やはり、文才不足をどうにかして克服しなければ…
──中央暦1640年4月11日午後3時、世界の扉──
「魔王軍が見えたぞぉぉぉ!」
「榴弾砲用意!」
「迫撃砲は3km地点に打ち込んだ杭を基準にして照準を合わせろ!」
世界の扉の中でも最も高い位置にある監視塔。そこで監視任務にあたっていた兵士が報告の声を上げた瞬間、世界の扉の内外で多数の兵士達が慌ただしく動き出した。
世界の扉に設置された『M101 105mm榴弾砲』が仰角を付け、『M1 81mm迫撃砲』の側に多数の砲弾が運び込まれる。
「ガイ小隊長、爆薬の設置完了致しました!あとはスイッチ一つで、ドカンですよ!」
「よしっ!可能な限り魔王軍の後方を巻き込めるようなタイミングで発破しろ!」
そんな中、アズールレーン所属のガイが部下から報告を受けつつ世界の扉の最上部を歩いていた。
「指揮官殿、迎撃準備完了致しました!」
最上部に設けられた胸壁の一角。
荷車等を転回させる為のスペースに陣取っている指揮官に報告する。
「よし…では、事前に説明した作戦通りだ。魔王軍の前後に迫撃砲と榴弾砲を使った同時攻撃を行い、必要なら航空機による爆撃だ。イースト・トルメス港の沖合いに展開している五航戦との交信は間違い無く出来ているか?」
「はい。何度かテストしましたが、感度良好です。」
「よろしい。現場の判断で適宜、航空支援を要請しろ。」
淀み無く指示を出す指揮官。
その姿に思わず感心するガイだったが、少し気になる点があった。
「同志ちゃん。早く弾いてくれない?タシュケント、暇で仕方ないんだけど。」
頭上に疑問符を浮かべるガイに構わず、胸壁に腰掛けて足をぶらぶらさせている少女が不機嫌そうに呟いた。
膝下まで届く程に長い紫色の髪に、空色の瞳。獣耳のような髪飾りに、モコモコのコートを着込んだKAN-SEN『タシュケント』だ。
「そうだな。そろそろいい時間だし…」
タシュケントからの催促の言葉に頷きながら、自らの前にある物体に向き直る指揮官。
それは、黒い木製のテーブルのような物だった。
いや、それはテーブルではない。
テーブルにしてはやけに分厚く高く、一部の側面は大きく湾曲し窪んでいる。
そう、それはピアノだった。
しかも一般家庭にあるようなアップライトピアノではなく、コンサートホールに設置されているようなグランドピアノだ。
「それ…ピアノ…ですよね?」
「そうだ。GAMAHAの最高級品…お前の年収ぐらいの値段だぞ。」
ガイからの疑問に何でもない事のように答える指揮官だが、質問をしたガイはギョッと目を見開いた。
まあ、戦場に楽器を持ち込むのはおかしな事ではない。
ラッパや太鼓の音を攻撃開始の合図とする事は、よくある話だ。
しかし、ピアノ…しかも高級品を持ち込むなんて非常識だ。
「…弾けるんですか?」
ガイの疑問も仕方ない事だろう。
偏見かもしれないが、指揮官の体格や振る舞いを見るに楽器…しかも、繊細なピアノを弾けるとは思えない。
そんな訝しげなガイに答えたのは、タシュケントだった。
「同志ガイちゃん。人を外見で判断するのは良くないわ。」
「あ、いや…」
タシュケントから告げられた、心中を読んでいるかのような言葉に思わず口をつぐんでしまうガイ。
しかし、指揮官は鍵盤蓋を開けながら答えた。
「サウスダコダにな…教わった。こういう事が出来ると、色々と役に立つんだよ。」
「はあ…?」
役に立つ、とは何の事だろうか?
まあ、下士官である自分には理解出来ない事だろう…ガイが腑に落ちないままどうにか納得していると、軽やかな音色が響いた。
──ポロン♪ポロン♪テンテンテーン♪
「…まあ、こんなもんだろ。」
幾つかの鍵盤を叩いた指揮官だが、流石に調律までは出来ないので何となくで良しとする。
「同志ちゃんのピアノ…何だか久しぶりね~。」
ワクワクした様子でタシュケントが笑顔を浮かべる。
何が始まるのか気になるガイだが、小隊長としての責務を果たさなければならない。
「えっと…指揮官殿。では私は持ち場に…」
「あぁ、頑張れよ。」
ヒラヒラと手を振る指揮官に敬礼し、持ち場へ戻るガイ。
しかし、その持ち場はピアノの音色が十分に届くような距離だった。
「一体何を…」
指揮官とタシュケントが居る方向をチラッと一瞥したのち、双眼鏡を覗いて蠢く魔物の群れの様子を見るガイ。
──テンテーン…♪テンテンテーン…♪
ゆっくりしたメロディが聴こえてきた。
まるで、そよ風に揺れる枝葉のような…
「魔王軍前衛、距離4000!」
誰かが叫ぶように報告する。
──テロンッ♪テレーテンッ♪テレーテンッ♪
曲が変調した。
低音がテンポを上げてくる様は、まるで魔王軍の進撃を暗喩しているようだ。
「距離3600!」
またもや誰かが報告する。
──テレテレッテー♪テッテッテー♪テレテレッテー♪テッテッテー♪
またもや変調した。
次は軽やかで跳ねるようなリズム…様々な弾薬を担いで走り回る、兵士達の足音のようだ。
「距離3300!」
もう近い。だが、発砲はまだだ。
──デレレッ♪デレレッ♪デレレッ♪デレレッ♪
曲の方も兵士達の逸る気持ちを代弁するかのようなものになっている。
「距離3000!」
「撃てぇぇぇぇぇ!」
報告が聴こえた瞬間、発砲の合図が叫ばれた。
──ズドンッ!
腹に響くような砲声と共に、発射炎と砲弾が砲口から飛び出し魔王軍に向かって飛翔する。
──テーンッ♪テレテレテレテレッ♪テンッ♪
まるで砲声の後に続くように曲が変調した。
その時、ガイは漸く理解出来た。
これは、"大砲を楽器にしている"のだ。
太鼓の代わりに砲声を…炸裂音を使った音楽だ。
──ドォォンッ!ドォォンッ!ドォォンッ!
「ビギィィィィッ!」
「ギュルァァァァァ!」
「ギィィィィッ!」
榴弾が着弾、炸裂し土柱と共に数多の魔物が宙を舞う。
──テンッ♪テンッ♪テレテレテレテレッ♪
炸裂音と魔物達の断末魔も、この音楽の一部らしい。
人々の脅威たる魔物が、人々が生み出した音楽を奏でる為の楽器として死に逝く…なんたる皮肉だろうか。
「ガイ小隊長!魔王軍後方が爆薬地帯に入りました!」
前方は迫撃砲と障害物、後方は榴弾砲により挟まれ足止めされた魔王軍が地中に埋めた爆薬の真上に足を踏み入れたのだ。
「っ!発破ぁっ!」
戦場に響き渡る音楽に聞き惚れていたガイだったが、部下からの報告により現実に引き戻され、直ぐ様指示を飛ばした。
「了解!」
──ガチッ!
無線機を改造したスイッチが押され、信管に取り付けられた受信機が電波を受信する。
──ズゴガァァァァァァァンッ!
大地を揺さぶる程の大爆発。
それも無理はない。
ソビエツカヤ・ロシアから分けてもらった40.6cm砲弾を10発、地中に埋めてあるのだ。
爆心地に深いクレーターが出来る程の爆発力…大量の土塊や石、そして数多の魔物が宙を舞った。
そんな中、赤と青の影が見えた。
「あれ…赤い鱗の魔物…まさか、赤竜か!?」
「ガイ小隊長!赤と青の魔物も居ました!あれはもしや、レッドオーガとブルーオーガでは!?」
赤竜と二体のオーガ。それは、神話の中でも魔王直属の配下であると言われている。
そんな三体の魔物が紙屑のように宙を舞い、地面に叩き付けられ…ピクリとも動かなくなった。
「や…やったのか?」
ガイは呆然としながら呟いた。
三体の魔物の手足や首はおかしな方向を向いており、赤竜に至っては胴体から真っ二つになっている。
魔王は赤竜に騎乗していると伝わっている。
乗騎があのような状態であれば、魔王も爆発に巻き込まれたであろう。
しかし、それは違った。
──ゴゴゴゴゴゴ…
地面が揺れている。
先ほどの爆破の余韻…いや、違う。
──ズゥゥンッ…ズゥゥンッ…ズゥゥンッ…
一定の感覚で響く重い音…まるで何かが歩いているような…
「な、なんだ…あれ…」
「まさか…あれは…」
ガイの隣で部下が双眼鏡を落とし、口をあんぐりと開ける。
土煙が少しずつ晴れて行き、爆心地がはっきりと見る事が出来た。
「下等生物共めぇぇぇ…よくも…よくも我が軍勢を!」
地の底から響くような怒声。
それは紛れもない、神話に語られる存在。
「魔王…ノスグーラ…」
爆心地に立っていたのは、巨大な岩石の人型。
そして、人型の肩で仁王立ちする魔王であった。
サブタイを見れば、何の曲かは分かりますよね?
今後、お色気シーンは…
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今より増やせ
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このぐらいでいい
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もう少し減らしていい
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もっと減らして
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無くていい