異世界の航路に祝福を   作:サモアオランウータン

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水着アルジェリーの下に滑り込みたい
これが条約型重巡か…!

そんな世迷い言を考える今日この頃です


112.防衛ライン構築

──中央暦1640年4月6日午前11時、トーパ王国イースト・トルメス港──

 

トーパ王国の城塞都市トルメスの東側、運河建設の為にロデニウス連邦が新設した港に二隻の空母が入港した。

全長250m以上にも及ぶ瓜二つの空母…重桜五航戦を成す『翔鶴型』である。

そんな二隻が停泊している桟橋に二つの人影があった。

 

「はぁ~…やっぱり、緯度が高いだけあって寒いですね。こんなに寒いなら、魔物が南に行きたがるのも理解出来ちゃいますよ。」

 

長い白髪に水色の瞳、鶴の翼を模した長い袖を持つ着物を着用したKAN-SEN『翔鶴』が指先を吐息で温めながらぼやいた。

 

「あはは…確かに、暖かいサモアに居たからこの寒さは堪えるよね。翔鶴姉、風邪とかひかないでよ?」

 

長い茶髪をサイドテールにし同じ色の瞳、袴を模した赤いワンピースの上に翔鶴と同じ着物を羽織ったKAN-SEN『瑞鶴』が、翔鶴の言葉に同意しつつ彼女を労る言葉をかける。

 

「全くもうっ…冷えは女の子の体の天敵なのに…」

 

腕を組み、頬を膨らませて不機嫌アピールをする翔鶴。

そんな彼女を苦笑しながら見ていた瑞鶴だったが、急にその顔が引きつった。

 

「し、翔鶴姉…」

 

「ほう…では、今からでも別の奴と交代するか?レキシントン姉妹とか…イラストリアス姉妹とかな。」

 

翔鶴の背後に忍び寄った指揮官が彼女の頭を鷲掴みにし、軽く締め上げた。

 

「あぁぁぁ!し、指揮官!?ちょっ…ちょっとぉ!?頭が割れますぅぅぅ!」

 

「指揮官…翔鶴姉も冗談のつもりだから、その辺に…」

 

指揮官からのアイアンクローを食らった翔鶴が悶える。

瑞鶴からしてみれば何時もの光景だ。

翔鶴が毒を吐き、指揮官がアイアンクローで黙らせ、それを瑞鶴が止める。

 

「今回の敵は魔物…航空戦力は非常に少ないって話だからお前達を連れてきたんだ。重桜仕込みの精密急降下爆撃…期待しているぞ。」

 

パッと翔鶴の頭を離して、瑞鶴の肩を軽く叩いて激励する指揮官。

それに対し、瑞鶴は敬礼して応えた。

 

「了解!"グレイゴースト"にも負けないぐらい活躍してみせるからね!」

 

「頼んだぞ。俺はトルメスの防衛司令部に行って打ち合わせをしてくる。」

 

瑞鶴の頼もしい応えに満足したのか、小さく頷きながら背を向けて歩き出す指揮官。

その背中を見送った瑞鶴は、頭を抑えて蹲る翔鶴の側でしゃがみ込む。

 

「翔鶴姉、大丈夫?」

 

「…無理。」

 

短く答える翔鶴。

指揮官もかなり手加減している為、大した痛みも無い筈だ。

しかし彼女の白磁の肌には朱が差し、耳まで真っ赤になっていた。

 

「はぁ~…翔鶴姉ったら…」

 

呆れたように…しかし、微笑ましげに瑞鶴は翔鶴の背を撫でてやった。

 

 

──同日、トルメス城──

 

城塞都市トルメスの中心部に聳え立つ城、その上層階にある防衛司令部、通称『円卓の間』で会議が始まった。

 

「フレッツァ殿。遠路遥々ご足労頂き、誠に感謝致します。」

 

先ず発言したのは、トーパ王国軍騎士長でありこの度編成された魔王討伐隊隊長のアジズだった。

 

「いえいえ、滅相もない。地域の安定と平和の為…自らを省みずに、危険生物へと立ち向かう貴国からの要請を無視は出来ません。魔王とやらの討伐…全力で支援致します。」

 

「おぉ…なんという志…このベルゲン、感服致しました!」

 

指揮官の言葉に感動したのか、涙ながらに握手を求める副騎士長ベルゲン。

その握手に応えながら、指揮官は言葉を続けた。

 

「お褒めの言葉ありがとうございます。しかし、今は防衛作戦を練る事が最優先でしょう。アジズ殿、現状の確認を。」

 

「はい。では、改めて確認しましょう。」

 

頷きながら円卓に地図を広げるアジズ。

 

「去る3月29日午前8時頃、世界の扉にて我が騎士団所属のモア、そしてアズールレーン所属のガイ両名によるパトロール班がグラメウス大陸より飛来する未確認飛行物体を発見、飛行型の魔物と確認し撃墜した所…」

 

「それが、魔王の側近と呼ばれている個体…だったという訳ですな?」

 

アジズの言葉を引き継ぐように発言したのは、今回派遣された鉄血陸戦部隊の隊長シュトロハイム大佐だった。

 

「はい、魔王の側近マラストラス…ワイバーンが生息しない我が国において、空から攻撃してくる奴は恐るべき魔物でした。貴殿方から提供された誘導兵器が無ければ、成す術もなく多くの血が流れた事でしょう。」

 

「そうならなかったのは、貴国が我々を信頼して下さったからです。我々の力だけではなく、貴国の判断が多くの命を救ったのです。」

 

「そう言って頂けると、ラドス王陛下もお喜びになるでしょう。…話を戻しましょう。撃墜したマラストラスは瀕死の状態でしたが、死の間際に魔王が復活したという言葉を…」

 

「ブラフ…という可能性は無いのかしら?」

 

眉をひそめながら発言したのは女性だった。

氷のように冷ややかな水色のボブカットに同じ色の瞳、純白の軍服の胸元を大きく開けたKAN-SEN『チャパエフ』だ。

 

「確かに、その可能性もあるでしょう。しかし、欺瞞と断じて油断していては万が一真実だった時、未曾有の被害を被る事となるでしょう。ましてや相手は神話にも語られる魔王…用心には用心を重ねませんと。」

 

チャパエフの言葉にベルゲンが答えた。

彼は始めチャパエフの露出にどぎまぎしていたが、今では慣れたようだ。

 

「何もなかった時には笑って済ませればいい。何もないさ、と決め付けて人死にが出るのが一番不味い。」

 

「そうね。指揮官とベルゲンさんの言う通りだわ。それで、作戦はあるのかしら?」

 

チャパエフの言葉に、アジズが頷きながら地図を指差す。

 

「第一防衛ラインが世界の扉。第二防衛ラインが運河…そして、最終防衛ラインがこのトルメスの北にあるミナイサ地区となります。」

 

「ふむ…極寒の中での市街戦をもう一度味わう羽目になるとは…」

 

シュトロハイム大佐が苦い顔で呟く。

まあ、無理は無いだろう。

鉄血と北連の陸戦は、正に地獄だったという。

その経験があるからこその言葉だろう。

 

「でも、第一防衛ラインには機関砲や重機関銃、迫撃砲が配備されているわ。それに五航戦の航空支援もあるから、そう簡単には突破されない筈よ。」

 

「チャパエフ殿の言うとおり、普通の魔物なら突破は不可能でしょう。しかし、相手は古の『勇者一行』ですら討ち滅ぼせなかった魔王です。何があるかは分かりません。」

 

チャパエフの言葉に、アジズが腕を組んで難しい顔で答える。

いささか用心し過ぎな感もあるが、長年魔物の驚異と対峙してきたが故の考えだろう。

 

「ふむ…アジズ殿。」

 

「なんでしょうか?フレッツァ殿。」

 

「防衛ラインを、もう一つ増やしましょう。」

 

指揮官がアジズに提案しながら、地図上に描かれた世界の扉を指でなぞる。

 

「何か瓦礫はありますか?木材や石材のような…ある程度の強度がある瓦礫です。それを、世界の扉の"外側"に配置するんです。」

 

「瓦礫なら、都市開発の際に解体した建物の物があります。ですが…外側に、ですか?」

 

「世界の扉から…50m程離れた位置に瓦礫で障害物を作るんです。」

 

世界の扉から少し離れた位置、グラメウス大陸側をトントンと指で叩く。

 

「それでは、魔物が逃れる場所になってしまいます。何故、そんな事を…」

 

戸惑いの声をあげながら、ベルゲンが問いかける。

それに対し、指揮官は頷きながら答えた。

 

「それが狙いです。逃げ場が無いという状況になれば、魔物達は死に物狂いで世界の扉へと殺到するでしょう。しかし、逃げ場があれば生きたい一心で隠れる…」

 

「そうする事により進軍速度を低下させつつ、一度に対処する目標を減らす…更には障害物がある事で一気呵成に突撃させる事を防ぐ訳ですな?」

 

シュトロハイム大佐が納得したような声をあげる。

指揮官はそれに頷きつつ話を続けた。

 

「障害物に隠れた魔物は航空支援や迫撃砲により撃破する予定ですが…魔王はどうするか…」

 

「我が軍には貴殿方から提供された戦闘車輌…自走砲型ハーフトラックによる砲撃も可能です。如何に魔王が強靭でも、75mm砲の前では無力でしょう。」

 

グッと拳を握って力説するアジズ。

しかし、指揮官は念には念を入れる事にした。

 

「…チャパエフ。」

 

「何かしら?」

 

「ロシアに何時でも支援砲撃が出来るように、と伝えておけ。艦砲射撃じゃ勢い余って、運河や世界の扉を破壊する可能性があるが…」

 

「分かったわ。ちゃんと伝えておくわ。」

 

「頼むぞ。」

 




アズレンやってると多少の大きさじゃ巨乳と思えなくなる

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