異世界の航路に祝福を   作:サモアオランウータン

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ヘレナに加えて初霜の改造とは…
あれ?初霜大して変わってなくね?


118.神話の終焉

──中央暦1640年4月11日午後6時、世界の扉──

 

堂々と聳える世界の扉、踞る鉄竜、うず高く積まれた土砂…それらを沈み行く夕日が照らしていた。

 

「凄かったな…」

 

「あぁ…夢でも見てる気分だった。」

 

土砂の山の傍らで呆然とした様子のガイとモア。

いや、二人だけではない。

世界の扉にて防衛作戦に従事していた騎士や兵士達は皆、世界の扉から出て来て後片付けに追われていた。

目の前の土砂や魔物の死体、不発弾の処理等々…戦闘よりも大変かもしれない作業に着手していた。

 

「魔王軍に攻撃してから3時間しか経っていない…」

 

「こんな短時間で魔王を討伐するとは…しかも、死人はゼロ。怪我人が10人ぐらい出ただけだぞ?」

 

人類文明の危機と認識された魔王復活。それは、人類文明の勝利に終わった。

砲撃により魔王軍は壊滅、伝説の魔物であるレッドオーガやブルーオーガ、魔王の乗騎である赤竜すら瞬殺した。

魔王が巨大なカイザーゴーレムを造り出した時は肝が冷えたが、鉄竜…ソビエツカヤ・ロシアの『装甲獣形態』が打ち破り、魔王自身も瑞鶴の刃により斬り伏せられた。

それでいて世界の扉は無事で、人的被害も負傷者10名程度。

完全勝利と言っても差し支えない。

 

「これで…世界の扉もお役御免かな?」

 

どこか寂しそうにガイが呟いた。

魔王が敗れた直後、生き残っていた魔物達は蜘蛛の子を散らすようにグラメウス大陸へと逃亡を始めた。

魔王という絶対的な強者が居なくなった以上、命を懸ける理由を失ってしまったのかもしれない。

本来、世界の扉は復活するであろう魔王を食い止める為に建造されたものだ。

魔王が消滅した今では価値が無くなったとまではいかないが、大幅に下落した事は間違いないだろう。

解体こそしないだろうが、人員は削減されるかもしれない。

 

「かもな…でも、第二の魔王が出ないとも限らない。それに備えて、世界の扉と共にフィルアデス大陸を守ろうじゃないか。」

 

パシッとガイの背を叩くモア。

そんな二人の真横を巨大な人型機械が通り過ぎる。

 

──ガチョンッ…ガチョンッ…ガチョンッ…

 

両腕をショベルカーのアームに取り替えたスコープドッグだった。

あれで、土砂を掬い取るのだろう。

 

「もう山を片付けるのか?もうそろそろ日没だから明日にすればいいのに…」

 

首を傾げるガイの背後から声があがった。

 

「魔王の死体を回収するんだ。」

 

「あ、指揮官殿!」

 

「フレッツァ殿、お疲れ様です!」

 

その声に振り返った二人の目に映ったのは、指揮官の姿だった。

普段、肩に羽織っているだけのコートを今日ばかりはしっかり着込んでいる。

 

「トーパ王国に伝わる文献には、魔王は古の魔法帝国により生み出されたとあった。あれほどの生命体を生み出せる技術…どんなものか確かめたくてな。」

 

「なるほど…確かに、神話にも魔帝の復活が予言されていますからね。それに備えて、と言う訳ですか。」

 

モアの言葉に頷く指揮官。

 

「そう。眉唾物だが、備えても損は無い。ガセネタだったら…その時は笑って誤魔化そう。」

 

「まったく…まさかあんな強力な対空射撃が出来るなんて想定外でしたよ…流星が10機も…」

 

フッと鼻で笑いながら告げる指揮官の後ろから、落ち込んだ様子の翔鶴がトボトボと歩いてきた。

新進気鋭の重桜五航戦として、何としても攻撃を成功させるつもりだったのに、まさか全機被撃墜とは考えもしなかったのだろう。

 

「いや…まさか、魔王があんな事をするなんて誰にも予想出来ない。むしろ、想定しなければならない俺の判断ミスだ。気にするな。」

 

苦笑しながら翔鶴の頭をガシガシと撫でてやる指揮官。

 

「なっ…ちょっと!髪が乱れるじゃないですか!」

 

そんな強引な手付きに顔を赤らめながら抗議する翔鶴。

その赤面は怒りによるもの…ではないようだ。

 

「ははは…指揮官殿も罪な男だ…」

 

「まあ、嫌われちゃKAN-SENの方々を率いるなんて無理だろうしなぁ…」

 

そんな二人を見ながら小声で話すガイとモア。

そうしていると、土砂の山から声があがった。

 

「ま、魔王だぁぁぁぁぁあ!」

「嘘だろ、まだ生きてるぞ!?」

「ライフルでもマシンガンでもいいから持ってこい!」

 

一瞬で周囲が混乱の渦に叩き込まれる。

瑞鶴により両断され、業火で焼かれたというのに生きているとは信じられない。

 

「翔鶴、行くぞ!」

 

「はい、指揮官!」

 

「お供します!」

 

「私も、トーパの騎士としてお供します!」

 

直ぐ様思考を切り替え、翔鶴に呼び掛けながら走り出す指揮官。

それに応えるように頷き、滅多に抜かない刀の柄に手を掛ける翔鶴。

ガイとモアもまた、力強く頷きながらその後を追う。

 

「うわっ、臭っ!」

「なんと…醜い顔なんだ…」

「ひぃぃぃぃぃぃっ!」

 

土砂と岩石の山の一角、作業用スコープドッグと多数の兵士が集まっている場所があった。

近付いて行くと、不快な焼けた酸っぱい臭いが漂ってくる。

その臭いの元、兵士達が構えるライフルの銃口の先にそれはあった。

 

「あ……ぐぅぅ…あ…ぁ…」

 

焼け爛れ、半ば炭化したような異形の人型の上半身…変わり果てた姿となった魔王ノスグーラだった。

辛うじて原形を留めている事は勿論、まだ息があるというのも驚きだ。

 

「魔王…ねぇ…こうなりゃ、道端で潰れているカエルと変わらんな。」

 

もはや虫の息といった具合の魔王を見下ろしながら呟く指揮官。

 

「え~…?これが魔王ですかぁ?死にかけだし威厳も無いし…何より気持ち悪い顔してますねぇ。」

 

ここぞとばかりに翔鶴が魔王を煽り倒す。

10機の流星を失った腹いせなのであろう。

更には、次いでとばかりに刀の切っ先で魔王の喉笛を突っついている。

 

「ば、馬鹿な…何故…何故、貴様ら下等生物が人型戦闘兵器を持っている…?」

 

しかし、魔王の興味は鉄の巨人…スコープドッグに向けられていた。

ボロボロと崩れゆく腕を持ち上げ何かを掴むような仕草をするが、指がボトッと落ちて掌さえも崩れてしまった。

 

「死ぬしか道が無いお前に教えて何になる。さっさと死ね。」

 

なかなか息絶えない魔王に苛立ったのか、その醜い顔をブーツで踏みつける指揮官。

だが、魔王の顔に怒りは無くむしろ嘲笑うような表情を浮かべていた。

 

「グァッグァッグァッ…魔帝様の技術を模倣しただけで図に乗るなよ、下等生物共。まもなく魔帝様は復活される!その時が貴様らの最後だ!」

 

最期の力を振り絞り、勝ち誇ったように宣言する魔王。

その言葉に、その場に居た全員がざわめいた。

 

「古の魔法帝国が!?」

「伝承は本当だったのか…」

「い、いつ…いつ復活するんだ!?」

 

古の魔法帝国…ラヴァーナル帝国の強大さは列強国・文明国・文明圏外国問わず知られている。

並び立つ者が居ない程の技術力と強大な軍事力を持ち、他種族を奴隷とし娯楽として拷問して殺す等の悪行三昧。

挙げ句の果てに神々に弓を引いたとされる、傲慢で悪辣な帝国…その恐怖は、この世界の人々に遺伝子レベルで刻み込まれていた。

草食獣が肉食獣を恐れるように、この世界の全ての種族は魔帝を恐れるのだ。

 

「グァッグァッグァッ、もう手遅れだ!貴様らは、魔帝様復活までの僅かな時間を怯えながら…グギィッ!?」

 

しかし、それを恐れぬ者も居た。

 

「魔帝様、魔帝様って…お前はそいつが居ないと何も出来ないのか?そういうのを…あー…トラ…トラ…」

 

「虎の威を借る狐、ですよ。」

 

「そうそう、それだ。…いや、虎よりも狐の方が強い気がしてならんのだが?」

 

それは二人の異邦人…指揮官と翔鶴だった。

指揮官は魔王の顔をより強く踏み、翔鶴は魔王の首に刀を突き刺した。

 

「き、貴様ら…魔帝様が怖くないのか!?無敵の魔帝様だぞ!?」

 

「あら、喉笛に刺したのに喋れるんですね。びっくりです♪」

 

サディスティックな笑みを浮かべ刀をグリグリと左右に捻る翔鶴。

それを見て苦笑する指揮官だったが、その顔は直ぐに魔王に向けられた。

 

「無敵?だからどうした。」

 

腰を折り、近距離から魔王の目を覗き込む。

 

「神から逃げるような奴が『カミ』を殺した俺達に勝てる訳が無いだろう。」

 

「き、貴様…」

 

虚勢を張るな!と反論しようとした魔王だが、言葉にする事が出来なかった。

目の前に居るのは、ただのヒト族の男…だと言うのに、魔王は恐怖していた。

 

「貴様…!貴様!」

 

魔王の視界を埋め尽くす男。

その背後に、"触手の塊に鎮座する青白い少女"の幻影が見えたのだ。

そして、その少女の口が動いた。

声は出ず、口だけの動き…だが、魔王はその動きだけで少女の言葉が理解出来た。

 

──経験値の役目、ご苦労様

 

「う…う……わぁぁぁぁぁぁっ!」

 

耳をつんざくような断末魔と共に、魔王の体は石となり…砂となって完全に崩れ去った。




ミ帝との絡みの後に竜の伝説編をやりたいと思います

今後、お色気シーンは…

  • 今より増やせ
  • このぐらいでいい
  • もう少し減らしていい
  • もっと減らして
  • 無くていい
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