傷吐き   作:めもちょう

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八話

 月曜日。国語の発表は声の小さい俺の代わりに、畳くんと記見さんがしてくれた。いつか俺も声を大きくして、アドリブきかせて話したい。発声練習頑張ろう。

 

「ありがとう2人とも」

「ううん、得意な人や出来る人がそれぞれの役割を担えばいいよ。吐移くんが正解だったしね」

「今回はただのひらめきだよ」

 

 ミスリードの多い問題だったらしい。落ちていた髪の毛も長かったから、そこから長髪のヴィランが選ばれやすかった。選択肢は“個性”まで分かっているから、5グループ中2グループは正解に辿り着いていた。初回はこんなもんだろうと、先生は答えを発表して授業は終わった。今は昼休憩時間だ。

 

「へー、吐移って弁当派だったんだ。食堂のメニュー、安いぜ?」

「それより安上がりだよ。俺、貧乏人だからさ」

 

 朝ごはんと一緒に作っているから苦でもない。作るメニューは野菜炒めと玉子焼き、そぼろは瓶の、ご飯は冷凍をレンチンだ。バランス悪くないから、毎日これで来ている。

 

「強くなりてェなら、肉食えよ!」

「買えればね」

 

 100g税込180円のステーキ肉が俺を魅了して離さない。大体350gカットだから600円超えが当たり前。何食分? 贅沢品だ。細切れとかもっと安いやつあるし、そっち食べてるけど。

 

「奢ろうか?」

「施しは受けぬ! 足りてるよ」

 

 メニューは少ないけれど、量はあるからね。今まで喋っていなかったシンソー君も一緒に3人で食事を買いに行った代わりに、俺は席取りをかって出た。日の当たらない方の窓際なんてどうだろう。

 おっし。運良く、取れ、た……。

 

「あの、人……」

 

 少し離れたところに、見覚えのある姿があった。

 クリーム色にも見える、爆発を表しているかのようなトゲトゲ頭に、仏頂面の三白眼。俺いったい、どこで彼を? ……あ! 思い出した! あの人、俺を助けてくれた人だ!!

 

「吐移?」

「あ……」

 

 いつのまにか3人は戻ってきてた。

 

「誰か知り合い見つけたの?」

「い、いや……。命の恩人を発見しちゃってさ」

「えっ!?」

「誰々!?」

「命の恩人って、何があったんだよ」

 

 俺があの人だよ、と彼を指差す。すると記見さんが嫌な顔して、「ホントに~?」と、顔を歪めた。

 

「あのいじめっ子フェイスの人? 信じられないけど」

「でもそうなの」

「あいつって確か、1年前くらいにヘドロヴィランに捕まってオールマイトに助けられた奴じゃないか?」

「そうなんだ?」

 

 記見さんと畳くんの評価はちょっと低めだな。でも、せっかく奇跡の再会したんだし、友達になりたいなぁ。

 

「彼、何が好きなんだろ」

「えー……」

「お礼、まだだったとかか?」

「言えなかったんだよね。お菓子持って明日行ってこよっと」

「吐移、あいつは爆豪っていうんだ。A組だぜ」

「畳くんよく知ってるね、ありがとう」

「有名人だからな、あいつ」

「へ~」

 

 なんか畳くん、爆豪くんのこと、好きじゃ無さそうだね?

 

 

 

 お菓子詰め合わせセット。バイト先のスーパーで贈答品として売られているものを贈ることにした。これ以上は勘弁してください。うちの安いステーキ肉が4枚買えちゃうから。

 

「これで、喜んでくれるといいんだけどな……」

 

 き、気持ちが込もってるから行けるよね!

 

 

 

 火曜日。ドキドキだ。緊張しすぎで語彙力溶けてる。あー緊張する。でも大丈夫! 昨日笑顔の練習たんまりやったし、さっきトイレの鏡でも確認した。一番不細工だったけど、無表情よりずっとマシのはず!

 

「……よし!」

 

 始業時間より15分前。きっと来てるはずだ。

 

「行くぞ!」

「ガンバレー」

「いってらっしゃーい」

 

 C組の皆に励まされながら、俺は行く。

 A組の教室の前に立つ。窓からちらりと覗いた感じ、彼は、爆豪くんは登校していた。よし!

 

「失礼しまーす」

 

 A組の人は突然のことにびっくりしてるけど、自覚が無いだけで実はテンパってんのかもな。気にしてられるほどの余裕が無い。ただまっすぐ彼を、前から二番目の席の彼を捉える。

 

「あ゛ん?」

 

 この態度。あの時の人で間違いない。俺は精一杯笑う。

 

「爆豪くん、あの時助けてくれて、ありがとうございました! これ、お礼の品です!」

 

 カサリと、紙袋を鳴らしながら持ち上げて、席に着いている爆豪くんの前に差し出す。爆豪君は俺が誰なのか思い出している最中のようで、口を小さく開けて呆けている。「ショッピングモールの……」と付け加えようとして、爆豪くんが更に口を開いたからやめた。

 

「キメェ」

「なんでっ!?」

 

 やっぱりこの人、根は酷いみたいだぞ!? どうしよう! で、でも、助けてくれたことは事実だしな……。彼よりも強面のヒーローだって世の中には居るわけだし、俺もヴィラン顔。なら、友達になっても不自然じゃないはずだよな!

 

「とりあえずこれ、受け取ってくれ! 気持ちだからさ!」

 

 お菓子を押し付けて、俺は帰ることにした。「オイ!」と呼ばれたけど、無視させてもらう。返されちゃ意味ないからね。こんなブサイクから貰っても嬉しくないだろうけど、お菓子は美味しいから!

 

「ありがとうございました!」

 

 最後に振り返ってそう言うと、爆豪くんは席から立ち上がっていて、なんとも微妙な顔して俺を見てた。後でもう一度会いに行こうかな。そうしてもいい気がした。

 

 

 

「というわけでゴメン! 今日から俺、昼休みは爆豪くんのところに行ってきます!」

「そんなぁ」

「やだやだぁ」

「記見はいいとして、畳、お前はかなりキツイよ」

 

 記見さんより女の子らしく体の前に腕を持ってきてぶりっ子する畳くん。確かにきっつい。面白くて好きだけど。

 3時間目の休み時間、俺は朝のことを報告すると同時に、C組で特に仲良くしてくれてる3人にそう言った。シンソー君でさえあまりいい顔をしなかった。まあ想定済みだ。

 

「C組の皆とも、そりゃ勿論もっと仲良くなりたい。でも、彼が居なかったら今、俺はここに居ないんだよ!」

「前も命の恩人って言ってたな。あいつとの間にお前、何があったんだ?」

「あ、話してなかったね、そういえば」

 

 正気を取り戻した畳くんが指摘してくれた事で説明を放り出していた事を思い出した。時間もないし食事前だし、ちょっと軽めな感じで説明しようかな。

 

「俺が虐められてたのは知ってるでしょ? で、春休み。俺ナイフで6発刺されて、多量出血で死にかけたんだよ」

「え……」

「それで、倒れてる俺を一番最初に見つけて、救急車を呼んでくれたのが、爆豪くんだったってわけ! 輸血がなければ俺は死んでいた。……助けてくれた人と同級で、同じ学校だなんて、奇跡だと思う。だから爆豪くんとも是非友達になりたいんだ。だから、お願い!」

 

 表現が軽めとはいえ真実を話せば、いくら俺の顔が強張っていたって許してくれるはずだ。現に3人は俺が爆豪くんにお菓子を持って行ったところを見ている。信じないってこともないはず。現に絶句してるし、これは勝ち試合だな。……騙すわけじゃないのに、なんで言い訳を考えて勝手に勝ち誇ってるんだろう、俺。

 

「はぁ……分かったよ。行けよ。他クラスと絡めるのも、その時間くらいだもんな」

「それなら放課後でも……」

「知り合い程度が放課後に会いに来ても困るだろ。それなら昼休みの方がまだマシだ」

「心操まで……」

 

 記見さん以外は俺の昼休みの計画を受け入れてくれた。これでいい。よし! 爆豪くんと友達になってやるぞ!

 

 意気揚々と弁当を持ち、食堂へ向かう。教室に居ないことはさっき確かめた。だからきっと、彼はそこにいる。

 入口から彼を探す。いた。カレーの所に並んでいた。丁度よく爆豪くんは受け取って、席に着こうとしていた。ついて行こう。

 あ! 俺運がいいな! 彼の正面には誰も座らないじゃん! 俺はごく自然に、流れるように席に着いた。

 

「あ゛? お前……」

「来ちゃいました」

 

 なんか睨まれてるけど、俺なんか、嫌われてんのかな?

 

「助けてくれた恩を縁だと思って、友達になりに来ました!」

 

 なら、好感度上げなきゃだな!

 

 

 

 今日の収穫は、爆豪くんの他に切島くん、上鳴くんとも仲良くなれたこと。思いつきで決まった計画名、「笑顔満点計画」の2つかな?

 

「Uuum……カッコよくはないなぁ?」

「そうですか?」

 

 放課後。俺はマイク先生と放送室で笑顔と発声の練習をしていた。貰ったプリント通りに練習してきた成果を見せて、直すべきところを直していただいた。最後にこの練習の名前を先生に伝えたら、「ま、吐移らしくていいんじゃないか!」と、褒めてない言葉をかけられた。どーせ俺にセンスはありませんよぉだ!

 

 

 

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