せっかく救われた命だ。
生まれ変わるチャンスを得た命だ。
これを無駄にする選択肢はなかった。
証人保護プログラムを受けることになってから、俺と俺の周りの変化は目まぐるしかった。別人になる為に色々、主にブラウンさんの子供になるまでの筋書きを考えたり、顔を変えたりするのが大変だった。
言葉の壁も高かった。いつまでもチェインさんの世話にはなれないから。一年遅れでヒーロー科のある学校に通ったのも、その言葉の壁を少しでも超えておくため。
学校自体も大変だったな。実践主義の学校だったから、週2で校外学習だったんだよ。ヴィランと戦ったり、救助活動で傷ついたクラスメートや一般市民たちに“個性”を活用して治したりして、沢山“個性”を鍛えられる機会があったのはとても良かった。
そこを卒業して、指名してくれたヒーローのサイドキックになってからも、俺は陰ながら活躍していった。
成長した“個性”で、正面10m以内にいる人間の傷を黒いキューブに変換出来るようになった。俺の肺活量に依存されるみたいだから、これからも成長するに違いない。
そして俺は、この“個性”と屈強になった肉体を引っ提げて、日本へ降り立った。目的は「引退したリカバリーガールの後釜として、雄英高校の看護教諭に就任する為」。俺は日本で、アコライトヒーロー・ブレスヒーラーとして活動するんだ。
飛行機から出て、懐かしい空気を吸う。日本に帰ってきた。ここまで来るのに、7年かかってしまった。
さて彼らに会いに行こう。
ブレスヒーラー及び、ショーン・ブラウンとして始めにやるべきことは、勘の良い親友たちを仲間に引き入れること。
「吐移正」だった頃の失敗は、全て一人で行おうとして引き起こったものだった。隠し事するならボロが出てもいいように、仲間を何人か作ってフォローしてもらうのが、長く秘密を隠し通す秘訣なのだと考えた。
今回はシンソー君と記見さん。そしてバクゴー君だ。特にバクゴー君は、場所とかタイミングとか関係なく炙り出そうとするはずだから、真っ先に伝えなきゃいけないな。
張り切りすぎて、引き継ぎの説明とかはもう少し先なのに、早めに日本に帰ってきてしまった。
家もあちらが用意してくれるものがあるらしいから(外国人だからかな?)それを活用したいが、まだ用意が完璧じゃないらしい。やっぱり早すぎたな。
久々の日本。変わった日本を見ていくのも悪くないだろう。そう気持ちを切り替えて、空港から直で来たホテルから街中に出た。
まだ陽が高い。今の俺のトレードマークのサングラスが大いに役立ってくれた。
喉が渇いたな。いい感じのカフェにでも入ろうかな。今の俺の風貌じゃ、ファストフード店にいた方が似合うんだろうけど、バクゴー君にいつか言われたことを未だに思い出して、ファストフードに手が出ないんだよな。
入ったカフェはあちらでも馴染みのあるチェーン店。甘めのカフェオレをリクエストして、何気なく店内を見渡して、ずっと見たかった色が見えた。
あの頃より高くなった背丈。がっしりした体。そういう変化もあるけれど、特徴的な爆破ヘアー。薄い金のようなクリームのような髪色。鋭い三白眼。変わらない、君を君たらしめる要素があった。
なんて幸運なんだろう。生まれ変わったから、運気も変わったのかな?
リクエストしたカフェオレが出来上がった。お金を払って彼の元へ向かう。
日本に帰ってきたら、真っ先に会いたかったんだ。
「ここ、席空いてますか?」
親友。
本を読んでいた君は、声をかけた俺を見上げて、めちゃめちゃ怪訝そうな顔をした。君でそうなら、他の人たちも分からないかもな。自信がついたよ、ありがとう。
久しぶり、バクゴー君。
最終話までご覧いただき、誠にありがとうございました。ここから先の物語は皆様の想像で是非補完なさってください。
……読み上げちゃん機能の条件を満たしたいので、この作品をお気に召してくださいましたら、ご評価いただけると幸いです。(乞食)
(追記)久しぶりに来ましたら、ご評価を頂いたことで読み上げちゃん機能の条件を満たしておりました! ありがとうございました!!!