異世界の航路に祝福を   作:サモアオランウータン

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今回はかなり無理やりな、そして結構なご都合主義が含まれています


154.屑鉄艦隊

──中央暦1640年12月10日午前11時、ムー国ジャナム軍港──

 

ムー最大の港と言えば人々は口々にマイカル港と言うだろう。

しかし、最大の"軍港"は何処だ?と問われれば答えられぬ者も多い。

確かにマイカル港はムー最大の港ではあるが、あくまでも商業港としての側面が強い。勿論、大規模な港湾設備があるためムー艦隊が停泊する事も多いのだが、実を言えば純粋な軍港として最大の物は首都オタハイトとマイカルの中間に位置するジャナム軍港なのである。

そんなジャナム軍港の埠頭…かつて使節団としてこの地を訪れた指揮官とKAN-SEN『ダンケルク』がラ・カサミを見学した埠頭には多くのムー海軍将兵が集まり、停泊する軍艦を眺めていた。

 

「は…ははは…」

 

階級問わず集まり、軍艦を見ている将兵の中でも一際立派な軍服を着用した将官、海軍少将レイダー・ミレールが乾いた笑いを発した。

しかも彼だけではない。見習い水兵から熟練の叩き上げ士官、艦長クラスの人物までポカンと呆けるか、どうしていいか分からずにとりあえず笑っているかしている。

 

「何ともまあ…あれが…"スクラップ"だと…?いや…無理があるだろう…」

 

引きつった笑顔で呟くレイダー。

そんな彼の視線の先にある軍艦、それは余りにも巨大な物だった。

 

「なんてデカさだ…ラ・エルドの倍はあるぞ!」

「あの平べったい艦はまさか空母か!?ラ・ヴェニアより大きいな…しかも機銃だらけだ!」

「え?あの艦は巡洋艦?確かに主砲口径が小さいとは思ったが…あれでか…」

 

レイダーの呟きに触発されたのか、次々に喋り始める将兵達。

彼らの視線の先にある軍艦はどれもこれもムーが誇る最新鋭艦を凌駕する大きさと武装を持っており、非常に洗練された姿である。

 

「ロデニウス連邦…いや、アズールレーンはとんでもない事をするな」

 

そう言いながら懐から封筒を取り出し、中の便箋を取り出して記された文章に目を通すレイダー。

その文章の内容は、このようなものだ。

 

──(前・中略)では改めましてラ・ムー陛下、50歳のお誕生日おめでとうございます。

本来であれば貴金属で作られた装飾品等をお贈りするべきでしょうが、大使の方から陛下は華美な物を好まないとお聞きしましたのでいささか地味過ぎますが金属スクラップをお贈り致します。

我々が運用していた軍艦や艦載機ですが、故障してしまい処分にも困っていたのでそちらで金属資源として活用頂ければ幸いです。

 

ムー国民が敬愛するラ・ムーの誕生日にスクラップを贈るなぞ言語道断。

そんな真似をすれば大顰蹙をかい、下手をすれば断交モノだろう。

しかし、そんな事態にならなかったのはその"スクラップ"が金銀宝石で飾り付けた宝剣よりも価値のあるものだったからだ。

 

──それでは、一応のためスクラップとなった軍艦と艦載機の名称と数量を記載しておきますので、管理等にご活用下さい。

・空母レキシントン級×2

・空母レンジャー

・空母ヨークタウン級×3

・空母ワスプ

・軽空母プリンストン

・戦艦加賀

・巡洋戦艦赤城

・巡洋戦艦レナウン級×2

・重巡洋艦ノーザンプトン

・軽巡洋艦ヘレナ

・軽巡洋艦アトランタ級前期型×2

・駆逐艦ピカイア級前期型×12

・F4U戦闘機250機

・TBF攻撃機150機

・SB2C爆撃機130機

・B-25爆撃機10機

・他、スクラップパーツ

 

…とまあ、少し頭がおかしいとしか思えない数である。

しかも、事前に行われた調査ではスクラップとは名ばかりで、機銃の銃身が外れていたり、タイヤの空気が抜けていたり、塗装の一部が剥がれていたりと…スクラップにせざるを得ないような故障は見受けられなかった。

だが、問題は運用面である。

確かにこれらの"スクラップ"を"修理"して戦力化すれば非常に強力な艦隊となるだろう。

しかし今までのムー艦船とは使い勝手が違い過ぎ、使いこなせない可能性がある。

 

「おい、あれサラ先生じゃないか!?」

「あっちはレパルスさんだ!」

「ジュノーちゃんも!」

 

その心配は無かったようだ。

この埠頭に集まった多数の将兵…その一部とこの場には居ない技術者達はサモアへの留学経験があり、指導教官の資格を取得した者も居る。しかも、彼らは目の前にある"スクラップ"を教材としていたようだ。

それに加え、サモアで新技術・戦術を学んでいる者はまだまだ居る。

万全とは言えないかもしれないが、十分に運用する事が出来るだろう。

 

「レイダー少将!」

 

「ん…?あぁ、君は…ラ・エルドの」

 

「はい、ラ・エルド艦長のテナル・カミーユ大佐です」

 

人混みを掻き分け、レイダーの前に姿を現したのは痩せぎすの中年男性、ラ・カサミ級戦艦二番艦ラ・エルド艦長テナルだった。

互いに敬礼を交わし挨拶すると、テナルはレイダーに耳打ちするように小声で告げた。

 

「少将…あの噂は本当ですか?」

 

「あの噂…?」

 

「何でもこの"スクラップ"を修理して編成する艦隊の提督に、少将が任命されるという噂ですよ」

 

「な、何!?」

 

彼自身も存ぜぬ噂が流れている事に驚き、思わず大きな声を出してしまうレイダー。

しかし、周囲の将兵達は目の前の軍艦について談義していた為に気付いていないようだ。

 

「あ…コホンッ…何故そのような噂が…?」

 

「どうやら参謀本部がロデニウス連邦にて行われたロデニウス連邦軍・アズールレーン合同演習を見学した際、航空機による対艦攻撃の有用性を痛感したようで…今後は海上航空戦力に注力するとの方針を固めたそうです」

 

「それは私も聞いたし、何ならその合同演習も見学した。確かに、"魚雷"という兵器が標的艦を一撃で沈めたのは心底驚いた」

 

実を言うと4月…トーパ王国にて魔王が復活した頃、ロデニウス連邦軍とアズールレーンによる合同軍事演習が行われ、第四文明圏の国々は勿論、ムーも見学に招待されていたのだ。

その時ムーは参謀本部の人員に加え、一部現場の人間…つまりレイダーを始めとした軍人を派遣した。

 

「そうでしたか…まあ、そのような事もあってより進んだ空母機動部隊の提督には海軍で最も長く空母運用を行ってきたレイダー少将が適任であり、参謀本部もそれを前提に人事再編を準備しているそうです。あくまでも噂ですが…」

 

確かにレイダーはムー海軍に入った当初は基地航空隊、空母が就役してからは空母航空隊司令を経験し、現在では空母機動部隊司令を務めている。

そんな経歴を踏まえれば、確かに新たな空母機動部隊の提督にはレイダーが適任であろう。

 

「なんと…しかし、あれらの中には空母だけではなく戦艦や巡洋艦もある。私は空母の運用には自信はあるが、戦艦等はな…」

 

「これも噂ですが…どうやらサモアに留学している若手の戦術士官が大層優秀なようで、あの戦艦の艦長に抜擢される予定だとか何とか…」

 

「若手の戦術士官か…まあ、能力があれば年齢なぞ大した問題ではない。それに、この艦隊は成り立ちからして普通ではないのだ。伝統と慣習に縛られず、新たな風を吹かせる為に若手の艦長というのも悪くはないだろう」

 

「私もそう思います」

 

「しかし、君も優秀だと聞いている。もし、噂が本当で私が新空母機動部隊提督となった際には、君をあの戦艦の艦長に推薦したいのだが…」

 

艦橋の窓ガラスが全て外された戦艦『加賀』を指差し、テナルにそう持ちかける。

しかし、テナルは首を横に振って拒否の意思を示した。

 

「お気持ちはありがたいのですが…私はラ・エルドの艦長です。確かにあの戦艦はラ・エルドよりも高い性能を持っている事でしょう…しかし、だからと言って簡単に乗り換える事は私を艦長として認めてくれている乗組員、何よりラ・エルドに失礼です」

 

「頑固な男だな、貴官は。だが、貴官のような考え、嫌いではない」

 

「恐れ入ります。しかし、実を言うとそれだけではないのですよ」

 

そう言って埠頭の一角、巨艦達により存在が霞んでしまっている停泊中のラ・エルドを指差すテナル。

 

「ラ・エルドのエンジンの調子が悪い…と言うのはご存知でしょう?」

 

「あぁ…確か、ラ・カサミに比べて振動が強いだとか…」

 

「はい、どうやらクランクシャフトの一部に予期せぬ欠陥があったとの事でリグリエラ・ビサンズ社にて改修工事を行っていたのですが…せっかくならサモアから入手した新技術のテストベッドにしようと言う話になったのです」

 

「新技術…?確かにアンテナや機銃が増えているな。後は副砲が変更されているか?」

 

レイダーの言う通りラ・エルドは若干姿を変えていた。

艦橋はやや高くなり、その天辺には魚の骨のようなアンテナが何本も生えており、副砲もケースメイト式から砲塔式に改められている。更には艦上構造物の各部には連装式の機銃が幾つも増設されていた。

 

「航空機への対処を想定したものです。ですが、一番変わったのは主砲とエンジンです」

 

「ほう…?」

 

「主砲はゲルリッヒ砲と言う高い初速と貫徹力を持つ物に換装されています。話によれば、条件さえ整えば対40cm砲防御も貫通出来るとか…」

 

「何と!」

 

「更にエンジンは、ディーゼル・エレクトリックというディーゼルエンジンで発電機を回し、発生した電気でモーターを動かすという物です。これにより複雑な変速機が不要で、エンジンの負担を軽減出来るとの事です。こちらは試験したところ、僅かな時間ですが25ノットを発揮しました」

 

「それはそれは…」

 

目を丸くし驚愕するレイダーだが、内心は歓喜に満ち溢れていた。

サモアからの技術提供があったとは言え、自国内での改修でもこれ程の性能向上が可能となった事は実に喜ばしい事だ。

 

「やはり、自国で作られた艦には愛着がありますからね…来年に開催される方向で調整されている国際大演習では、新たな力を手にしたラ・エルドの力を見せ付けてやりますよ」

 

自信満々に胸を張るテナル。

そんな彼にレイダーは笑みを向け、こう告げた。

 

「そうだな…追い抜かれたとは言え我々は列強海軍!新参者には負けられんな!」




スクラップと言い張って兵器の輸出入をするのは伝統ですよね

今後、お色気シーンは…

  • 今より増やせ
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  • もう少し減らしていい
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