傷吐き   作:めもちょう

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 目次の雰囲気的につけられなかったサブタイトル、「もしもあの時吐移くんがブチギレてたら」、です。先に投稿していた『4ヶ月の』の展開的に書けなかったのですが、我慢出来ずにIFとして書くことにしました!
 話は雄英体育祭最終種目・二回戦・対常闇戦から。前半はほぼコピペです。常闇くん推しの方は閲覧注意になります。
 吐移くんは自身の“個性”がまだ他者の傷を回復(回収)出来る事に気がついていない段階です。
 では、二人共性格が悪いバージョンを、どうぞ。


十八話 IF
IF 1


「お前……全力では無いな?」

「……なに?」

 

 はぁ? 何知ったふうな口きいてくんの? 強いからって調子乗んなよ。

 目の前に立つのは俺の対戦相手、常闇 踏影くん。彼の“個性”は全方位中距離防御、攻撃ができる影。一回戦での勝ち方は、対戦相手のA組、八百万 百さんに反撃の隙を与えず、場外へ押し出し。つまり、あの影には実体がある。ならあの影と本体の体力が、いや、いらん期待はしないでおこう。

 

『START!』

 

 始まりのコールが聞こえたと思ったら、常闇くんはいきなり影を俺に向けてきた。肉体同士でぶつかりあおうぜぇ!?

 そんな気持ち虚しく、俺は影をいなすことしか出来ない。本体は高みの見物ってか!?

 

「予選。お前は第一関門を二位で通過したな。爆豪に続いてロボの上を飛んで超えたが、その時、上空から足を崩されていたロボを何体か見かけた。あれは、お前がやったんだろう?」

「……知りませんけど?」

「とぼけるか」

「知らないもんは知らないし、悲しいことに、これが俺の全力だっての!」

 

 暴いた気になって余裕ぶっこきやがって! そのツラに拳を食らわせてやる!

 

「!」

 

 躱した影がまた俺に襲いかかってくるのを、またいなす。

 

「躱すか」

 

 ったりめーだ! C組の皆と約束してんだよ! 絶対に一発食らわせるってな!

 気合を入れ直して、今度こそ常闇くんに飛びかかる。

 

「くっ!」

「ライトが欲しいよ、まったく!」

「何っ!?」

 

 ひるんだな!? 顎にアッパーをくらえ! で、膝も腹にくらえ!!

 

「ぐうっ!」

「影なら光をぶち込めばいいのに! 持ってない!!」

 

 対応策を思いついてるのに実行出来ない、俺の悔しさをくらえ!!

 もう一撃入れようとした拳は、しかしよけられ、ついでと言わんばかりに黒影に足元を掬われた。

 

「のぉっ!?」

「俺の弱点に気づいたようだが、残念だったな」

 

 くっそ! 足掴まれた! これじゃ一回戦で俺が芦戸さんにしたのと同じじゃ、いや、待てお前っ!? なんで俺を逆さ吊りにしやがるんだ!?

 

「離せぇ!!」

「全力を出さない者が立てるほど、この大会は甘くない」

「ああ゛っ!?」

 

 黒影で俺の片足を掴んで逆さ吊りにしてきやがった常闇くんが、クッソ生意気なことを言い出しやがった。さっさと場外に放り投げりゃいいものを、そんな問答の為に俺を抵抗できない逆さ吊りにしてるってのか? 性格悪いなお前!

 

「言っただろうがよ! 俺は全力出してここに立ってる! 現に君と戦っているこれ、二回戦目じゃんか!」

 

 一回戦目、俺はこの自己回復と拳と心理戦で芦戸さんに勝った。あれでプロには俺が“自己回復の個性持ちの生徒”って印象づけられてるはず。それを崩されてたまるか!!

 

「一回戦目はそれを出すまでもなく勝利できた。それだけだろう。だが俺にはそうはいかないぞ」

「しつこいなぁ……!」

「見せてみろ。お前の全てを」

 

 そんなこと言われて、出すとでも思ってんのか。カッコいいとでも思ってんのか。

 

「全力出してるって、さっきから言ってるだろ! なんだよお前っ! 俺はもうなんにも出来ないんだから、このまま放り出せばいいだろ悪趣味!」

「出来るだろう? ロボに対してぶつけた“個性”を、俺にもぶつければいい」

 

 ふざけんな、ふざけんな! 会場もなんかおかしいぞって雰囲気になってきてる! 実況のマイク先生も『もうやめてあげて!』って言ってんだろ! あ~も~、あったま来た! 精神的にも物理的にもこっちは頭に血がのぼってんだよ! いい加減下ろしやがれ!!

 

「何をぶつけるってェ? 俺は全力をお前にぶつけて、まるで歯が立たなかっただけですけどォ!?」

「いつまで隠しているつもりだ。そんなことでお前、ヒーローになれるとでも思っているのか」

「生憎、俺はヒーローよりも救急救命士とか、そっちを目指してるもんでね!! ヒーローにも勿論憧れてるけど!!」

「ならば尚更だ」

 

 降ろしてくれねーなら、反動つけて降りてやる。イラついてるから、その上から目線な、説教臭い顔をぶん殴ってやる!

 

「力を隠しておいて全力とは、そんなことで民衆がお前を認めるものか」

 

 ……なあ。誰が、民衆に、認めてもらおうなんて言った?

 

 どうして、『“個性”を隠す、使用しない』ことが悪だとされないといけない?

 

 なんで、全てをひけらかさないといけない? そうじゃないと認められない?

 

 それで、一体、誰が、迷惑した?

 

 

 逆さに見る常闇くんの顔が、まるで自分が正義だと言わんばかりに自信たっぷりで、不愉快だった。

 

「……っう」

「は……?」

 

『あ、あれ? もしかして逆さ吊りの吐移、泣いちゃってない?』

 

 勿論、嘘泣きだよ。

 

 ヒーロー科が普通科を泣かせてるっていう構図は、中々ショッキングだろ? プロも世間も注目しているこの会場で、テレビ中継もされてるこの状況で、圧倒的な力の差で普通科を弄ぶ姿なんて、ははっ、酷いもんだよなぁ!!

 

「認めるってなんだよぉ! もうやめてくれよぉ! いい加減にしてよ! 俺には、君が期待するような力なんて、ないんだからぁ!」

「そ、そんなはずは……。俺は確かにっ」

「俺がそれを使ったって場面、見たわけじゃねぇんだろ!? 憶測で俺を晒し者にしないでよぉ!」

 

 「ひどいよぉ!」なんて、情けなく喚いていれば、こんなヴィラン顔でも世間は俺に同情する。加えてはっきり“晒し者”とマイナスなことを言えば、常闇くんの評判は落ちる。さぁさぁ焦りやがれ、人気商売を目指す人間!! イメージダウンは痛手だぜぇ!?

 

「力の差は歴然だろ!? こんな逆さ吊りにまでされるくらい、俺にはもう打つ手なしだよ! もう、俺を場外に放り出してくれよ!!」

 

 一回戦最終試合のような、麗日さんを警戒するが故に試合内容が恐ろしくなったバクゴー君みたいにはさせない。はっきりと、世間に“いじめっ子”の印象を植え付けてやる。これで放りだしても、逆さ吊りのままでいても、君の印象は悪くなるばかりだ。相澤先生にだってフォローさせないさ。あっははは!!!

 さあ、どうする? 勘違い野郎。

 

「……すまなかった」

 

 俺から目を逸らした常闇くんは、俺をゆっくりステージの上に下ろしながら、そう謝ってきた。チッ、そうきたか。そっちに素直になられたら、こっちも引くしかねぇじゃねーか。俺はメンヘラってキャラでやってねーんだよ。

 ゆっくり下ろされた場所は、白線の内側。まだ俺に戦わせる気か? そんな甲斐性はいらねぇよ。

 

「悪かった。確証もないのに、公衆の面前で晒しあげてしまって」

「……恥かかせたこと、許さないから」

「それは、当然だな。……本当にすまなかった」

「……こっちこそ、君を悪者にして、ごめん。言った内容は許さないけど、そこは謝っとく。ごめんね」

「いや……」

 

 君が謝るなら、こっちだって謝っとかないとな。喧嘩両成敗的態度。本当はこれ俺嫌いなんだけど、世間はそう思っちゃくれない。でもこれで、俺の“隠し事をしている”っていうのは常闇くんのただの言いがかりとして見た人は処理するだろう。俺側は何も失ってない。やってやったぜ。

 

「打つ手なしだって言ったのは本当だ。だからもう、俺は潔く諦めるよ。次の試合、頑張ってね」

 

 これ以上いたずらに時間が経過するのも悪いからと、俺は自分から白線を超えた。

 

「吐移くん、場外! 常闇くん、三回戦進出!!」

 

「……いいのか。それでいいのか、吐移」

「まだ言うの? 俺は、まだ君の足元にも及ばないような、弱い奴なの」

 

 そんな奴をお前は、晒し者にしたんだぜ?

 

『後味がちょっと悪い試合になっちまったな! だが、ひと悶着があったとはいえ、二人共全力で戦った! その健闘を讃えて、クラップ ユア ハンズ!』

 

 マイク先生が促したとしても、俺らに贈られる拍手はまばらでしかなかった。

 

 

 選手が入退場する為の通路。足が完全に影に入ってから、明るい外に振り返って、対面の通路の影に消えていく常闇くんの後ろ姿を、嗤う。

 

「気持ちよく勝たせてなんて、やんねーよ」

 

 緑谷くんと同じことをしたかったのかもしれないな。だけど俺は、轟くんとは違うんだよ。

 せいぜい悩め。心を救う気のない贋作ヒーロー。

 




 吐移くんは悪い性格してますからね! あの時こうなっててもおかしくない。しかしこの展開の難点は、常闇くんの性格もちょっと悪くないといけないことですね。彼も正々堂々と戦う人だと思うので、緑谷くんの影響を受けてカッコつけたとしても、晒し者にはしないと思います。

 では次回、「ブチブチにブチギレた吐移くん編」、お楽しみに。
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