異世界の航路に祝福を   作:サモアオランウータン

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f4ejhantom様より評価9を、Alan=Smitee様より評価8を頂きました!


一応、今回でパ皇編は終わりですね


96.羽ばたく者、堕ちる者

──中央暦1640年1月20日午後1時、エストシラント沿岸部──

 

大まかに瓦礫や遺体を片付け、整地されたエストシラント。

その港跡には、幾つもの白い無機質な建物が建っていた。

周辺に張り巡らされた鉄条網やフェンス、コンクリートブロックによるバリケードは外からの侵入者を寄せ付けない要塞のようである。

ここは『アズールレーン駐留軍エストシラントキャンプ』であり、『自由フィシャヌス帝国臨時議会』であった。

 

「皆様、お久しぶりです。自由フィシャヌス帝国初代皇帝、ファルミールです。」

 

そんな白い建物の内の一つで会見が行われていた。

その会見の主役は勿論、自由フィシャヌス帝国初代皇帝に即位したファルミールであった。

 

「先ずは、先の戦争で犠牲になられた兵士と市民の皆様に哀悼の意を表します。…そして、遺族の皆様にも心よりお悔やみ申し上げます。」

 

そう言って、胸元に手を当てて目を閉じ、深く頭を下げるファルミール。

そんな彼女の姿に向かって多数のフラッシュが焚かれ、人々がどよめく。

それも無理は無い。今までパーパルディア皇国を支配していた皇族はプライドが高く、頭を下げるような事なぞしなかったからだ。

 

「……さて、パーパルディア皇国はアズールレーンにより滅亡し我々自由フィシャヌス帝国が後継国家となりました。しかし、必要以上に恐怖する必要はありません。」

 

この会見は、会場に押し寄せた各種メディアと世界のニュースを通じて全世界に配信されている。

 

「アズールレーンは奴隷や領土を求めている訳ではありません。その証拠に、某国が我が国に対して領土割譲を求めた際には、アズールレーン関係者が某国に圧力をかけ要求を拒絶しました。」

 

会場が大きくざわめく。

敗戦国の領土を切り分けるどころか、庇うような行動をとる…あまりにも甘い対処だ。

だが、彼女の口から発せられた言葉は更に信じがたいものだった。

 

「そして我々の粘り強い交渉の末、食糧と復興を主とした人道支援を取り付ける事が出来ました。これにより、皆様が飢えるような事態は避ける事が出来ました。」

 

正に至れり尽くせり。あまりにも非常識な待遇の数々に会場に集まった人々も、受信機の前で放送を視聴していた人々も驚愕した。

 

──苛烈な力を持ちながら、なんと懐が深いのか…

 

まるで、大自然のようだ。

災害により多大なる破壊を与える事もあれば、豊かな恵みを与える事もある。

激しく矛盾したその在り方に、多くの人々はある種の恐怖を覚えざるおえなかった。

 

 

──同日、サモア基地秘匿ラボ──

 

《また、旧パーパルディア皇国皇族はパラディス城での戦闘とパールネウスで発生した"大規模な爆発事故"により私以外は全員亡くなり……》

 

サモアにある幾つかの小島。外見上は灯台があるだけの無人島だが、そんな島の地下には秘匿ラボがあった。

そんな秘匿ラボの一室、そこには二つの人影があった。

 

「ふむ…中々、様になってるじゃないか。流石は上流階級と言った所か。」

 

そんな人影の一つ、リクライニングチェアに座ってテレビを観ていた指揮官が軽く頷きながら呟いた。

そんな指揮官の傍らに、無機質で冷たい雰囲気がある緑色のビニールマットを張った手術台がある。

その手術台の上に、もう一つの人影が横たわっていた。

 

「んーっ!んーっ!んんっ!!」

 

その人影は、一糸纏わぬ銀髪の豊満なスタイルの女性…レミールだった。

四肢や胴体は手術台に縛り付けられ、口には猿轡が噛まされている。

顔を真っ赤にしどうにか拘束から逃れようと体を捩っているが、その度に押さえ付ける衣服を失った乳房がタプンタプンと揺れる。

ふと、指揮官の手がレミールに伸びた。

精神はともかくとして、見た目は極上の女性が一糸纏わぬ姿で拘束されている…劣情を催しても仕方ないだろう。

しかし、指揮官の手はレミールの猿轡を乱暴に剥ぎ取っただけだった。

 

「ぶはっ!はーっ!はーっ!はーっ!」

 

「どうした、何か言いたい事でも?」

 

やっと正常に呼吸が出来たレミールが荒い息を吐いている事なぞ、知ったこっちゃないとばかりに問いかける指揮官。

それに対しレミールは絶望的な状況にも関わらずキッ、と鋭い視線で指揮官を睨み付けた。

 

「はーっ!はーっ……んくっ…はー…ゲスめが…口では何と言おうが、所詮は蛮族ではないか!」

 

「……何が?」

 

どうにか息を整え指揮官を罵倒するレミールだったが、罵倒された本人は首を傾げるだけだった。

その態度が、レミールの怒りの炎に油を注いだ。

 

「惚けるな!私を辱しめるつもりだろう!最初から可笑しいと思っていたのだ!女武官を側に置き、この基地にも女が多い…色狂いは貴様の方ではないか!」

 

どうやらレミールは、指揮官が彼女を慰み者にする為に生け捕りにしたと思っているらしい。

そんなレミールの言葉に、指揮官は再び首を傾げた。

 

「そうだとしても…何の問題が?」

 

「大有りだ!私は世界の太母となる者だ!貴様のような薄汚い男が汚して良いような人間ではない!」

 

「世界の…太母?なんだそりゃ?」

 

この期に及んで妄言を吐くレミールに呆れたような視線を向ける指揮官。

しかし、レミールはそれに気付かず最早実現不可能となった理想を語り始めた。

 

「ルディアス陛下が世界を統べた後、皇后となった私が全世界の人々を母の愛をもって包み込むのだ!」

 

「随分な妄想だな。お前は世界、全ての人々の母親代わりになろうってのか。」

 

「妄想!?妄想だと!?いいか、私はそれを行う義務が…」

 

──ダンッ!

 

尚も妄言を吐き続けるレミールの顔の真横に指揮官が何かを突き立てた。

白いLEDライトの光を反射する鋭利なナイフだ。

 

「……っ!」

 

目を見開いて息を飲むレミール。

そんなレミールに、指揮官は淡々と告げた。

 

「俺の母は…俺が13の時に死んだよ。目の前で、強盗に犯されながら殺された。だが…最後まで俺を助けようとしてくれた。」

 

ズイッ、とレミールに顔を寄せて至近距離から睨み付ける指揮官。

 

「母とは…最期まで自分の子供を助けようとする者だ。理由もなく、殺しをするような者が人の親になれると思うなよ!」

 

「あ……あぁ…」

 

レミールはすっかり怖じ気付いてしまった。

真っ正面からぶつけられた憤怒と殺意…それをモロに食らった彼女は、奥歯をガチガチ言わせながら失禁してしまった。

 

「…ふんっ、だがお前の願いは叶うぞ。」

 

指揮官がナイフを抜いて鞘に仕舞うと同時に、白衣を着た数人の男が部屋に入ってきた。

 

「お前のような活きのいい奴は貴重だからな。まあ、医療の発展に役立ってくれ。お前が殺した以上の人数を救えるかもしれんぞ。……ドク、あとは頼む。」

 

そう言って指揮官は、痩せた長身の男の肩を軽く叩いた。

 

「ええ、お任せ下さい指揮官殿!こんなにも活きのいい被験体は久しぶりですよ!しかも、異世界人…たまりませんなぁ!」

 

新しい玩具を買って貰った子供のようにはしゃぐドク。

そんなドクは、背後に控えていた助手から注射器を受け取るとレミールに歩み寄って行く。

 

「ひ、被験体…?……ま、まさか!」

 

「大丈夫ですよぉ!チクッ、としたら全ての痛みが無くなりますから!さあさあ、行きますよ行きますよ~!」

 

「や、やめろ!やめろ!やめろ!やめろ!あ…あぁ!あぁぁぁぁぁぁぁ!」

 

ドクの手にある注射器の針がレミールに近付いて行く。

その途中、指揮官はドク達が入って来た扉に向かった。

 

「じゃあ、ドク。あとは頼むぞ。」

 

「はいぃぃ!私にお任せあれ!必ずや、役に立つ実験結果を持ち帰りますので!」

 

「おう。」

 

──ガチャン

 

後ろ手に扉を閉めて部屋を後にする。

 

《や、やめろ!何だその器具は!》

《ふっふっふっ…大丈夫ですよ大丈夫ですよ!痛みはありませんから!》

《待て待て待て待てぇぇぇぇ!そこにそんな物が入る訳……おぎぃ!》

《ほほう…肝臓が中々傷んでますねぇ…》

《こ…殺せ…いっそ…一思いに…》

《まだまだ始まったばかりですよ?さて…次は胃の方を見ましょう。メスとガーゼを…》

 

扉越しに聴こえるドクの楽しげな声と、レミールの悲鳴を聴いた指揮官はどこか満足そうに頷いて薄暗い廊下の先へ消えて行った。

 




次回からは新章です
流れとしては、日常編、魔王編、竜の伝説編の順にやって行こうと思います

今後、お色気シーンは…

  • 今より増やせ
  • このぐらいでいい
  • もう少し減らしていい
  • もっと減らして
  • 無くていい
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