異世界の航路に祝福を   作:サモアオランウータン

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そろそろ前書きのネタが無くなってきました…
という事で、ものすごく私事ですが…前から欲しかった電熱グローブを買いました
今までなんで買わなかったんだ!となるぐらい快適です


158.クリスマスプレゼント

──中央暦1640年12月20日午後1時、工業都市デュロ──

 

かつては第三文明圏随一の工業都市であり、パーパルディア皇国の工業力を支えていた工業都市デュロ。

先の戦争では大規模な空襲や艦砲射撃、陸戦が行われたため市街地の半分以上が焼け落ちる被害を被った。

しかし今では復興も進み、民需品製造に舵を切って新たな道を歩み始めている。

 

「ふぅ…やはりこの辺りは冷えるな…」

 

未だに更地が目立つデュロの街並みを歩む男の姿があった。

何処にでも居そうな20代後半の男だが、首から下げた飛竜の鱗と指輪が特徴的だ。

 

「あ、ヴァルハルさん!」

 

「ん?」

 

北風に耐えるように首を縮め、早足であるいていた男…ヴァルハルの耳に別の男の声が届く。

 

「あぁ…シウス"園長"、こんにちは」

 

ヴァルハルは何も目的もなく歩いていた訳ではない。

とある用事があってここに来たのだ。

 

「ははっ…まだ園長と呼ばれるのには馴れませんね…」

 

恥ずかしそうに頭掻く元パーパルディア皇国海軍提督のシウス。

そんな彼が立つ場所の隣には門柱が建っており、そこには『帝国立・慈愛の園』という表札が掲げられていた。

そう、ここは先の戦争により夫を無くした妻子や両親を亡くした子、負傷し満足に働けなくなった元兵士達を保護する施設だ。

このような施設は自由フィシャヌス帝国内各地に設置され、治安維持や現政権の支持率向上に一役かっている。

 

「それで、最近はどうです?何か不足している物等はありませんか?」

 

「特に不足している物はありません。この土地もシャアダ市長が寄付して下さいましたし、ロデニウス連邦から農機具やミシン、タイプライター等の寄付も頂いたのでそれらを使って多少は生活費も賄えます」

 

「子供は虫除けの材料になる花の栽培、未亡人達は衣料品の製造、元兵士達は写本をしているのでしたね」

 

「はい。皆、毎日暖かい食事と寝床にありつけるのはありがたい事だ、と口々に言ってますよ」

 

先の戦争によるトラウマで海に出られなくなってしまったシウスだが、今はこうして施設の園長として人々の為に働いている。

その顔は軍人であった時よりも晴れやかで、何とも清々しいものだ。

 

「それは良かった。ですが…たまには贅沢するのも悪くは無いと思いますよ?」

 

シウスの言葉に満足したように頷くヴァルハルだが、外套の懐から一通の封筒を取り出してシウスに差し出した。

 

「これは…?」

 

「"ミスターX"からです。クリスマス…という祝い事に贈るプレゼントとの事です」

 

シウスが封筒を開け中身を確認すると、そこには一枚のカードが入っていた。

 

「ミスターX…感謝してもしきれません…」

 

カードを両手で持ち、天に掲げながら深々と頭を下げるシウス。

ミスターX…それは保護施設に寄付をしている謎の人物である。

毎月このようにしてアズールレーン所属の連絡員が保護施設にミスターXからだと言ってカードを持ってくる。それを各地のロデニウス連邦銀行の支店に持って行けば貸し金庫にいつの間にか預けられている金貨や銀貨と交換出来るようになっているのだ。

各施設はそれを換金し、運営費に宛てているのだが…一つだけ問題がある。

ミスターXの正体が不明なのだ。

アズールレーンの連絡員を経由して寄付される為アズールレーン関係者だとも言われるが、それ以上の事は不明である。

 

「いつもの如く、礼は不要との事です」

 

「謙虚なお方なのですね…いつかは直接お礼をしたい所なのですが…あ、ヴァルハルさん。お茶でもいかがですか?」

 

「いえ、私はこの後シャアダ市長との面会がありますので…」

 

「左様ですか…では、またの機会に」

 

「はい、では…」

 

シウスに別れを告げ、市庁舎の方へ歩き出すヴァルハル。

今にも雪が降りそうな鉛色の空を見上げ、白い吐息と共にポツリと呟いた。

 

「ふぅ…謙虚ではないな…アイツは…」

 

その呟きは寒空に溶け、側を通り過ぎたトラックの騒音に掻き消された。

 

 

──同日、旧クイラ王国『ジャンクヤード』──

 

ところ変わってロデニウス大陸旧クイラ王国の砂漠地帯。

12月になってもこの地域は相変わらずカラッとした熱い風が吹いていた。

 

「おぉ、コイツだコイツだ!これがお前さん達には丁度いいだろう」

 

そんな砂漠のド真ん中。カマボコ型の倉庫が建ち並ぶ平地の一角で、イボのある鷲鼻が特徴的な一人の老人が大きなキャンバス地を捲りながら笑みを浮べてそう述べた。

 

「ほれ、若造!コイツを取れ!」

 

「爺さん…私はレクマイアという名前がある。…このまま引っ張ればいいのか?」

 

老人からキャンバス地を取るように指示された若者…元パーパルディア皇国国家監察軍の特A級竜騎士であり、現自由フィシャヌス帝国防衛空軍のレクマイアが半ば諦めた様子で老人の指示に従い、キャンバス地の端を引っ張った。

 

──バサッ…

 

レクマイアの手により取り払われたキャンバス地の下から現れたのは、翼の生えた樽の様な物体だった。

 

「これが…」

 

「そう、コイツがお前さん達に売る戦闘機…北連製の『I-16』さ!」

 

樽のように太く寸詰まりな胴体に、低翼配置の幅広テーパー翼。二枚羽のプロペラと、シャッター付きのエンジンカウルが特徴的な戦闘機、『I-16』である。

 

「本当に売ってくれるのか?まだ使えそうだが…」

 

「まあ、細かい事は気にしちゃいけねぇ。販売許可は下りてるんだ。お前さん達に売っても問題はねぇさ。勿論、訓練費用もコミコミさ」

 

レクマイアがI-16の機体を一通り観察し、辺りを見回す。

彼の目に映るのは荒野に大量に並ぶキャンバス地の盛り上がり…全てカバーが掛けられた航空機や車両だ。

ここは通称『ジャンクヤード』、サモア基地の倉庫に詰め込まれていたり転移後に作り過ぎたりした兵器をモスボール処理し、保管しておくための場所だ。

打ち捨てられているようにも見えるが、燃料や弾薬を抜いて各所にグリスを塗りたくっているため整備をすれば直ぐに使える状態となっている。

因みに先程からレクマイアと話している老人は、転移前に指揮官からスカウトされた武器商人らしい。

 

「まあ、ともかく安く売ってくれるのはありがたい。ワイバーンは食費がかかるからな…飛ばさなくても予算を圧迫するんだ」

 

「確かになぁ…ワイバーンは静かに飛べるが、使わない時は無駄飯喰らいだしなぁ…」

 

レクマイアの言葉に同意した老人が腕を組み、うんうんと頷く。

確かにレクマイアの言う通り、ワイバーンは地上待機中でもエサが必要となる。これが自由フィシャヌス帝国の悩みの種だった。

確かに国防は大事だが、民を飢えさせない為にも食料は無駄に出来ない。そして、待機中のワイバーンに与えるエサは無駄の筆頭だ。

それ故、首相であるカイオスが交渉し航空機や車両の輸入を行う事となったのだ。

 

「まあ、何はともあれこれで国を護る事が出来る。次は剣としてではなく、盾として国に尽くそう」

 

厚い主翼をコンコンッと軽く叩き、決意を新たにするレクマイア。

しかし、老人はそれに構わず小脇に抱えていたバインダーを開いて、綴じている書類を捲っていた。

 

「そんじゃあ、車両の方も見ていくかい?対空連装機銃を搭載したハーフトラックがあるぞ?」

 

「いや…陸の方は後日、ブレム将軍が確認されるとの事だ。詳しい説明は将軍に頼む」

 

I-16の胴体に寄りかかりながら応えるレクマイアと、了解の意を示すようにバインダーを閉じる老人。

その後、来訪したブレム将軍により売買契約が結ばれ、正式に自由フィシャヌス帝国へロデニウス連邦製の兵器が格安で輸出される事となった。




次回からはミ帝編をやりたいと思います

ところで、WWⅡ型の駆逐艦にMk.13発射機って搭載出来ると思います?
主砲を撤去したら入りそうな気がするような…しないような…

今後、お色気シーンは…

  • 今より増やせ
  • このぐらいでいい
  • もう少し減らしていい
  • もっと減らして
  • 無くていい
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