異世界の航路に祝福を   作:サモアオランウータン

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169.優雅なる責務

──中央暦1641年7月18日午後3時、ムー国デヴァルポート軍港沖合──

 

対水上艦砲撃訓練や対空射撃訓練、戦闘機同士による空対空戦闘訓練は一通り完了し、現在は艦載機による対艦攻撃訓練を実施している。

 

──ブォォォォォォ…

 

今回の演習に参加したロイヤル艦隊の旗艦『イラストリアス』の飛行甲板から、新型の蒸気カタパルトにより1機のプロペラ機が飛び立つ。

見た目は単発単座のやや大柄な戦闘機に見えるが、実際は戦闘機ではない。

幅広な主翼には左右それぞれ7ヶ所にも及ぶ兵装架が取り付けられており、胴体の中心軸線上の物を合わせれば合計15ヶ所にも及ぶ。

普通の戦闘機であれば増槽や多少の対地攻撃兵装を搭載出来れば十分であるため、3〜5ヶ所もあれば良いだろう。

そう、この機体は多数の兵装を懸架する必要のある攻撃機、或いは爆撃機である。

その名も『A-1 スカイレイダー』、これまで採用していた『TBF アヴェンジャー』の後継となる機体だ。

急降下爆撃機と雷撃機を統合する目的で開発された本機は、最大2800馬力にも及ぶエンジンにより4発爆撃機にも匹敵する約3.1トンものペイロードを誇っている。

更にはあらゆる性能が前任機であるアヴェンジャーよりも格段に優れており、非常に高い運動性も持ち合わせている事から実質的には爆撃機であり雷撃機であり、戦闘機でもあると言う正に万能機と呼べるものに仕上がっている。

 

「わぁ〜…指揮官さまっ。あの飛行機、スゴイです♪」

 

そんなスカイレイダーが飛び立つ姿を見てはしゃぐ小さな人影。

輝く銀色のセミロングボブに浅い海の様な碧眼。純白のドレスに、背中には妖精の羽を模した飾りが特徴的なKAN-SEN『リトル・イラストリアス』だ。

本来であれば彼女はサモア基地で待機する筈だったのだが、本人の強い希望で見学の為に同行している。

 

「確かに大出力エンジンを積んでるから音もかなりのもんだな。まあ、ジェット機の方が性能的にはいいが…」

 

楽しげにはしゃぐリトル・イラストリアスを抱き上げ、艦橋にある航空管制室の窓から飛行甲板を見下ろしていた指揮官が彼女に同意するように小さく頷きながら述べた。

 

「ですけど、ジェット機は滑走路のコンディションによっては運用が困難になってしまいますわ。未舗装の滑走路では異物を吸い込んでエンジン破損、木製の飛行甲板ではジェット噴流によって火災の可能性…強き力には、常に代償が伴うと言う所でしょうか?」

 

指揮官の言葉を続けたのは、彼の腕に抱かれているリトル・イラストリアスと同じような白いドレス姿のKAN-SEN…『イラストリアス』だ。

今まで管制室に持ち込んだティーセットとテーブルでティータイムを楽しんでいた彼女だが、1杯の紅茶を飲み干すと立ち上がって指揮官の傍らに歩み寄ってきた。

そしてそのまま彼の腕に自らの腕を絡め、しなだれかかる。

女児を抱き上げている男と、その男と非常に親密そうな美女…見た目は完全に子持ちの夫婦であるが、指揮官はイラストリアスの腕をやんわりと払い除け、リトル・イラストリアスをそっと床に下ろした。

 

「よせ、こんな事をする為にムーまで来た訳じゃない。それに、他の奴らに知られたら厄介…」

 

「あら、指揮官さまったら…昨日の夜はあんなに…」

 

──ブォォォォォォ…キッ…キッ…

 

イラストリアスが言葉を続けようとした瞬間、飛行甲板に別の機体が着艦した。

こちらもプロペラ機であるが、先程発艦したスカイレイダーと比べるとかなり小柄である。

こちらも新開発された『F8F ベアキャット』だ。

スカイレイダーと同型のエンジンに、重桜の"ゼロ"からインスピレーションを受けたという小型軽量の機体を持つ、"究極のレシプロ戦闘機"の名に相応しい機体だ。

 

「わぁ〜…あの飛行機もカッコいいです!」

 

イラストリアスから爆弾発言が飛び出す直前にベアキャットが着艦した事で、リトル・イラストリアスの興味が逸れる。

その様子に指揮官は胸を撫で下ろし、イラストリアスへ非難がましい目を向けた。

 

「妙な事を口走るな。教育に悪いだろう」

 

「ふふっ、冗談ですよ♪それにしても…指揮官さまがそんな事を仰るなんて。いい父親になれますね♪」

 

ペロッと小さく舌を出していたずらっぽい笑みを浮かべるイラストリアスに、呆れたように肩を竦める指揮官。

しかし、リトル・イラストリアスはそんな二人に気付いていないのか、ぴょんぴょん跳ねながらはしゃいでいた。

 

「あの飛行機があれば、愛と平和の敵をボコボコに出来ますねっ♪」

 

「…ヴィクトリアスに子供の世話は任せられんな」

 

「あら…あの娘、ヴィクトリアスにはよく懐いてますよ?」

 

優雅なロイヤルレディとは一体何なのか…そんな疑問を噛み殺しながら指揮官は、憮然とした様子で遠目に見えるスカイレイダーが魚雷を投下する様を眺める事しか出来なかった。

 

 

──同日、空母『ジェネラル・パンドール』戦闘指揮所──

 

「攻撃隊、魚雷投下…4本中、2本命中。標的艦、沈みます」

「爆撃隊…全弾命中せず!」

「第二次爆撃隊、発艦して下さい!」

 

ロデニウス連邦海軍から派遣された演習艦隊旗艦である『ジェネラル・パンドール』の戦闘指揮所では、戦果報告と航空管制の声が飛び交っていた。

そんな中、艦隊司令を務めるパンカーレは眉間に皺を寄せた難しい表情を浮かべている。

 

(むぅ…この空母は確かにこれまでのマイハーク級軽空母より規模が大きくなり、今までのように手狭さを感じなくはなったが…その分、やる事が多くなったなぁ…)

 

チラッと窓から飛行甲板を見下ろす。

そこには愛機に向かって走って行くパイロットや太いホースを抱えた給油作業員、爆弾や機銃弾を台車に載せて運ぶ兵装作業員等が艦載機の合間を縫うようにして動き回っている。

何せ今まで主力空母としていたマイハーク級の搭載機量は最大でも45機程度であったが、このジェネラル・パンドール…サモアから提供された『エセックス級』の準同型艦である『タイコンデロガ級』に蒸気カタパルトやアングルドデッキを装備した本艦は、最大で150機もの艦載機を運用出来る。

単純計算で3倍以上の人員が必要なのだ。

確かに大型空母は頼もしい存在だが、流石に運用の難しさは如何ともし難い。

 

「パンカーレ司令。随分と怖い顔になっておりますよ?」

 

大型空母運用の難しさに頭を悩ませていたパンカーレの背後に声がかけられた。

振り向くと、そこには元ロウリア三大将軍の一人であったスマークが立っていた。今の彼は、このジェネラル・パンドールの艦長として手腕を振るっている。

 

「あぁ、スマーク艦長。いや…これ程の巨艦の運用は難しい…と、思いましてな」

 

「ははは…確かに、そうですなぁ…ですが今の内に慣れませんと。今後は更に大型の空母…それこそエンタープライズ殿のような空母の就役も目指している、との事ですから」

 

「更にはアズールレーンで先行配備されている超音速戦闘機や、ムーと共同開発している攻撃機等も配備される予定もありますからな。兵士達も新兵器を使い熟す為に努力しています。我々も全力を尽くしませんと…」

 

「はっはっはっ!これでは早期退職して、退職金で長閑な田舎暮らしとはいきませんな。少なくとも、我が友の名を冠した艦を途中で投げ出したくはありませんから」

 

態とらしく自らの手で肩を揉みながら深いため息をつくパンカーレと、快活に笑いながら決意を新たにするスマーク。

ムーやアズールレーンばかりが目立つが、彼らも着実に力を付けているのであった。

 




あとは陸上兵器の話と、各国の動向の話を書いてから本格的なグ帝編に突入したいと思います

今後、お色気シーンは…

  • 今より増やせ
  • このぐらいでいい
  • もう少し減らしていい
  • もっと減らして
  • 無くていい
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