異世界の航路に祝福を   作:サモアオランウータン

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アズレンも早いもので4周年ですねぇ…
生放送で何が発表されるのか楽しみ過ぎて若干寝不足です


198.胸騒ぎ

──中央暦1642年4月25日、カルトアルパス沖──

 

「艦長、間もなくフォーク海峡へ突入します」

 

大海を北上する戦艦『グレードアトラスター』の艦橋で、操舵手が緊張を顕にした面持ちで告げた。

 

「うむ。総員、警戒を厳にせよ!奴らは今まで戦ってきた連中とは違う!油断すれば、我々は艦と運命を共にする事になるだろう!」

 

その言葉に艦長であるラクスタルが応え、放送を使って艦内全体へ戒めの言葉を行き渡らせる。

今までグラ・バルカス帝国海軍が相手にしてきたのは帆船や手漕ぎ船…そんな負ける方が難しいような敵ばかりを相手にしてきたが故に海軍全体には、慢心や油断が蔓延っていた。

しかし、此度の相手は"世界最強"と名高い神聖ミリシアル帝国と、二番手のムー。

そして列強国を打ち倒し、新たな文明圏の防衛軍と名乗るアズールレーンだ。

 

「しかし、艦長。ミリシアル海軍はマグドラ群島にて東征艦隊に敗北しましたし、ムーに至っては複葉機や旧世代戦艦が主力…アズールレーンはポッと出の新顔ですし、我々の敗北はあり得ないのでは?」

 

そうラクスタルに進言するのは、副長であるカーベンだ。

一見すると彼もまた油断と慢心に塗れているようだが、実は違う。

先程カーベンが述べたような考えを持っている者はグレードアトラスター内にも少なくない。

そんな考えを持ったまま戦闘に突入すれば間違いなく痛い目を見るだろう。

そこでカーベンは敢えて愚者を演じる事でラクスタルに説明の機会を与えたのだ。

 

「カーベン副長、それは違うぞ」

 

勿論、ラクスタルはカーベンの思惑に気付いていた。

それ故に気の利く副長に内心感謝しながら、ラクスタルは言葉を続けた。

 

「確かに東征艦隊はミリシアル艦隊に勝利こそしたが、圧勝や快勝の類いではなく"辛勝"と言うべきものだったようだ。中でも、『オリオン級戦艦』の『プロキオン』は敵の新兵器が直撃し"一撃"で轟沈したと聞く。如何に旧式とは言え、戦艦を一撃轟沈へ追い込む兵器だ…このグレードアトラスターでも複数発喰らったらどうなるかは分からない」

 

その言葉に艦橋内の空気が引き締まる。

報告は聞いている筈だが、やはり艦の最高責任者である艦長が危惧しているという事実はかなり効いたようだ。

 

「そして、ムーだが…アレも今では侮れない戦力だな。如何にして用意したのかは不明だが、我が国の"幻の戦艦"『ダイモス級巡洋戦艦』に酷似した戦艦や『ペガスス級空母』に匹敵する大型空母を配備している。それに加え、魚雷を開発したようだ。少なくとも駆逐艦と航空機に搭載しているらしい。…諸君らは諜報部の話と違うと思っているだろうが、諜報部の情報が間違っているのは今に始まった事ではないだろう?」

 

ラクスタルの言葉に幾人かがバツの悪そうな表情を浮かべる。

確かに諜報部からの情報は信頼性が低いという風潮だったが、帝国がこの世界に転移してからはそれなりに正確な情報を寄越すようになっていた為、軍内では「ようやく改善されたか」という声が挙がっていたのだ。

 

「では、アズールレーンはどうでしょうか?」

 

「うむ。実を言うと、私はアズールレーンこそが最大の脅威だと感じている」

 

愚者を演じてくれていたカーベンだが、ラクスタルの言葉に純粋な驚きの感情を顕にする。

 

「と、申しますと…」

 

「彼らが表舞台に姿を現したのは、凡そ2年半前…ロデニウス連邦と、パーパルディア皇国が戦争状態にあった時だ。それ以前の彼らの動向は殆ど情報が無い。まるでいきなり…"ある日突然、この世界に現れた"かのようだ」

 

「…つまり、彼らも我々と同じようにこの世界に転移してきたと?」

 

カーベンの言葉に、ラクスタルは頷いて言葉を続けた。

 

「ロデニウス大陸の名はレイフォルに残されていた文献等で残っている事から、ロデニウス連邦自体が転移してきたという事は無いだろう。しかし、文献に残るような大陸にある国家がこれまで表舞台に出て来なかったというのは余りにも不自然…そうなると、アズールレーンという組織のみが転移し、ロデニウス連邦を作り上げたと考えるのが道理だろう」

 

「な…なるほど…」

 

「そして、私が思うに…ムーが突然力を付けた要因は、おそらくアズールレーンの介入があったからだろう」

 

そこまで述べたラクスタルは一息つき、徐々に近くなる特徴的な2つの岬を一瞥すると話を続ける。

 

「レイフォリアで傍受したムーのテレビ放送で、ムー・ロデニウス連邦間の航空国際線を運行する合弁会社を両国間で開業したと伝えていた。15000kmも離れた大陸間を繋ぐ航空路線をわざわざ運営するなぞ、よほど関係が深く無ければ出来ないだろうな」

 

「つまり…ロデニウス連邦ないしアズールレーンは自国の戦力を整えつつも、ムーへ戦艦や空母を輸出出来る程の生産力を持っていると?」

 

「しかも、長距離を航行出来る旅客機を開発する能力がある…。決して見縊って勝てるような相手ではない」

 

「艦長!」

 

今一度、気を引き締めるような言葉を発したラクスタルへ、見張員が声をかけた。

 

「フォーク海峡上空に黒煙が漂っています!おそらくは煙幕ではないかと…」

 

「黒煙?」

 

ラクスタルは怪訝そうな表情を浮かべる。

確かに、海戦において敵の攻撃を妨害する為に煙幕を用いる事はよくある。

しかし、ラクスタルが見るにその黒煙は些か高い位置にあるように見えた。

 

「…いや、あれは煙幕ではない!」

 

愛用の双眼鏡で黒煙の方向を注視する。

そうして、ラクスタルはその黒煙の正体に気付いた。

 

「あれは対空射撃の爆煙だ!何という弾幕だ…攻撃隊が次々と落とされているぞ!」

 

思わず驚愕の表情を浮かべてしまうラクスタル。

彼が目にしたのは、恐ろしい程のレートで砲弾を打ち上げる艦船の姿と、上空で炸裂する砲弾に絡め取られる『リゲル型雷撃機』と『シリウス型爆撃機』の姿であった。

この世界に転移してからというもの、幾隻もの帆船を海の藻屑にしてきた帝国が誇る攻撃機が為すすべもなく叩き落されてゆく姿は、ラクスタルを慄かせるには十分過ぎる光景である。

 

「っ!敵艦、発砲!」

 

「何っ!?まだ50kmは離れているぞ!」

 

そんな中、見張員が切羽詰まったような口調で報告し、それを聞いたカーベンが目を見開いた。

グレードアトラスターの強みと言えば圧倒的な威力と射程を誇る46cm砲だ。

その威力はグレードアトラスター級以外の戦艦を容易く轟沈せしめる程の威力であり、最大射程は42kmにも及ぶ。

しかし、敵艦はグレードアトラスターの最大射程を上回る距離50km先から砲撃してきたのだ。

それ故、乗組員は"敵はこちらよりも優れた砲を持っている"と考え、思わず被弾の衝撃に耐えるべく身構えた。

 

「…ちゃ…着弾しましたが…」

 

だが、それは杞憂に終わった。

敵艦が放った砲弾はグレードアトラスターの進行方向…つまりは前方、凡そ10kmの辺りに着弾し、水柱を上げるだけで終わった。

 

「ふぅ…やはり、当たる訳がないか…」

 

盛大に外れた事にホッと胸を撫で下ろすカーベンだが、彼の隣でラクスタルは険しい表情を浮かべていた。

 

(あれは当てようとは考えていないな…むしろ、こちらに釘を刺す為の威嚇だな。「こちらもそれなりの砲を持っているぞ」とでも言っているようだ)

 

そんな事を考えながら、ラクスタルは再び双眼鏡を覗いた。

 

「副長、我々が入港した時より戦艦が少なくなっていないか?」

 

「…確かに、そのようですね…。3隻程少ないようです。もしや、退避した外交官の護衛に回したのでは?諜報部もミリシアルからの要請で各国の外交官は退避し、カルトアルパスからアズールレーンとムーの戦艦、計3隻が出港したとの情報を寄越していましたから…」

 

ラクスタルの言葉に、カーベンが応える。

確かに諜報部からの情報でそれは聞いている。

しかし、ラクスタルは戦艦という一大戦力を護衛に充てるという愚を行う筈が無いと考え、それは信じていなかった。

 

「どうやら、今回ばかりは諜報部が正しかったようですな。連中、せっかくの数の優位を手放すとは…このような判断をした者の顔を見てみたいものです」

 

「あぁ…そうだな…」

 

確かに戦艦が3隻も不在なのは、こちらからしてみれば有り難い話だ。

だが、ラクスタルは胸中に渦巻く不信感を拭えずにいた。




ご存知の方もいらっしゃるかもしれませんが、新作投稿しました
続くかどうかは分からない上に、なんならもう辞めようか揺らいでますがね

今後、お色気シーンは…

  • 今より増やせ
  • このぐらいでいい
  • もう少し減らしていい
  • もっと減らして
  • 無くていい
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