リシュリュー実装は胸熱ですなぁ!
──中央暦1640年3月12日午後8時、サモア基地重桜寮・大宴会場──
重桜寮の中心にある座敷を仕切る襖を取り払って設えた大宴会場。
ずらっと並べられたお膳には、鯛の姿焼きや天ぷら、刺身にかぶら蒸し等…豪勢な料理が盛り付けられている。
「こほんっ…それでは各員、盃は持ったか?」
見目麗しい重桜KAN-SEN達が勢揃いした大宴会場の上座、そこで元連合艦隊旗艦『三笠』が清酒を注いだ盃を持って音頭を取っていた。
「それでは指揮官の快気祝い、そしてサモアの更なる躍進を願って…」
「ははは!どうした日向ぁ~、せっかくの宴会なんだから飲まないと損ってもんさ!ほらほら、かんぱーい!」
そんな三笠の言葉を遮るような陽気な声。
それが聴こえてきた方を見ると、赤毛と狼耳を持ったKAN-SEN『伊勢』が焼酎の瓶を片手に隣のKAN-SENに絡んでいた。
「馬鹿!三笠様が話されている途中だぞ!」
伊勢に絡まれているのは、銀髪に赤の差し色が入った狼耳のKAN-SEN『日向』だ。
もう"出来上がって"しまっている伊勢をどうにか抑えようとするが、一歩遅かった。
「飲め飲めー!」
「おぐっ!んぐっ…んぐっ…」
瓶の口を自らの口に突っ込まれてしまう日向。
アルハラなんかを通り越して、傷害罪や殺人未遂すら適応されかねない程の傍若無人っぷりだが、KAN-SENが急性アルコール中毒で死亡したという話は聞いた事は無い。まあ、大丈夫だろう。
「あやつらは…三笠様のありがたいお言葉を何だと思っておるのだ…」
伊勢と日向のやり取りに、呆れたような溜め息を吐く長門。
しかし、当の三笠は楽しげな笑顔を浮かべて見せた。
「うむ、元気があってよろしい!今日は無礼講、堅苦しい事は抜きにしようではないか!指揮官もそれで良いか?」
「あぁ、構わんよ。」
「よし…では、乾杯!」
「「「「乾杯!」」」」
挨拶もそこそこに、盃を掲げる三笠。
それに習い、皆も盃やグラスを掲げた。
「乾杯。」
続いて指揮官もグラスを掲げ、一気に飲み干した。
KAN-SEN達のように清酒や焼酎ではなく、ミネラルウォーターである。
続いて料理に手を付ける。
鯛の姿焼きは皮はパリッと、身はほくほくしており絶妙な塩加減が効いている。天ぷらの衣はサクサクしており、刺身は歯応えがあり新鮮そのもの…重桜の食への拘りが伺い知れる出来だ。
そんな料理に舌鼓を打っていると、何者かが近付いてきた。
「やあやあ、指揮官。ちょっとお話いいかな?」
エメラルドグリーンの髪に犬耳、艦首を模した首輪と常にペンを持っているのが特徴のKAN-SEN『青葉』だ。
「どうした、急ぐ話か?」
「まぁ、前から気になってたんだけどさぁ~…指揮官ってお酒飲まないよね?何でかな~?って…」
「別に大した理由は無い。何かあった時、酔ってたらマトモに対応出来ないだろ。何時、どんな用で呼び出されても十分なパフォーマンスを発揮する為だ。それに…酒は好きじゃない。」
「ほうほう…プロ意識って奴ね。意外と真面目だよね~」
指揮官の言葉をメモ帳に書き記して行く青葉。
「任された仕事ぐらいは全力でやってやるさ。それ位しか出来んからな。」
「ふむふむ…で、もう一つ質問が…」
更に質問…いや、"取材"をしようとする青葉だったがそれは叶わなかった。
「えへへ~殿しゃま~」
呂律も足元も怪しい様子で此方に歩いてくるのは、黒髪のおかっぱに猫耳、よく分からない構造をした着物を着たKAN-SEN『山城』だ。
「ほら、あぁなるから酒は飲まないようにしているんだ。あれで艦隊の指揮とか無理だろ。」
「あぁ…成る程…」
呆れた様子の指揮官と、苦笑いを浮かべる青葉。
しかし、山城はそんな事お構い無しに…酒の入った徳利片手に近付いてくる。
「殿しゃま~殿しゃまもいっしょに飲みましょ~」
「山城、足元に気を付けろよ。」
指揮官の言う通り山城の進路上には敷居があり、僅かな段差がある。
ただでさえドジっ娘と称される山城が、酩酊状態となっている…と、なればどうなるかは火を見るより明らかであろう。
「殿しゃ…まぁぁぁぁ!?」
案の定、爪先を敷居に引っ掛けてしまう山城。
どうにかバランスを取ろうと両腕をバタつかせるが、重力には抗えず倒れ行く。
「あ……」
青葉が視線を上に向け、気の抜けたような声を出す。
それもそのはず…山城が持っていた徳利、それが放物線を描いて宙を舞い…
「指揮官、危な…」
三笠が指揮官を庇おうと立ち上がろうとする。
しかし、そこは指揮官自身の方が早かった。
「ふんっ!」
顔面直撃コースに乗っていた徳利を着弾直前でキャッチした。
しかし、一つ失念していた。
──バシャッ!
徳利の中に注がれていた酒、それが慣性に従って噴き出してきた。
それなりの重量物が直撃するという事態こそ避けられたが、顔や胴体が酒で濡れてしまった。
「あ、あわわわ…殿様…」
自分のやらかした事により、一気に酔いが覚めてしまったらしい山城が顔を青くしている。
しかし、指揮官は怒るような事はしない。
「そう言えば…半年ぐらい前にもこんな事があったな。まあ、あの時よりはダメージは少ないがな。」
手で顔を拭いつつ、何でも無いかのように告げる指揮官。
まあ山城のドジは今に始まった事でもなく、今や忌まわしい記憶となっ"あの女"とは違って悪意ある行為ではないというのは明白だ。
「あ、あの…殿様ぁ…」
「気にするな。」
今にも泣き出しそうな山城の頭を撫でてやると、宴会場を見渡して様子を確認する。
宴会が始まって凡そ一時間…皆、酒が回ってきたのか思い思いに酒を嗜んだり、何やら歌ったりしている。
そのせいもあってか、上座の一角で起きた小さな騒ぎには気付いていないようだ。
「……風呂に入ってから部屋に戻る。久しぶりの宴会で、少し疲れたんでな。皆にはそう伝えておいてくれ。」
「は、はい。」
山城にそう伝言を頼むと、三笠と長門の方を向く。
「それじゃあ、後は頼んだ。」
「うむ、任せるがいい。」
「だ、大丈夫か?山城には余から…」
「今日は無礼講だろ?気にする事はない。」
そう言って手をヒラヒラと振って大宴会場を後にする指揮官。
その後ろ姿を見詰める二つの視線があった。
「ふふふ…山城は予定通りの働きをしてくれましたね。指揮官様のお部屋の準備は万全…あとは赤城、貴女次第ですよ?」
「あ、天城姉様…そ、その…まだ心の準備が…」
「何を言うのですか。愛宕に大鳳、隼鷹等々…指揮官様と貴女の逢瀬を邪魔するであろう者をせっかく酔い潰したというのに…しっかりしなさい。」
「で、ですが…」
「はいはい、早く行きなさい。」
──同日午後10時、重桜寮客室──
休暇中、指揮官が滞在する為に用意された重桜寮の客室。
普段はいつの間にか布団が敷かれ、翌日の着替えが枕元に置かれているのだが今日は違った。
布団は敷いてある、ただし二組…ぴったり寄り添うように敷いてある。
枕元に翌日の着替えは無い。しかし、ティッシュ箱が置かれている。
だが、それよりも目を引くモノがあった。
「……何だこれは。」
浴衣に身を包み、呆れたように呟く指揮官。
その視線の先には、人影があった。
敷かれた布団の傍らで三つ指を着いて深々と頭を下げているのは、長い茶髪に狐耳、九本のフサフサとした尻尾は見間違える事は無い。
「……」
「赤城、何とか言え。」
そう、重桜が誇る一航戦の片割れ赤城である。
普段、熱烈過ぎるアプローチをかけてくる彼女だが今日は借りてきた猫のようだ。
「はぁ…天城か?」
「……」
溜め息混じりに問いかけると、赤城の肩がピクッと跳ねた。当たりだ。
まあ、先日の天城の口振りからして何からしら仕掛けて来るであろうとは予想していた。
「何を期待しているか分からんが、"そういう事"を期待してんなら止めとけ。」
「……何故ですか?」
ようやく口を開く赤城。
そんな彼女の前に胡座をかいて座る指揮官。
「俺より優れた人間はごまんと居る。誉れある一航戦が、そこらの馬の骨に…」
「それは違います!」
静かに指揮官の言葉を聞いていた赤城だったが、思わず声を荒らげながら顔を上げた。
「そんなに、ご自分を卑下しないで下さいませ!指揮官様は赤城を…重桜を救って下さったではありませんか!」
「恩義で縛る為にお前達を助けた訳じゃないぞ。お前達は自分達に課せられた義務を十分に果たしている…それ以上の事は求めない。」
指揮官はあくまでも冷静だった。
しかし、赤城はそんな冷静さをも融かさんとする程に燃えていた。
「確かに、始めは恩義から始まったのかもしれません…ですが…っ!指揮官様は多くの過ちを犯した赤城を受け入れて下さったではありませんか!」
膝立ちとなり、指揮官の両肩を掴んで布団に押し倒す。
驚いて目を丸くする指揮官の顔に、真っ赤になった顔を近付ける。
「貴方がどれ程血に汚れていようと…数多の闇を抱えていようと…赤城にそうして下さったように、貴方の全てを受け入れたいのです!」
「…我が儘な女だな。」
「"好きなように生きて、好きなように死ぬ"…そうすればいい、と仰ったではありませんか。」
赤城の顔が、唇がゆっくり近付いてくる。
「返せ…と言われても返せんぞ。」
「もとより、全てを捧げるつもりですわ。」
行灯の淡い灯火により作られたぼんやりとした影が重なり…そして、一つに溶け合った。
あ、ダンケルクの水着は是非買いましょう
そして中華兄貴達に、水着ダンケルクおりゅ?しましょう