異世界の航路に祝福を   作:サモアオランウータン

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フォーク海峡海戦をダラダラ続けても仕方ないので、若干駆け足気味でお届けいたします


206.スレッジハンマー

──中央暦1642年4月25日、カルトアルパス近海東側──

 

──カチンッ…カチンッ…カチンッ

 

カルトアルパスの内海と外海を隔てる南方へ向って伸びた2つの岬。

その東側の岬の外海側では、青い光と共にガラスのブロックが積み上がるような音が響いていた。

 

「ガスコーニュ、重火力形態へ移行完了。目標を視認、攻撃を開始する」

 

先程まで何も無かった海上に現れる4隻の戦艦…その内の1隻である『ガスコーニュ』が淡々とした言葉と共に航行を開始する。

 

「艦隊の為に戦わん…シャンパーニュに課せられた使命なり」

 

続いてガスコーニュの準姉妹艦である『シャンパーニュ』が続く。

彼女はガスコーニュに準じた艦体を持つが、その主砲は406mm3連装砲に置き換わっており、その威力は"あの"大和型戦艦のバイタルパート装甲すら貫く貫徹力を持っており、事実前世界での"アズールレーン・レッドアクシズ抗争"では大和型戦艦二番艦『武蔵』を砲撃戦にて大破に追い込んだ程だ。

しかし、その代償に装甲は戦艦を名乗るには烏滸がましい程に薄く、その為他の戦艦を盾にして作戦行動をとる事が多い。

 

「くっ…皆、大丈夫か?やっぱり、戻る時は変な気分になるな…」

 

「ラッサン艦長、大丈夫ですか?総員、支給された気付け薬を飲め!奴の背後を取ったとは言え、油断すれば返り討ちにされるぞ!」

 

やや遅れて動き出したのは、艦橋の最上部にムー海軍旗を掲げた『ラ・アカギ』だ。

元々『赤城』の巡洋戦艦時代の艤装を改修してムーへ引き渡したラ・アカギは、KAN-SENの艤装…つまり機動戦形態へ移行する事が出来る上に、内部の乗組員達も艤装に合うサイズまで縮小出来る。

それを利用し、ラッサン達ラ・アカギの乗組員達は艤装化したラ・アカギをガスコーニュ達に運んでもらい、自分達ごと岬の影に隠れていたのだ。

 

「ふふふ…ふふっ…あーはっはっはっはっ!グレードアトラスターぁぁぁぁぁぁ!!」

 

「ラ・ツマサ…ちょっと落ち着いて…」

 

最後に航行を始めたのは、艤装内部にマイラスを納めたまま身を潜めていたラ・ツマサ。

彼女は年頃の女性とは思えない程に怒りに顔を歪め、全身から殺気を放っている。

 

「よくもアックタ大佐を…第一航空小隊の方々を!よくも…よくも姉上をぉぉぉぉっ!」

 

尊敬していたアックタ大佐達を喪い、そして敬愛するラ・カサミを傷付けられた彼女の怒りは頂点に達していた。

本来なら全速力で憎っくきグレードアトラスターへ接近し、主砲も副砲も機銃すらも総動員して至近距離から最大火力を叩き込むところだ。

そうしないのは、艦橋に己の愛しい指揮官であるマイラスを乗せているからである。

 

「これはアックタ大佐の分!」

 

──ドドドンッ!

 

他の3隻よりも小さいが故に舵が効きやすいラ・ツマサはグレードアトラスターへ舷側を向けるや否や、前甲板に搭載された28cm3連装砲を発砲する。

 

「これはクバンさんの分!」

 

──ドドドンッ!

 

先程の砲撃から間を置かず、後甲板の3連装砲が火を噴く。

 

「これはテレジアさんの!これはトーゴさんの分!」

 

──ドンッ!ドンッ!ドンッ!ドンッ!

 

続いて副砲である12.7cm両用砲を発砲する。

主砲よりも小口径である為、大した損傷は与えられないだろうが、装填しているのは焼夷榴弾だ。

例え致命傷は与えられずとも、乗組員を殺傷したりダメージコントロールを妨害出来れば十分である。

 

「そしてこれは…」

 

ラ・ツマサの主砲には平行世界のムーが死物狂いで開発した最新鋭の自動装填装置が搭載されており、凡そ15秒で装填する事が出来る。

その為、副砲が撃ち終わった頃には既に主砲の発射準備が整っていた。

 

「姉上の分だぁぁぁぁっ!」

 

──ドドドンッ!ドドドンッ!

 

前後の主砲塔が轟音と共に砲弾を放ち、飛翔する砲弾は一直線に敵艦へと向かってゆく。

 

──ギィィィィィンッ…!

 

格上の戦艦にも対抗出来る高初速の小口径砲だが、いくらなんでも相手が悪かったらしい。

直撃弾の殆どは装甲に弾かれてしまい、海上に虚しい金属音を響かせるに留まった。

 

「…ふふっ」

 

「だ、大丈夫か…?」

 

普通ならば渾身の一撃が効かなかった事に歯噛みするだろうが、ラ・ツマサは不敵な笑みを浮かべていた。

そんなラ・ツマサの姿を見てマイラスは、怒りの余り彼女がおかしくなったのではないか?と思いおずおずと話しかけるが…

 

「あははははっ!見てください、主っ♪殆ど弾かれましたが…1発だけ、甲板装甲を貫通出来ましたよ♪炸薬無しの無垢弾だったので被害はさほどではないと思いますが…まあ、奴らを怯えさせるには十分でしょう♪」

 

艦橋内に備え付けられた大型双眼鏡の接眼レンズを指差して楽しそうに笑うラ・ツマサの姿に、マイラスは恐る恐る双眼鏡を覗く。

 

「これは…」

 

マイラスの目に映ったのは、若干沈み込んでいるグレードアトラスターの後甲板…その中央部付近にぽっかりと穴が開いており、そこから白煙が立ち昇るという光景であった。

 

「んー…でもやっぱり徹甲榴弾ではないと派手に壊せませんね。次は徹甲榴弾で派手に燃やし…いや、無垢弾で穴あきチーズにするのもいいですね♪主はどちらがお好きですか?」

 

「あ…あぁ…チーズはいいね…」

 

「かしこまりました♪無垢弾での攻撃を続行しますね♪」

 

──ドォォォンッ…ドォォォンッ…

 

何とも楽しそうに物騒な質問をするラ・ツマサに、マイラスは他の3隻による砲撃音をBGMにして上の空で応えるしか無かった。

 

 

──同日、グレードアトラスター艦長室──

 

──ゴォォォォンッ…ゴォォォォンッ…ギンッ!チュイィンッ!

 

「ひっ!?」

 

遠くで響く砲声と、時折響く不快な金属音。

特に敵弾が装甲によって弾かれた事によって発生する金属音が聴こえる度に、艦長室を借りているシエリアは肩を跳ねさせて短い悲鳴を上げていた。

 

「だ…大丈夫…大丈夫…。この戦艦は世界最強の装甲を持っている…。この世界の野蛮人共が作る戦艦如きでは絶対に沈まない…」

 

湧き上がる恐怖心を抑え付ける為に、必死に自分に言い聞かせる。

それでも一外交官であり、戦場とはかけ離れた職場で働いてきた彼女にとってはこのような海戦の渦中に居るという事実は、間違い無く大きなストレスとなっていた。

 

──「おいっ!しっかりしろ!目を開けろ!」

 

──「…駄目だ、もう死んでる」

 

──「チクショー!話が違うじゃねぇか!」

 

そして時折扉の向こうから聴こえる慌ただしい足音と、乗組員達の怒号と慟哭。

艦長室の近くに医務室があるが故だ。

 

「やはり…驕り高ぶった我々を戒める為に先帝陛下が…。いや、そんな事はない!あれは所詮は都市伝説!先帝陛下はあの列車事故で崩御され、国葬だって執り行われたではないか!あの男は他人の空似!そもそも、この世界はユグドとは違う世界なのだ!ありえない!ありえ…」

 

──スゴガァァァァァァァンッ!!

 

「ひぃぃぃぃぃぃっ!?」

 

鼓膜が破裂したかと思う程の轟音と衝撃。

それは艦長の隣…艦隊司令が乗り込んだ際に使われる長官公室から伝わってきたようだ。

 

「な…何が…?」

 

衝撃によって脳が揺さぶられたせいか、視界がグラつき頭がガンガンと痛む。

もう倒れ伏して眠って意識を手放してしまいたいが、あいにくそうもいかない。

なにせ長官公室には、同僚である男性外交官達が待機しているからだ。

 

「おい、だいじょ…」

 

重く分厚い扉に寄り掛かるようにして開けたシエリアの視界に飛び込んできたのは、彼女にとってはあまりにも凄惨な光景であった。

 

「ぁ…あぁ…ぁ…」

 

磨き上げられた暗褐色の木材で作られた調度品には赤黒い血液がべったりと塗られ、絨毯の上に転がる同僚達は四肢がネジ曲がって千切れてしまい、明らかに即死であろう者ばかりだ。

敵弾…甲板装甲を貫通したラ・ツマサの砲弾が長官公室に砕けながら飛び込み、散弾となって外交官達に襲い掛かったのだ。

如何に装甲によって威力が弱まっていたとはいえ、人間にとってはオーバーキルもいいとこである。

 

「もう…もう嫌だぁぁぁ…」

 

同僚達だった物が転がる中、シエリアはへたり込んで大粒の涙を零す事しか出来なかった。




大和型の内部構造がよく分からなかったので艦長室の位置などが合ってるか分かりませんが、グレードアトラスターはそういう風になっているという感じでお願いします

今後、お色気シーンは…

  • 今より増やせ
  • このぐらいでいい
  • もう少し減らしていい
  • もっと減らして
  • 無くていい
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