傷吐き   作:めもちょう

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六話

 全員の自己紹介が終われば、教科書が配られて、これからの学校生活の心持ち? を先生から演説された。まぁ、雄英高校は進学校でもあるから、学業においても俺たち生徒を苦難に陥れる。這い上がってこい。とのこと。担任の越壁先生は演説を終えるとさっさと帰っていった。あとはお前ら人脈広げてろってことかな。

 今日は午前中だけだったけど、明日からはいきなり7時間授業が始まるってことだ。あぁ苦難。土曜日も授業あるってまぁまぁやばいよ。ヒーロー科みたいなヒーロー基礎学の実習があるわけでもなし、ヒーロー科よりも頭良くなりそう。法律関係の授業も普通とヒーロー関係の二種類あって楽しそう。頑張ろう。

 

 時間割の確認も教科書への名前の書き込みも終わったし、そろそろ動き出そうか。一つのノートとシャーペンを持って、俺は廊下側の席の人のもとへ向かった。

 俺のキャラは化けの皮が剥がれやすい、安いメッキの陽気キャラ。友達作りが下手でも許される土壌は、整っている。

 

「こんにちは! 友達になりに来ました!」

「お! 吐移か! 何持ってんの?」

「あ、これはね……」

「友達ノート? かわいいの持ってるね」

「小学生の女の子かよ」

 

 吐移は幼女だった……? って言われたから、小学生は幼児じゃなくて児童だと思うって返しておいた。

 この“友達ノート”は、施設の子たちからプレゼントされたものだ。「高校ではたくさん友達作ってね」って、優しいあの子たちから。あんまりお金もなければ特に女の子たちからは好かれてもなかったはずなんだけど、優しい言葉と共にこのノートを贈られた。早速使うしかない!

 

「俺、名前覚えるの苦手だからさ、こういうの使おうと思って。あ、これ自体はプレゼントされた奴で、こんなにかわいいのは俺の趣味ってわけじゃないからな?」

「誰からのプレゼントなの?」

「施設の子たち、皆から。ボロボロになるまで使うのが、恩返しだよな」

「なるほどなぁ」

 

 今日は3人、ノート3枚分が埋まるぞ。順番を入れ替えられるリングノート式だけど、せっかくだし番号順に友達になっていこう。

 シートを3枚取り出して、俺は取材を始めようとする。

 

「え、そういうのって、カードを自分で書かせるものじゃないの?」

「え、そうなの?」

 

 知らなかった。でもそれって、覚えられんの?

 

「俺は一人ひとりの顔と名前覚えたいし、俺のやり方でさせて? いつ皆の分埋まるか、分からないけどさ」

「そういうことなら……。皆聞いたかー? 吐移、時間かけて友達になりに行くから、心の準備しとけよー」

 

 これから取材しようとした男子が、皆にそう呼びかけてくれた。クラスの皆聞いてくれたし、ありがたい。ああ、こんなふうに呼びかけられるメンタルも、声の大きさも欲しい。手に入れたい。

 自己紹介の時に真っ先に「友達になろう」と言ってくれた女の子が「私が一番になるぅ!」と言いながら、こっちに来てくれた。まだ教科書への名前の書き込みが終わってなかったから遠慮してたけど、いいのかな。じゃあ、今日は4人へ取材かな。友人No.1は、記見さんだ。箇条書きで記していこう。

 

名前 :記見 瞳(きみ ひとみ)

誕生日:7/23

特技 :人の顔を一目で覚えること(名前を覚えるわけではない)

趣味 :図鑑を見ること

個性 :記憶見 『生物以外の物質から記憶を見ることが出来る』

 

 深い赤の長い髪に、気だるげな瞳。でも輝きに満ちていて、綺麗だ。似顔絵は……ブサイクに描いたら失礼だから止めておこう。

 

「じゃんじゃん聞いてくよー」

 

 次こそ、番号順だ。

 

「お、来い!」

 

名前 :有塚 健吾(ありづか けんご)

誕生日:12/4

特技 :紙を刃物を使わずに綺麗に切ること。

趣味 :アリ観察

個性 :蟻塚 『地上に出るタイプの蟻塚をどこからでも出現させることができる。アリはいない』

 

「“個性”おもろ」

「そ、そうか?」

「その蟻塚って、コンクリートの上ならコンクリートで作られるの?」

「そんな感じ」

「形は好きなように?」

「集中すれば割とそうだぜ。大きいのを作るときは時間かかるな」

「そうなんだ」

 

 有塚くんは黒髪ツーブロックの強面イケメンだ。いいなぁ。

 

「次は私?」

「そうだね、聞いてくよ」

「私は雨恋」

「え? 出席番号、雨恋さんの方が先?」

「一番は秋野だよ」

「なんで席交換してんの……」

 

名前 :雨恋 祷(あまこい いのり)

誕生日:11/11

特技 :日焼け止めクリームを素早く塗れる

趣味 :神社参り

個性 :雨乞い 『局地的に小雨を降らせることが出来る』

 

「君は神様なの?」

「あんたはナンパ師なの?」

「いや、水不足に悩むところで降らせたら、それはもう神じゃん」

「……半径6メートルに、小雨じゃあね」

「それなら鍛えようよ。雄英は、それが許されているから」

「ありがとう」

 

 普通科でも場所を選べば個性の訓練は出来る。だから普通科に希望を持ってやって来る生徒がいるんだ。

 雨恋さんは紺色長髪の日本人的正統派美人だ。このクラス、美人しかいないの? ヴィラン顔がすっげぇコンプレックスになりそう。その前にナンパ師ってどういうこと?

 

「次は俺だな。真の出席番号一番は俺だ!」

「席順に座っててよ……」

 

 まあいいや。彼は愛嬌あるけれど、イケメンじゃないぞ!

 

名前 :秋野 修吾(あきの しゅうご)

誕生日:10/13

特技 :火起こし、焼き芋を上手に焼くこと

趣味 :食べること

個性 :溜めこみ 『80kgまでの全ての物質を体内の特別な器官に溜め込むことが出来る』

 

「すっげぇ……いつか焼き芋たべさせてね」

「いや“個性”の話じゃないんかーい」

「ナイスツッコミ!」

 

 この明るさ、参考にしよう。それまでは分けてもらおうかな。

 

 今日はここまでにしよう。明日は休み時間に一人づつ、時間あるときに聞いていこう。

 

「時間、俺にくれてありがとう。記見さん、有塚くん、雨恋さん、秋野くんね」

 

 一人ひとり顔を見ながら名前を言う。これでこの四人は覚えたぞ。後ろの席の人に「明日はよろしくね」と言ってから、ノートを閉じて自分の席に戻る。シートにはまだまだ空欄が多いけれど、これから知っていけばいい。

 今日だけで4人の友達を知れた。このクラスは俺を入れても全員で20人。すぐに皆と友達になれるな!

 

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