投稿が遅くなってしまい申し訳ありません
ちょっと色々忙しかったり、Skeb依頼品を仕上げてたらこんなに遅く…
──中央暦1642年4月25日、カルトアルパス上空──
《ぬぉぉぉぉぉぉっ!》
「っ!?この声…トーゴか!?」
ムー航空隊の紅一点を喪った事により喪失感を抱えるアックタの耳に届いたのは、無線機から聴こえる鬼気迫る男の雄叫びであった。
その声の主は紛れもなく、寡黙な元郵便機パイロットのトーゴだ。
普段から最低限の言葉しか発さない彼がこんなにも激しく発声するとは、よほどの事が起きたのだろう。
それを確かめる為に、アックタは素早く首を左右に振って周囲を見渡す。
「……あれか!」
尾翼に切手を模したエンブレムを描いたトーゴ機の姿は直ぐに発見する事が出来た。
しかし、トーゴ機の状況は良いとは言えないだろう。
《がっ…!ぬぅぅぅっ!》
トーゴ機は敵機の真後ろにピッタリと張り付いて銃撃を行っているが、敵機とて黙って撃たれている訳ではない。
防御機銃を間断なく打ち続け、トーゴ機へ何発も命中弾を与えながら小刻みに機体を横滑りさせる事でダメージを分散させているようだ。
「トーゴ!それ以上は無茶だ!直ぐに帰投しろ!」
《無用…っ!直ぐに…終わる…》
トーゴ機は射撃訓練で使われた標的機が如く穴だらけになっており、主翼に至ってはいつ千切れてもおかしくは無い。
しかし、それでも彼が撤退しないのは、民間上りとはいえ彼もまた市民を守る軍人だからに他ならない。
「トーゴ!」
《覚悟…!》
空中で曳光弾の光が交錯し、それぞれが羽ばたかぬ翼に直撃する。
次の瞬間、敵機の翼から炎が噴き出し、あっという間に火達磨となって空中で爆散した。
恐らくは燃料か油圧油に引火し、燃料タンクに火が回ったのだろう。
《…さらば》
だが、トーゴ機もただでは済まなかった。
どうにか僅かなフレームだけで支えられていた主翼は着弾のダメージと飛行による風圧で完全に折れ、そのまま不規則な軌道を描いて地へ堕ちてゆく。
「トォォォォゴォォォォッ!!」
墜ちる戦友へ差し伸べるように手を伸ばすアックタだが、その手が届く筈もない。
トーゴ機はアックタの悲痛な叫びを餞に、黒煙を街並みに立ち昇らせた。
《テレジア…トーゴ…二人とも、惜しい人でしたね》
「クバン…」
立て続けに戦友を亡くしたアックタへ声を掛けたのは、古くからの友人であるクバンだった。
そのままの意味で捉えるなら彼も戦友を喪った悲しみに打ちひしがれているようだが、アックタはその声色に秘めた覚悟を察していた。
「…クバン、逝くのか?」
《弾がね、無いんですよ。連中の機体、中々に堕ちなくて…狙いが悪かったんですかね?》
残りの敵機は2機。
それぞれアックタ機とクバン機の近くに居るが、クバン機は既に弾切れとなっており、アックタ機も弾数は心許ない上にクバン機の方へ向えば残した敵機は爆弾を投下してしまうだろう。
「帰投を…」
《しません》
アックタの提案はバッサリと切り捨てられた。
《大佐…いや、"アックタ"。俺はな、戦う術を持たない市民を助ける為に軍人になったんだ。今、ここで俺が逃げたら狙ったのか偶然かは知らないが、連中は学校に爆弾を落として未来ある子供達を何人も殺すだろう。…子供は宝だ。その事に国籍は関係ない…違うか?》
「…そうだな、クバン。お前はそういう奴だったな」
上官と部下という関係ではなく、敢えて古くからの言葉遣いでアックタに語り掛けるクバン。
実はクバンは捨て子であり、幼少期から18歳になるまで孤児院で育ってきたという経歴がある。
そういう事もあって自分より歳下の子供達の面倒を見てきた彼は子供達に幸福な人生を歩んで貰いたいと常に考えており、今でも軍から出る給料の殆どを孤児院に寄付している程だ。
そんな彼からしてみれば意図的か偶然かは不明だが、大勢の子供達が居るであろう学校を狙うグラ・バルカス帝国は赦せないのだろう。
それこそ、"自らの命を投げ打って"でも阻止しようと考えるぐらいには。
《長い付き合いじゃないか。分かってるだろ?…さて、恩給は孤児院に送金するように手続きしてあるから、思い残した事は無い。またな、アックタ》
「あぁ、クバン。また、何処かで」
まるで喫茶店で談笑した友人同士が帰路につくかのような別れの言葉…しかし、その再会を願う言葉は叶う事はない。
それを理解しているアックタはただ前を見据え、自らが倒すべき侵略者をその双眸に焼き付けた。
──《ブゥゥゥゥゥゥゥンッ!》
無線機からエンジン音が鳴り響く。
おそらくは、無線機のプレストークスイッチを押したままにしているのだろう。
──《ぐっ…!へっ…ざまぁみ……ザーーーッ》
クバンの悪態が途切れ、ノイズだけが無情に響く。
それが何を意味するか理解したアックタは、自らの責務を果たすべくスロットルを開けて愛機を増速させる。
「テレジア…トーゴ…クバン…」
唸るエンジンの轟音の中、先に逝った戦友達の姿を思い浮かべるアックタ。
皆、個性的かつ気の良い者達であった。
しかし、彼等はもう居ない。
軍人として…力を持つ者として義務を果たし、散ったのだ。
「皆の思い…決して無駄にはせん!」
照準器のど真ん中に敵機の姿を捉え、トリガーを引く。
──ドドドドドドドッ!
機首に2門装備された12.7mm機銃が火を噴き、曳光弾と焼夷弾の暴風を吹かせる。
──ビシッ!ビシッ!
それと同時に、まるで鞭で打たれたような音と衝撃がアックタ機に襲いかかる。
それは敵機の防護機銃による銃撃が直撃した音だ。
「ぬぅっ!?えぇい、味な真似をぉ!」
エンジンに直撃した敵弾によりエンジンオイルが漏れ出し、風防にべったりと黒いオイルがこびり付く。
しかし、アックタは首を傾げてオイルが付着していない箇所から前方を視認し、攻撃を続ける。
──ドドドドドッ!カチッ…カチッ…
「た…弾切れだと!?くっ…大口径化が仇になったか!」
敵機は既に黒煙を噴いており、あと一息で撃墜出来るであろう。
しかし、ここに来てアックタ機も弾切れとなってしまった。
そもそも『ディープ・マリン』の元になった『マリン』は機首に8mm機銃を2丁装備していた。
機首配置の機銃は命中精度が良好な代わりにエンジンや燃料タンク、操縦系統の影響で弾数が少ないというデメリットが存在するのだ。
そんなデメリットを抱えたマリンを近代化改修により12.7mm機銃を装備させたものだから、より弾数が減少してしまっており、それがこの局面で響いてしまった。
無論、アックタもそれは承知していたが、敵機が想定よりも頑丈だった事がより事態を悪化させた。
「…ふっ、致し方あるまい」
珍しく慌てふためいていたアックタだったが、直ぐに落ち着きを取り戻すとコックピット内に新設されていた赤いボタンに指を掛けた。
「ムーの戦士達よ、聴こえるか。私は第一航空小隊隊長のアックタ・ローメルである」
無線機の周波数をオープンチャンネルに切り替え、友軍へ…いや、戦場に存在する無線機を持つ全ての者へ呼びかける。
「カルトアルパス市街地に存在する学校を狙う敵機…グラ・バルカス帝国航空隊の爆撃機は現在残り1機である。しかし、我が小隊は私を残して全滅しており、我が機も弾切れとなってしまった。…このままでは、未来ある子供達が傲慢なる侵略者の手によって無惨にも殺戮されてしまうだろう」
彼は示そうとしていた。
自身の覚悟を、戦友の遺志を…そして、ムーの誇りを。
「私はそれを良しとしない!子供達の未来を断ち切るなぞ、神が許しても私が許さん!」
自らの覚悟を表すように赤いボタンを渾身の力を込めて押し込む。
──ガロロロロロッ!バンッバンッバンッバンッバンッバンッ!
エンジンが獣のような唸り声を発し、排気管からは機関銃のように炎と閃光が迸る。
それはアックタ機に取り付けられた試作装備、『緊急ブーストシステム』によるものだ。
これは、『亜酸化窒素』という大気の1.5倍もの酸素含む気体を圧縮して液化させた物を充填したボンベと、噴射装置からなるものであり、これを使用すればエンジンへ大量の低温酸素を送り込む事が出来る為、パワーアップとシリンダー内の異常燃焼を抑制する事が出来るのだ。
しかし、これには致命的な欠点も存在する。
「ぬぅぅぅぅぅぅっ!!」
回転計の針が跳ね上がり、機体がバラバラになりそうな程に振動する。
ディープ・マリンに搭載された1000馬力エンジンは、大量の酸素を送り込まれつつ冷却される事で凡そ1.5倍もの出力を振り絞る事が出来るが、エンジンパワーに機体が追い付けないでいる。
このままだと、エンジンが破裂してしまうだろう。
しかし、彼に恐怖は無い。
「行け、マリン!誇りと共に!!」
恐怖の代わりに脳裏に浮かんだのは、ムーの未来を担う若者達の姿であった。
戦艦の力を持つ少女に、いくつもの新兵器を開発する技術士官、最年少艦長に相応しい能力を身に着けるべく日々努力する戦術士官…
──ボンッ!
オイルで濡れた風防越しでも分かる程の閃光と熱。
僅かに確保出来る視界からは、炎と真っ赤に焼けたピストンが見える。
どうやらエンジンの急激なパワーアップに耐え切れなかったシリンダーヘッドが弾け飛んだのだろう。
こうなればもう飛べない。
だが、もう飛ぶ必要は無い。
「ヤンマイ…後は頼む…」
身を焦がすような熱と激しい衝撃の中、彼は愛弟子へ別れの言葉を紡いだ。
次回は漸くGAとの対決ですね
今後、お色気シーンは…
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今より増やせ
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このぐらいでいい
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もう少し減らしていい
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もっと減らして
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無くていい