「さて、まず何から説明しようか…」
「いや、まず名前を教えろよ…」
「あぁ、そういえばそうだった、まだ名乗って無かったな」
「俺の名前は雨矢上善光だ。雨天の雨に一矢報いるの矢に上座の上、善光寺の善光でよしあきと言う」
「おう…長かったな…」
なんだよなその自己紹介、何処ぞの詐欺師だよ。その自己紹介名前長い人がやるとこんなに長くなるんだな…。
「あの詐欺師、最低で最悪の悪党なのに、カッコいいよ。な俺の憧れだ」
「そうだな…って心読むな、気持ち悪い。てゆーか、あんなもんに憧れを持つな」
「ん? 読んだつもりはないけど?」
「……と言うか、お前変な名前だな」
「お前には言われたくない、比企谷だって変な名前だろ」
「うるせぇ、俺は八幡って名前結構気に入ってんだよ」
「それは俺も同じだ」
「…さて、次は俺と比企谷の関係について説明するか」
そうだ、これが一番気になっている。何故コイツが俺の事を知っているのか、未だに分からない。
「…って言うか名前聞いて思い出すとかないの?」
「……?」
「えぇ……少し傷付いたわ」
頭の中の記憶を遡ってみるが、こんな奴知り合いにいた記憶がないぞ? …って言うかあまり昔の事思い出したくないんだけど…。 あ? 理由は察しろ。
「うーん…小町さんなら覚えてると思うんだけどなぁ」
「小町の事も知っているのかよ」
「ん?…いや、家族ぐるみの付き合いだったし」
「と言っても、俺だけしか付き合いに参加しなかったんだけど」
「?………あ」
「お?」
あぁ…そうだった。ずっとボッチだと思っていたけど、居たな、俺にも友達と言う奴が。長い間ボッチだったから友達が居た記憶すら忘れていた。
……都合よく思い出す事だってあるだろ?
「…思い出したよ。お前変わり過ぎだろ、さっきの仮面もそうだが今の俺みたいな腐った目も」
「確かに……変わった、色々あったからな。だが、お前には言われたくない、何だその腐った目は」
「それはお前もだろ」
「……フフッ」
「……何が可笑しい?」
俺が睨みつけながら言うと、雨矢上は俺が睨んでいるのを全く気にする事なく、静かに笑いながら答える。
「いやな? 俺と同世代の人間で、腐った目の奴を見るとは思わなくてな? ましてやそれが、自分の昔の友人だったからさ、少し可笑しくて…」
「……」
コイツ…。知り合いじゃなかったら殴ってたところだった…。あ、知り合いじゃなかったとしても殴らないよ? 八幡暴力嫌い。
「なぁ比企谷」
「あ?」
「異常だと思わないか?」
「何がだ」
「若くして、こんな腐った目になってしまう事がだ」
「俺のは生まれ付きな気がするが?」
「お前は目つきが悪かっただけで、腐ってなんかいなかったよ」
「……」
「どれほど辛い事があったんだ? 言いたくなければ言わなくてもいいけど」
雨矢上は明るく話しているが、表情は暗く、目からはハイライトが消えている。多分こいつも散々な人生だったんだろう…。 話しを変えたほうがよさそうだ…。
「そういやお前、小3の時転校したろ? 何で帰って来たんだ?」
「あー…」
「?」
雨矢上は少し考えてから口を開いた。
MAXCOFFEEって甘過ぎないところが好きです。