10月の第二土曜日から日本支部の地下にあるアリーナにて千冬さんの訓練が開始された。
橘さん曰く、ここのアリーナには国家代表や候補生の中でも国家代表に一番近い人たちが、たまに集まり厳しい訓練を行ったり後輩の育成論を会議しているようだ。全員が専用機を持っていて、国家代表の人は二次以降も近いと言われているらしい。橘さんからは「ご愁傷様」とありがたくないお言葉をいただいた。
打鉄を装着し、上位候補生との制限時間有りの一騎打ちで一太刀入れるまでは休憩なしだったり、さらには彼女たちと1vs2だったりと過酷なものだった。特に最近国家代表になった格闘型の『吉田香保里』さんには手も足も出せず、一方的な蹂躙に近いものがあった。それでも諦めず、何度も挑んではやられ、を繰り返した私は気を失っていた。
意識を取り戻した時、外を見るとすでに日が沈んでいた。治療室の先生によると4時間ほど寝ていたらしい。そこへ千冬さんが来て視聴覚室へと連れられていかれた。そこで今日の訓練の様子をDVDで見ながらのダメ出しとアドバイスを頂き、本日の訓練を終えた。
家に帰り自室にて千冬さんからのダメ出しとアドバイスを思い出してながらイメージトレーニングを行った。ただ上手くいきそうな気がするが、パズルのピースが上手く入らない様な気がしてモヤモヤが晴れないでいた。ただ答えが出ずに、意識を手放した。
翌日、千冬さんからのアドバイスを基に今日も訓練を開始した。しかし昨日のモヤモヤを解消できずに訓練は進んでいく。近接型の先輩と何戦かした時、バランスを崩した私に唐竹で追撃する相手の手を左手で受け止め、右手に持つ剣で相手を一閃した。その時パズルのピースがカチッとハマった様な気がした。
やっとまともに休憩をもらえた私は水分補給のため自動販売機に向かった。すると千冬さんが来た。
「最後の一撃は良かったぞ。それまではアドバイス通りだったが、キレがなかったからな」
「実は、昨日言われたアドバイスを基にイメージトレーニングをしたのですが、何かが足りない気がしていてずっと考えていました。試合中のバランスを崩した時にふと先週の剣道を思い出しました。一夏が私に攻撃させることなく攻撃してきたことを。その事を思い出して実際にやってみると、私の中で上手くハマってくれました。ただ自分としてはガンガン攻めたいんですけどね」
「ふっ、そうか。それにしてもパワータイプなら葵で良いが、カウンタータイプなら、あのやり方だと葵だと長くて重いかもな。片手剣と小太刀のどちらが好みだ?」
「そうですね、個人的には長さを調整できるビームサーベルみたいなのが理想かもしれませんが、片手剣の方が好きです。ラピッド・スイッチが使えたら二刀流もいいんですが」
「わかった。すぐには無理だろうが準備してみよう。あとそろそろ休憩が終わるぞ」
「えっ、しまった。ありがとうございます!」
私はスポーツドリンクを飲み干して訓練を再開した。
休憩後の訓練は、私が一撃を入れたことにより、左手に注意を向けさせて攻撃したりとフェイント合戦になってしまった。
最後に国家代表の吉田さんとシールドエネルギーを0にする決闘方式での試合となった。試合は吉田さんが終始優位に進めて、確実に私のシールドエネルギーを減らしていく。対して私の攻撃は擦りはするが、まともに入れることができず0.5割を削ったところで勝負がついた。
大の字で倒れてる私に吉田さんが近づいてきた。私は打鉄を解除してお礼を言おうと慌てて立とうとしたが、さっきの試合で体力を使い切ったらしく上手く立てなかった。大笑いの吉田さんに肩を借りて更衣室の椅子に座ると
「お前のガムシャラに向かってくる姿勢は好感が高かったぞ。私を倒せるくらいに強くなりなよ」
と言って吉田さんは頭を撫でてくれた。「じゃあな」と言いながら更衣室を後にする吉田さんにお礼をしてシャワー浴びた。頭では勝てないと分かっている。悔しいと思うこと自体が失礼だ。専用機だからとかそんなレベルじゃない。同じ打鉄でも勝てないだろう。私なんかより長く候補生でISに乗ってて、200時間ほどしか乗ってない私なんかより遥かに長く乗っている。経験も違う。でも、「悔しい」意外に言葉はない。今は負けても、いつか必ず勝つ。この気持ちを忘れずに心に刻んでおく。
いつか世界の頂点に立つために