——日常の崩壊。誰もが出会う事がないと信じている事象。
だがそれは、案外身近な物である。日常の中に、日常を崩壊させる事象が潜んでいるからだ。
例えば、交通事故に遭ったり、通り魔に襲われたり、乗っていた飛行機が墜落したら……などなど。挙げればキリがない程に、崩壊の要因は蔓延っている。
とまあ、要するに普段の生活内では、『ありえない』と思える様な出来事と背中合わせということなのである。そして、彼もまたそんな『ありえない』に遭遇してしまう。それも、『ありえない』を通り越した出来事に——
普段と同じ様に、彼——藤城栄一は、自身の通う学校へと向かっていた。彼が通っているのは都内の高校。
そこへ行くために、現在は列車に乗っていた。そんな彼は、窓の先で徐々に近付きつつある、世界一の高さを誇る自律式電波塔『東京スカイツリー』へと視線を移す。
「相変わらずデカいな……」
人類史上最大の大きさを誇る
そんな彼の視線が、何やらスカイツリーの真横を落ちてくる光を捉える。初め、それがなんなのか分からずジッと目を凝らしすが、はっきりと認識ができない。
直後、彼の脳裏に何かが迸った。
「……?!」
それを
そして、次の停車駅であるスカイツリー最寄りの駅で列車から飛び降りると、迷うこと無く光の落下予測地点へと走る。
「間に合ってくれ……」
その想いを胸に、栄一は一心不乱に走る。この間、光は落下する速度を徐々に徐々に速めていた。
間に合わないのだろうか。そう思う栄一であったが、即座にその思考を振り払い、加速する。
そして、彼が辿り着いたのはスカイツリーのお膝下にある、川沿いの公園。そこの1番河岸のところへゆっくりと彼は歩いた。
そこへ、例の光が先ほどとは打って変わってゆっくりと降りてくる。
「……え?」
徐々に顕になる光の正体に、栄一は困惑した。何故なら、空から降ってきたのは、1人の少女だったからだ。
栄一は、降りてくる彼女の体をそっと受け止めた。その体は、ほとんど重さを感じないものであった。
「生きてる……よな?」
瞳を閉じたままの少女の顔を見ながら、栄一は少し不安になった。直後、彼女の胸元から発せられていた光が収まり、彼女自身から重さを感じた。
「うおっ?!」
突然の事に、栄一は彼女を落としそうになるが、なんとか踏ん張り抱きかかえているのだった。栄一は、抱き抱えている少女を、近くのベンチの上に横たわらせた。
そして、自身の制服の上着をそっと少女の体に掛けた。そんな栄一は、この後どうするかを考えていた。
この少女が目覚めたらどうするかを。それらを考えているうちに、栄一の視線は自然と少女の方へと流れていた。
整った顔立ちは、瞳を閉じたままでも美人であることを告げ、その鮮やかな銀髪がより一層引き立てていた。そんな彼女の格好は、白い洋服に黒のスカートとどこにでもいる様な格好であった。
ただ1つ目を引いたのは、銀髪の中で一際目立つ黒い蝶をあしらった髪飾り。
「……人間……だよな?」
自身の目の前に横たわる美少女が、先程天から降りてきたことを思い出し、そう呟くのであった。
すると、彼女が『んー……』っと唸ってから、目を覚ます。
「気が付いた……?」
栄一は恐る恐ると言った感じで、少女へと尋ねた。
「……貴方は? そして、ここは何処?」
「俺は藤城栄一。で、ここはスカイツリーの真下だ。そう言う君は?」
栄一に問われた少女は、名乗るのだった。
「友希那。湊友希那よ」
名乗った少女———友希那は、少し考え込んでいた。
「どうかしたのか?」
「……私は、どうしてここにいるのかしら」
「覚えてないの?」
「ええ……」
そう言った友希那は、俯くのだった。
「———君は、空から降りてきたんだ。蒼白い光に包まれて」
「私が?」
栄一は、そっと頷いた。
「なんか、胸元あたりから出てた光に包まれて」
そう言われた友希那は、服の内側から何かを取り出した。
「それは……?」
「……私が、幼馴染から貰ったものよ」
そう言った友希那が栄一にかざしたのは、青い薔薇をあしらったロザリオ。そのロザリオの中には、ロードナイトも埋め込まれていた。
「綺麗だな……そのロザリオ」
「ありがとう」
そう返した友希那は、再びそのロザリオを洋服の内へと戻した。そんな友希那に、栄一は問い掛けた。
「なんで空から落ちてきたんだ?」
「ごめんなさい……私、よく覚えてないの」
申し訳なさそうに、友希那はそう答えるのだった。
「覚えてない……?」
「ええ……。何も」
「自分の家とかは?」
「曖昧……」
「そうか……」
そう言った栄一は、溜息を吐くのだった。そして、今度は友希那にこう問い掛けるのであった。
「取り敢えず、この後どうする?」
「どうしましょう……帰る場所もわからないし」
「とりあえず今は……何も手掛かり無しだもんな」
お互いに頭を抱える状態が続く中、友希那が不意に口を開いた。
「貴方……栄一だったかしら」
「ん、あ、ああ。どうした?」
「貴方が迷惑で無ければだけど……貴方の家に行ってもいいかしら?」
あまりに突然の事柄すぎて、栄一は頭の処理が追い付かなくなった。数瞬の後、栄一の思考は元に戻るのだった。
「え、いや、迷惑ってことはないけど……。初対面の人間に、よくそんなこと頼めるな……」
「現状、貴方以外に頼れる人がいないのだもの……」
それを聞いた栄一は、何処となく納得してしまうのだった。
「確かにそうだな……。じゃあ、とりあえず俺の家に行くか……」
「ありがとう。助かるわ」
そう言った友希那は、ベンチから立ち上がった。そして、栄一に上着を手渡した。
「これ、ありがとう」
「いいえ」
受け取った栄一は、上着を羽織った。直後、彼は硬直するのだった。
「どうかしたの?」
それに気が付いた友希那が、栄一に問い掛けた。
「学校忘れてたぁぁぁぁぁあ」
かくして、栄一の日常は非日常へと変貌した。これから先、彼と歌姫は様々な事柄に当たりながらも、真実を探し求めて行く物語が幕を開けて行く。
果たして、2人は乗り越えられるのか。
余談だが、この日都内に1人の少年の声が響き渡ったとか響き渡らなかったとか。
続く予定は今のところ未定。
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