刀使ノ巫女RTA 漫画版離反ルート   作:イナバの書き置き

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作者の体調がガバガバだったのと時系列や諸々にガバを発見したので大分遅くなってしまいました。本当に申し訳ありません。
今回は大分短めです。


第6回(前編)

 昔から、剣術が好きだった。

 それは師匠()が刀使だったからなのか、或いは別の理由があったのか。今はもう思い出せないけど、兎に角私は剣術が好きだ。

 

 試合はもっと好きだ。

 相手と技術を、努力を、発想をぶつけ合うその一瞬が他の何より楽しい。

 色んな流派があって、色んな刀使がいる。皆の剣術を見るのが楽しくて、わざと試合が長引くようにする事だってあった。

 それは相手にとって何よりの無礼だって分かってるけど、打ち合いから伝わる「心」は何より綺麗だった。

 

 そう、剣術は人を語る。

 油断があれば無意識に加減してしまうし、迷いがあれば太刀筋も揺らぐ。

 反対に、気を引き締めて迷いを断てばそれは必勝の一太刀になる。

 その時の健康状態、コンディション、全てが反映される以上剣は口より雄弁だ。

 

 だから──

 だからこそ、彼女の心が分からない。

 美濃関学院中等部2年、星切依奈──依奈ちゃんは、私の理解を超えた人間だった。

 

 初めに会った時は溌剌とした、裏表の無い人だと思った。それは打ち合いからも簡単に読み取れた。

 基本を徹底した鮮やかな剣筋には惚れ惚れしちゃった。初志貫徹って口で言うのは簡単だけど、そうそう出来る事じゃない。

 それだけ積み重ねた努力が感じられたから、きっと悪い人じゃないって思ったんだ。

 ……まあ、ちょっとおどけた喋り方をするからビックリする事もあったけど。

 

『ダメだなぁ、私。これじゃ満足出来ない』

 

『依奈ちゃん……?』

 

 1ヶ月位一緒に鍛練して何かがおかしいって思った。

 依奈ちゃんは、不気味な位に基礎的な事しかしていなかった。ただ振って、振って、それで終わり。

 試合の時も、悪く言ってしまえば「つまらない」物だった。仕方無くやっていると言う雰囲気がありありと伝わる、侮辱行為ですらあった。

 何でそんな事をするのか、と聞けば適当にはぐらかすばかりで、私には何も教えてくれなかった。

 全く何を考えているのか分からなくて、私もただ困惑するだけだった。

 

『よ、依奈ちゃん!もう止めようよ!3日連続でなんて無茶だよ……!』

 

『……別に。それより、こんなんじゃ足りない。もっと、もっと斬らせてよ』

 

 でも、1度荒魂を斬ったあの日からもっと依奈ちゃんはおかしくなった。

 毎日毎日、授業が終われば先輩達にくっついて荒魂討伐に向かった。休みの日も関係無く、昼夜問わず荒魂と聞いただけで飛び出していっちゃう。

 刀使の使命は()()()()()()事。私も舞依ちゃんも、その使命に燃えている。

 だけど依奈ちゃんは違う。

 まるで機械のように、ただ淡々と荒魂を斬る。斬って、斬って、そうして足りない「何か」を埋めている。

 なのに斬った後は満面の、いっそ不気味な位明るい笑顔になる。

 どれだけ傷付いても、どれだけ苦しくても。

 依奈ちゃんは何も語らない。

 自分の事も、他人の事も。

 全てに線を引いて、その向こう側から此方を眺めている。

 いつも浮かべている薄い笑みだって、他人を誤魔化す為の仮面でしかない。

 

 だから。

 だから────

 

 

 

本気(マジ)の喧嘩しようよ、依奈ちゃん」

 

「ふぅん。なるほどねぇ」

 

 午後10時、美濃関学院の武道場で私と依奈ちゃんは相対していた。

 鎌府での一騒動が終わり、戻ってきていた依奈ちゃんを呼び出したのは私。

 こんな時間だから巡回の警備員以外が通らないし、それもついさっき行ったばかりだ。

 ──つまり、思う存分闘える。

 

「バレたら1発でアウトだね。御刀返納の上退学処分間違いなしだ」

 

「勿論!よく理解した上で言ってるよ」

 

 夢でお母さん(師匠)に相談してみた。私1人じゃどうにもならない問題でも、2人なら解決出来るかもしれない。そう言う淡い期待を込めた言葉は、まあ師匠らしい答えになって返ってきた。

 

『んー。私に覚えは無いけど、可奈美は私の娘なんだよねぇ?』

 

『そ、そうだよ。それが何か──』

 

『だったらぶつかってみるしかないでしょ』

 

『え──』

 

『私も可奈美もさ、多分器用な方じゃない。手先が、とかそう言う話じゃなくて生き方がかな。そんなに賢くあれる訳じゃないのよ』

 

『まあ、そうかも……』

 

『なら自分に出来る方法でぶつかって、本音を引き出してみるしかない。それが私達には()()って事になるんじゃない?』

 

 右手で御刀(千鳥)を弄びながら、師匠は道を示してくれた。真っ直ぐ歩けばそれが道なんだ。その時その時に、全力で当たるしかない。

 確かにそうだ。剣は言葉以上に雄弁だ。怒りも喜びも悲しみも、人の意思は刀に乗る。

 なら剣で問いかけよう。ちょっと野蛮かもしれないけど、これが私のやり方だ。

 私が迷えば迷うだけ依奈ちゃんは遠くに行くから、もう何も考えない。思ったままをぶつけるだけ。

 

「さあ、やろうよ。2人だけの決闘」

 

「……分かったよ」

 

 

 依奈ちゃんが御刀(山鳥毛)を抜いて、するりと構える。

 この2ヶ月で、依奈ちゃんは変わった。最初の穏やかな雰囲気は消え失せて、もっと鋭い、それこそ刀のような抜き身の気迫を漂わせている。

 だけど、それはねえ?

 

 ──落とし下段で余裕ぶって、思ったより頑固って事?

 

 良いよ、分かった。

 どこまでも隠し通そうって訳だ、依奈ちゃんは。でも構えで分かっちゃうよ、それ。

 それならもう言葉なんていらない。最初から全力全開、どの道喧嘩なんだから後先なんて考える必要もない。

 問答無用で依奈ちゃんの鉄仮面ひっぺがして、その下の素顔を拝んでみせる。

 

 

 

 

 

「────覚悟してよね、依奈ちゃん」




・衛藤可奈美
落とし下段で余裕こいて、思ったよりヒゲです!(人違い)
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