──中央暦1642年4月21日午後1時、神聖ミリシアル帝国カルトアルパス、厶ー国戦艦『ラ・カサミ』艦上──
カルトアルパス港の第二文明圏エリアに停泊した厶ー海軍の国産最新鋭戦艦『ラ・カサミ』の艦橋で、艦長であるミニラル・デュバルが近くに停泊している巨艦を睨むようにして観察していた。
「あれがグラ・バルカス帝国の戦艦…このラ・カサミより…いや、『ラ・アカギ』よりも大きいな…」
ミニラルが観察している戦艦と言うのは勿論、グラ・バルカス帝国が派遣した『グレード・アトラスター』である。
「そうですね…明らかに『ラ・アカギ』や『ラ・カガ』が搭載している40cm砲よりも大口径に見えます。それに艦橋の上部に多数のアンテナらしき物がある事から、レーダー管制射撃を行えるかもしれません」
「グレード…アトラスターぁぁぁ…」
腕を組んで眉間に皺を寄せていたミニラルに声がかけられる。
「君は確か…」
「はい、軍備総監部先進兵器技術課長のマイラス・ルクレール少佐と申します。こちらはKAN-SENのラ・ツマサです」
ミニラルに敬礼しながら自己紹介するのは、厶ー軍内ではちょっとした有名人になりつつあるマイラスであった。
「やはり、マイラス君か。君の事はよく聞いているよ。なんでも陸軍の新型戦車の基本設計を担当したとか、我が国初めてのKAN-SEN運用者だとか、我が国有数の技術者だとか…」
「恐縮です。ですが、戦車の設計に関しては製造企業の努力あってのものですし、ラ・ツマサ…KAN-SENの運用者となったのもサモアの力があったからです」
褒められる事に擽ったさを覚えたのか、後頭部を掻くような仕草をしながら何度もペコペコと頭を下げるマイラス。
だが、そんなマイラスの隣には明らかに殺気立っている女の姿があった。
「赦さない赦さない赦さない赦さない赦さない赦さない赦さない赦さない赦さない赦さない赦さない…」
ブツブツと小さな声で何度も怨嗟の籠もった言葉を口にするのは、ラ・ツマサだ。
彼女の眼はグレードアトラスターに向けられており、マイラスが手を握っていなければ直ぐにでも飛び掛かりそうな雰囲気である。
「その…彼女は大丈夫なのか?」
「えぇ…多分…大丈夫だと…」
普段のあどけなさが残る可愛らしい顔立ちからは掛け離れた、殺気と憎悪に満ちた顔…軍人として長らく勤めてきたミニラルすらも冷や汗をかいてしまう。
そもそもラ・ツマサは平行世界の厶ーで建造され、準姉妹艦とも言えるラ・カサミ級達が沈んだ後に疎開民を逃がす為に単身グレードアトラスターが率いるグラ・バルカス帝国艦隊に挑み、沈められたというカンレキを持っている。
それ故か、グラ・バルカス帝国…特に自身や尊敬するラ・カサミ級を沈めたグレードアトラスターには深い憎悪の感情を持っているのだ。
そんな仇敵が目の前に居る…殺気を引っ込めろと言うのは酷な話であろう。むしろここまでガマンしている事は称賛に値するかもしれない。
「燃やす…叩き割る…沈める…」
しかし、いくらガマンしているとは言えこんな殺気立っている者が居るのは他の者にとっては、心休まらないであろう。
その証拠に、艦橋内の幾人かはすっかり萎縮してしまっている。
「艦長、アズールレーン艦隊のダンケルク殿とル・テメレール殿がいらっしゃいました!」
何とも気不味い雰囲気だが、救いの手とは唐突に訪れるものだ。
そう報告してきた部下にミニラルはこれ幸いと歩み寄り、何度も頷きながら応えた。
「そうかそうか!分かった、お二人は今どちらに?」
「はっ!副長からの指示で直ぐそこまでご案内致しました」
「では、こちらへ案内してくれ」
ミニラルの指示に従い一旦艦橋から出た部下だが、直ぐに二人の美女を連れて戻ってきた。
「初めまして、アズールレーン所属の『ダンケルク』と申します。マイラスさんとラ・ツマサさんはお久しぶりです」
「初めまして!ダンケルクさんの護衛の『ル・テメレール』って言います!」
手入れの行き届いた灰色の長髪に切れ長の鋭い目付きという冷徹さを感じさせる風貌ながらも、纏う雰囲気は柔和なヴィシア所属の『ダンケルク』
そしてダンケルクの側に控えているのは、ボリュームのある金髪とコロコロ変わる表情がなんとも魅力的なアイリス所属の『ル・テメレール』だ。
「ご丁寧にありがとうございます。私はこのラ・カサミの艦長を勤めております、ミニラル・デュバルと申します」
「あ、どうもダンケルクさん。久しぶりですね」
ミニラルが二人に応えるように自己紹介を返し、マイラスはダンケルクとの久しぶりの邂逅に笑みを浮かべた。
「それでダンケルク殿、ル・テメレール殿、如何されました?」
「はい、実は指揮官からの提案で厶ーの皆様と親睦を深める為に食事会を開く事になりまして…よろしければ、私達の艦隊へご足労お願い出来ますか?」
「リシュリュー様やアルジェリーさん達が腕によりをかけて料理してくれますよ!」
ミニラルの疑問にダンケルクとル・テメレールがそう応える。
「それは…いいですね。私もサモアで食べたアイリス料理を久しぶりに食べたい気分です。…ラ・ツマサも行くよな?」
「はいっ、勿論ですよ!主の居る所が私の居場所…是非ともお供させて下さい!」
マイラスが声をかけると、ラ・ツマサは猫を被ったかのように殺気を引っ込めて彼の腕に抱き着く。
その様子に艦橋勤務の者はホッと胸を撫で下ろし、ミニラルも苦笑を浮かべつつも安心した様子でダンケルクに返事をした。、
「お誘い頂き、ありがとうございます。では、後ほどお邪魔いたしましょう」
──グラ・バルカス帝国戦艦、『グレードアトラスター』──
西方世界に君臨する異世界の覇者、グラ・バルカス帝国。
その力の象徴であり、世界最強最大と謳われる戦艦『グレードアトラスター』の艦橋で艦長であるラクスタル・ボイルドが双眼鏡片手に苦い顔をしていた。
「諜報屋め…また適当な仕事をしたな?厶ーにあのような戦艦と空母があるとは聞いていないぞ」
ラクスタルの目は、やや離れた位置に停泊している厶ー艦隊…その中でも一際目立つ戦艦と空母に注視されている。
(あの戦艦、ダイモス級巡洋戦艦にそっくりだな…しかし、計画時のダイモス級の副砲は砲郭式だった筈。あの戦艦は砲塔式で、砲身にかなりの仰角が付けられるようになっているようだ。つまり、副砲と高角砲を兼任する両用砲だな)
ラクスタルが考察しているのは、サモアで近代化改修された『ラ・アカギ』だ。
事前に入手した情報によると厶ーの戦艦は最新鋭のものでもラ・カサミ級だった筈…だというのに、彼の目に映っているのは自国の戦艦にも匹敵するような戦艦だった。
(しかもあの空母…大きさもだが、甲板上の艦載機…厶ーの主力戦闘機は複葉機だった筈だぞ!?確かに僅かに複葉機もあるが…ほとんど単葉機ではないか!)
続いてラクスタルが目を向けたのは、厶ーの最新鋭空母である『ラ・ヴォルト』である。
その飛行甲板には若干の『ディープ・マリン』も見られるが、大多数は『F4U コルセア』や『TBF アヴェンジャー』といった近代的な全金属製単葉機であった。
(それに他の艦船も連装機銃や両用砲を装備しているようだ。不味いな…思ったよりも手こずるかもしれん。それに…)
厶ー艦隊から視線を離し、更に離れた位置に停泊している艦隊を観察する。
そこは第三文明圏エリアであり、彼の興味は各国の護衛艦隊中、一番の大艦隊でやってきたアズールレーン艦隊に向けられた。
(戦艦が5隻…1隻はやや小さく、1隻だけ3連装砲塔で残りは小さいのも含めて4連装砲塔か。4連装砲塔とはまた珍しい物を…)
先ず目を引いたのは、何処と無く優美さを感じる5隻の戦艦であった。
因みにやや小さい戦艦とはダンケルクの事であり、1隻だけある3連装砲塔の戦艦とは『シャンパーニュ』である。
(空母は1隻だけ。小さいな…あんな空母では搭載機数も大した事は無いだろう。あとは…大小の巡洋艦と駆逐艦らしき艦船…ん?あれはまさか魚雷…?いや、待てよ…)
嫌な予感を覚え、再び厶ー艦隊に双眼鏡を向ける。
見えたのは駆逐艦に装備された筒を束ねたような構造物…
(…やはりか!あれは間違い無く魚雷発射管だ!むぅ…これはますます不味いぞ…流石のグレードアトラスターも魚雷を喰らい続けたらどうなるか分からん。だが、この作戦は陛下よりの勅命…逆らう訳にはいかんな…)
キリキリと胃が痛んだ気がするが、ラクスタルはそれを無視して"作戦"を完遂する為の戦術を脳内で組み立て始めた。
──アズールレーン艦隊戦艦、『ジャン・バール』──
「ぬぉぉぉぉ…」
「お、おい…大丈夫か…?」
頭を抱えて身を捩らせ、まるで激しい痛みを堪えているかのような呻きを漏らす指揮官。
そんな彼の隣では、濃い亜麻色の髪をポニーテールにして黒や赤を基調にした改造軍服を着用したヴィシア所属の『ジャン・バール』が戸惑いつつも呆れた様子で心配するような言葉をかけていた。
「大和型に近い性能かもしれんとは言ったがよぉ…まさか本当に大和だとは思わんだろぉ!?」
そのまま天を仰ぎ、吠える指揮官。
彼が何故こんな事になっているのか…それは、お察しの通りグレードアトラスターが原因である。
「まあ、確かにオレも驚いたな…入港した時、お前が変なサプライズを仕掛けたのかと思ったぞ?」
フンッと鼻を鳴らし、グレードアトラスターを顎で指すジャン・バール。
サモア基地所属の大和型…『大和』と『武蔵』は第二次セイレーン大戦で撃沈クラスのダメージを受け、それが原因で昏睡状態となっている。
一応、姉妹艦である『信濃』は先に目覚めているのだが、彼女の姉達が目覚める気配は未だ無い。
つまりあれは大和や武蔵ではなく、紛れもなくグラ・バルカス帝国のグレードアトラスターなのだ。
「あの二人が目を覚ましたなら黙っとく訳ないだろ?信濃の時だって快気祝いのパーティーをしたんだからな」
「まあ、そうだな。…で、お前はどうするつもりだ?」
「どう、とは?」
ジャン・バールの問いかけに質問を返す指揮官。
それに対しジャン・バールは腕を組み、憮然とした様子で応えた。
「とぼけるなよ。もし、アイツが本当にオレ達に襲い掛かってきたとして、どう対処するつもりだ?」
「あぁ、それなら大丈夫だ」
指揮官はそう言うと不敵な笑みを浮かべ、グレードアトラスターに向かって指鉄砲を向ける。
「ガスコーニュとシャンパーニュに作戦は伝えてある。お前達は…」
クイッと手首を捻り、発砲による反動を再現する。
「ただ撃ちまくれ。それだけでいい」
余りにも簡潔な指示にジャン・バールは思わず天を仰いでしまう。
「…何も考えてないんだな?」
「バカ言え、そんな訳無いだろ。考えているが…何時だってシミュレーション通りとはいかん。だが、一つだけ確実な事がある」
「ほーう?」
まるで疑うようなジャン・バールの視線。
それに対し指揮官は肩を竦めながら応えた。
「ヒトが作ってヒトが動かす…なら、ヒトが壊せるのも道理だろ?」
そう言えば前話でシャンパーニュの主砲を4連装と記述してました
今は訂正しています
今後、お色気シーンは…
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今より増やせ
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このぐらいでいい
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もう少し減らしていい
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もっと減らして
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無くていい