派手な四大勢力ではなく、秘密のヴェールに包まれていた北連がそれを教えてくれるとは…
あと、涙滴型潜水艦の登場はちょっとビックリしました
──中央暦1641年8月12日午後2時、神聖ミリシアル帝国帝都ルーンポリス──
神聖ミリシアル帝国では月に1度、皇帝が臨席する帝前会議が行われる。
これは現皇帝であるミリシアル8世が即位してから続く習慣であり、この帝前会議によりミリシアルは国家運営方針を定めている。
そして今回の帝前会議の議題は勿論、厶ーにて行われた国際演習についてであった。
「私からよろしいでしょうか」
会議が始まって直ぐに挙手をしたのは、国防省長官のアグラ・ブリンストンだ。
彼は観戦武官として国際演習を見学した面々の一人である。
「先日行われた厶ー国とロデニウス連邦、アズールレーンによる演習ですが目を瞠るような兵器が多数投入されました。お手数ですが、配布した資料の8ページを開いて下さい」
アグラの言葉に従って会議の参加者が様々な資料を纏めた冊子を捲る。
そこには観戦武官達が撮影した様々な魔写や、被写体の解説文が印刷されている。
「先ず、天の浮舟…ではなく航空機についてですが、赤い線で囲んである物に注目して頂きたい。特筆すべきはロデニウス連邦とアズールレーンが投入した『F8Fベアキャット』と呼ばれる機体でしょう。見た目は厶ーが運用するプロペラ機をより洗練させたような物ですが、なんと2000馬力超のエンジンを搭載しているとの事で最高速度は700km/hに匹敵し、更には小柄な機体であるため運動性能、加速性能、上昇力、急降下能力、離着陸性能にも優れています。また、武装も我が国の魔光砲に相当する20mm機関砲を4門装備し、対地攻撃用の爆弾等も1トン以上搭載出来るとの事です」
参加者達がざわつく。
それもその筈、何せミリシアルに配備されている戦闘機こと制空戦闘型天の浮舟『エルペシオ3』の最高速度は凡そ600km/h程度。
速度こそそれなりだが、如何せん加速力が悪く、一度減速すると速度回復に手こずるという欠点があった。
他にも速度を確保する為に軽量化を施した結果、機体強度が低下して急降下等の急激な機動を行うと空中分解の危険があったり、爆弾等がロクに搭載出来ない為汎用性に欠けたり、魔光砲の取り付け位置とエアインテークの相性が絶妙に悪く射撃中に発射薬代わりの粉末魔石の残りカスがエンジンに吸い込まれてコンプレッサーストールを起こしたりと色々と問題を抱えている。
それでも世界最強の座を維持している辺り、問題を補う為に様々な運用方法を編み出している事は特筆すべき点であろう。
「そして、厶ーの『TBFアヴェンジャー』、ロデニウス連邦・アズールレーンの『A-1スカイレイダー』ですが、これらの機体自体もさる事ながら搭載された兵器はかなりの脅威となるでしょう。その名も『魚雷』…海中を自走し、艦艇の喫水線下を攻撃する為の兵器です。資料の20ページをご覧下さい」
パラパラと紙の擦れる音が鳴る。
参加者達が開いたページに掲載されていたのは、3枚の魔写だった。
一枚目は各所に赤いマーキングが施された大型の巡洋艦らしき艦船が凪いだ海に浮かんでいる様が写し出されており、二枚目はその巡洋艦が大きな水柱に包まれる様子、三枚目はその巡洋艦らしき物が真っ二つに折れて沈み行く様が克明に記録されている。
「これはアズールレーン側から派遣された標的艦であり、船体自体の大きさや武装面では我が国の『シルバー級魔導巡洋艦』と同規模、物理的な装甲は遥かに厚くなっていると思われます。…皆様もお察しの通り、この標的艦は魚雷による攻撃を受けて轟沈しました。しかもたったの2発…1発は艦首に直撃し、大きな効果は無かったようなので実質的に1発で大型巡洋艦を撃沈したという事になります」
参加者達のざわめきが更に増した。
神聖ミリシアル帝国は勿論、厶ーにおいても巡洋艦以上の大型艦艇は同レベル以上の艦艇による砲撃戦でしか沈める事が出来ないと考えられている。
しかし、それが覆ったのだ。
小型の航空機に搭載出来るような兵器で大型艦艇を撃沈出来る…極端な事を言ってしまえば数人で1000人の水兵と莫大な資金と時間を費やして建造した戦艦を海の藻屑と化す事が出来てしまう。
「勿論、これらは理想的な条件で発生したものですが、それでも小型艦艇や航空機で主力艦を撃破出来る可能性があるというのは、非常に厄介な事です。例えるなら取るに足らないような羽虫が、ある時から致死性の毒を持ったようなもの…とでも言いましょうか。ともかく、万が一彼らが敵となった際には我が方より優れた戦闘機を打ち倒し、魚雷を搭載した機体を撃墜しなければ艦隊は大きな損害を被る事になるでしょう」
アグラの言葉に参加者、特に軍関係者が頭を抱える。
理屈で言えば簡単な話だ。
制空権を取る為に敵戦闘機を掃討し、爆弾やら魚雷やらを抱えた攻撃機を撃墜する。しかし、それは決して簡単な事ではない。
速度も運動性も優れた敵を掃討する事は難しく、また大規模な航空攻撃を想定していないミリシアル艦隊ではワイバーンより遥かに優れた性能を持つ航空機を撃墜する事は不可能に近い。
「しかし、彼らは友好的であり我々と共に対魔帝を想定した兵器開発の為に様々な技術を公開しています。現状は、我々が無礼な態度を取らなければ彼らが敵対する事は無いと言えるでしょう。続いて、海軍戦力ですが…資料の30ページを開いて下さい」
ホッとしたような、或いは悔しいような表情を浮べて資料を捲る参加者達。
ミリシアルは比較的近代的な価値観を持ってはいるが、中には「ミリシアルはいつか復活するであろう魔帝に対抗する為の主戦力であり、他国は弾除けや資源供出の為の存在である」と言う思想の持ち主も少なくはない。通称、"ミリシアル至上主義者"と呼ばれている。
そんな彼らからしてみれば東の果てに現れた新興国が自国よりも優れた技術を持ち、更には共同開発という名目で兵器開発に干渉してくる現状は気に食わないものであった。
しかし、ロデニウス連邦・アズールレーンとの友好関係構築は皇帝肝いりの方針であり、反発しようものなら首が飛ぶ…とまではいかないがキャリアに傷が付き、出世街道から転落してしまうだろう。
それに、アズールレーンの力が確かなものであると言うのは理解出来た。
彼らとて、自分のプライドの為に国の発展を阻害する事は愚策であると分かっている。
「厶ーはアズールレーン本拠地であるサモアの造船ドックを借りて、大型空母や新型戦艦の建造を進めているようです。また、アズールレーンから中古で購入したとされる各種艦船は高度な対空戦闘能力を持っており、戦艦は40cm級の主砲を搭載し我が国のミスリル級魔導戦艦を上回る巨体を持っております。空母はどれも全長200mを優に超えており、演習では新造されたと見られる空母の姿もありました」
資料の魔写には、厶ー海軍旗を掲げる戦艦と空母…アズールレーンからスクラップと言う名目で譲渡された『ラ・アカギ』と、『コロッサス級航空母艦』の設計を流用しサモアの造船ドックで建造された『ラ・ヴォルト』が映し出されていた。
ラ・アカギは多数の副砲や機関砲を備えており、どれもかなりの仰角を付けてある事から明らかに対空戦闘を意識した物だと推測出来る。
また、ラ・ヴォルトはミリシアル海軍の主力空母である『ロデオス級航空魔導母艦』に匹敵する全長を持ち、無駄が無いながらも飛行甲板の外縁部に多数の高角砲や機関砲が備え付けられている。
「これらには多数のレーダーや、それを利用した射撃補助機構が装備されており演習では非常に高い命中率を記録しています。もっとも、厶ー水兵の練度による可能性も有りますが。あとは、先ほど説明した魚雷を装備した駆逐艦…我が国で言う小型艦等もありますが、これは後ほど説明致しましょう。続いては陸上兵器ですが、資料の50ページを参照下さい」
続いて示された資料には、砲撃する戦車や野砲が掲載されていた。
「こちらは我が国には存在しない兵器、戦車です。魔導車のように動力を使用して走行し、野砲の直撃にも耐えうる装甲を備え、大口径砲や多数の機関銃を装備しています。しっかりした装備が無ければ、大隊規模の歩兵を動員したとしても一方的に蹂躪される事でしょう」
「なるほど…ロデニウス連邦とアズールレーン、その力は確かと言う事か」
アグラの説明を沈黙して聞いていた皇帝、ミリシアル8世が重々しく口を開いて威厳に満ちた声色で告げた。
「はい。私も…部下達も彼らの力を前に圧倒されてしまいました。…認め難い事実ですが、我が国を上回る力を持っている事は最早疑いようがありません」
一言一言、噛み締めるように紡がれたアグラの言葉は決して大きくはないが、やけに会議室に響いた。
確かに彼の言う通り、ロデニウス連邦やアズールレーンは神聖ミリシアル帝国よりも高い軍事力を持っている。
それは会議の参加者達も理解せざるを得なかった。
「ふむ…では、先日ロデニウス連邦より打診があった『戦力共有協定』だったか。それへ参加すべきではないか?余もロデニウス側の力は十分に承知した。そして、皆も理解したであろう?」
ミリシアル8世の言葉に参加者達が重々しく頷く。
"世界最強"である自国が新興国と軍事同盟に準じた協定を結ぶ事…それは自国の力が不足していると認める事と同義だが、それを認めざるを得ない程の衝撃だったのだろう。
「…よろしい。では、ロデニウス側が打診した『戦力共有協定』への参加を我が名において推し進めよ。異議のある者は起立を」
ミリシアル8世の言葉を受けた参加者の答えは着席、つまり満場一致で可決である。
「時に…そうなればよりロデニウス側とより深い関係を築く必要がありますな」
「なんでもアズールレーンの総指揮官は若い男…しかも未婚だと言うではありませんか。どうでしょう、我が国の貴族の娘を充てがってやれば…」
「フィアーム殿、貴女はロデニウス連邦に大使として赴任しているでしょう?その総指揮官とやらの好み等は…」
「ダメです!そんな事は絶対にしてはなりません!結婚と言うものは互いの気持ちが重要なのですから!えぇ、えぇ…絶対にダメです!陛下もそう思われますよね!?」
「う…うむ…確かに貴殿の言う通りやもしれんな…今のところ、此方が誠実に対応を行えばロデニウス側はそれに応えておる。政略結婚のような搦め手を使っては不誠実だと思われるかもしれぬな…」
あと厶ーとグ帝の話を書いてから対グ帝編に移ろうかと思います
今後、お色気シーンは…
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今より増やせ
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このぐらいでいい
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もう少し減らしていい
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もっと減らして
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無くていい