今回のイベント限定艦、全員確保しました
あと限定スキンも全部買いました
と言うかイベントストーリーいいですねぇ…
天城イベ、ビスマルクイベに匹敵する傑作ですよ
──中央暦1640年6月23日午前10時、サモア基地ウポル島空港──
──ゴシャァッ!
いくつかの雲が浮かぶ青空の下、アスファルトによって舗装された滑走路上に純白の飛行機…神聖ミリシアル帝国製の天の浮船『ゲルニカ35型』がタキシングし離陸準備を整えていた。
しかし、そんな光景を眺める事が出来る空港併設のターミナルビルの中では一人の男性が、一人の女性によって殴り飛ばされていた。
──ドサッ!
「うごっ!」
女性に殴り飛ばされた男性、神聖ミリシアル帝国の技術研究開発局開発室長のベルーノが床に敷かれたカーペットに墜落し苦悶の声をあげる。
「貴様…貴様ぁぁぁぁ!」
床に転がり頬を押さえるベルーノを憤怒の目で見下ろすのは、彼を殴り飛ばした女性…魔帝が建造した工作艦がKAN-SENとなった存在、『テュポーン』だった。
「ふざけるな、下郎めが!これは冒涜だ!ラヴァーナル帝国に対してではない!技術に対する冒涜だ!所詮は過ぎた物を手に入れて思い上がった猿ではないか!」
まるで火山が噴火したかのような剣幕で激怒するテュポーン。
そんな彼女を前にしてフィアームを始めとした、遣ロデニウス連邦使節団の面々は蛇に睨まれた蛙のようにすくみ上がる事しか出来ないでいた。
「し、しかしテュポーン殿…確かに完全再現とは行きませんが…」
「それ以前の問題だ!あれは『巡航型誘導魔光弾』用のエンジンだ!耐久性、燃費、寸法…全てにおいて旅客機には向かん!」
こんな事になったのには訳がある。
実はロデニウス連邦やサモア、テュポーンの事を詳しく報告する為に先んじて帰国するベルーノ達を見送る為に空港にやって来たフィアームとメテオスに着いてきたテュポーンだったが、そこでベルーノからゲルニカ35型の紹介を受けたのだ。
初めは如何にもつまらなそうに聞いていた彼女だが、エンジン音が聴こえて来た瞬間にその表情は怪訝なものとなり、ゲルニカ35型のエンジンが目に入った瞬間にはベルーノを殴り飛ばしていた。
「で、ですが、あれはゲルニカ35型のモデルとなった発掘品の側で発見されたもので…」
「下郎めが!あれは旧式の爆撃機で、雑用機としての価値しかないガラクタだ!大方、エンジンを取り外した機体と余剰となったエンジンを捨て置いていたのだろう」
「な…なんと…」
テュポーンの言葉を聞いたベルーノが、ガックリと肩を落とす。
それも仕方ない事だろう。
何せ彼はゲルニカ35型開発チームの一員であり、ゲルニカ35型は彼の誇りでもあった。
故に、それが大きな誤りだったと断言されてしまうのは彼にとっては、人生が否定されたと言っても過言ではない。
「ベ、ベルーノ殿…」
「か、改良しましょう…我々も協力致しますので」
頬を押さえて打ちひしがれた様子のベルーノを慰めるライドルカとアルパナ。
そんな三人と、苛ついたテュポーンを目の当たりにしどうすればいいか分からないと言った様子のフィアームとメテオス。
だが、そんな状況でも救い主は現れるものだ。
「テュポーン、止めろ。KAN-SENが本気で殴ったら人なんか簡単に死ぬ」
金髪の大男…指揮官が呆れたような言葉をテュポーンにかける。
「そうですよ、テュポーンさん。私達KAN-SENは人々を護る為に生まれた存在…貴女の出自がどうであれ、KAN-SENとなった以上は徒に人を傷付けてはなりませんよ」
さらに指揮官の側に控える少女もテュポーンを諌めるような言葉を告げる。
きっちりと整えた長い黒髪に、額に生えた二本の角。黒いセーラー服を着用し、白い鞘と柄の太刀を携えたKAN-SEN『能代』だ。
だが、そんな二人の言葉にテュポーンは憮然とした様子で応える。
「ふん…阿保に言葉は難しいであろう。痛みを伴って教えてやらねば、直ぐに忘れ去る」
「…ある意味、真面目だな」
肩を竦め、ポツリと呟く指揮官。
テュポーンの言葉を聞く限り、彼女は根っからの技術者なのだろう。
技術に対して真摯であるが故にその技術を理解もせずに使い、得意気になっている者が赦せないと言ったところか。
「ベルーノ殿、大丈夫ですか。医務室へお連れしましょうか?」
「あ…あぁ…御心配なく…」
能代がベルーノに手を差し伸べて立たせる。
彼の頬は若干腫れているものの、内出血や骨折等はしていないようだ。
「そ、それより…頼んでおいた物は…」
「文房具セットですか?えぇ、100セット確かにそちらの旅客機に積み込んでおきました」
「ベルーノ殿はこんな時まで土産物の心配か…」
「いや…まあ、ロデニウス連邦のペンは品質がいいですからね。製図班に配れば喜ばれますよ」
能代とベルーノのやり取りを苦笑しながら見守るライドルカとアルパナ。
視察中、ベルーノはロデニウス連邦に売られていたペンの品質の高さに度肝を抜かれ、同僚へのお土産とするため大量注文をしていた。
「ふん…いくら道具が良かろうと、使い手が下郎では意味を成さん」
「あー…その、あまり責めないでやってくれないかね?我々とて、魔帝に追い付く為に必死にやっているのだが…」
余りにも辛辣なテュポーンの言葉を聴き流石に言い過ぎだと思ったのか、なるべく刺激しないように嗜めるメテオス。
しかし、テュポーンはメテオスに呆れたような目を向けて鼻で笑った。
「ふんっ、帝国に追い付くだと?貴様らでは1万年かかろうが不可能だ。貴様らなぞより、ロデニウスやサモア連中に併合された方がまだ追い付ける可能性がある」
「テュポーン、流石にそれは言い過ぎだ。それに、あくまでも我々は神聖ミリシアル帝国と友好的で対等な関係を築きたいだけ…併合や上下関係を明確にするような事は考えたくもない」
「ふっ…野望の無い男だ」
テュポーンのあまりにも失礼な言い分を注意する指揮官。
KAN-SENの中には少しズレた感性を持つ者も居る。指揮官は慣れっこだが、使節団の面々はそうではない。
「くぅ…彼女を我が国に連れて行けるだろうか…無礼な事を言って皇帝陛下の逆鱗に触れでもしたら…」
その証拠に、フィアームは腹を押さえて渋い顔をしている。
KAN-SENという理解不能な存在である上に魔帝出身という出自…それだけでも危険視される事は間違いない。それに加え、歯に絹を着せぬ物言いとなれば間違いなくトラブルに発展するであろう。
そんな想像しただけで胃が痛くなるのも仕方ない。
「で、では、我々はそろそろ出発致しますので…」
「しっかりと報告し、テュポーン殿を受け入れられるように取り図らいます。それと、ロデニウス連邦政府から預かった書状も確実に届けませんと」
「ベルーノ殿、ライドルカ殿。行きましょう」
これ以上、テュポーンから毒を吐かれてはたまらないのだろう。
帰国班の三人は、荷物を持ってそそくさとターミナルビルの出口へと歩き去って行った。
「はぁ…これではミリシアルなぞという国も同じような連中ばかりであろうな。帝国の猿真似で悦に入る、程度の低い下郎の国だ」
「テュポーン殿…我が国に来訪した際には言動に注意して頂けると助かります…」
「気分によるな。ところで…」
すっかり憔悴した様子のフィアームからの懇願をサラッと流すと、テュポーンはメテオスに目を向けた。
「貴様、何か言いたげだな?それも我にではなく、そこの男に対してだ」
クイッと顎をしゃくって指揮官を指すテュポーン。
メテオスは自らの考えが読まれていた事に驚き目を丸くするも内心では、切り出し難かった話題を振ってくれた彼女に僅かに感謝した。
「あぁ…実はフレッツァ殿。お尋ねしたい事が…」
「何でしょうか?」
首を傾げ、メテオスからの質問を待つ指揮官。
「去年の11月と12月…貴国は何をしていましたか?」
「去年のですか?その時期は、パーパルディア皇国との戦争中でしたよ」
「では、もう一つ…11月12日、12月16日のそれぞれ午後11時頃…何か異変は?」
「あぁ…なるほど…流石は魔法技術の総本山ですね」
どこか納得したように頷く指揮官。
一方、メテオスは自らの背中に冷たい汗が流れる感覚を覚えた。
もしかすると自分は、知ってはならない事を知ってしまったのではないか…
しかし、それは杞憂に終わった。
「いいですよ、お教えしましょう。まあ、こちらとしてもバレる可能性は想定していましたので。飛行機を呼んで、旧クイラ王国の砂漠地帯に向かいます。我々が新兵器の実験を行っている場所でお教えしますよ」
水着樫野をタッチしてると、もう一つの作品のネタを樫野にしたくなってきます