異世界の航路に祝福を   作:サモアオランウータン

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日本国召喚とあまり関係無い話が続きますが、あと一話で指揮官の休暇編は終わりです



106.歩む覚悟

──中央暦1640年3月9日午後3時、サモア基地重桜寮──

 

──パチッ…パチッ……パチッ…

 

静かな昼下がり。

『重桜』から散る花弁が舞う空の下、小さな音が響いていた。

 

「…王手。」

 

「む…」

 

「詰み、ですわ。」

 

それは将棋盤に駒が打ち付けられる音…つまり、対局中であるらしい。

対局しているのは指揮官と、一人のKAN-SEN。

長い茶髪に同じ色の狐耳、思慮深さとどこか憂いを帯びた紫色の瞳を持つKAN-SEN『天城』だ。

 

「はぁ…調子出ねぇなぁ…寝過ぎて頭が働かん。」

 

クシャッ、と髪をかき上げて嘆く指揮官。彼が嘆くのも無理は無い。

天城相手でも、普段なら3割程度は勝てるのだが今日は全く勝てない。

しかもボロ負けである。初心者が有段者に挑むかの如く、手も足も出ない程だ。

 

──パチンッ

 

「指揮官様。」

 

そんな指揮官に、天城は扇子を鳴らして声をかけた。

 

「今日の指揮官様は何やら雑念を抱えているようですわ。…如何されました?」

 

「大した事は無い。」

 

天城の質問に何時ものように答える。

普段ならここで引き下がるが、今日の彼女は違った。

 

「左様ですか。……長門様と接吻された事は関係無いのですね。」

 

「……何故知っている。」

 

何となく気不味くなってしまい、天城から顔を逸らす指揮官。

しかし、彼女はそれを逃さない。

 

「やはり、そうでしたか。少し…変わられましたね。」

 

微笑みながら指揮官の頬に手を添え、前を向かせようとする天城。

その手付きは端から見れば優しいものであるが、意外な程パワフルだ。

下手に抵抗すると首の骨が折れるんじゃなかろうか、という程の力である。

 

「人は…変わるものだぞ。」

 

「確かに、人は少しずつ変わるものです。しかし、今の指揮官様は少しどころではありませんわ。まるで…」

 

指揮官の顔に、自らの顔を近付ける天城。

碧と紫の視線が絡み合い、互いの吐息が混ざり合う。

 

「"ヒト"のようです。」

 

「俺は産まれた時から人間だぞ。」

 

「確かに、指揮官様は"人間"として産まれたのでしょう。しかし、指揮官様は自らの命すらも等しく焼き尽くす"悪"となっていました。ですが…ふふっ…」

 

「分かりやすく言え。俺はあまり頭がいい方じゃない。」

 

意味深な事を言って微笑む天城に、やや苛立ったように問い詰める指揮官。

だが、天城は敢えてそれを無視した。

 

「私が何故、指揮官様と長門様が接吻した事を知っているのか…でしたわね。それは簡単な話です。」

 

指揮官との距離を少し離す天城。

 

「昨夜、長門様のお部屋の前を通り掛かった時にですね…」

 

「要は盗み聞きじゃねぇか。重桜艦にはプライバシーって言葉が無いのか?」

呆れたように肩を竦める指揮官だが、一方の天城は静かに笑みを浮かべるのみだ。

 

「それで…如何でしたか?」

 

「…何がだ。」

 

「長門様との接吻ですよ。…あぁ、ですがユニオンやサディアでは接吻が挨拶代わりとも聞きますしね…」

 

「お前、それあれだぞ。重桜がニンジャとアイドルとHENTAIの国って言ってるぐらいのステレオタイプな……いや、重桜に関しては間違ってない気がするな…」

 

額を押さえて頭を抱える仕草をする指揮官を見逃すような天城ではない。

 

「それで、本命は誰なのですか?」

 

「はぁ?」

 

「オススメは…身内贔屓ですが、赤城ですよ。あの子は変な育ち方をしちゃいましたけど…ですが、指揮官様であればあの子の全てを受け入れて…」

 

「天城、お前病院行け。…頭のだぞ?」

 

つらつらと話を進める天城に、戸惑ったような様子の指揮官。

しかし、天城はまたしても敢えて無視した。

 

「指揮官。私は三番目で構いませんわ。」

 

「二番目は誰だよ!?」

 

天城の突拍子もない発言に、思わず声を荒らげてしまった。

思慮深く、落ち着いている天城がこんな事を言うなぞ、空から戦艦でも降ってきたかのような衝撃だ。

 

「長門様でよろしいでしょう?」

 

「よろしい訳あるか!」

 

どんどん話を進めていく天城。

その姿は正に"あの"赤城の姉である。

赤城は変な育ち方をした…とは言ったものの、それは天城型の特徴なのではないか?とさえ思えてくる。

 

「なんて、冗談ですよ。指揮官様。」

 

「はぁ…変な冗談は止めてくれ…お前が言うと冗談に聞こえな…」

 

「やはり、私が二番目で。」

 

「おっと、そう来たか?」

 

もう一周回って冷静になってきた。

だからだろうか。天城に反論する余裕も出て来た。

 

「そもそも、何股もかけるような男ってどうだ?控え目に言って最低野郎じゃねぇか。流石の俺にだって、それぐらいの分別はあるぞ。」

 

「英雄色を好む、と言うではありませんか。……"俺は英雄なんかじゃない"、というのは通用しませんよ。指揮官様がどう思っても、周囲の評価というものはそう簡単には覆りません。」

 

天城に先手を打たれ、苦虫を噛み潰したような表情を浮かべる指揮官。

しかし、それでも諦めない。

 

「待て、そもそも連邦法で不貞行為は禁止…」

 

「重婚は認められていますわよ?」

 

「…マジ?」

 

「ロデニウス連邦法はクワ・トイネ公国、クイラ王国、ロウリア王国の法律を組み合わせて作られた物ですが…三か国とも、重婚は合法でしたので連邦法でも合法となっているのですよ。」

 

「えぇ……」

 

思わず頭を抱えてしまう。

それでも天城は攻めの姿勢を崩さない。

 

「そもそも、指揮官様はいい歳ではありませんか。そろそろ所帯を持ち、お世継ぎを作りませんと…」

 

「お世継ぎ…つまり、ガキを作れってか?…俺みたいな人間がマトモな親になれる訳がないだろう。アーカイブで俺の経歴を見れば嫌でも分かるだろうさ。」

 

自嘲気味に鼻で笑う。

指揮官自身、当たり前の…普通の人間のような生き方は別に望んでいない。

あのまま薬に蝕まれて死ぬ事も、戦場で炎に沈む事も、全てを失って朽ちて行く事も…全て覚悟の上だ。

そんな惨めで残酷な末路を辿っても仕方ない生き方をしてきた事は自覚している。

 

「それは違いますわ、指揮官様。」

 

しかし、天城はまるで心を読んでいるかのように否定の言葉を口にした。

 

「確かに…指揮官様の経歴は知っていますわ。ですが…それでも私は…"私達"は指揮官様をお慕いしております。指揮官様が破滅へ歩む覚悟を決めていらっしゃるなら…私達も共に無間地獄へでもお供致しましょう。」

 

「止めておけ、後悔するぞ。」

 

立ち上がり、去ろうとする事で強制的に話を切り上げにかかる指揮官。

そんな指揮官の背中に、天城は投げ掛けた。

 

「"後悔なら死んだ後にでも出来る。"…私と赤城、加賀を助けた後…そう仰ったじゃありませんか。」

 

「余計な事を覚えているな…」

 

「これでも重桜の元参謀でしたので。」

 

「勝てんな、お前には。」

 

深い溜め息をついて歩き出す指揮官。

天城はその背中が見えなくなるまで視線を送り続けた。

 




天城ってこんなキャラだっけ……?
分からん…誰か助けて…(白目)

今後、お色気シーンは…

  • 今より増やせ
  • このぐらいでいい
  • もう少し減らしていい
  • もっと減らして
  • 無くていい
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