戦国妖怪道中記   作:ガーデンマン

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第4話

 

 

 

 

 

 

 

 

「本当に行ってしまわれるのですね………」

「短い間だったが世話になった。これから私達は尾張へと向かう。しばらくは会えないが、元気でな」

テキサスの京への関所。

そこに小十郎と傾国、雪の三人がいた。

既に義景達には別れをすませ、後は京を通り尾張に向かうのみ。雪はわざわざ関所まで見送りに来ていた。

「また………この国に来てくださいますか?」

「勿論だ。ここ良い国だ。またお邪魔させて貰う」

「では、その時は是非お伝えしたいことがあります。忘れずに来て下さいね?」

「………ああ、心得た。それではな。行こうか、傾国」

「ええ、行きましょう」

そして小十郎達は雪の元から離れ、京への道を進む。

彼らの新たなる旅が、始まった。

 

「それにしても良かったの?あの娘、本気よ?」

「………この旅が終わったら必ず答えるさ。いつになるかはわからないし、死んでしまってこれっきりということもあるかもしれんがな」

「薄情な男ね」

「仕方ないさ。それが私の、私達の選んだ道だろう?」

小十郎は雪の思いに気付いていた。だが彼はそれに応えることはしない。

 

「私は死にゆくものだ。その私に彼女の思いは背負えない。私には、それほどの余裕がもうない」

「それは………どういうことかしら?」

「わかるんだ………この槍は私の魂を喰らって力を貸している。この槍を使い続ければ、私はいずれ槍に飲まれるだろう。その時がいつかはわからないが、それはそう遠くない未来だ。まあ、あくまで勘だがな」

「………呆れた人ね。まぁ、貴方が死んだら、死に際くらいあの子に伝えといてあげるわ。それを、あの子も望んでいるだろうし」

「ああ、その時はよろしく頼むよ」

小十郎達は尾張へと歩を進める。

周りの物を蔑ろにしてでも掴みたい、己の未来のために。

 

 

 

 

「彼らは行ったのか?」

「ええ、先ほど旅立って行かれました」

「そうか………」

「あの、父上………お願いがあるのです」

「なんだい?雪がお願いをするなんて初めてじゃないか?」

「私に、政治を教えてくださいませんか?」

「それは………あの男のためか?」

雪は頷く。ここで嘘をつくわけにはいかなかった。

 

「………小十郎様は、きっと私の想いには答えてはくれません。それについては良いんです。あの方はきっと、とてつもなく大きなものを背負っています。私はそれを邪魔したくはありません。………だけど、せめて、あの人が好いてくれたこの国を、私も守りたいのです。なにも出来ない小娘でいるのは、もう耐えられません………」

「………わかったよ、雪。だからそんな顔はもうやめておくれ。………これからは共に国を良くしていこう。協力してくれるな?」

「父上………ありがとうございますっ!」

「実は小十郎殿から頼まれていた外政が一件ある。早速それに協力してもらおう。上杉県政が………」

少女は決意する。いつかあの人に振り向いてもらう為に。美しいと、言ってくれた自分を磨くために。

少女は強くなることを決意した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おい貴様ら止まれー!!むむっ怪しい奴らめ、成敗してくれるわ!」

「こ、ここ、この女浮いてますっ!て、ていうかゆ、幽霊!?」

「何を言って………ひ、ひえ〜!本当だ!」

「あらあら………」

「………だが、可愛い………これも、萌え、か………」

「萌え、ですね………」

「………頭が痛くなってきた」

「けほっ、けほっ………」

小十郎と傾国は無事に京に入ることができ、一安心していたのだが、なぜか突如、謎のハニー達に囲まれ、足止めをされていた。

 

「私も彼女も怪しいものではない。どうかそこを通してくれないだろうか」

「駄目だ駄目だー!お前達のような不審者を放っておいては町民達が不安になるっ!成敗!成敗!」

「聞く耳持たぬか………」

「けほっ、けほっ………………」

「………そなた、具合が良くないのか?顔色が悪い」

「貴様ぁ、沖田に触れるんじゃない!!沖田は病気なのだぞ!」

「けほっけほっ………かはっ」

「そなた、血が………医者の元へ連れて行かねば………」

「勝手なことをするなっ!………それは不治の病なのだ。………お前は、沖田にこれ以上辛い現実に向き合えというのか!」

「それは………」

「………………」

小十郎は答えることが出来ない。言うことは簡単だが、それに責任は持てなかった。

 

「………そなたの考えが正しいのかもな。所詮私はこの娘とは他人。身内のそなた達が一番良く知っているか。………余計な世話をしたな」

「気にするな青年よ。お前の気持ちは嬉しい。沖田も浮かばれよう………」

「隊長………!かっこいい………」

「けほっけほっ………」

「………………」

傾国の顔は冴えない。

だが彼女は別に悲しんでいるわけではない。ある意味で少女に同情みたいなものはあるが、それが原因ではない。

傾国はただ呆れていた。

目の前のハニー達に、そしてなにより小十郎に。

 

「………馬鹿やっているところ申し訳ないのだけれど、小十郎、その子、不治の病なんかではないわよ」

「………それはどういう………?」

「医療の心得はあるから安心なさい。恐らく、けほけほ病という病気よ。薬を飲んで安静にしていれば直ぐに治るわ」

「なっ………不治の病では………」

「ないわよ」

あっさりと答える。

最初は面白かったが、小十郎が余りにも真剣になってしまったので彼女は見るに耐えなかったのだ。

 

「おのれ幽霊!沖田を惑わすかっ!」

「というか貴方達、一度でも医者に見せたの?」

「なぜ、見せなければいかん!そんなことをしても沖田が辛いだけだ!」

「そうだそうだー!」

「………………」

「じゃあなぜ不治の病と?医者には見せてないのでしょう?」

「ふっ………そんなものは関係ない。美少女が不治の病………そのほうが萌えるだろうがっ!」

「吐血、かっこいい………」

「………………」

「っ!けほっ………あっ」

小十郎は倒れかけた少女の身体を優しく受け止める。

そしてハニー達を睨みつけ口を開いた。

 

「………そこをどいてくれ。この娘は私が医者に連れて行く」

「やめろ!お前には萌えというものが………」

「話のわからない土偶だな………」

小十郎は止めようとするハニーの言葉を遮り、腰にある剣を抜く。小十郎は怒っていた。騙された自分も情けないが、なにより少女の命をくだらない理由で蔑ろにすることに対して。

 

「こらー!貴様ら、俺様の領地で何を勝手なことをしている………って幽霊っ!?」

小十郎が強行突破を考えた時、それを止める声が入った。

それは異人だった。

そして、小十郎が知る異人など一人しかいない。

「むむ、だがいい女だ。そしてそっちの病弱そうな子も………ムフフ、よし!二人とも俺様の女にしてやろう」

尾張の異人、ランスだった。

 

「そなたは………」

「ん?何だお前は。その女の子はどうした。答えろ」

「っ!………この少女は病気なのだ。どうにかして医者に見せたい。協力してくれないだろうか」

小十郎は突然の噂の異人の登場に、呆気にとられるが、けほけほ病の少女のことを思い出し、目の前の異人に助けを求めた。

彼が尾張の異人であるなら、ここは彼の縄張り、この場を抑えてくれるかもしれない。

 

「確かにちょっと具合が悪そうだな………シィル!その子を城まで連れて行け!」

「は、はいっ!さぁ、こちらへ………」

「まてまてまて〜!勝手なことをするなっ!」

「きゃ………!」

病気の少女を連れて行こうとしたシィルに一匹のハニーがシィルに斬りかかる。

シィルは咄嗟によけ、幸い怪我はなかったが、それを見てランスは魔剣カオスを抜いた。

「貴様ーー!!俺様の女に何をしやがるー!!」

そしてシィルに攻撃したハニーをランスは斬り殺してしまった。

 

「くっ、さらばだのぞみっ!」

「ううっ………惜しい眼鏡っ娘を亡くしたっ………!!」

「まだ死んでねー!!」

そしてハニー達はそそくさとその場から逃げていった。

 

「なんてやつらだ………。次に会ったらただじゃおかないぞ」

「ちょっといいだろうか」

「さっきからなんなのだお前は。男はいいからその姉ちゃんを紹介しろ」

小十郎は異人に話しかける。異人の態度はぞんざいなものだったが小十郎は気にしない。

 

「彼女の名は傾国、私は小十郎と申す。そなたが尾張の異人とやらで間違いないか?」

「だったらなんだ。さっさと要件を言え」

「私たちは3Gという者に用がある。ついて行っても構わないだろうか。その少女のことも心配だ。最後まで見届けたい」

「3Gに、ですか?」

異人の後ろから小さな少女が現れる。そしてその後ろには病気の少女と、先ほど襲われたピンク色の髪をした異人に付き添う露出の高い服を来た女がいた。

 

「香ちゃん、危険だ。あまり近寄るんじゃない」

「ですが………」

「妖怪王、独眼流政宗の使いの者だ。是非3G殿に協力を仰ぎたく馳せ参じた。どうかご紹介のほどよろしく頼みたい」

「香ちゃん、こんな男のことは無視だ無視。用があればそのうち勝手に来るだろう」

「………わかりました。案内します。」

「なぬーー!?」

「感謝します」

「………構いません。それより急ぎましょう、あの人が心配です」

そして小十郎と香はランスの存在を忘れ、シィル達を追う。ランスは一人残されてしまった。

「こらーー!俺様を置いていくなーーー!!!」

 

小十郎への好感度が下がった瞬間であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「してお主が儂に用があるという者か?」

ここは尾張、信長の城

ランス達が連れてきた少女を医者に見せた後、3Gは応接部屋で待つ、小十郎達の元へと来ていた。

 

「私の名は小十郎。彼女は傾国と申します。我が父、独眼流政宗から貴方の話を聞き、協力を仰ぎに参りました」

「なんとっ!政宗が………。 それに今お主、父と………」

小十郎は特に隠すこともなく、目の前の三首の妖怪、3Gに話す。

 

「幼きころ、捨てられていた私を父、政宗が拾い、方位御天が母として育ててくれました。ご理解頂けたでしょうか」

「うむ………。 確かに政宗は人が好きな妖怪、そのようなことをしていても不思議ではないが………」

「証拠はありません。ですが、本当のことです」

「ふむ。 まずそれは置いておくとしよう。 しかしその目的はなんじゃ? なぜ儂を頼る」

「私は呪い付きと妖怪を探す旅をしています。父上からはその際、貴方を頼れと申しつけられました」

「呪い付きと妖怪を、とな。 じゃが何故それらを求む。 呪い付き達は人から離れ、妖怪達は政宗のように人を好むものもいれば、人を嫌うものもいる。 お主はそれらに会って何とする」

「一つは呪い付きの解放。一つは人と妖怪の恒久平和、それを彼らに理解してもらうためです」

小十郎は答える。本当はもう一つ、自分の出生のルーツを探す旅でもあるのだが、それは今は言わないでいた。

 

「それは難しい話じゃ。 呪い付きの解放というのもよくわからんが、それ以上に妖怪は厳しい。 妖怪とは、想いや情念によって形を表す。 形はそれぞれじゃ。 人への憎しみから生まれた妖怪もおる。 お主の言っていることは彼らの存在を否定するものじゃ。 彼らも納得すまい」

「存じています。………しかし、それを夢だけで終わらせたくありません。何卒、力をお貸しください」

小十郎は頭を下げる。

 

小十郎の旅のきっかけは傾国と出会いだった。

彼女と出会い、呪い付きの悲しさを知り、妖怪の罪を知った。

だが小十郎は妖怪が好きだった。どうにかして妖怪と呪い付き、その険悪な環境を取り除きたいと思った。

そして小十郎にはそれを成す力があった。

旅に出て、佐渡で初めてたくさんの人と会い、優しさを知った。

テキサスでは、呪い付きの悲しき思いを改めて実感し、そして人の暖かさを知った。

人と妖怪。どちらも好きになってしまった小十郎にとっては、今の世界は耐えられない苦痛を感じさせるものだった。

そして自分の意味はその変えられた世界にこそある。

小十郎はそう思っていた。

 

「………お主の気持ちはわかった。 妖怪達については儂等も協力しよう」

「3G殿………感謝します」

「しかし、呪い付きの解放とやらは如何にして行う? 彼らについては儂にはわからん。 呪いはその呪いをかけた妖怪を殺さねば解けん。 ………お主はそのものを殺すのか?」

3Gにはわからない。なぜこの男はこうも無謀だとわかっていることを望むのか。そしてなぜ政宗はそのようなことを許したのか。

目の前の男が嘘をついている可能性もある。何処かで政宗や自分のことを嗅ぎつけ、織田を利用するために潜り込んだのかもしれない。3Gは協力するとは言ったが、小十郎を不審に思っていた。

 

「………殺しはしません。私には、殺さずに呪いのみを解くことができます」

「では、その方法をお聞かせ願いたい。 正直、にわかには信じられません」

「………この槍に、見覚えは?」

そう言って小十郎は槍に巻いていた布を剥ぎ取る。

 

「………ありませぬな。 それで、その槍がなにか?」

「この槍は対魔の霊槍、この槍が呪いを解き、妖怪を滅します。………今はまだその力をお見せすることは出来ませんが、どうかご理解を」

「その槍が、のう………」

小十郎は槍についても説明するが、3Gの反応は芳しくない。小十郎には説得できるほどのものが圧倒的に足りなかった。

 

「では、政宗に直接聞いてみるかの………」

「はっ?今なんと………」

そういうと3Gは袖にあったプッシュホンを押し、しばし黙り込んだ。

「………頭がトチ狂ったのかしら?」

「顔は真剣だ。よくわからないが………」

本当によくわからなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

奥州。

自室で寛いでいた政宗の頭に懐かしい声が聞こえた。

「3Gか………そろそろ連絡が来る頃だと思っていた」

『おお儂じゃ儂じゃ。久しいのう』

「ああ、かれこれ、八年ぶりだな………」

政宗と3G。会話をするのは妖怪大戦争以来であった。

 

『して、政宗。今、儂のもとに小十郎という男がおるのだが………』

「ああ、俺の息子だ。どうだ、元気でやってるか?」

『ふむ。このものの言っていたことはまことであったか』

「疑っていたのか?」

『当たり前じゃ、お前が人間を育てていたなど全く知らんかったののだし、あの者が語るには話が大きすぎる。 何故か香様は信用しとったようじゃが………』

3Gがこうして小十郎達の話を聞いているのは、香姫の強い推薦があったからだった。

だからこそ荒唐無稽な小十郎達の話を足蹴にせず、注意深く聞いていたのであった。

 

「くくっ、流石は信長様の姫君。良い眼を持っている。………それに比べて3G、お前は眼が悪くなったな」

『どういう意味じゃ………?』

「似てると思わないか?信長様に………。いや、今は先代と言った方がいいのか」

『似てるじゃと? 雰囲気は少し似てるが………どうせお前がそのように育てたんじゃろ?』

「そういうわけでもないのだがな………それで、用件はそれだけではないんだろう?」

『そうじゃった!お前の息子、小十郎といったか、此奴が妖怪の呪いを解けるという話、まことであるか?』

3Gにとってそれが一番気掛かりであり、今回の件で一番不可思議な疑問だった。

 

「そのことか………。事実だ。あいつは槍を持っていただろう?それで可能だ。あの槍にかかれば俺だろうとお前だろうと小十郎の相手にはならん」

『なるほどの………だがそれほどの物、何処で手に入れた?もしそれがあの時にあったなら信長様は………」

「………俺が小十郎を見つけたのは戦争後すぐ。その時既に槍はあいつの手にあった。すぐにそれを俺たちは危険なものと理解し、しばらくはお町が封印していたのだが………結局小十郎のもとに返した。あいつにはいつか槍の力が必要になる時がくる、そう思ってな。事実、俺の予想は当たったわけだ」

『不思議なものじゃな………だがわかった。お主の息子を信じよう』

「世話をかける。………小十郎が成し遂げたら、一度尾張へと行こう。その時はよろしく頼む」

『了解じゃ。 ではこちらはまだ話し合いの最中じゃ。 失礼するぞ』

「ああ………」

そして3Gの声が聞こえなくなった。

「八年か………あっという間だな」

妖怪にとって時間の概念は無に等しい。

あらためてその現実を実感し、想いを馳せる政宗だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「待たせたの」

「あら、正気に戻ったのね」

「元から正気じゃっ!!」

「………本当に父と話して………?」

「勿論じゃっ! 儂等は電波妖怪。 JAPAN中の妖怪達と連絡が取れるのじゃっ」

「あらあら、便利なものね」

「………それは凄い。だが、なるほど。父上が貴方を頼れと言った意味、今理解した。して、信じて頂けましたか?」

「うむ。 問題ない。 だが少し問題があってな………」

「なんでしょうか?」

「電波妖怪といえども、儂等の声に応えてくれる妖怪は少ない。 協力すると言った手前、申し訳ないのじゃが………」

「構いません。協力して頂けると仰ってくれただけでありがたいものです」

「儂等が知っていることといえば………。 まずは死国じゃな」

「やはり死国、ですか」

小十郎も死国の存在は知っていた。

呪い付きが放り込まれ、最後に逃げ込む国。

小十郎達が佐渡、テキサスで情報を集めた時、いつも真っ先に耳にするのが、この死国についてだった。

 

「それと後は三河と毛利じゃな。 三河は本来、徳川家が治めていたのじゃが、最近妖怪がその三河を乗っ取り、国主として国を治めているらしい………。 あそこには千姫という美しい姫もおったというのに、どうなってしまったやら………」

「三河………。近いですね………」

「うむ………。次に毛利じゃが、国主毛利元就は大きな体格を持ち、恐るべき力を持っていると聞く。それが呪い付きによるものではないか、ということじゃが、あまり確証はないのう」

「………流石ですね。まさかそれほどの情報を手に入れれるとは思っていませんでした。感謝します」

「うむ。年寄りを労われるとは真面目な青年じゃ。………それに比べランスときたら………」

「ランス?」

「きっとあの異人のことね」

小十郎にとってランスとはよくわからない人間だった。浅井朝倉では雪を求めるがために戦を起こしたと聞くが、京での一件では病気の少女を助けるべく動いた人でもある。雪には悪いとは思いつつも、ランスのことを悪い人間ではないと小十郎は思っていた。

 

「ともかく、お主は今後どうするのじゃ? 要は三つの選択肢があるわけじゃが………」

「そうですね、とりあえず………」

「徳川を責めるぞーーーーーーーーーーー!!!」

「なっ!?なんじゃーーーーーーーー!?」

突如、部屋に乱入する者がいた。丁度今噂をしていた人物、ランスであった。

 

「おい3G!なんで今まで教えなかった!!」

「な、なんのことじゃ?」

「徳川に美人の姫がいることだ!」

「な、なぜそれを………」

「盗み聞きしていたでござるよ。にんにんっ」

「す、すみません………」

ランスの後ろにはさらに鈴女とシィルの二人がいた。

 

「国を奪われた所に俺様が華麗に参上。国を取り返し、姫も救う………なんて素晴らしい話なんだ!」

「しかし………まだ生きているとは………」

「行ってみなければわからんだろうがー!」

「………確かに、未だ妖怪達に囚われている人はいるだろう。早く解放するべきか」

「まあ、どうせ通る道だしね。遅いか早いかの違いでしかないわ」

「ふん、話がわかるガキンチョだな………。だがお前はいらーん!その槍を渡せ!」

「なっ………」

そういうとランスは小十郎から槍を奪い取ってしまった。

 

「この槍で妖怪を倒せて、呪いとやらも解けるのか。がはは!これで俺様もさらに無敵になったな!安心しろがきんちょ、お前の意思は俺がついでやる。だからその綺麗な幽霊のねーちゃんも俺の女になれ」

槍は小十郎という、一部の人間にしか力を貸さない。だがそれをランスは知らない。

それが魂を削る諸刃の槍であることも。

 

「ごめんなさい、異人様。私はこの小十郎に取り付いている身でして、貴方のもとにはいけませんの。どうか諦めてください」

「なにー!?こんな子供がこんな綺麗なねーちゃんを独り占めするなどと、ぐぬぬ、許せん!………そうだ、殺してしまえば幽霊ちゃんも解放されるんじゃ………」

「喝ーーーーー!! 小十郎殿は儂等の友の息子! そして香様が招いた客人じゃっ! 駄目に決まっておるじゃろ!」

ランスのとてつもない発想に3Gが叫ぶ。

シィル達には見慣れた光景だが、小十郎にとっては妖怪にもいない、初めて会うタイプの人間で、呆気にとられるしかなかった。

 

「良いのか?そのような嘘をついて………」

「あんな男の女になるのは御免だもの。好みじゃないわ。それに槍はいいの?」

「母、お町からはあれは一部の人間にしか使えないとのことだったが、私は他の人間が手にするのを初めてみる。少し興味深い」

「あら、余裕なのね。面白くないわ。もっと必死に槍に縋る所を見て見たかったのに」

「白々しいな。そなたとの付き合いも短くない。そなたが本当にそのようなことを思っているとは思えぬぞ?」

「………まあ、否定はしないわ」

小十郎と傾国。特殊な生い立ちを得た二人の特殊な出会いと旅立ち。

彼らが互いを信頼しあうのに時間は問題ではなかった。

彼らは最初から既に、仲間なのだから。

 

「こらーー!俺様の前でイチャイチャするなーー!!調子に乗りおって………クソガキっ!お前も戦に参加しろ!」

「ラ、ランス様?」

「ああ、元よりそのつもりだ」

「小十郎殿!? しかしお主は………」

「私は戦は好きではありませんが、否定はしません。それにこれには妖怪が関わっています。放っておくことは出来ない。………私も行きます」

「よーし!これで話は終わりだ!早速準備をするぞー!いざゆかん!姫のもとへ!!がはは!」

そしてランスは槍を持って、シィルと鈴女を連れて部屋から出て行った。

 

「小十郎殿、釘はさしましたがランスにはお気をつけください………」

「後ろからざっくりってあるかもしれないわね」

「………善処しよう」

 

ともあれ、小十郎にとって初めての戦がついに始まろうとしていた。

敵は妖怪狸、徳川家康。

彼らの運命は如何に。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




3Gの妖怪電話は完全に想像です。
まぁこんな感じなのかなぁ、と。
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