明石ぃ!燃料よこせぇ!
──中央暦1640年6月11日午前11時、ロデニウス大陸西方700km沖上空──
雲一つ無い青空を、純白の航空機が飛んでいる。
テーパー翼に、卵形のプロペラの無いエンジンを2基持つそれは神聖ミリシアル帝国の旅客型天の浮船『ゲルニカ35型』である。
この世界では屈指の性能を誇る大型航空機の機内で、5人のミリシアル人が如何にも座り心地が良さそうな座席に座って寛いでいた。
《乗客の皆様、本機は間もなくロデニウス連邦の領空に入ります。なお、ロデニウス連邦の戦闘機が2機、着陸誘導を行う予定となっております。》
機内放送が流れると、各々が伸びをしたり肩を回したりして長旅の疲れを少しでも発散しようとする。
「長かった!あと2時間ちょっとで着きますね。」
伸びをして関節をバキバキ鳴らしているのは、情報局情報官のライドルカであった。
一方、彼の隣で明らかに不機嫌になっているのは外交官のフィアームだ。
「まったくもって遠い…それに、東の果ての思い上がった文明圏外国を相手にしなければならないと思うと…頭が痛いな…」
「いやいや、戦闘機が来るって話ですよ?そこらの文明圏外国と同じように考えてはいけないのかもしれません。」
そんなフィアームに釘を刺したのは、軍務次官のアルパナ。
そして、アルパナに同調するように頷く技術研究開発局開発室長のベルーノ。
「そうですな…ロデニウス連邦はムーの支援を受けていると考えられます。『マリン』はまだしも、前世代機の『リバー』を保有している可能性があります。」
『リバー』というのはムーが『マリン』以前に採用していた三葉機であり、優れた運動性とプロペラ同調機銃によりワイバーンに対して圧倒的な優位性を誇った事でも知られている。
現在は全てが退役している筈だが、ロデニウス連邦に輸出されているかもしれないと判断したのだ。
「ふむ…私はムーの支援ではなく、我が国のように遺跡から発掘した兵器を解析して兵器を開発したと考えているのだがね。」
そんなベルーノの言葉を否定したのは、対魔帝対策省のメテオスだった。
「メテオス殿、いくら何でもそれは有り得ませんよ。魔帝の遺跡を解析するのは、我が国でも何百年とかかりました。"世界最強たる我が国でさえも"ですよ?東の果ての文明圏外国にそんな事、出来るとは思えません。」
今度はフィアームがメテオスの言葉を否定した。
なんとも高慢で、相手を侮ったような言葉…しかし、そう思うのも仕方ないのかもしれない。
何せ、魔帝の遺跡は1万年以上前の物。解析する事はおろか、場合によっては発掘すら難しい場合もある。
そんな遺跡を発掘し、それがどのような物か解析し、更には驚異的な技術力を以て作られたそれを模倣する事なぞ神聖ミリシアル帝国以外には出来ないと言うのは、この世界の常識であるからだ。
「いや、ロデニウス大陸には『太陽神の使い』に関する伝承がある。その伝承によれば、使い達が残した物はエルフの聖地に…」
メテオスが鞄から持参した古文書を取り出し、フィアームに見せようとした時だった。
「ん?……なんだ、この音?」
手持ちぶさたに窓から外を見ていたアルパナが、窓ガラスから伝わる機外の音に違和感を覚えて首を傾げた。
「ど、どうしました?」
アルパナの様子にライドルカが問いかける。
それに対しアルパナは、眉をひそめながら答えた。
「何か…暴風のような音が…」
「天の浮船のエンジン音でしょう。雲一つ無いのに、そんな激しい暴風が…」
呆れたように肩を竦めるフィアーム。
しかし、そんな彼女を嘲笑うかのようにその音は聴こえてきた。
──ゴォォォォォォォ…
「…いや、これはゲルニカ35型のエンジン音ではない!」
普段から様々な魔帝の兵器のエンジン音を聴いているメテオスが真っ先に気付いた。
「上からだ!」
ベルーノが音の発生源を特定し、窓ガラスに頬を擦り付けながら上空を確認しようとした瞬間だった。
──ゴォォォォォォォッ!ゴォォォォォォォッ!
二つのライトグレーの物体が上空から猛スピードで、天の浮船の左右を急降下しながら追い抜いた。
「な、なんだ!?」
その物体に驚いたフィアームが仰け反り、座席のヘッドレストに後頭部をぶつけてしまう。
しかし、そんなフィアームの都合なぞ知る術もない物体は遥か低空で反転、あっという間に天の浮船と同じ高度に到達すると並走を始める。
「あれは…まさか、ロデニウス連邦の戦闘機か!?」
「プロペラが無いぞ!?…はっ!機体の前方に空気取り入れ口がある!まさか、ロデニウス連邦も魔光呪発式空気圧縮放射エンジンを実用化しているのか!?」
ライドルカとアルパナが驚愕の余り座席から立ち上がり、顔面で窓ガラスを突き破るような勢いで並走する機体を観察する。
「むむっ、あの翼型は…後退翼!?速度が音速を超えた場合に、翼端が超音速に達する気流に触れない為に考えられた翼型だ!我が国では未だに机上の空論だと言うのに…まさか、あの機体は音速を超えると言うのか!?」
同じく窓ガラスから見える機体に釘付けとなっているベルーノが、興奮で全身をワナワナと震わせている。
そう、この機体…『F8クルセイダー』はベルーノの言う通り、超音速機である。
しかし、それどころでは無い者も居た。
「バカな…文明圏外国が、我が国を凌駕する航空機を持っている筈がない!あり得ない!」
自国の力を絶対視するフィアームは、冷や汗をダラダラと流しながら顔を青くしていた。
だが、そんな彼女とは対照的にベルーノは興奮により頬を紅潮させていた。
「後退翼は超音速でなければ非効率…という事は、あの機体は間違い無く超音速飛行を目的としています!凄い!着陸したら真っ先に見に行きたいですね!」
「そんな…我が国は最先端のはずだ!魔法帝国の遺産を、どの国よりも深く早く研究解析してきたんじゃないのか!?それなのに…よりによって航空機技術という重要な分野で負けるとは!」
顔を赤くするベルーノと、顔面蒼白なフィアーム。
しかし、そんな二人とは対照的にメテオスは冷静に分析していた。
(ふむ、魔力を感じない…天の浮船と同じタイプのエンジンを搭載しているのであれば、魔力感知器を使わなくても済む程の魔力を放出する筈だが…まさか、あれはムーのように科学技術を用いて設計されたものなのか?いや…だとしたら去年、フィルアデス大陸方向で検知した魔力波は何だ…?)
ポカンと機外を見るライドルカとアルパナ。
興奮と驚愕で阿鼻叫喚となっているフィアームとベルーノ。
一人黙々と分析するメテオス。
そんなカオスな事態になっているキャビンに、機内放送が流れた。
《ゆ、誘導機のパイロットが皆様にご挨拶をしたいとの事ですので、通信を繋げます。》
やや戸惑ったような、天の浮船のパイロットの声が響く。
そのあと若干のノイズが流れ、機内放送が切り替わった。
《初めまして、神聖ミリシアル帝国の皆様。私は、今回皆様をご案内する名誉に預かりました『イントレピッド』と申します。》
《同じく…誘導機を勤める『バンカー・ヒル』と申します。》
その放送に機内がざわめいた。
「じょ…女性!?」
ライドルカが思わず声を荒らげてしまう。
神聖ミリシアル帝国にも軍属の女性は存在する。しかし、彼女達は基地の食堂で調理を担当したり、軍医の助手をしたりと後方要員として働いているに過ぎない。
パイロット…しかも戦闘機のパイロットを勤めている女性なぞ、彼らの常識では考えられないものなのである。
《着陸後、皆様の歓迎セレモニーを行う予定ですので、お疲れでしょうが少々お付き合い下さい。》
《歓迎セレモニーは皆様の疲労も考慮し、15分程を予定しております。》
イントレピッドとバンカー・ヒルがそのように述べるが、5人はそれどころではなかった。
ロデニウス連邦、かの国がどのような国家であるか…それが気になって仕方がない状況になったからだ。
第二世代ジェット戦闘機の試行錯誤感が好きです
…あれ?前にも言いましたかね?
今後、お色気シーンは…
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今より増やせ
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このぐらいでいい
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もう少し減らしていい
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もっと減らして
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無くていい