これも皆様のご愛読のお陰でございます
ノリと勢いで始めた執筆ですが、完結目指して出来る限り頑張りますのでこれからも応援のほどよろしくお願いします
──中央暦1640年12月4日午後4時、王都アルクール、ウィスーク公爵家邸宅──
「エネシー…頼むから私の言う事を聞いてくれ!」
「嫌ですわ!お父様も一緒に地下へ!」
激しく言い争うウィスーク公爵とエネシー。
「ブランデ陛下が反乱軍の手によって討ち取られてしまった今、王規法に従って正式な王が決まるまでウィスーク公爵家当主…つまり私が臨時国家元首を務めねばならん!言ってしまえば、一時的にとは言え私はこの国の王となったのだ!王が民を見捨て、隠れるなぞあってはならぬ!」
カルアミーク王国には、万が一に備えて王規法という法律が存在する。
権力争い等を避ける為に作られた法律だが、その一文には『国王が急病・急死により国政を担えない状況となった場合、正式な国王が任命されるまでの間ウィスーク公爵家当主を臨時国家元首とする』というものがあった。
それ故、ウィスーク公爵は自らの家系に課された使命を全うする為に王城へ向かおうとしていた。
「こんな状況では死にに行くようなものです!お父様、考え直して…」
地下室へ避難するように言いつけられたエネシーだが、やはり父の事が心配なのだろう。
父と共に城へ行く、あるいは父も一緒に避難すると言ってウィスーク公爵の言う事を聞かない。
──ガチャ…ガチャ…
「ウィスーク公爵」
父と娘の平行線を辿る議論は、第三者の言葉によって中断される事となった。
「む、ムーラ殿…」
「ムーラ様…?」
そう、外の世界よりの来訪者、竜騎士ムーラであった。今の彼はウィスーク公爵から借りた普段着ではなく、この地に初めて降り立った時に着用していた鎧を身に纏っている。
「ウィスーク公爵…話は聞かせて頂きました。国王陛下の崩御…慎んでお悔やみ申し上げます」
胸に手をあて、深々と頭を下げるムーラ。
それを前にしたウィスーク公爵はポカンとした様子だったが、直ぐに気を取り直すと同じように頭を下げて返礼した。
「これはご丁寧に…しかし、ムーラ殿。その姿は…?」
「要らぬ世話かもしれませんが…竜騎士ムーラ、反乱軍鎮圧に助太刀致します」
その言葉を聞いたウィスーク公爵とエネシーはギョッと目を見開いた。
「ムーラ殿、これは我が国の問題です!貴殿が危険を犯す必要は無いのです!」
「ダメです、ムーラ様!マウリ・ハンマンは多数の魔物だけではなく、空の王者とも呼ばれる火喰い鳥を何羽も使役していると聞きますわ!いくらムーラ様と愛騎の竜が強いと言っても…」
確かに二人の言う通りだ。
マウリ・ハンマンの謀反はカルアミーク王国内の問題であり、同盟どころかマトモに国交さえ結んでいない国の兵士であるムーラが首を突っ込む意味は無い。
それ以前に王国騎士団を軽々と蹴散らした反乱軍にただ一人で挑むなぞ勇敢を通り越して無謀、あるいは大馬鹿者の所業だ。
しかし、ムーラには考えがあった。
「確かに私一人では無謀でしょう。しかし、空を飛べば通信機が使えます。それを使い、仲間に連絡して援軍を要請出来れば空を飛ぶ機械…『戦闘機』の部隊を呼ぶ事が出来ます」
「しかし、援軍は一瞬で来る訳ではないのでしょう?それまでの間にムーラ殿の身に何かあれば…」
「ウィスーク公爵」
尚も心配するウィスーク公爵の瞳をムーラはしっかりと見据えた。
「私は…赦せないのです」
「赦せ…ない?」
気迫に満ちるムーラに気圧されながらもエネシーが問いかける。
「人の尊厳を踏みにじるような所業、罪無き市民に対する虐殺行為…兵士としてではなく、一人の人間として赦せないのです!確かに、私は他国の人間…だからと言って、見て見ぬふりなぞ出来ません!」
覚悟を決めたかのように自らの意思を強く示す。
そんな彼の気迫にウィスーク公爵とエネシーはただただ圧倒されていた。
──ピィィィィィィィッ!
そんな二人なぞお構いなしに、遠くまで響く指笛を吹くムーラ。
彼のワイバーンは賢い。この指笛を聴けば、主の元へ直ぐ様飛んでくるだろう。
「ウィスーク公爵、貴方が責務を全う出来るように祈ります。エネシーさん、貴女は父君の言う通り避難すべきです。子を失う事は親にとっては何よりの苦痛でしょうから」
「は、はい…」
ムーラの言葉に戸惑いながらも頷くウィスーク公爵。
そんな時、エネシーの目に空を飛ぶ何者かが映った。
──グァァァァッ!
空に響き渡る濁った鳴き声。
こんな時に現れる天よりの来訪者なぞ一つしかない。
「ムーラ様!ひ、火喰い鳥が!」
絹を裂くような悲鳴混じりに叫ぶエネシー。
そう、それは反乱軍の快進撃の立役者である火喰い鳥に跨がる有翼騎士団であった。マウリ・ハンマンの命により、二騎の有翼騎士が襲撃をかけてきたのだ。
「エネシー!」
身の危険を感じたウィスーク公爵が愛娘を庇うべく、彼女に飛びかかり抱き締めたまま蹲る。
火喰い鳥は口から噴き出す炎により他の魔物を容易く消し炭にすると言う…魔物よりも遥かに脆弱な人間なぞ、二人纏めて灰になってしまう事だろう。
しかし、死の瞬間が訪れる事はなかった。
──ギャオォォォォォォォンッ!
降下してくる二騎の有翼騎士…それより高い空に恐ろしくも猛々しい雄叫びが響き渡る。
その雄叫びに驚き、思わず空を見上げる有翼騎士だが、彼らはそれの正体を知る事は無かった。
──ゴシャァッ!
急降下した大きな影が騎士ごと火喰い鳥を鋭い爪で引裂き、物言わぬ骸にした。
「よく来てくれた!」
その姿を目にしたムーラが笑みを浮かべる。
重厚な鱗に、鋭い牙と爪。力強く羽ばたく翼も、がっちりした筋肉も火喰い鳥とは比べ物にならない程に強力なものに見える。
それは紛れもなく、ムーラの相棒であるワイバーンだ。
──ギャオッ!ギャオッ!
ムーラの姿を視認したワイバーンが嬉しそうに鳴き、中庭に降りてくる。
巻き上がる落ち葉にも構わず相棒の元へ駆け寄るムーラと、竜を目の当たりにしてポカンとするウィスーク公爵。エネシーは一度ワイバーンを見ているため驚きこそ少ないが、それでもワイバーンの迫力に慣れる事は無い。
「よしよし。一人で寂しくなかったか?言いつけ通り人を食べたりはしてないか?」
──ギャオ!
頭を撫でられ目を細めるワイバーンの様子を見て、調子は良さそうだと判断したムーラは相棒の背に着けられている鞍に跨った。
「では、行ってまいります!お二人とも、何とぞお気を付けて!」
落下防止用のロープで自らと相棒を繋ぎ合わせたムーラは、そう言うと直ぐに相棒の脇腹を小突いて飛び立たせた。
──ギャオォォォォォンッ!
暴風を巻き起こし、垂直離陸するワイバーン。
それを目にしたウィスーク親子の目には、希望の光が宿っていた。
「伝説の竜を操る騎士…まさか彼が…『英雄の伝説』に語られる救国の騎士…?あの予言は…真実だったのか?」
「竜を駆り、空を征くムーラ様…ステキ過ぎますぅ…」
ただし、エネシーの目にはハートマークが浮かんでいたが…
これ、間違いなくムーラが主人公ですね
今後、お色気シーンは…
-
今より増やせ
-
このぐらいでいい
-
もう少し減らしていい
-
もっと減らして
-
無くていい