段々質が良くしていけるよう頑張ります。
「君の名前はちまんって言うんだ?」
「へんな名前だね!」
「ねぇ、はちまんくん僕と友達になってよ!」
あいつと初めて会った時を思い出す。
初めて会う相手に向かって変な名前とは…、
小学生とはいえ失礼だと思う。
…って言うか俺って変な名前なのかなあ?
……変じゃないよね?
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転校生。
それは、学生生活を送る者にとっては魅力的な響きを持った言葉だ。まず、転校生自体が珍しいので、顔も知らない転校生に期待し、男も女も関係なく盛り上がってしまう。
しかし、盛り上がれば上がるほど、転校生がイケメンじゃなかったり、可愛くなかったりした時のクラスの盛り下がりは本当に酷い。転校生にとってはただの公開処刑である。
そもそも、転校生に期待する事自体間違っているのだ。家の事情で転校を余儀なくされる奴が不憫でしかない。まぁ俺には関係無いけど。
「皆席に着けー!HRを始めるぞ!」
独身アラサー教師の大きな声してガタガタと音をたてながら皆席に着く。
皆黙ってはいるものの、落ち着きがない。今、クラスの中で落ち着いているのは俺だけだろう。
理由は簡単、俺は既に転校生に会ってる…と言うか知り合いなんだよなぁ…。最近まで忘れていたけど…
× × ×
先日、奉仕部で由比ヶ浜の依頼を解決(?)したその翌日、学校から帰る途中に気まぐれで喫茶店に寄った時……。
「…ズズッ…偶にはブラックも悪くないな…」
コーヒーを飲み、気持ち悪い独り言を呟きながら本を読んでいると横から
「すみません、相席いいですか」
と、声を掛けられた。
何故だか懐かし感じのする声だったが、
気のせいだなと思いゆっくりと本から顔を上げて、声がした方を見ると自分と同じぐらいの歳の、ニコニコした顔の男が居た。
俺はすぐにこの男が嫌いなタイプだと感じた。この胡散臭いニコニコ顔もそうだが、この男が纏う雰囲気が、葉山隼人に似ているからだ。
男は俺の顔を…正確に言えば目だろう、それを見て少し驚いた顔をしたがすぐに元顔に戻った。
まぁ何時もの事だから無視して店内を見回す。
全部の席が人で埋まっていた。
正直相席はしたくないがこの状況で断るのは気が引ける。相席するしかないようだ…。
心の中で溜め息をついて答える。
「……どうぞ」
「ありがとう!」
男はそう言って俺の対面の席に座り、メニューを取って見始め、俺は本の続きを読み始める。
最初は警戒していたが気まずいのですぐに本に集中する。
「君、頭良いんだな」
「……へ?」
いきなり声を掛けられたので、間抜けな返事をしてしまった…、顔を上げて相手を見るといつの間に届いていたのか分からないコーヒーを飲みながらスマホを弄っていた。
俺の視線に気付いたのかスマホを置いて俺の方を見る
「だってその制服、総武高校のだろ?」
「…あぁ…そうだけど」
「…間違ってたら恥ずかしいんだけど」
「…あ?」
「君の名前って比企谷八幡?」
「………」
体中に鳥肌が立ち、顔から冷や汗が出る。
何故コイツが俺の名前を知っている?
驚きと恐怖で混乱する。
何故俺を知ってるのか聞きたかったが、口が動かない。その様子見て察したのか男は少し戸惑いながら
「驚かせておいてなんだが、少し落ち着いてくれ。周りの目が怖いから。まぁ…俺のせいなんだけど…」
「言って置くけど、俺はストーカーではないからな?」
× × ×
暫くして、俺が落ち着いたのを見て男は喋り始める。
「改めて聞くけど、君は比企谷八幡?」
「いいえ、違います」
「……………」
「……嘘です、比企谷八幡です」
真顔にならないで怖いから。会った時のニコニコ顔とのギャップが凄くて不気味だから!
そして、男は俺が比企谷八幡だと確定したからなのか?
さっきまで目がよく見えなくて気付かなかったが、この男の目は俺が毎朝歯を磨く時に鏡に映る人間の目をしていた…。この顔がこの男の素顔なのだろうか?
「いやー、見た目や性格は曖昧にしか伝えられなかったから合ってて良かったよ」
「…何故俺の名前を知ってる? そして誰に伝えられた?」
「? お前の親父だが?」
「は、はぁ?」
「…えーと、お前家で親と会話とかしないのか?…って言うか何も聞かされてない?」
「………?」
「あ…そういえば両親共働きだったな…」
俺の両親は共働きで帰りが遅い、家に帰って来ても夕飯食って風呂入ってその後すぐに寝てしまう。
夜、俺は自分の部屋にいることが殆どだから、夜中リビングに水飲みに行った時ぐらいしか顔を合わせる事はない。
会話なんて休日以外殆どしない。
だけど……たしか二週間ぐらい前に親父が何か言ってたな…あれか? 覚えてないけど…。
「すまん、最近親父に何か言われたが、内容は覚えてない」
「そうか、なら面倒だけど俺が説明するよ」
…面倒って言ったよコイツ。