異世界の航路に祝福を   作:サモアオランウータン

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ふじさん様より評価8を頂きました!

とりあえず長々と続いた広がる世界、変わりゆく国々編はこれにて一区切りとなります!

次回からはグ帝戦編ですが…色々と勉強するので、もしかしたら投稿が遅れるかもしれません
予めご了承下さい


176.演習を終えて〜グラ・バルカス帝国の場合〜

──中央暦1641年8月13日午前10時、グラ・バルカス帝国帝都ラグナ──

 

厶ー大陸より西へ5000km程の海域に浮かぶ陸地。島と呼ぶには大きく、大陸と呼ぶには小さな陸地こそ近年、第二文明圏を荒らし回っている『グラ・バルカス帝国』の本土である。

そんな帝国本土の北方に位置する『帝都ラグナ』は、その繁栄した街並みを、漂う靄の中に秘匿していた。

霧…ではない。それは建ち並ぶ工場からの排煙や、そこで働く労働者や出来上がった製品を運ぶ為のバス・トラックが吐き出す排気ガスにより発生した光化学スモッグだ。

更には無秩序に海や川に垂れ流される廃液により海は濁り、幾つものゴミが漂流している。

それによりこのラグナに住まう多くの者は呼吸器系疾患を抱え、目は充血してしまっているが彼らはそれを"帝都患い"と呼び、帝都に住む事が出来るエリートの証として寧ろ誇っているような有様だ。

こんな惨状を見れば、環境保護に懐疑的な人物であっても過激派エコロジストに鞍替えするであろう。

そんなラグナに置かれた各種省庁の一つ、主に仮想敵国の情報を収集・解析を行っている『情報局』の部署である『技術部』では一人の職員が頭を抱えていた。

 

(な、なんだこの兵器は…!厶ーが保有する兵器は我々から見れば二世代以上前の物ばかりだった筈…なのに、何だこれは!)

 

デスクに広げられた何十枚もの写真や手書きの報告書の前で険しい表情を浮べているのは、情報技官のナグアノである。

彼が何故こんな締切間近の作家が如き表情を浮べているのか…それは彼に与えられた仕事が原因だった。

 

(先月あった厶ーと"新興国"であるロデニウス連邦との合同演習…大した情報は得られないと思っていたのに…)

 

そう、彼を悩ませているのは先日行われた厶ーとロデニウス連邦・アズールレーンによる国際演習についてだった。

グラ・バルカス帝国はこの国際演習が行われると知るや否や直ぐ様秘密裏に観戦者…つまりはスパイを送り込んだ。

諜報員は勿論、情報局直属の潜水艦を用いて海上演習も覗いた。

その結果得られた数多くの情報…それはナグアノに胃痛を与えるには十分過ぎた。

 

(厶ーの主力戦闘機は複葉機だった筈…なのに何だこれは!)

 

先ずナグアノの目に映ったのは逆ガル翼が特徴的な戦闘機、『F4Uコルセア』だ。

停泊している空母『ラ・ヴォルト』の甲板に駐機している姿を遠目に撮影されている。

 

(単座戦闘機だとは思うが…この大径プロペラに折れ曲がった主翼…おそらくは大出力エンジンの力を効率良く発揮する為だろうし、曲がった主翼は短く頑丈な主脚を装備する為だろう。不味いな…厶ーは我が国を上回るエンジンを開発したのかもしれない)

 

彼の推測は当たりである。

現在、グラ・バルカス帝国の主力戦闘機である『アンタレス型艦上戦闘機』だが、幾度ものマイナーチェンジを繰り返した現行モデルの"07式"でもエンジン出力は1200馬力程度…それに比べてコルセアは2000馬力超だ。

やたら滅多に出力が高ければ良いと言う簡単な話ではないが、それでも最高速度や加速性能を追及するのであれば出力が高いに越した事はない。

 

(そして…魚雷かこれは?となるとこれは雷撃機と見るべきだろうな。厶ーに魚雷は存在しないと言う話だったのに…)

 

『TBFアヴェンジャー』とその近くに置かれた台車上の魚雷を見て冷や汗を浮べながらも次の資料に目を移す。

 

(厶ーに配備されたと思われる自動小銃…我が国でも一部精鋭部隊にしか装備していないのに!それにこの戦車…我が国の『ハウンド戦車』より強そうだ…何…?40km/h近くの速度を発揮している!?馬鹿な…諜報員の目測が間違っているんじゃないのか!?しかも主砲は50mm以上は確実…ま、不味い…ハウンド戦車の装甲では耐えられんぞ!)

 

と言うのもグラ・バルカス帝国の戦車は基本的には対歩兵戦闘を意識した物となっており、対装甲車輌を意識したバリエーション車輌が最近ようやく開発されたに過ぎない。

対して厶ーの戦車は、アズールレーンの戦車に追い縋るべく開発された。

比べるのも酷かもしれない。

 

(それに戦艦や空母…厶ーの最新鋭戦艦は『ラ・カサミ級戦艦』だった筈だ!それなのに…この戦艦は空母に改装された我が国の戦艦そっくりじゃないか!)

 

ナグアノが注目しているのは、アズールレーンから厶ーに贈られた『ラ・アカギ』と『ラ・カガ』だった。

実はグラ・バルカス帝国で建造されていた『ダイモス級巡洋戦艦』と『フォボス級戦艦』、それがそれぞれ『天城型巡洋戦艦』と『加賀型戦艦』に酷似しているのだ。

しかし、ダイモス級とフォボス級は先帝であるグラ・ルーメン指導の元で建造された物であり、進水後にグラ・ルーメンが崩御すると後を継いだ現皇帝グラ・ルークスが空母戦力拡充の為に空母に改装させたと言う経緯がある。

それ故か帝国民の間ではダイモス級、フォボス級は"幻の戦艦"としてそれなりの知名度を誇っている。

 

(確か上層部は来年開催される『先進11ヶ国会議』で全世界に対して宣戦布告する方針だった筈…ダメだ!厶ーがこんな兵器を保有している以上、そんな事をすれば多大な被害を受けるどころか下手をすると敗北するかもしれない!…よし、この情報を纏めて再来週の御前会議に提出しよう。そうすれば帝王陛下も宣戦布告を先延ばしにされるかもしれない!)

 

嫌な予感に支配されたナグアノは、最悪の未来を想像して直ぐ様報告書の作成に取り掛かった。

 

 

──一週間後、高級料亭『ミルトコウモ』──

 

帝都ラグナの郊外。比較的汚染の少ない地域に建てられた高級料亭『ミルトコウモ』。

そこでは二人の男がテーブル上に並べられた贅を尽くした料理に舌鼓を打ちながら密談をしていた。

 

「ふむ…それで、情報局の若造がこれを御前会議に提出しようとしたと…」

 

「えぇ、何とも荒唐無稽な報告でしてな。思わず笑ってしまいましたよ」

 

分厚い書類の束を興味なさげにペラペラと捲るのは、グラ・バルカス帝国有数の軍需企業である『カルスライン社』役員のエルチルゴ。

そして、彼の対面に座るのは『グラ・バルカス帝国帝王府』副長官のオルダイカだ。

 

「なになに…?我が国のアンタレスを上回るエンジンを搭載した戦闘機に、ハウンド戦車以上の戦車…それに幻の戦艦であるダイモス級とフォボス級に酷似した戦艦?」

 

「ハッハッハッ!そんな兵器、厶ーが作れる訳がありません。この報告書を作った情報技官は現実が見えていませんなぁ…」

 

エルチルゴが手にしているのは、ナグアノが寝る間も惜しんで作成した報告書だ。

 

「"以上の事から厶ーは我々の想定を上回る力を持っており、決して油断出来る相手ではない。本格的な開戦は時期尚早だと考えられる"…フッフッフッ…なんともまぁ…この情報技官は敵を過大評価する傾向がありますな」

 

「まあ、ですが情報局からの報告書ともなれば会議の流れを変えてしまうやもしれません。それは此方で処分しておきます」

 

「えぇ…では、お願いします」

 

エルチルゴがオルダイカに書類の束を返すが、エルチルゴはそのついでにオルダイカに耳打ちした。

 

「ところで…あの件ですが…」

 

「分かっておりますよ。我が国が全世界に対して宣戦布告すると同時に、貴社に大量発注をかけるように軍部に通達します」

 

「ありがとうございます。その見返り…と言っては何ですが…」

 

嫌らしい笑みを浮べたオルダイカに、エルチルゴが懐から小さな包みを取り出して彼に渡す。

オルダイカはそれを開け、より深い笑みを浮べた。

包みに入っていたのは透明で綺羅びやかな鉱物…宝石だ。

そう、彼らは癒着している。

オルダイカは帝王府副長官と言う立場を利用し軍の制式採用兵器をカルスライン社の製品にする事の見返りに、エルチルゴから多大な賄賂を受け取っているのだ。

 

「まあ、この報告書とまでは行かなくても厶ーがそこそこの力を持っていれば、損耗等でより多く貴社の兵器を購入出来るでしょう」

 

「おぉ…そうなると、新しく生産ラインを作る必要がありますな」

 

国家の中枢と兵器製造関係者の癒着…それはよくある話である。

しかし、戦争特需で儲けるどころではない状況に陥る事になるとは…彼らでは想像も出来なかったであろう。




さて…アドバイスを受けて買った戦闘機と空中戦の100年史を読み込みましょうか

今後、お色気シーンは…

  • 今より増やせ
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  • もっと減らして
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