異世界の航路に祝福を   作:サモアオランウータン

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機能は問題ありませんが…気になりますね…



195.カルトアルパス沖空戦【3】

──中央暦1642年4月25日、カルトアルパス沖──

 

雲一つ無い青空を舞う無数の影。

それらは複雑に絡み合うかのような動きを見せ、時折オレンジ色の炎とドス黒い煙を吐き出しながら眼下に広がる大海原へと堕ちて行く…

 

「くっ…ミリシアルはもうやられたのか!?」

 

響き渡るエンジンの轟音に負けじと声を張り上げ、驚愕の言葉を発するのはムー航空隊隊長であるヤンマイ・エーカーだ。

 

「我々だけで攻撃隊を…ふっ!…どうにかするのは厳しいな…!」

 

まさか"世界最強"であるミリシアルの航空隊がこんなにも早々に退場するとは夢にも思わなかったヤンマイは、下方から突き上げるように上昇する敵機から放たれる銃撃を機体を横滑りさせる事で回避すると、直ぐ様上昇に転じて上空へ逃げる敵機を追う。

 

──ブゥゥゥゥゥンッ!

 

2000馬力超のエンジンと、そのパワーを推進力に変換する大径プロペラが唸りを上げ、5トンを超えるコルセアの機体をグイグイと高みへと引っ張り上げる。

それに気付いた敵機は更にスロットルを開き、エンジンパワーを絞り出そうとするがそれでも背後に迫るコルセアは徐々に彼我の距離を詰めてゆく。

以前行われたロデニウス連邦・アズールレーンとの合同演習での実弾訓練によってヤンマイは敵機…演習時に標的機として投入された『零戦』こと『零式艦上戦闘機』によく似た『アンタレス型艦上戦闘機』の特性をある程度予想していた。

アンタレスは軽量な機体であり、非常に優れた格闘戦能力と上昇力を持つ反面、防弾と機体強度に劣るという予想だ。

そして、それはある程度的中していた。

この空戦に於いてヤンマイは既に4機のアンタレスを撃墜しているが、零戦よりも防弾性能が多少良いという事以外は概ね予想通りであった。

 

──ダダダッ!ダダダッ!ダダダッ!

 

十分に距離を詰められたと判断したヤンマイは、眼前に備え付けられたガラス板に投影されたレクティルと敵機が重なった瞬間にトリガーを引いた。

 

──ボンッ!

 

黄色い曳光弾の光が吸い込まれるように敵機の主翼に着弾し、腹の底から響くような爆音と共に主翼が千切れ飛んだ。

どうやら翼内機銃の弾倉に12.7mm弾が直撃し、誘爆してしまったらしい。

如何に優れた性能を持っていても主翼が無くては飛べる筈も無く、被弾したアンタレスはプロペラが生み出す強烈な反トルクに逆らえずに錐揉みしながら凪いだ大海原へ真っ逆さまに落ちて行った。

 

「次っ!」

 

確認するまでもなく撃墜確実な敵機から意識を逸し、次なる目標を探す。

 

「…あれだ!」

 

ヤンマイが目標と定めたのは、自機と同高度にあるアンタレスだ。

スロットルを開いて速度を上げ、一気に接近する。

 

──ダダダダダッ!

 

十分に接近し背後から射撃を開始したが、敵機はクルッと機体を左にバンクさせて射撃を回避すると速度を上げてヤンマイ機と距離を取った。

 

「避けられた!?だが…速度は此方が上だ!」

 

必中と思われた攻撃が避けられた事に驚愕するヤンマイだったが、直ぐに気を取り直すと逃げる敵機を追い始めた。

予想が正しければコルセアはアンタレスより高い性能を持っている筈…その思考はヤンマイへ余裕と共に一種の慢心を与えていた。

 

「これで…」

 

敵機の姿をレチクルに捉え、トリガーに指を掛けた瞬間だった。

 

「っ!?き…消えた!?」

 

ヤンマイは自らの目を疑った。

先程まで目の前に居た敵機…深緑色をしたアンタレスが忽然とその姿を消したのだ。

まるで幻でも見ていたかのような事態に思わず瞬間的に思考が止まってしまう。

しかし、高速で行われる空戦において僅かな思考の停止は命取りである。

 

──ガンッ!

 

「うぐぁっ!?」

 

座席のヘッドレストに後頭部が叩き付けられ、その痛みで混乱していた脳が強制的に覚醒した。

それと同時に機体全体がガタガタと無視出来ないレベルで揺れ、コックピット内に油の臭いが漂う。

迫りくる濃厚な死の気配に抗うべく急降下で逃れようと試みる…だが、機首が普段よりも下がらない。

 

──ダダダッ!ダダダッ!

 

《隊長!ご無事ですか!?》

 

死を覚悟したヤンマイだったが、彼の窮地を察したのか部下の一人が駆け付け、威嚇射撃で敵機を追い払ってくれたようだ。

その証拠に揺れるヤンマイの視界には、南西方向へ飛び去って行く敵機の姿が見えた。

 

「うぐっ…大丈夫だ…ケガは…していない」

 

まるで暴れ馬のように震える機体を制御しながら自らの体をザッと確認し、部下の問いかけに応えるヤンマイ。

幸いにも敵弾はキャノピーによって弾かれたらしく、ヤンマイ自身には後頭部の打撲以外にはケガらしいケガは無い。

 

「それより…私の機体はどうなっている?」

 

《ここから見える限りですと…エンジンカウルに幾つかの小さな穴が空いていて…あっ!》

 

「どうした?」

 

《す…水平尾翼が…》

 

狼狽える部下の言葉に嫌な予感を覚えたヤンマイは、周囲の状況に注意しながら首を捻って機体の後部を確認する。

 

「なっ…!?」

 

彼の目に映ったのは"半分程無くなっている右水平尾翼"であった。

信じ難い光景に絶句しながら前を向く。

目の前にはコルセアの長い機首…その先端付近にあるエンジンカウルにはいくつもの穴が空き、その穴からは黒いオイルが漏れ出して風によって吹き飛ばされていた。

 

「そ、そうか…」

 

急に消えた敵機、エンジンカウルの上面に空いた穴と千切れた水平尾翼…それらからヤンマイは何が起きたかを理解した。

 

「"木の葉落とし"…」

 

敵機が背後についた際、急上昇して敢えて失速状態となる事で急激に速度を落とし、敵機が自機を追い越した瞬間に慣性を利用し失速状態から回復。

敵機の目をくらましつつ背後に回り込むという高度な空戦機動『木の葉落とし』…グラ・バルカス帝国のパイロットはそれを行い、性能面で優位に立っていたヤンマイに上空から痛烈な一撃を与えたのだ。

 

「なんという失態だ…!」

 

サモアへ留学へ行った際、様々な戦術教本を読み込んでいたヤンマイは木の葉落としの存在を知ってはいたが、まさか実戦で使う者が居るとは夢にも思わなかった。

その結果、このザマである。

 

《隊長、今すぐ帰還して下さい!》

 

「あぁ…分かった」

 

エンジンにも被弾しているようだが、幸いにも停止には至っていない。

おそらくは何気筒かは機能していないが、少なくとも飛行は出来る。

しかし、このまま空戦は出来ないだろう。

 

《護衛します。どのみち我々も燃料や弾数が底をつきそうなので…》

 

「…すまない」

 

失態を演じた自分自身に激しい嫌悪感を覚えながら、ヤンマイは何名かの部下を引き連れて帰還ルートへ機首を向けた。




そう言えば、そろそろ日本版4周年ですが誰が来るんでしょうか?
これまでの法則からするとロイヤル空母な気がしますが…

今後、お色気シーンは…

  • 今より増やせ
  • このぐらいでいい
  • もう少し減らしていい
  • もっと減らして
  • 無くていい
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