傷吐き   作:めもちょう

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十三話

『先頭が一足抜けて下はダンゴ状態! 上位何名が通過するかは公表してねーから、安心せずに突き進め!!』

 

 やっと、やっとだ。やっと綱渡りが終わる……。急げ。一位まだ目指せる。男の子なら一位目指せ! めっちゃ足フラフラしてるけど!

 

『そして早くも最終関門!! かくしてその実態は――……一面地雷原!!! 怒りのアフガンだ!! 地雷の位置はよく見りゃわかる仕様になってんぞ!! 目と脚酷使しろ!!』

 

 体力がない。一歩一歩、歩くことしか出来ない。やっと、やっと最終関門まできたのに。疲れすぎて吐き気までしてる。ホント、“個性”でこれも回復しねーかな。

 

『ちなみに地雷、威力は大したことねーが、音と見た目は派手だから失禁必至だぜ!!』

『人によるだろ』

 

 最終関門の地雷原は荒野のようなコースだ。疲れて集中力のない俺に出来るのは、ステージの壁沿いを伝って、確実に進むこと。血が流れたのが影響してんのかな。あまりに急に疲れが来た。しかもいくら俺が自分の足元の地雷を避けても(足裏に黒いキューブを出して、壊して無効化している)、そばで爆破が起きると、その衝撃波で動けなくなる。息が出来なくなることだけは避けたい。

 

「歩け、歩け」

 

 先頭ではバクゴー君と轟くんがデッドヒートを迎えている。負けてたまるか。立て! 歩け! 進め! この勝負に負けるな俺ぇ!!

 

 気合を入れ直した、その時だった。後方で大爆発が起こり、その衝撃が俺の方まで来た。爆破の“個性”を、バクゴー君以外が持っていたのか。いや、違う。その爆風に乗っているのは、鉄板に乗った緑髪の男子。あいつも、A組の人だったはず。一体、どうやって!?

 

『A組緑谷、爆風で猛追ー!!!?』

 

 負けたくない!!

 

 先頭集団が騒がしくなって、マイク先生の実況が盛り上がっている。でもそんなの聴いてる余裕無い。疲れて動くのをやめてしまいそうな自分の足との勝負だ。地道に一歩一歩進んで、体力、少しは回復しただろう。行こうぜ!

 コース半分を過ぎたところから、俺はようやっと走り出した。だいぶ先に人はいるが、まだ地雷を踏んでいる人はいる。轟くんが緑谷くんを追う為に残した氷の道も溶けて、安全な道はなくなっていて、地雷が仕事をしている。俺はBOM BOM 他がいわせてるなか、作戦通り一度も爆破させずに、このコースを抜けた。

 

 最後の最後で腹からビームを出す個性の人に追いつかれたけど、ビームの途切れた一瞬の差で、命をかけて走る俺が一歩先にゴールした。ゴールであるスタジアムには、もう40人くらい先にゴールしていた。予選、俺は果たして、通過しているのだろうか。

 あ、バクゴー君だ。

 

「やっほー……バクゴー君……」

 

 緑谷くんは結局、バクゴー君と轟くんを押しのけて、一位で予選を通過したらしい。さっきマイク先生の実況でそう言っていた。だから、バクゴー君は2位か3位だ。だからか、顔が怖い。追い詰められてる。俺で柔らかくなってくれたら、気が紛れたらいいな。

 

「頭洗ってきやがれ」

「はーい……」

 

 そうだった。俺、頭血まみれだったや。せっかくここまで歩いたけど、控え室に行ってこの惨状をどうにか洗い流さなくっちゃ。そう思ってくるっと振り返って、数歩進んで。あ、思い出した。これ言わなきゃ。

 またくるっとまわって、バクゴー君の顔を見る。

 

「ああ……一言、言わせてくれない?」

「あぁ?」

 

 上位通過者が、なぁんでそんなに顔怖くしてんの。ヒーローさん。

 

「お疲れ様。次も、頑張ろうね」

「……おー」

 

 すこし、眉間のしわが取れたかな。

 今度こそ、控え室に向かう。あ、靴も回収しなきゃ。

 

 控え室の裏の水道。その蛇口からそのまま水をかぶる。冷たい水が気持ちよかった。このまま寝てもいいくらいには、気持ちよかった。一度目を開けば、排水口に流れる赤い水、俺の血がこの場を地獄にしていた。

 

「うげぇ……」

 

 石鹸でこの水場、洗わなきゃ。ヘアバンドも血ぃ吸ってるし……あ、足も洗わないと。……置いてきた足裏、回収しなきゃな。あーつっら。

 足裏は、踏まれてメタメタになりすぎて、もう回収できなかった。会場のシミになっちゃったなぁ。

 

 時間は過ぎて。全員がゴール、もしくはリタイア者が戻ってきた頃、主審のミッドナイト先生から結果が提示された。

 1位 緑谷くん

 2位 轟くん

 3位 バクゴー君

 え、シンソー君27位!? 通過してんの!? おめでとう! 直接言いに行かなきゃ! んで、俺は……。

 

「あ!」

 

 あった! 42位! 最下位でも通過は通過!! よっしゃぁあ!

 

「おめでとう吐移くん!」

「やったな!」

「ありがとう!」

 

 近くにいたC組の皆が俺に「おめでとう」と、お祝いの言葉をかけてくれる。俺は暖かいそれに応えながら、シンソー君のもとへ向かう。彼もまた、持ち上げられていた。

 

「おめでとう、シンソー君! 俺も突破したよ!」

「ああ、おめでとう。だけど、戦いは続くよ」

「分かってる。同じクラスだからって、八百長だけはしないよ」

「当たり前だ」

 

 シンソー君は挑戦者を迎え撃つような、不敵な笑みを浮かべている。次の種目はなんだろうね。種目によっては、戦う事になる。

 予選通過者以外は生徒席に行くよう、ミッドナイト先生に指示された。

 

「予選通過は上位42名!!! 残念ながら落ちちゃった人も安心しなさい! まだ見せ場は用意されてるわ!! そして次からいよいよ本選よ!! ここからは取材陣も白熱してくるよ! キバりなさい!!!」

 

 C組の皆! まだ君らにも注目集まる機会はあるから、アピール頑張って! レクリエーションで“個性”使って注目浴びてって!

 

「さーて第二種目よ!! 私はもちろん知ってるけど~~……何かしら!!?」

 

 主審のミッドナイト先生が次の種目を発表する。ドラムロールが鳴り響いている。

 

「言ってるそばから……これよ!!!」

 

 ミッドナイト先生が指差す先には白いホログラム。そこに足された文字は、「騎馬戦」の三文字。あれ、個人競技じゃないんだ。それなら、シンソー君と協力できるかもしれない。

 

「参加者は2~4人のチームを自由に組んで、騎馬を作ってもらうわ! 基本は普通の騎馬戦と同じルールだけど、一つ違うのが……先ほどの結果に従い、各自にP(ポイント)が振り当てられること!」

 

 ミッドナイト先生の発言から、A組がこの種目の仕組みを口に出して理解を深めていく。まとめると、入試の時みたいなP稼ぎ方式で、組み合わせによって騎馬のPが違ってくる。“個性”によっては、ポイント低くても強い騎馬も、その逆の騎馬もいることになるな。説明したかったであろう先生がA組に対してムチを打ち鳴らしていた。

 

「そして与えられるPは、下から5ずつ! 42位が5P、41位が10P……といった具合よ。そして……一位に与えられるPは、1000万!!!!」

 

 おぉっとぉ?

 

「上位の奴ほど狙われちゃう――下剋上サバイバルよ!!!」

 

 普通科が奪ったら、まさに下克上じゃん! 

 

 一位はA組の緑谷出久。注目が集まって冷や汗をかくような、まるで強そうには見えない男子。

 

「上に行くものにはさらなる受難を。雄英に在籍する以上、何度でも聞かされるよ。これぞPlus Ultra!(更に向こうへ) 予選通過一位の緑谷出久くん!! 持ちP 1000万!!」

 

 見た目で判断する気はないけど、狙ってみようかなぁ? 

 

 本番の制限時間は15分。振り当てられたPの合計が騎馬のPとなり、騎手はそのP数が書かれた“ハチマキ”を装着。終了までにハチマキを奪い合い、保持Pを競う。ハチマキはマジックテープ式で取りやすくなっている。

 何より重要なのは、ハチマキを取られても、また、騎馬が崩れてもアウトにはならない。つまり、42名からなる騎馬10~12組がずっとフィールドにいるってことだ。

 

「“個性”発動アリの残虐ファイト! でも……あくまで騎馬戦!! 悪質な崩し目的での攻撃などはレッドカード! 一発退場とします! それじゃこれより15分! チーム決めの交渉タイム、スタートよ!」

「15分!!?」

 

 あ、そんだけしか時間くれないの!? えっと、まずはシンソー君だろ?!

 

「シンソー君、今回は組もう!」

「あぁ。俺の騎馬になってもらいたいって思ってたところだ」

「騎手になる気マンマンかよ」

 

 あんまり自然に言うもんだから、笑ってしまった。

 

「じゃあ、はぐれた奴を見繕いに行こう」

「……なるほど」

 

 シンソー君の“個性”は「洗脳」。もうここから、チーム決めから勝負は始まっているんだ。

 

「あの、すみません。俺たちと組みませんか? 俺たち普通科は二人だけで……。是非君の協力が欲しいんだ。俺はC組の吐移」

「俺は、A組の尾白だ」

「尾白、な。俺は心操だ。よろしく」

「よろs……」

 

 本当なら、この種目もシンソー君は一人で切り抜けられるはずなんだ。でも、俺を洗脳することなく、同じ立場の人間として扱ってくれる。その期待に応えなきゃな。

 

「シンソー君、次はあの人とかどう? 多分、B組の人だよ」

 

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