「先生、戻らなくていいんですか?」
「お、そうだな。では」
「じゃーね先生」
先生が職員室に戻ってから数分たった。今の部室の中の状況を説明しよう。
俺は雨矢上の方は見ないようにして読書をしている。これに関しては、あいつの自業自得だから助けん。
雪ノ下は読書をしながら、未だに起き上がる気配が無くうつ伏せに倒れたままの、雨矢上をチラチラ見ている。
由比ヶ浜は、倒れてる雨矢上のアホ毛を弄って遊んでいる。 ……何考えてんのあの子は…。
「ねーゆきのん。平塚先生さ、流石にやり過ぎじゃない?」
「えぇそうね。雨矢上君の発言も悪いのだけれど、幾らなんでも殴るのはどうかと思うわ」
「俺はそうは思わんな」
「どうしてかしら?」
「ヒッキーちょっと酷くない?」
「いや、俺は昼休みに、そいつに平塚先生の前では発言に注意しろと警告しておいたんだ」
「警告って…あなたは先生の事を何だと思っているの…」
「触らぬ神に祟りなしって言うだろ? 今回のは雨矢上の発言が神の怒りに触れてしまったんだよ」
「それだと意味がちょっと違うわね」
「相手に通じていれば問題無いだろ」
「さわらぬかみにたたりなしってどういうこと?」
「マジかよ由比ヶ浜…」
「由比ヶ浜さん……」
「なんで可愛そうな人を、見る様な目で見るの? 二人とも」
「由比ヶ浜。お前いっつも携帯弄ってんだから、少しぐらい言葉を調べたりしろ」
「うぅ〜! 知らないものはしょうがないじゃん!」
「なんで逆ギレすんだよ…」
アホの子由比ヶ浜の頭の悪さに、二人で頭を痛めていると。倒れている雨矢上が、うめき声を出しながら少し動いた。まるで映画に出てくるゾンビだ。
「うぅ…痛ってぇ……ん? ここは?」
「おう雨矢上。起きたか」
「比企谷?……あぁそうかここは奉仕部か。そして俺は、先生の渾身のセカンドブリットを食らって倒れた訳か…」
「ん? 先生は何処に行ったんだ?」
「先生なら、数分前に職員室に戻ったわ」
「なんか忙しいっぽかったよね?」
「あぁ…」
多分合コンで忙しいんだろうな…。誰か!早く貰ってやってあげて!
「教えてくれてありがとう…。それで…誰だ?」
「えー!? ゆきのんならそうかもだけど、私同じクラスじゃん!」
「なぁ比企谷。クラスにこんなビッチいたっけ?」
「なっ!? ビッチじゃないし! 私はまだ処——」
「あー…由比ヶ浜は葉山グループの人間だぞ。休み時間とかに集まって無駄話とかしてるだろ?」
「ヒッキー話し遮るなし!」
「このくだり色々面倒くさいんだよ…」
「そういえば金髪の人と、眼鏡の人と一緒にいたような」
「優美子達その程度の認識なんだ…」
「雨矢上…君? まずは簡単自己紹介してくれないかしら? あなたは比企谷君よりはマシな感じがするからちゃんと自己紹介してもらいたいのだけれど」
「そうだな。オリキャラなんだしちゃんと自己紹介しねぇとな」
「オリキャラ? 何かしらそれは?」
「ん、なんでもねぇよ」
「「?」」
「……」
いきなり爆弾落としやがった…。
「名前は雨矢上善光。嫌いなものは嘘と偽物とナメクジだ」
「ナメクジ嫌いなんだ…」
「自己紹介にしては、短いしめちゃくちゃだけれど…まぁいいわ。…ねぇ比企谷君? あなたの知り合い目が腐っているのだけれど? やっぱりあなたの目の腐りは感染するのね。今後、私に近付かないでちょうだい」
「いや、感染しねぇから…」
「大丈夫だよゆきのん。目の腐りが感染するなら、私達も既に目が腐っているはずだし」
「それも…そうね。ごめんなさいね、二人の目があまりにも腐っていたものだから……」
「てゆーか! ウッシークラスにいた時とキャラ違くない?」
「誰だよウッシーって…。てかなんでウッシーなんだよ」
「え? だってヒッキーの友達で目が腐ってるから。あとウッシーとヒッキーって音感が似てるじゃん?」
「語感な…。由比ヶ浜はネーミングセンス無いんだな」
「っ! そんなことないし!」
「クラスではキャラ作ってんだよ。キャラ作っておくと何かと便利だからな…」
「………」
雪ノ下の視線が鋭くなり部室の空気が凍りつく。
数十秒後由比ヶ浜が耐えきれなくなって喋りだす。
「ねぇ、それだと皆を騙してる様に聞こえるんだけど…」
「由比ヶ浜さんの言う通りね。あなたはさっき嘘が嫌いと言っていたわよね?なのにどうしてかしら?」
雪ノ下が問うと、雨矢上の表情がほんの一瞬曇った様に俺には見えた。
「流石議員の娘だ。芯が強く正義感が強いんだな」
雨矢上が珍しく褒めたのだが、雪ノ下には皮肉に聞こえたのか、雪ノ下の顔が険しくなる。怖い。由比ヶ浜震えてるじゃん…。
「親の事は関係ないでしょう。それと、早く答えてくれないかしら」
「確かに俺は嘘が嫌いだ。だけど、だからと言って嘘をつかないなんて事は無い。必要ならば嘘なんて幾らでもつく」
「…そう。分かったわ。出会って数分だけれど、私はあなたの事が嫌いだわ」
「ウッシー…ゆきのん…」
「大丈夫だ由比ヶ浜。こういうのは慣れてるから」
「でも…」
その後、誰も喋ることなく部活は終わった。
雪ノ下した怒り過ぎですかね…。
それと、主のクリスマスは狩猟祭りになる事が決定しました……。