異世界の航路に祝福を   作:サモアオランウータン

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名無しのミリオタにわか様より評価8を頂きました!

漸くアズレンのアートブック買えました…地方は入荷が遅れるのが嫌ですねぇ…
ともかくこれでより深くアズレンの設定を知れます


162.ホルスの眼

──中央暦1640年12月19日午前10時神聖ミリシアル帝国ゴースウィーヴス── 

 

神聖ミリシアル帝国東部の大都市『ゴースウィーヴス』

北西部に置かれた首都『ルーンポリス』の丁度反対側に置かれたこの都市は有事の際には首都の代替となる機能を有しており、各省庁の第二庁舎や支部が置かれている事から、首都であるルーンポリスと経済の中心である港町カルトアルパスに次ぐ重要都市とされている。 

そう言った事もありこのゴースウィーヴスには軍民共用の空港が置かれいるのだが、空港ターミナルビル内にてとある会談が行われていた。

 

「『WPS協定』…ですか?」

 

ターミナルビル内の応接室に置かれたソファーに深く座り、バインダーを開いて綴られた書類の内容を目で追いながら怪訝そうな表情を浮かべるのは、神聖ミリシアル帝国軍務大臣のシュミールパオ・ディスカスだ。

 

「はい。まだ草案の段階ですが、貴国にも利のある協定だと思われます」

 

シュミールパオの言葉に応えたのは対面のソファーに座るロデニウス連邦防衛大臣のパタジンである。

そう、今回行われている会談はミリシアルとロデニウスによる国防相会談といった形となっている。

 

「この協定ですが…一見すると軍事同盟にしか思えないのですが、通常の軍事同盟とは何が違うのでしょう?」

 

そう問いかけながらソファーの前に置かれたローテーブルにバインダーを置き、協定内容が記された文面を指先でトントンと小突くシュミールパオ。

その協定内容とは、大まかに記すとこのようなものだった。

 

・協定に参加した国家及び団体は、他の参加国・団体の要請に基づき情報・武器・弾薬・一部部隊の派遣を行う。

・協定は世界秩序の安定を目的としたものであるため、協定を利用し他国へ領土的野心を以て侵攻してはならない。

・協定により得た情報・武器・弾薬・派遣部隊を協定参加国・団体以外に無断で供与してはならない。

 

といった、確かに軍事同盟に近いような内容となっていた。

 

「はい、このWPS協定…正式には『戦力共有協定』と申しますが、事実上の軍事同盟と捉えて頂いても構いません。しかし、通常の軍事同盟と違う点としては、あくまでも世界秩序の安定を重視したものであると言う事です」

 

「世界…秩序?」

 

「はい」

 

シュミールパオの言葉に頷いたパタジンは出された茶を一口飲むと、姿勢を正して言葉を続けた。

 

「通常の軍事同盟は主に国家間で結ばれ、様々な軍事行動に同盟国が協力するという構造になっています。例えば…貴国と我が国が軍事同盟を結んだとします。その状態で我が国が他国に攻め込まれた際、貴国はどう致しますか?」

 

「無論、同盟に従って貴国の防衛に協力するでしょう。しかし、あくまでも防衛での話…万が一、貴国が他国に理由もなく侵攻した場合には同盟を破棄するでしょう」

 

神聖ミリシアル帝国としては、領土的野心を抱いた国と軍事同盟を締結するというのは世界秩序の担い手としてのメンツに関わる問題だ。それを考えれば、シュミールパオの言葉は納得出来る。

 

「貴国であればそうするでしょうし、我々としても貴国の理念は理解出来ます。それ故、通常の軍事同盟ではなく防衛を主軸としたこの協定を提案したのです」

 

「しかし、我が国の防衛は問題なく行なえます。この協定に我々が参加する利点とは?」

 

実態はどうであれ、神聖ミリシアル帝国は"世界最強"の列強国である。

そんなミリシアルが、実質的な列強と目されているとは言え文明圏外国であるロデニウス連邦とそのような協定を結ぶメリットは無いように思える上、それどころかミリシアルの軍事力に寄生しようとしているようにしか思えない。

しかし、その問いかけに対しパタジンは自信有りげに答えた。

 

「確かに、正面戦力では貴国とは比べ物にならないでしょう。ですが、戦争とは兵器だけで行うものではありません。軍艦や航空機や車両を動かす為の燃料、現場で戦う兵士達の衣食住、戦略・戦術を練る為の情報…それらを欠けば如何に高性能な兵器を揃えたとしても戦争には勝てません。普段であれば貴国はそれを卒なくこなせるでしょう。しかし、強大な力と野心に満ちた相手…例えば魔帝のような敵が現れた時、貴国だけで全てを賄えるでしょうか?勿論、貴国の力を疑っている訳ではありません。しかし、戦争とは時に不測の事態が起きるもの…それに備え、後方支援体制に余裕を持たせる事は決して無駄ではないと思います。それに…」

 

パタジンが持参したアタッシュケースから"極秘"と記された大きな封筒を取り出し、中から2枚の厚紙を抜き出した。

 

「少なくとも、我々の情報は貴国にとっても役に立つと思います。協定を結んで頂ければ、有事の際には我々が収集した情報を提供致します」

 

「っ!こ、これは!?」

 

目を見開き、ローテーブルに置かれた厚紙に釘付けとなるシュミールパオ。

その厚紙の表面には、地図が描かれていた。海岸線の形からしておそらくは第三文明圏と、ロデニウス大陸の周辺でありそれぞれカラーと白黒になっている。しかし、白黒の方には雲の様な物が描かれており、一見すると未知の土地を誤魔化しているようにも見える。

だが、シュミールパオにはそれが何か理解出来た。

 

「まさか、これは…絵ではない!?魔写ですか!?」

 

そう、これは遥か上空から撮影された何枚もの写真を縮小し貼り合わせ、一枚の航空写真としたものだ。

 

「流石お目が高い。仰る通り、これは魔写…魔法ではなく科学の力で撮影したので写真と呼ぶのが正しいでしょう。ともかく、この写真は超高高度から撮影した物です。カラーの方は最新鋭偵察機から、白黒の方は『気象衛星』と呼ばれる特殊機材を用いて撮影した物です。これらを利用する事で敵地の重要拠点を探って戦略を立案したり、雲を観察して天候を予測する事が出来ます」

 

パタジンが解説するが、シュミールパオは写真に釘付けとなったまま冷や汗を流していた。

確かにミリシアルにも偵察機はあるが、こんなにも精細な画像を撮影する事は出来ない。ましてや、雲がこのような形で見えるような高度まで上昇出来る物なぞ存在しない。

それ故、このような画像を撮影出来るロデニウス連邦の技術力の高さに驚愕しているのだ。

 

「更に、我々が使用している軍用糧食や野営設備等は…」

 

「パタジン殿…」

 

加えて自国の後方支援能力を説明しようとするパタジンだが、それはシュミールパオの重々しい言葉に遮られた。

 

「今すぐ…私の一存では決定出来ない事が残念でなりません。しかし、私は貴国と協定を結ぶべきだと思います」

 

「おぉ!では…」

 

「ですが、他の閣僚や将校が納得するかは分かりません。ですので、貴国の力を彼らに示してはくれませんか?」

 

シュミールパオがそう言うのも仕方ない。

ミリシアルの軍人達は自国こそが世界最強だと自負し、他国の助けなぞ要らないと考えている。それ故、文明圏外国と軍事同盟を結んだとなれば不満が出てくる恐れもある。

そんな事情もあり、シュミールパオはロデニウス連邦の力を現場の人間に示し、協定が有意義な物であると認識させる必要があった。

 

「それでは…来年の7月、ムーと我が国との合同軍事演習があります。それに参加致しませんか?」

 

「よろしいのですか?」

 

「我が国としては問題ありません。ムーの方もおそらくは承諾して下さるでしょう」

 

「ご提案、ありがとうございます。では、参加に向けて調整致します」

 

そう言って笑顔を浮かべ、手を差し出すシュミールパオ。

それを見たパタジンは、同じく笑みを浮べて彼の手を握った。

 

「承知しました。では、大使館を通して追って連絡致します」




とりあえずミ帝編はこれで一区切りです
次回からは合同演習編に移ります

今後、お色気シーンは…

  • 今より増やせ
  • このぐらいでいい
  • もう少し減らしていい
  • もっと減らして
  • 無くていい
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