ゆったりとした話が書きたくなったので書きました。霊夢って可愛いよね。
少し文章が変ですが、楽しんでいただけると幸いです。
『○月✕日△時□□分、比企谷八幡さんが...息を引き取りました』
誰かわからない女性が1人だけいる、目ん玉だらけの異質な空間の中で俺は、医師から告げられたその言葉に、心底驚いていた。
あまりにも唐突だが、俺...比企谷八幡は死んだ。
信号無視して道路を渡ったバカ犬を助けるために道路に飛び出したからだ。
どうやら打ちどころが悪かったようで、1年前ー由比ヶ浜のペットの犬が轢かれそうになったやつーのように上手くはいかず、そのままぽっくりと...我ながら本当に悲しい死に方だと思う。心のどこかでは少し油断していたのだろう。気が緩みすぎだと数分前の自分に言ってやりたい。
だがしかし、自分の亡骸を見下ろしながら今現在も泣きじゃくっている俺の知り合いや家族を見ていると...なんだか不思議と、幸福感や充実感を覚えた。俺はこんなにもたくさんの人に愛してもらえたのか...と。それを知ってしまった今、悔いなどなかったはずのあの世界に、少し未練を感じてしまうのは、それだけ愛に飢えていた、ということなのだろうか。
「...おほん。感慨深いのはわかるのだけど、今は私の話を聞いてね。突然こんなところに呼び出しちゃって悪いわね、比企谷八幡君。私の名前は八雲紫、スキマ妖怪よ。」
...色々唐突すぎて、すっかり存在を忘れていたが、この人が俺をこの目ん玉だらけの謎空間に呼び出した人物...いや、妖怪らしい。にわかには信じ難いが。
「...はぁ。どうも、八雲さん」
「どうも、八幡くん。それで先程から、その腐った魚のような目で今回の出来事の一部始終を見ていたようだけれど...驚くほど冷静ね。自分の死を目の当たりにしたのだから、普通はもっと冷静さを欠くものだと思っていたわ。」
腐った魚のような目って...目の前にいる自称妖怪さんは、初対面でいきなり雪ノ下のようなキツい罵倒を言い放ってきた。
「うわぁ...酷い言われよう。この目、そんなに気色悪いですかね...もしそうだとしても、初対面でいきなりその罵倒は結構傷つくからやめてください...」
「...あら?あそこのベッドで安らかに眠っている貴方の隣で、ワーワーと泣きじゃくっている女の子が貴方にこうやってよく言っていたもんだから...てっきりこういうのが好みなのかと思っちゃったわ、ごめんなさいね。」
えぇ...俺、初対面の人にドMだと思われてたの...ってか待て。今この人、『よく言っていたから真似た。』と言ったな...
「そんなんじゃないですよ。というより、今の発言からすると、八雲さんは以前からその...俺の事見てたってことになると思うんですが...その、見てたんですか?」
「よく聞いてくれたわね!えぇ、見ていたわ。貴方のこと、少し気になっちゃって。その腐った魚のような目に猫背、それなのに、他とは違い真っ直ぐ上を向き、堂々と頭に佇む1本のアホ毛...私の外来人レーダーがビビっときたのよ!...って、なんでスマホ操作してるのよ?」
「あっいえ、俺にはお構いなく。ストーキングされていた事が発覚したので、警察に通報してこの場から逃げようとしていただけなので。」
「"スキマ"にいるのに携帯なんて通じるわけないでしょ...圏外よ圏外。ここは貴方のいた世界からは隔離された場所なの。」
スキマ...そういえばさっき、スキマ妖怪だなんだとか言ってたな...これを作り出すことができるってわけか...えぇ...どういうこと?
「どうやら、改めて私がどんな存在なのか理解できなくなってきたらしいわね。このままだと拉致があかないから本題に入らせてもらうわ。八幡君...いえ、八幡。貴方には幻想郷というところに来てもらうわ。」
「幻想...郷...?理想郷...?」
「理想郷なんて...そんな大それたものじゃないわよ。幻想郷というのは、人間と妖怪が共存している、"忘れられたモノだけが訪れることができる場所"。不幸な事故によって若くして命を落としてしまった貴方に、第2の人生を歩ませてあげたいと思ったのだけれど...どうかしら?」
第2の人生...か。確かに悪い話じゃないが、もう楽になってしまいたいと思っている自分もいる。...そうだ、これが可能なら...
「愚問なのはわかってるんですけど、一応質問させてください。ここから出て現実世界でまた今の体で生きる...なんてことはできるんですかね?」
「...利口な貴方なら、どのような答えが返ってくるか、わかっているはずよ。他に質問はない?」
やはり...か。1度命を落とした場所にもう一度行くなんて、勝手がすぎるよな。なら...
「それじゃあ...もし、妹や奉仕部のメンバー、一色が俺の後を追ってしまうか、亡くなってしまったら...あいつらも、幻想郷とやらに連れて行ってくれませんか。まだ、お礼も何も、言えてないんで。」
「...思っていたよりわがままなのね。でも、いいわ。特別に許可してあげる。」
「...本当か!?ありがとう!紫!...あっ、すいません。つい昂っちゃって...ありがとうございます、八雲さん」
「っ...少し、びっくりしちゃったわ。いえ、いいのよ。私のことは紫って呼んで。敬語も使わなくていいわ。」
「そうですか?八雲さ...いや、ゆきゃ...紫。」
か、噛んでしまった...家族以外の人を下の名前で呼ぶの、初めてだから緊張するな...
「ふふ、緊張して噛んじゃったのね。やっぱり可愛いわ...付き人にしたいくらい。」
「勘弁してくれ...次の人生くらい、楽して生きたいんだ...」
「あらそう?それは残念。...長々と世間話を続けているのも楽しいけれど、貴方のことを待ってる人がいるの。だから、そろそろ幻想郷へ行きましょうか。」
「俺を待ってる人...?誰だ?それ」
「ふふふ...会ってからのお楽しみよ。スキマから出たら、その人が待ってるわ。さぁ、いってらっしゃい!」
待ってる人...知り合い?いやまさかな...俺に会いたがる知り合いなんて材木座以外居ないし...ちょっと悲しくなってきた。っと、外が見えてきたな...
「ってちょっ、眩しい...この天気はぼっちの俺には厳しすぎる...関係ないか。」
自虐を混じえたくだらない独り言を言いながら俺は、第2の人生を楽しむための1歩を踏み出した。
...これが始まりで本当にいいのか...?
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「っと、着いたはいいが、なんだここ..."博麗神社"...?いやそれは今はいい。えーと、俺を待ってるって人は...」
広い庭?をひとしきり見渡してみるが、それらしき人は...ん?頭の上からなんか音が...って、なんか目の前に着地して...えっ何この子。なんで空飛んでるの怖い怖い怖い怖い
「ふふふ、久しぶりね!八幡!」
空から飛んできた赤い巫女装束を着た女の子が、凄いいい笑顔で俺に話しかけてきた。待ち人ってのはこいつか。それに久しぶりって...まさか!
「...すいません、どちら様でしょうか?」
新手の詐欺...!?
いかがでしたか?
ご指摘、ご感想などお待ちしておりす。
好評、もしくはモチベーションがあれば続く...かも?
では、いつか来るであろう次回まで、さようなら〜