異世界の航路に祝福を   作:サモアオランウータン

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kyonshy様より評価9を頂きました!

対空戦闘って細かい描写難しいですよね
色々と資料漁ってもちんぷんかんぷんです…

あ、あと東煌艦の新キャラ来ましたね
これは予想外でした


168.トンボ捕り

──中央暦1641年7月18日午前10時、ムー国デヴァルポート軍港沖合──

 

演習は対艦砲撃訓練と模擬空戦を経て対空戦闘訓練へと切り替わっていた。

その訓練のシチュエーションは、艦隊に攻撃を加えようとする敵艦載機を阻止するというものだ。

そして、今回の標的機は無人型の『スクア』と『TBDデバステイター』であり、手始めにスクアが対空砲やレーダーを破壊する為に急降下爆撃を仕掛けるという想定である。

 

「諸元入力完了!右舷両用砲、発射!」

 

──ドンッ!ドンッ!

 

黒鉄の船体を司る艦橋に凛々しい女性の声が響き、それを掻き消すかのような砲声が轟く。

基本的に男社会である軍隊で女性…しかもあどけなさの残る若々しい女性の声というのは違和感がある。

しかし、その声の主はある意味ムー海軍中で最も上手く艦艇を運用する事が出来るであろう人物であろう。

その証拠に、斜め上に放たれた12.7cm砲弾は急降下爆撃の為に横隊を組んだスクア隊へと飛翔し…

 

──バンッ!バンッ!

 

スクア隊の進路上で砲弾が炸裂した。

黒煙と共に破片が飛び散り、鉄の暴風となってスクア隊はそれに飛び込んでしまう。

それなりの装甲を備えた艦艇や車両であれば大した損害にはならない破片であるが、残念ながら航空機にそんな防御力を求めるのは酷な事だ。

鉄の暴風はジュラルミンの外皮を切り裂き、構造材や燃料タンクまで貫いて4機からなるスクア隊の内、2機が炎上しながら錐揉み状態となり撃墜された。

 

「やったぁ!主、見てくれましたか?」

 

墜ちて行くスクアの姿を確認し、嬉しいそうに小躍りしながら満面の笑みを浮べて傍らに立っていた男に抱き着く若い女性。

並行世界のムーで建造され、この世界ではKAN-SENとして建造された『ラ・ツマサ』である。

サモアで建造され、ムーに引き渡された後に再び留学生としてサモアに滞在していた彼女だが、今回の演習に合わせてムーへ帰って着たのだ。

 

「ちょっ…ラ・ツマサ!まだ残ってる!」

 

そんなラ・ツマサに抱き着かれている男、ムーの若手技術士官にしてラ・ツマサ建造のトリガーとなったマイラスは、彼女のスレンダーでありながら女性特有の柔かさを持ち合わせる肢体に顔を赤らめながらも艦橋の窓から見える空を指差した。

 

「はいっ!私の活躍、見てて下さいね♪40mm機関砲、発射!」

 

マイラスの指摘に笑顔で応えたラ・ツマサは、急降下を始めた残りのスクアに意識を集中させると機関砲を発砲した。

 

──ダダダダダダダダダダダダンッ!

 

右舷に装備された『二連装ボフォース40mm機関砲』が火を噴く。

それらは急降下中のスクアへと砲弾を殺到させ、瞬く間に火の玉へと変えた。

並行世界のムーでは次世代戦艦開発と兵装試験の為のテストベットとして建造された彼女だが、この世界ではその拡張性を活かして対空兵装を充実させて対空戦艦とも言うべき存在となっていた。

『Mk.12 5インチ単装両用砲』を10基に、『二連装ボフォース40mm機関砲』を10基、『20mmエリコン機関砲』を18基。それに加えてユニオンの技術を取り入れた改良型の『94式高射装置』やサモアの倉庫に転がっていた『SGレーダー』等々…兵装交換が容易いというKAN-SENの特性をフルに活かし、手を加えていない所は無いというレベルにまで改装された結果、彼女はより近代的な戦闘にも耐えうる程の性能となった。

 

「ラ・ツマサは毎日教本を読み込んだり、他のKAN-SENの皆さんと訓練してたもんな。流石だよ」

 

装備もさる事ながら、それを使い熟す為に人一倍努力していた彼女の姿を知るマイラスは、感心したような口調で告げながらラ・ツマサの頭をポンポンと軽く叩くように撫でた。

 

「っっっ〜〜〜♡主ぃ…♡」

 

自らの頭頂部に感じるマイラスの温もりに表情を綻ばせ、モジモジと悶るラ・ツマサ。

爆発しろ!と言いたくなるリア充空間であるが、マイラスはそんな中でも窓を一瞥してポツリと呟いた。

 

「ラッサンの奴…大丈夫かな?」

 

 

──同日、『ラ・アカギ』艦橋──

 

「雷撃機接近!」

 

「迎撃の準備を!」

 

サモアから贈られた『赤城』の巡洋戦艦艤装をムー海軍艦として復帰させた『ラ・アカギ』の戦闘指揮所では、最年少艦長となったラッサンが指揮を執っていた。

サモアでより近代的な戦術を学び、艦長としての教育を受けたもののまだまだぎこちない。

しかし、それでも自らの責務を果たそうと奮闘している。

 

「艦長、対空戦闘の準備が完了致しました!」

 

副長がラッサンに報告する。

それに対しラッサンは、小さく頷いて檄を飛ばすように指示を出した。

 

「対空戦闘開始!実戦と思って全力で戦え!」

 

「対空戦闘、開始!」

 

ラッサンの指示を副長が復唱する。

 

──ドンッ!ドンッ!ドンッ!ドンッ!

 

ラ・アカギの副砲はムーに贈られた時から連装両用砲…Mk.12の連装型に換装されており、対艦戦闘力と引き換えに対空戦闘力を向上させている。

更には排水量4万トン超の巨体を活かして両用砲の他にも四連装型のボフォース40mm機関砲や20mm機関砲、それらの能力を引き出す為のレーダーや射撃管制装置も装備している為、ラ・ツマサと同じく対空戦闘に優れた艦となっていた。

更には主砲もSHSこと超重弾に対応出来るように改修している事から、主砲による対艦戦闘力も向上しているのだ。

 

「敵機健在!尚も接近中!」

 

「狼狽えるな、撃ち続けろ!」

 

観測員が双眼鏡を覗き込んだまま悲鳴のように報告する。

しかし、ラッサンはそれに構わずに射撃続行を指示した。

対空戦闘はとにかく手数が必要だ。下手な鉄砲数撃ちゃ当たる…ではないが、三次元的に動く航空機を撃墜する為にはとにかく弾幕を張る必要がある。

 

(くっ…当たらないな…やはり、サモアで見た『VT信管』があれば…)

 

虚空に咲く黒煙の花を物ともせずに、低空を飛行して接近してくるデバステイターを見て歯噛みするラッサン。

彼はサモア留学中に様々な対空兵器を見学していたが、その中には『VT信管』こと『近接信管』もあった。

ご存知の方も多いかとは思うが、VT信管とはレーダー反射波を利用して敵機の近くで砲弾を炸裂させる画期的な信管である。

当初はこれを導入する事を望んだムー統括軍だったが、ムーの技術では製造自体は出来ても生産性や信頼性に不安がある事から研究は続けるが制式採用は見送る、という事になった。

 

──バンッ!バンッ!

 

撃ち続けていた両用砲から放たれた砲弾が炸裂し、破片を撒き散らす。

すると、鉄片の網に1機のデバステイターが引っ掛かった。

プロペラがぶっ飛び、主翼が中程から折れて垂直尾翼がもぎ取られた。

無論、そんな状態で飛行出来る訳が無い。直ぐ様バランスを崩し、重たい模擬魚雷を抱えたまま海面に叩き付けられた。

 

「撃墜確認!」

 

「ぃよしっ!だが、まだまだ残っているぞ!」

 

標的機を撃墜出来た事に思わず浮ついてしまいそうになるが、散々叩き込まれた"慢心は敗北に繋がる"という言葉を思い出して気を引き締める。

 

「撃ち続けろ!実戦ならあの魚雷は一撃で戦艦を沈め得るからな!」

 

檄を飛ばして皆の気を引き締めるラッサン。

それを了解したのか、両用砲は火を噴き続けた。

確かにVT信管があれば多少は楽だろう。しかしVT信管は一発逆転の最強兵器ではなく、幾重にも折り重なる戦闘システムの一つに過ぎない。

適切なレーダーに対空兵器、それを制御する管制装置があれば時限信管でも十分な対空戦闘は行える。

 

「敵機尚も接近!」

 

「40mmを使え!とにかく弾幕を張るんだ!」

 

両用砲の砲火に40mm機関砲も加わる。

響き渡る砲声は最早演習とは思えない。

そんな中、ラッサンは懐から懐中時計を取り出して裏蓋に目をやった。

 

(逸仙さん…必ず立派な艦長となって貴女を…)

 

その懐中時計は、ラッサンが艦長職に抜擢された際に逸仙から贈られたものだ。

二人とも奥手であるため未だにプラトニックな交際が続いているが、このように愛情は確かなものらしい。

 

「力を以て山を抜き、気迫を以て世を覆う…か」

 

「艦長?」

 

突如として脈絡無く呟いたラッサンに怪訝な目を向ける副長。

それに対しラッサンは、頷きながら応えた。

 

「ムーとサモアがあった世界のとある英雄の詩、との事だ。気高く強く、愛に生きたらしいが…我々もそうありたいな」

 

懐中時計を再び懐に戻しながらフッと笑みを浮かべるラッサン。

逸仙から贈られた懐中時計の裏蓋…そこには"抜山蓋世"と彫り込まれていた。




ラッサンのあれはフラグではないのでご安心を

今後、お色気シーンは…

  • 今より増やせ
  • このぐらいでいい
  • もう少し減らしていい
  • もっと減らして
  • 無くていい
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