異世界の航路に祝福を   作:サモアオランウータン

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ご都合主義な作戦の描写が含まれます

あと、メキシコで会った人だろ?


9.また、戻ってくる

──中央暦1638年3月23日早朝、クワ・トイネ政治会議場──

 

「何っ!?それは本当か!?」

 

朝早くから、議場に赴き本日の議題…対ロウリア戦についての防衛会議を行う為の資料を確認していたカナタに、情報局から"ロウリアがクワ・トイネに対して侵攻作戦を開始した"とロウリアに潜入していた密偵から連絡があったと伝えられたのだ。

 

「防衛会議の時間を前倒しにします!今すぐ幹部を集めて下さい!そして…サモアに対して軍事同盟に基づいた援軍の要請を!」

 

カナタが指示を飛ばすと、情報局の者がタブレットを操作し幹部達が持つそれぞれの端末に連絡を行った。

 

「無線機があって良かった…こんなにも早く密偵からの情報が伝わるのだから。」

 

サモアから提供された技術に感謝しながら、幹部が集合するまでカナタはそわそわと落ち着かない時間を過ごす事となった。

 

 

──同日午前7時頃、クワ・トイネ政治会議場──

 

「では、現状を確認します。」

 

円卓を囲む形でクワ・トイネ首脳部が勢揃いしている。その中に、一台の大型タブレットが置かれておりそこには指揮官が映し出されていた。

流石にサモアから来るのは時間がかかる為、こうしてテレビ電話を利用して参加する事となったのだ。

 

「ロウリア王国に潜入している密偵の話では、3月22日に現国王ハーク・ロウリア34世が我がクワ・トイネ公国、及びクイラ王国に対して侵攻作戦を指示したようです。調理師として潜入している密偵でしたので、深夜まで飲み食いしていた兵士達に食事を提供していたので報告が今朝になったようです。」

 

「ふむ…報告が遅れたのはいかんが、そのような理由があるのであれば仕方あるまい。怪しい行動をして感付かれて、捕縛されては報告も出来んからな。」

 

「間違いなく、陸軍はギムへ侵攻して来るでしょうな。海軍は…おそらくマイハークにやって来るでしょう。」

 

「マイハークはまだしも、ギムは守りにくいですな…エジェイ程の防衛設備はありません。」

 

『ではいっそ、ギムは放棄されては?』

 

唐突に飛び出した意見に皆、その言葉の主の方を見る。意見を出した者は画面の向こう…そう、指揮官だった。

そんな住民に、生まれ育った故郷を捨てろ、と言うような事は最終手段であり初手から使うような事ではない。

 

『以前、都市開発局の方に伺ったのですが…ギムは街の作りが古く、大通りすら自動車の通行が難しくなっているそうですね?』

 

「えぇ、道路拡張の為の立ち退きも多くの建物に対して行わなくてはならない為、難航していました。」

 

指揮官の言葉に都市開発局の幹部が答える。

 

『では、丁度いいではありませんか。住民を避難させ、敵を引き入れた後ギムを包囲、敵部隊を掃討しましょう。』

 

「むぅ…だが、しかし…」

 

『このまま戦闘になれば、住民が巻き込まれて多くの死者が出ます。その上、ようやく新兵器の扱いに慣れてきた兵士を消耗してしまう可能性すらあります。ギムの住民への補償を十分に行えば不満も少ないでしょう。…同盟国いえど、私の意見はあくまでも他国の意見です。最終判断はそちらに任せます。街も家も再び作ればよい。ですが…命は失っても取り戻せないのです。』

 

そう言って指揮官は言葉を締めくくった。

幹部達は各々、隣の者に目を向けてどうするか一言二言、言葉を交わした。そして、最終的にこの国の最高責任者…つまりカナタへと皆の視線が向く。

 

「……」

 

フーッ、とカナタは一息つき一度、円卓を見渡しその場に居る全員と目を合わせる。

 

「私、クワ・トイネ公国首相カナタが命ず。ギムを放棄、全住民はエジェイに疎開し兵士はエジェイ防衛隊に合流せよ!戦後、あらゆる補償を約束すると住民に説明も忘れないように!」

 

こうして、クワ・トイネ公国は国境の街ギムの放棄を決定。その日の内にギムに避難命令が出された。

 

 

──中央暦1638年4月11日午後1時、国境の街ギム ──

 

「よーし、これで最後だな!」

 

クワ・トイネ西方騎士団団長モイジは、街の中心部にある井戸を埋めていた。

ロウリアが侵攻作戦を発動してから2週間あまり、避難命令が出されたギムは最早ゴーストタウンと化していた。住民は最低限の荷物を持ち、トラックに乗せられエジェイまで避難をしていた。

残るはモイジ達、西方騎士団の面々であり残されたインフラ等を利用されないように破壊していたのだった。

そうして、モイジが最後の一つとなった井戸を埋めると傍から啜り泣きが聴こえた。

 

「うっ…うっ…うっ…クソッ……団長…悔しいです…生まれ育った故郷を…ギムを捨てるなんて…」

 

泣いていたのは一番の若手騎士だった。そんな姿を見てモイジは彼の両肩を掴み、自分の方を向かせる。

 

「気持ちは良く分かる…俺も、このギムを護る為に努力してきた。だが、いざロウリアが攻めて来るとなると逃げるしかない…悔しい…あぁ、悔しいとも。だがな…俺達はこの新兵器をまだ十分に使いこなせていない。万が一、俺達が負けてロウリアにこの兵器が渡ったならば、数で勝るロウリアに負けてしまうかもしれない。」

 

モイジは若手騎士がスリングを使って、肩に掛けていたステンガンを指差す。

 

「だから…今回は逃げる。俺達の仕事はギムを護る事もだが、何より市民の安全を護る事だ。…俺達は必ず戻ってくる。」

 

「うっく……はい……うっ…」

 

「よし、じゃあ行くぞ!周りの集落に声を掛けに行っている団員を拾いながらエジェイに向かう!」

 

若手騎士の背中を軽く叩いてやると、モイジは専用機となったスコープドッグのカスタム機に乗り込みトラックや他のスコープドッグを引き連れ、エジェイに後退した。

 

 

──中央暦1638年4月11日午後8時、サモア基地ブリーフィングルーム──

 

「作戦を説明する。」

 

まるで映画館のような巨大スクリーンと、階段状に設置された席のあるブリーフィングルーム。その巨大スクリーンの前にあるステージ上をで指揮官が宣言した。

 

「今回の作戦はクワ・トイネ公国に侵攻するロウリア王国の撃退だ。本日の時点で、国境の街ギムの側までロウリア軍先遣隊凡そ3万が迫っている。偵察に向かった霧島からの話では、明日にでも進軍してくる兆候があるようだ。だが、幸いな事にギムの住民や兵士は既に避難しており、周辺の集落も避難は完了している。よって、ロウリア軍はもぬけの殻となったギムに無血入場する訳だ。」

 

そこまで指揮官が説明すると、席に着いていた何人もの美女美少女の内の一人が手を挙げた。

 

「はい、サウスダコタ」

 

「質問がある。ギムを易々と明け渡せば、敵はそこを拠点とすると思う。」

 

長い黒髪を三つ編みにした褐色肌のKAN-SEN、サウスダコタが指揮官に質問を投げ掛ける。

 

「そうだな、間違いなくそうなる。だが、逆に考えれば"敵が一ヶ所に集まってる"とも考えられる。……クワ・トイネにて今までの対ロウリア戦の記録を閲覧したが、ロウリアの手で陥落した街は略奪や虐殺、強姦等の被害にあったそうだ。」

 

強姦、という言葉を聴いたKAN-SENが一様に嫌そうな表情を浮かべる。

 

「よって、連中は今回も同じ事を期待しているだろう。だが、今回ギムはもぬけの殻、お楽しみがお預けになった連中はどうするか…サウスダコタ、分かるか?」

 

「なるほど…近くの街、つまりエジェイにやって来ると?」

 

「おそらくだが、少なくとも兵士にお楽しみを提供するにはエジェイしか無いな。だが、エジェイに部隊を送るにはギムを占領するための部隊を残さなければならない。しかも、エジェイ攻略にはそれなりの規模の部隊が必要となる。」

 

「つまり…敵をエジェイに誘き寄せて撃破、次に橋頭堡としてギムを確保している敵本隊を叩く、って事かい?」

 

「理解が早くて助かる。」

 

「分かった、ありがとう。」

 

指揮官の答えに納得したサウスダコタが再び席に座る。

 

「今回、エジェイ防衛に協力するための部隊を派遣する事となった。鉄血陸戦部隊に任せようと考えている。…シュトロハイム大佐、よろしいか?」

 

と、この場では数少ない男性に声を掛ける。きっちり着込んだ鉄血陸軍の制服を纏った、如何にも軍人な男性は立ち上がり、右腕を前方斜め上に上げた。

 

「我が鉄血陸戦部隊の実力は世界一ィィィィィィィ!弓矢で武装した兵士なぞ物の数ではないわァァァァァ!」

 

「うん、じゃあ頼んだ。」

 

プライドが高く煩いが、決して悪い人間ではない。そんな鉄血陸戦部隊長の言葉を軽く流す。

 

「次に、ギムを占領する敵部隊を叩く為の戦力だが、三式弾を用いた対地攻撃を考えている。故に砲門数の多い戦艦が……」

 

言葉の途中で手が挙がった。長い金髪に黒い軍服、鉄血の顔とも言える戦艦ビスマルクであった。

 

「指揮官、ギムの被害は抑えなくていいのかしら? 」

 

「ギムは再開発の為に、どのみち多くの建物を解体し区画整理をする予定だったらしい。だから、いくら壊してもいいとクワ・トイネ政府からお墨付きを貰った。」

 

その言葉を聴いたビスマルクは少し考え。

 

「もし良かったら、私に任せてくれないかしら?試したい事があるの。」

 

「……分かった、普段から艤装研究ばっかりやってるビスマルクが、珍しく前線に出たがるんだ。許可しよう。」

 

「あまり、からかわないで…」

 

「それは、すまん。だが、バックアップに何人か付けておくぞ。」

 

「了解したわ。」

 

ビスマルクが座った事を確認すると、続けて航空戦力の話に移る

 

「次に敵航空戦力…ワイバーンだが、400~500。数こそ多いがあらゆる点においてクワ・トイネに提供したバッファローが勝っている。普通にやれば敗けはしないだろうが…念のためだ、一航戦はバックアップに…」

 

と、赤城と加賀を探すが加賀しか居ない。

 

「加賀、赤城は?」

 

「姉様は、天城さんに拳骨を貰って大鳳共々、ヴェスタルに治療されている。」

 

「何してんだ…あいつら…まぁ、いい。後で詳しい作戦内容は端末に送るから、確認するように言っておけ。」

 

「あぁ、分かった。」

 

加賀からの返事に頷くと、説明を再開した。

 

「次に海上戦力、4000以上。だが、どれもこれも大砲すら無いガレー船や帆船が主だ。何せ数が多いから、殲滅は厳しいだろう。基本的には我々が主戦力を務め、クワ・トイネ海軍がバックアップを行う。クワ・トイネに提供した、幕下級警備駆逐艦や改装ガレー船でも十分に圧倒出来るだろうが、念には念をだ。」

 

グルッとブリーフィングルームを見渡し。

 

「以上、作戦に参加するKAN-SENや人員には端末に連絡を入れる。きちんと確認するように、ブリーフィングに参加していない姉妹艦とかに言っておくように。……では解散!」

 

 

 




モイジ団長は死なせるには惜しい人物だと思うんですよ

今後、お色気シーンは…

  • 今より増やせ
  • このぐらいでいい
  • もう少し減らしていい
  • もっと減らして
  • 無くていい
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