傷吐き   作:めもちょう

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十九話

 二回戦第四試合。切島 VS 爆豪。

 俺の友達同士の戦い。バクゴー君の爆破が切島くんには割と効いていないらしい。殴り合いで傷つくのはバクゴー君ばかり。硬化って、シンプルに強いんだな。

 

『切島の猛攻になかなか手が出せない爆豪!!』

 

 諦めないでバクゴー君。勝って、次の常闇くんを倒して! 倒してもらわないと溜飲が下らない!

 切島くんの速攻にバクゴー君は避けるか、受け流すしかない。

 

「これは、爆豪がやられるかもな」

「どうだろう。もしかしたら今体温めていて、爆破の威力を上げようとしているのかもしれない」

 

 汗をかけばかくほど強くなるバクゴー君に勝つには、短期戦しかない。だから切島くんは攻め続けているんだ。って!?

 

『ああー!!』

 

 切島くんがよろめいた!

 

『効いた!?』

「そうか! 切島くんの“個性”は力むことで発動なのか。なら、いつかそれが緩む時だってある!」

 

 バクゴー君は爆破が効くようになった切島くんに連続爆撃を食らわせる。

 

「死ねぇ!!!」

 

 トドメのでかい爆破で、切島くんが倒れた。

 

『爆豪えげつない絨毯爆撃で三回戦進出!! これでベスト4が出揃った!!』

 

 よし、これでバクゴー君が常闇くんを倒してくれるな!

 

 準決勝第一試合。飯田 VS 轟。

 飯田君もすごい速さで轟くんに迫り、重く早い蹴りを入れた。そのまま捕まえて場外に出そうとしたけど、足の排気筒が凍らされ、動きが止まったその一瞬で氷漬けにされた。炎を使うことなく、轟くんが勝った。なんてスピーディな頭脳戦なんだろうか。俺が轟くんと戦ったら、瀬呂くんみたいに氷漬けにされて最短で終わるんだろうけど。瀬呂くんみたいに一矢報いることも出来なさそう。どんまーい。

 

「次は爆豪対常闇だな。やっぱり自分に勝った常闇を応援か?」

「バクゴー君応援」

「そうなのか」

 

 次の試合はステージの氷が撤去されてから。少し間があるから、シンソー君に寄りかかったすっごいだらけた格好で愚痴る。

 

「俺、常闇くん嫌い」

「……珍しい」

「だってさー、緑谷くんに影響されたか知らないけど、俺に“全力出せ”って煩かったんだよ。出してるっつーの! バッカじゃない? 自己回復しか能がないんですー」

 

 じゃなきゃ死ぬぞ、常闇くん。

 

「あいつの言葉は、俺には安く聞こえたね」

 

 救おうって意思はまるで感じなかった。ただ、それっぽいことを言いながら戦いたいだけだった。真似するなら、ヒーロー精神まで真似しろってんだ。フンッ!

 

「……ん?」

 

 なんか、C組の席が静かだ。不安になってふり向けば、皆が俺を見ていた。

 

「えっ……?」

「吐移が、珍しいな」

「あんまり愚痴言ってるところ、見たことなかった」

「あ、あ……」

 

 や、やだ……これで嫌われるなんて……!

 

「やっぱり吐移も人の子だー」

「安心!」

「へ?」

「何ビビってんだ、吐移」

「し、シンソー君」

「皆、お前があまり不満を言わない奴だから、裏でめっちゃ言ってる奴なんじゃないかって、もしくは超人じゃないかって思ってたんだよ」

 

 ぐっ! 裏でめっちゃ言ってる。まさにその通りだ。

 

「だから、思いっきり嫌いって言ってて、ちょっと安心したんだよ」

「……まぁ、常闇くんには面と向かって言える」

「マジか」

 

 C組の皆に不満がないと言ったら、体育祭前のことがあったから嘘になる。でも言わなかったのは、俺が勝つ為だ。

 雄英体育祭は仲良しこよしする場所じゃない。プロへアピールする場。自分が目立つ為に周りを地味にする必要があった。……それが、皆に不安を与えていたって話!?

 

「み、皆!」

 

 俺はたまらず立ち上がる。

 

「お、俺、別に皆に不満が無いとは言わないけど、それ、口に出すほどじゃないってだけだから!! 直して欲しいって思ったらちゃんと言うから! だから、心配しないで! 俺はC組の皆が好きだよ!」

 

 ごく自然に嘘を織り交ぜながら、早口で捲し立てたそれ。焦っていたから、実はあんまり皆の顔が見えてなかった。だから、畳くんの吹き出した音で、皆がニヤニヤしていることにやっと気が付いた。

 

「めっちゃ必死じゃーん、どしたー?」

「ありがとー吐移くん、私も好きだよー」

「不満あってくれて逆に安心だわ」

「ちゃんと私たちのことも見てくれてるんだね」

「お前こそ安心しろ! 皆お前のこと好きだぜ!」

 

 そして告げられる好意。ああ、すっごい恥ずかしい。

 

「吐移くん!」

「記見さん……」

「大好きに決まってんじゃん! 大丈夫だよ!」

「……うん!」

 

 そして、すごく嬉しかった。となりのB組、D組の生暖かい視線は、この際無視だ。

 

 

 準決勝第二試合。常闇 VS 爆豪。

 常闇くんの黒影はバクゴー君の爆破の前に防戦一方だ。

 

「なんで攻めきれない。あの影、大きく出来ないのか」

 

 シンソー君の言いたいことは分かる。でも、出来ないんだそれは。

 

「常闇くんの“個性”は影だ。あの時詳しく教えてくれなかったけど、光に弱いと思うよ。だから、爆破の際に出る光が、一々影を弱らせてる」

 

 俺が勝てなかったのは、俺に光を出せる手段がなかったから。懐に入り込ませないところを見ると、本体を叩けばいけそうなのは、戦う前に思った通りなんだろう。

 

「全力、か」

 

 懐に入ったところで黒いキューブが使えたら。ダメだ。そんなこと、考えちゃダメだ。使ってしまうかもしれないだろ。考えることすら、OUTだ。

 爆破で浮いたバクゴー君はそれを捕まえようとした黒影を弱爆破で躱し、更には裏を取った。そして、閃光を繰り出した!

 

「まぶしっ!」

 

 つまり、バクゴー君は黒影の仕組みを暴いたってことか!? 

 ステージを埋める煙幕が晴れていくと、見えたのは、右手で弱爆破を起こし、絶えず光を発し続けるバクゴー君と、そんな彼に馬乗りにされ、嘴を取り押さえられた常闇くん、小さくなった黒影だった。

 

「ありがとう、バクゴー君」

「常闇くん降参! バクゴー君の勝利!!」

『よって決勝は、轟対爆豪に決定だあ!!!』

「常闇の弱点、吐移の解説通りじゃないか」

「俺は勝てなかったけどね。だから、バクゴー君が勝ってくれて、スッキリしたよ」

「そうか」

 

 決勝まではまた時間が取られるらしい。「そういえば」と、シンソー君が話を続けてきた。

 

「常闇と試合が終わってから、何か話をしてたが、何を?」

「……“個性”の話と応援してるって言っただけ。まあ、内心負けちゃえとは思ってたけど」

 

 ……嫌なことを思い出した。常闇くんのあの口ぶりは、黒いキューブを使ったところを見たと言っているようなものだった。実際に見た訳じゃないだろうけど、消去法で疑われたんだ。

 

 ロボ・インフェルノの時。俺がチャンスだと思って飛び込んだタイミングが、今の俺にピンチを与えている。二位なんだもん。俺しかいないよな。クソが。自分から警戒レベルを上げるような真似をしちまった。……もしかしたら、あのロボ自体にカメラがあって、もう既に教師陣にはバレていたら? 考えるだけで、血の気が引く。あ、ああ。こ、この疑惑を、いや、ヒーロー達の警戒を緩めさせる為には、シンソー君達に見せてしまったこの()()()()()()()()()()()()()()()()()には、何か大きな貢献をしなければいけない……。それも、“個性”関係で。

 俺の個性に、進化の余地はあるか。

 

「そろそろ決勝始まるぞ。」

 

 声をかけられてハッとする。

 

「大注目だね」

 

 今の笑顔は、下手だったな。

 

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