究室の生徒が発狂したと勘ぐるほど悲嘆する事になる。

 予定調和の如く、自慢げに豪語していた三組目が失踪した時点で、彼は悟った。

 間違いなく規格外の英霊を敵に回した、と。

 そして必ずうるさい連中を排除しようと、時計塔にやってくるだろうと。

 だからすぐさま準備をしたのだ。

 

「くそっ、冗談じゃないぞ! どうしてあの低脳どもの尻拭いを俺がしなきゃならん! おいバカども、今のうちに移せる物は全部エルメロイに運び込め!」

 

 幾人かの教え子に毒づきながらも、研究成果や貴重な資料を時計塔から運び出した。もちろんバレれば、立場的にかなーりまずい。しかし幸か不幸か彼は教師として絶大な信頼を得ており、かつ生徒達も変わり者と言えば聞こえが良いが、ようは単なる問題児や不出来な連中ばかりだった。協会の掟なんぞ拾い上げてくれたウェイバーの為なら何のそのである。

 

 こうしてウェイバーの教室は、今回の事件で唯一まとまって難を逃れたのだった。

 

 

 

「でもせんせー、いつもは酷い目に合うのに良く今度は危ないって分かったね?」

「ファーック! 君はオレを馬鹿にしているのか、してるんだな!? くそっ、何故オレの生徒はどいつもこいつもこんなんばっかなんだ! いいか、英霊ってのはどいつもこいつも化け物ぞろいなんだよ。そんなまともに相手にするのもバカらしい奴を相手に、時計塔の低脳魔術師が纏めて喧嘩を売ったんだぞ!? 逆襲されるに決まってるだろう!」

「おおーーー」

「――ファック、本当になぜこう変な生徒ばかりが……」

 

 他の教師に押し付けられた生徒どもに悶える内、空間を支配していた魔力でも魔術でもない、何らかの不可思議な圧迫感がふいっと消え去った。

 

(終わったか?)

 

 抱えた書類を碌でもない教え子に呪いと苛立ちを込めて投げ渡し、慎重に様子を窺がう。

 変な部分は見受けられない。

 もっとも、魔術師としての自身の能力にそれほど自信があるわけではないが。

 強いて言うなら……そう、内部から出てくる魔術師がいない。入り口は不気味なまでに静まり返っている。

 

 ありていに言ってウェイバーは不安だった。

 一応ながらも、襲撃してきた当の英霊が理性的だったのは確かに救いである。英雄王のように怒りに任せて根こそぎ吹き飛ばさないだけマシ、そう考えれば万歳三唱してもいいくらいだ。

 

 では何が不安か?

 決まっている。

 たった一人の魔術師も出てこない。

 ただの一度も魔術の気配が感じられない。

 

 そして、探査魔術が時計塔地下まで届いている。

 

 

 明らかに時計塔の魔術的防御がなくなっている。それも欠片すら残さずに。あれだけの強度、枚数の結界を撃ち抜くとなれば、それこそ魔法使いでもなければ不可能だ。

 魔術の気配もなく魔法クラスの現象を行使し、未だに姿すら捉えられない。

 こんな敵がいる場所で不安にならないわけがない。

 

(本当に“英霊”か?)

 

 英霊にしても桁が違う。あるいは、かの英雄王を超えるほどに。

 

「せんせ、どうします?」

 

 生徒の不安げなささやきに、咄嗟に答えられない。

 地下から猛烈な熱気が立ち上がってくる今になれば疑う余地もない、魔術協会三大部門が一、世界中の魔術師にその名を知られる『時計塔』は壊滅したのだと……。

 

 

「……とりあえず、調査は後回しだ。このままエルメロイに向かうぞ」

 

 掘り返しても形ある物が出るか疑わしい、外観はそのままの本部に背を向け、ウェイバー教室の面々は静かに立ち去るのだった。

 

 

 

 




■補足

(※1):『本当に怖いその後』シリーズ。
 『本当は怖いグ○ム童話』シリーズのヒットを知り、とある人物が尻馬に乗ろうと自費出版した作品。童話などのその後を悲惨に予想した作品で、残酷さとある種のシュールさにコアな人気が出るものの、結局本人が書き続ける事ができず、二冊でその幕を閉じた。
 黒川さんが読んでいたのは、一冊目にあたる本。なかでも人気の高い『裸の王様』を描いた章であり、“誰も逆らえない”と形容される王様が詐欺師に恥を掻かされた、その後の物語を綴ってある。簡潔に書くなら、『暴虐の物語』。


(※2):神秘は経年によって宿る他に、魔術によって一時的に付与する事が可能。五次聖杯戦争におけるキャスターのマスター、葛木宗一郎(くずき そういちろう)はこれにより、サーヴァントを相手に奇襲を仕掛け、最優と謳われるセイバーを一方的に打ち倒した。


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