──中央暦1638年4月30日未明、ロウリア王国王都ジン・ハーク、ハーク城──
「鉄の巨人か……俄には信じがたい…だが、斥候は確かに見たのだな?」
「はい、私の直属の部下である魔導士斥候がジューンフィルア伯爵との連絡途絶の後、ギム付近まで進出したところ…」
「クワ・トイネの国章を付けた鉄の巨人を見たと…」
ロウリア王はパタジンからの報告を聴いていた。
報告によればギムの街は完全に崩壊、瓦礫の隙間からロウリア軍の軍旗や人の死体が見えたという。それが真実であれば、敗残兵にしか見えない状況で帰って来た海軍と合わせ、東方征伐軍は壊滅したとしか思えない。
ガタッ、と椅子を鳴らして黒いローブの者…パーパルディア皇国の使者が立ち上がった。
「貴様らには失望した。我々からの援助がありながら、こんなにも無様に敗北するとは。」
「海戦では超巨大船、陸戦では鉄の巨人に負けただと?貴様らの怠慢で負けた事に言い訳するな。」
「ヴァルハルを死なせた代償は重いぞ。……面倒な仕事は奴が引き受けていたから、我々は楽が出来たというのに。」
呆れと侮蔑を含んだ言葉と共にパーパルディア皇国の使者が、会議が行われていた王の間を後にする。
(援助だと!?戯言を!貴様らが行ってきたのは脅迫ではないか!貴様らのせいで、何人の人間が犠牲になったと思っている!)
去り行く使者達に怒りの双眸を向けながら、拳を握り締め歯を食い縛る。
「皆…すまぬ。余が弱く、臆病であったが故…多くの将兵を死なせてしまった。パーパルディアからの要求を、はね除ける程の力さえあれば…!」
使者達の足音が聴こえなくなると、ロウリア王は玉座より立ち上がり出席者に深々と頭を下げた。
目を伏せるパタジン、目頭を押さえるホエイル、王の謝罪に狼狽えるミミネルとスマーク。
「こうなってしまった以上、パーパルディア皇国からの侵攻は避けられん。これ以上、将兵を死なせる訳にはいかん。……クワ・トイネ公国とクイラ王国、両国に講和を申し出る。」
「講和ですと!?過程はどうであれ我々から仕掛け、我々は敗北を重ねています!これは講和ではなく降伏ではありませんか!」
王の決断に声をあげるミミネル。だが、ロウリア王の決意は固かった。
「良い、余の責任によって行った戦争だ。全ての責任は余にある…余の命一つで済むのなら、喜んで処刑台へ登ろうではないか。」
「王よ……」
パタジンが堪りかねてロウリア王に言葉を掛けようとするが、それは王の言葉によって防がれた。
「パタジンよ、おそらく余は裁かれ断頭台の露と消えるだろう。そうなれば、余の後を任せられる者の筆頭は貴様だ。……信じがたいが、クワ・トイネは未知の力を持っている。もし、それが事実ならパーパルディア皇国にも対抗出来るかもしれぬ。彼らの要求は可能な限り飲み、民の命を守るように。」
「……はっ!」
溢れ出しそうな涙を堪えるように上を向き、覚悟を決めた王に応えるように精一杯の返事をした。
「と、言う訳だスマークよ。余は自らギムに赴き、講和を…降伏を行う。一刻を争う事態だ。貴様から竜騎士団長アルデバランに伝えよ。誰か一人、初陣の竜騎士を選べとな。」
「初陣の…でありますか?」
「うむ。初陣の者であるならば、クワ・トイネの者も恨みは薄いだろう。余をギムの近くで降ろした後は直ぐ様帰らせるが、念のためだ。」
「…承知。」
王からの命令を実行すべく王の間を後にするスマーク。
「…出立の準備をする。下がってよいぞ。」
そう言って自室に向かうロウリア王。何処と無く悲しげな、だが覚悟に満ち溢れた背中であった。
──同日午前7時、王都防衛騎士団司令部──
「では、ターナケインよ。ギムまでの道すがら、よろしく頼むぞ。」
「ぎょ…御意!」
防衛騎士団司令部に併殺された竜舎の前で第2騎士団の新人竜騎士、ターナケインは降伏の為にロウリア王をギムまで送り届けるという大役を仰せつかった。
ワイバーンは人を二人乗せる事が限界であるが、降伏の為だという事で鎧等を着用していないので多少は余裕がある。
「ワイバーンに乗るのは初めてだ。」
「飛び立つ瞬間が一番危ないので、陛下は私の腰ベルトをしっかり持っていて下さい。」
「うむ。」
ターナケインの案内でロウリア王が鞍の後半部に跨がる。ロウリア王のがっしりした手が、自分が腰に巻いているベルトを掴んだ事を確認すると手綱を引き、ワイバーンを滑走させる。
「陛下、御武運を!」
その途中、パタジンを始めとするロウリア王国首脳部が手を大きく振って見送っていた。
それに、ロウリア王は小さく頷いて応えた。
飛び立って暫く、ジン・ハークが小さく見えるようになってから無言の空気に耐えきれずターナケインが口を開いた。
「陛下、お寒くはありませんか?」
「案ずるな。」
今、ロウリア王が着ているのは白一色のゆったりとした衣服。腰に巻かれているベルトには短剣が挿してあった。
まるで死に装束だ…、そうターナケインが考えていると次はロウリア王が口を開いた。
「よいか、ターナケインよ。ギムで余を降ろしたら貴様は、直ぐに去れ。貴様は戦に行っておらん新兵故、クワ・トイネも不要に痛めつけはせぬと思うが念のために……」
「陛下、それは出来ません。」
ターナケインはロウリア王の命令を拒否した。
「アルデバラン団長は私に、陛下を頼むとおっしゃいました。ならば、私には陛下が行う全てを見届ける義務がある…ですから、不肖この竜騎士ターナケインが陛下に最後までお供致します!」
「ターナケイン…貴様…」
ロウリア王は、その若き竜騎士の背中に未来を見た。きっと、彼のような若者が輝かしい未来を作っていくのだろう。
だからこそ、自分に出来る事は自らの手でこの戦争の幕引きを謀る…それだけだと考えた。
──同日午前8時頃、ギム西方2km──
そこには、4人の男と1頭のワイバーンと6体の巨人が居た。
ロウリア王とターナケイン、その愛騎のワイバーン。
クワ・トイネのノウ将軍と陸軍所属のスコープドッグ、サモアのシュトロハイム大佐。
ターナケインの魔信により、講和を申し込まれたクワ・トイネ、サモア連合軍は指定された地点に直ぐに派遣出来る者で、もっとも権限のある者を送り込んだのだ。
「うむ、では降伏するのであるな?」
「その通り、全ては余の責任である。だが、条件がある。」
「条件だと!?貴様、この期に及んで!」
シュトロハイム大佐からの確認に応えるロウリア王であったが、何やら条件があるようだった。
それに反論するノウ将軍だったが、シュトロハイム大佐によって宥められた。
「将軍、一度聞いてみようではありませんか。」
「感謝する。」
シュトロハイム大佐の言葉にロウリア王は頭を下げて、地面に胡座をかいて座り込む。
「まず一つ、民は此度の戦には関係ない。せめて、命は助けてやってはもらえぬか?」
「…まあ、それは構わんだろう。」
渋々ではあるが了承するノウ将軍。
もとから一般市民を積極的に傷付けるつもりはなかったが、こうして戦争相手から言われると釈然としない。
「二つ、貴様らが…その、鉄の巨人のような力を持っているのであれば…列強から…パーパルディア皇国から、このロデニウス大陸を守ってくれ。」
そう言って、服をはだけて上半身を露にするロウリア王。だが、その言葉にノウ将軍は慌てた。
「待て!パーパルディア皇国だと!?それから守れとは!?」
「詳しくはパタジンが知っている。余がこの地に来たのは……余の命を以て、此度の戦の責任を果たす為である。そして、この願いを余の血を以て貴様らに伝える為である。」
そう言って、短剣を抜くと自らの腹に切っ先を当てる。
「まっ…待てェェェェェェェェ!」
シュトロハイム大佐が止めようと、走り出す。
「フェン王国に伝わる、究極の謝罪と懇願の作法だ…刮目せよ!」
そのまま、力を入れて脇腹に短剣を突き入れる。
「ぬぅぅぅぅ……ぐぁぁぁぁぁぁ!」
次に真横、腹を一文字に切り裂く。
激痛により目の前で光が踊り、喉奥から鉄臭い液体が上がってくる。
「ぬぁぁぁぁ!どうか…どうかっ!民を…この大陸をぉぉぉぉ……」
反対側の脇腹まで切り裂くと、息も絶え絶えに懇願する。
「ノウ将軍!今すぐ医療班の要請を!」
「わっ…分かった!なんて奴だ、自ら腹を切るなぞ!」
「た…助けて頂けるのですか!?」
「王としてどうであるかは、さておき。これ程の覚悟を以て懇願する者にこのシュトロハイム、敬意を評す!」
「だが、大量に血が出ている!助かるのか!?」
「ご安心されよ、ノウ将軍!我が鉄血の医学薬学は世界一ィィィィィィィィ!例え、体がバラバラになろうと復活させてみせるわァァァァァァァァァ!」
薄れ行く意識の中、ロウリア王はそんなやり取りを聞いていたが…やがて、意識は闇に落ちた。
ロウリア王も形振り構ってられないんですよ
今後、お色気シーンは…
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今より増やせ
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このぐらいでいい
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もう少し減らしていい
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もっと減らして
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無くていい