異世界の航路に祝福を   作:サモアオランウータン

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パッパラー様より評価9を頂きました!

とりあえずエモール王国編はこれで一区切りですね

ココイチコラボのアクリルスタンドは伊吹が人気なようですね
私が全種買い占めたら丁度、伊吹が無くなりました
クリアファイルも全種集まったし…缶バッジは大先輩とインディペンデンスが出ませんでした
またココイチ行くか…


142.龍の娘

──中央暦1640年10月11日午前11時、エモール王国国境の門──

 

砂船から降り、木々が生い茂る中に敷かれた石畳の道を歩く事およそ30〜40分程。そこに、その門はあった。

30m程もある巨大で重厚な青い門…かつてこの地にあったエモール王国の前身であるインフィドラグーンの時代に建造された要塞の一部を利用した外交窓口である。

そこには、国交を結ぶ為に各国から派遣された外交官達が列を成していた。

 

「並んで2時間以上経ちますが…列が進んでいる気がしませんね…」

 

長蛇の列の中程に並んでいるロデニウス連邦使節団の代表であるヤゴウが、半ばウンザリしたような口調でボヤいた。

そもそも、エモール王国は列強国だというのに外交に関わる者がかなり少ない。

他種族との関わりに消極的な上、竜人族の数も少ないため仕方ない事かも知れないが…それでも、それなりの数は揃えてほしいものだ。

 

「やはり最近は自動車や列車ばかりに頼っていたせいで、足腰が弱ってしまってますね…適度な運動もせねば…」

 

しかも、長時間立っていたせいで脚が痛くなってきた。

かつては何処に行くにも歩きか馬であったが、今ではそれらよりも楽な乗り物があったり、そもそも書類を届けるぐらいなら指先の動きだけで出来るようになっている。それ故、体力が落ちた者が多数出ていた。

 

「ヤゴウ殿、それはいけませんな。外交官と言えど、体力は必要…粘り強い交渉を行う為にも、規則正しい生活と適度な運動は必要ですよ!」

 

そんなヤゴウに対して護衛である龍驤が苦言を呈する。

 

「確かに…龍驤殿の仰る通りですね。私も一駅分は歩いたり、エスカレーターやエレベーターを使わない生活をして運動不足を解消しませんと…」

 

龍驤の苦言に対し、苦笑で応えるヤゴウ。

しかし、そんな時だった。

 

「おいっ!お前達は後から来たのだろう?なら、列の一番後ろに並べ!」

 

列の前の方で何やら騒ぎが起きた。

声を荒げているのは列の整理をしていた外務省職員の竜人族の男性であり、彼の前には数人のヒト族の男性が居た。

どうやら列に割込もうとした不届き者が出たらしい。

 

「我々はそこらの商人や蛮国とは違う!第三文明圏の文明国、リーム王国だぞ!国交開設の交渉の為に来ているのだ。可及的速やかに、貴国の外交官に取り次いで頂きたい!」

 

竜人族の威圧感満載の怒鳴り声を前にしても、怯む事無く抗議するリーム王国の使節団。

しかし、職員の方も退く事は無い。

 

「商人だろうが非文明国だろうが文明国だろうが関係は無い!貴様らが同胞である竜人族や、ハイエルフであれば優遇はするが…所詮はヒト族であろう!さっさと最後尾に並べ!」

 

「何を…!」

 

尚も食って掛かろうとするとするリーム王国使節団。

だが、その声はある声に掻き消された。

 

「その行い…下の下でありますな!」

 

「な、何だお前は!?」

 

ギャーギャーと騒ぐ使節団のすぐ側に小柄な少女が立っており、彼等を一喝した。

 

「自分はアズールレーン重桜艦隊所属の龍驤!そんな事よりも…貴殿らの、その行いはどういう事ですか!まるで聞き分けの無い子供のように駄々をこね…恥ずかしいとは思わないのですか!」

 

「うるさい!子供は引っ込んでいろ!」

 

自分より遥かに小柄で、幼い子供に嗜められる事は彼等のプライドを大いに刺激したようだ。

使節団の一人が龍驤の胸倉を掴もうと腕を伸ばし…

 

「感情に任せ、手を上げるなぞ…」

 

伸ばされた腕を自らの手を当てて横に逸らす。

すると、龍驤に腕を伸ばした男性は思わぬ反撃に目を白黒させて体勢を崩してしまう。

 

「うおっ…!?」

 

「せい…っ!」

 

前のめりに倒れる男性…それに対し龍驤は左脚を軸にし、まるで独楽のように回転しながら右脚を振り上げた。

 

──ゴシャァッ!

 

「がっ…!」

 

キレイな後ろ回し蹴りがカウンター気味に側頭部へ直撃し、それにより脳を揺らされた男性はそのまま前のめりに倒れ伏した。

 

「なっ…おいっ!大丈夫か!?」

「なんて事を…貴様!これは外交問題だぞ!」

「誰か!そのガキを捕まえろ!」

 

自分の仲間が倒れた事に驚愕し、喚き散らす使節団。

しかし、龍驤は怯む事無く反論した。

 

「先に手を出してきたのは、そちらではありませんか!それを棚に上げて…なんと破廉恥な!」

 

勇ましく正義感が強い龍驤らしい行いだが、それは少なくともこの場では不適切なものだ。

その証拠に、ヤゴウが全力疾走で騒ぎの現場に駆け付けた。

 

「りゅ、龍驤殿!急に居なくなったと思ったら…不味いですよ!他国の外交官に暴力を振るったとなれば…」

 

ヤゴウの脳裏に浮かぶのは、外交問題からの賠償問題や国際社会の目…そして、最悪の場合は戦争に発展するかもしれない。

そんな事を考えたヤゴウの顔はみるみる青くなって行った。

 

「えぇい!鎮まれぇ!」

 

すると、事態を静観していた職員が一帯に響くような大声で一喝した。

 

「そもそもリーム王国…と言ったか?貴様らが我が国の掟に逆らい、列を乱した事が全ての発端であろう?まず、そこに非がある。そして、そんな貴様らを注意した…龍驤と申したか?彼女に逆上し先に手を出したのも貴様らの非だ。そして何より…彼女の行いは貴様らの狼藉に対する正当防衛であるように思えるのだが…違うか?」

 

「うっ…」

 

痛い所を突かれ、今までのよりも強い威圧感で圧力を掛けられたリーム王国外交官達はそれまでの威勢は何処へやら…縮こまり押し黙ってしまった。

そんな彼等に背を向け、職員は龍驤とヤゴウに向き直った。

 

「龍驤殿…でよろしかったか?」

 

しゃがみ込み、小柄な龍驤と目線の高さを合わせる職員。

 

「はい!自分はロデニウス連邦使節団の護衛を務める龍驤と申します!」

 

「ふむ…貴殿は…我が同胞ではないか?」

 

ハキハキと自己紹介する龍驤の態度が気に入ったのか、笑みを浮かべつつ問いかける職員。

龍驤の角を見てそう判断したようである。

 

「いえ、自分は貴殿らとは別種族でありましょう。話せば長くなりますが…ともかく自分は竜人族ではありませぬ」

 

「ふむ…左様か。それにしても良き鱗であるな」

 

なんとも和気あいあいと会話する龍驤と職員。

その後ろでは、列に並ぶ人々の冷ややかな視線に耐え切れなくなったリーム王国使節団が気絶した外交官を担ぎ、早足でその場から去っていった。

 

「あれは…」

 

そして、そんな光景を遠巻きに見ている者が居た。

 

「モーリアウル様、あの龍驤と名乗った娘…アズールレーン所属と名乗っておりましたな」

 

「『空間の占い』で告げられた名もアズールレーン…もしや、アレースル殿が仰っていたのは彼女の事では?」

 

一連の騒動を見ていた者…それは、王命によりアズールレーン関係者を探していた外交担当の貴族であるモーリアウルと、その部下二人であった。

 

「間違いはないだろう…我々の調べでは、アズールレーンはロデニウス連邦を拠点としていると聞く…ロデニウス連邦の使節団に帯同しているという事は、間違いなくあのアズールレーンだろう」

 

柱の影に隠れ、ゆっくりと頷くモーリアウル。

 

「では、モーリアウル様。彼女らを別室に案内いたしましょう」

 

「あまりに長く待たせると、帰ってしまうやもしれません」

 

実を言うと、エモール王国との国交開設手続きは待ち時間等も含めてかなり時間がかかる。

その為、途中で国交開設を諦めて帰ってしまう国も少なくない。

だからこそ、彼女達が諦めない内に動く必要があるのだが…

 

「……」

 

「モーリアウル様?」

 

だと言うのに、モーリアウルは動かない。

ジーッと、龍驤と職員のやり取りに釘付けとなっている。

 

「如何なされました?」

 

上司の異変に首を傾げながらも、彼の肩を軽く叩く部下。

 

「うおっ!ち、違うぞ!あの乳白色の鱗が美しいだとか、小振りな角が可愛らしいだとか、あの太い尻尾が力強そうだとか…そんな事は決して思っておらぬ!」

 

ビクゥッ!と肩を跳ねさせ、勢いよく振り向いて矢継ぎ早に弁解らしき言葉を発するモーリアウル。

竜人族という種族は他種族とは美的感覚が大きく違い、顔立ち等は美醜の基準とは成り得ない。

ならば美醜の判断はどのように行うか?

それこそ鱗の色や形、角の形状である。

そしてどうやら、龍驤の鱗や角の造形はモーリアウルのタイプど真ん中だったらしい。

 

「えぇ…」

 

「モーリアウル様…お労しや…」

 

普段の威厳ある態度からは想像も出来ない程に浮ついた様子のモーリアウルに生温かい視線を向ける部下二人。

しかし、モーリアウルはそれに気付いていないのかモジモジとし始める。

 

「ど…どのように声をかけたら良いのだろうか?いきなり話しかけては、怖がられないだろうか?」

 

初恋を知ったばかりの子供のような事をのたまい、一向に踏み出せないでいるモーリアウル。

そんな彼の様子を見ている二人の部下も彼の指示が無ければ動けない。

そんな時、龍驤と話していた職員が立ち上がった。

 

「うむ…では、龍驤殿。申し訳ありませぬが、別室で事情聴取をお願い出来ますかな?…勿論、貴殿を責め立てる訳ではありません。一応は我が国で起きた騒動ですので、経緯を含めて記録する必要があるのです」

 

「承知致しました。では、ヤゴウ殿はお待ち…」

 

「一応、使節団の方々にも事情聴取をお願いしたいので同行をお願いします。貴殿らの代わりに私の部下を場所取りさせておきますので」

 

そのやり取りを耳にしたモーリアウルは、思わずガッツポーズをした。

 

「よしっ!あの列整理係、気が効くではないか!よし、事情聴取は応接室で行われるであろうから先回りするぞ!」

 

意気揚々と歩き出すモーリアウル。

そんな彼の背中を二人の部下は、げんなりした表情を浮べて見ていた。

 

その後、ロデニウス連邦とエモール王国の国交開設は恙無く行われエモール王国もロデニウス連邦へ使節団を派遣する事となった。




次回からは竜の伝説の予定です
もしかしたら、各国の状況を描写する話を数話挟むかもしれません

今後、お色気シーンは…

  • 今より増やせ
  • このぐらいでいい
  • もう少し減らしていい
  • もっと減らして
  • 無くていい
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