異世界の航路に祝福を   作:サモアオランウータン

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犬筆様より評価8、far777様より評価5を頂きました!

4周年記念のイラスト集がようやく届きました…
遅れに遅れましたが、やっぱりああいった物は所有欲が満たされますね



211.ファースト・ブラッド

──中央暦1642年4月22日午後4時、フィルアデス大陸西方海域海中──

 

海中に身を潜め獲物を待ち構えるグラ・バルカス帝国海軍所属の潜水艦『アスケラ』は、自らが撃沈したムーの貨客船『ラ・ミタア』から流出する重油の中から潜望鏡を海面上に出し、救助活動をしている白い船の様子を覗っていた。

 

「艦長、あの船はロデニウス連邦の船のようです。駆逐艦に似ていますが砲が少なく、何よりも魚雷を搭載していません」

 

「ほう、ロデニウス連邦と言えば我が国と同じく列強国を屈服させ、有名になった東に位置する国だったか?確かに、この世界の弱小国には十分な戦力であろうが、所詮は劣等人種の戦争ごっこの玩具。本物の戦争を幾度となく遂行してきた帝国の力の前では無意味であるな」

 

潜望鏡を覗き込みながら報告する副長に対し、艦長であるグルズは嘲り笑うかのようにそう述べた。

 

「では、攻撃を…」

 

「うむ、駆逐艦モドキが戦果というのは少々物足りんが…前菜としては十分だろう」

 

「はっ!水雷班、魚雷発射用意!」

 

グルズと副長の言葉により、アスケラの乗組員は獰猛な笑みを浮かべた。

"潜水艦さえあれば戦艦なぞ不要"と謳われた帝国海軍潜水艦隊は、この世界に転移してからずっと偵察や資材運びのような雑用ばかりしており、派手な活躍を見せる水上艦隊や航空隊から後ろ指をさされ続ける日々であった。

しかし、今日からは違う。

全世界に対して宣戦布告を行うにあたり潜水艦隊は帝王グラ・ルークスより直々に、"前世界のように圧倒的な戦果を期待する"という言葉を賜っているのだ。

それを錦の御旗に、サブマリナー達は魚雷発射までの手順を正確かつ手早く済ませてゆく。

 

「諸元、算出よし!」

「ジャイロ、問題なく稼働!」

「発射管注水!繰り返す、発射管注水!」

 

──ゴポゴポゴポ…

 

魚雷を装填した発射管に注水され、空気が漏れ出す。

 

「クックックッ…1発で仕留めてやる。魚雷発射!」

 

「魚雷、発射!」

 

──ゴォン…

 

口角を吊り上げたグルズの命令を副長が復唱し、それから一拍遅れて圧縮空気によって魚雷が押し出され、海中に白い軌跡を描きながら真っ直ぐに突き進む。

 

 

──同日、同海域海上──

 

──ゴポゴポゴポ…

 

「これは…!海中より魚雷発射管注水音らしき音源を確認!」

 

「やはり…!」

 

海中に潜む狩人に狙われた警備船『ロマネス』は蜂の巣を突いたような騒ぎとなっていた。

ヘッドフォンから聴こえるパッシブソナーが捉えた排水口に水が流れ込むような音は、ソナー手が訓練で嫌と言う程聴いた魚雷発射管の注水音そのものであり、それは敵潜水艦が付近に潜んでいる事を裏付けるものであったからだ。

 

「右舷4時方向に雷跡確認!真っ直ぐこちらへ突っ込んできます!」

 

「慌てるな!バウスラスター起動、取り舵45度!」

 

「とぉぉりかぁぁじ、45度!よーそろー!」

 

ザトーの命令を受け、操舵手が操舵輪…ではなく、ジョイスティックを左に倒すとロマネスの船体は何かに押されるようにして、船首を左方向へ急速に向ける。

ロマネスは海難救助や不審船に対する臨検が主任務であり、細かい操船を要求されるという事もあってバウスラスターを装備している。

そのため、このように停船状態でも急速な方向転換が可能なのだ。

 

「雷跡、右舷を平行に抜けます!」

 

「誘導は!?」

 

「していません!航走音、徐々に遠ざかっています!」

 

見張員が船体の右舷方向を平行に走り抜ける雷跡を目で追い、マッコーがソナー手へ確認するが彼の心配は杞憂で済んだ。

というのもアズールレーンとロデニウス連邦では音響誘導魚雷を配備しており、敵潜水艦が放った魚雷も誘導魚雷なのではないかと考えた為である。

 

「再び魚雷航走音!」

 

「雷跡確認!弧を描いて右舷2時方向より来ます!…もう1本、船尾6時方向より来ます!」

 

どうやら敵潜水艦はロマネスを沈めたくて仕方無いようだ。

魚雷の進路を定めるジャイロを調整して2方向から同時に魚雷を襲いかからせてきた。

 

「機関微速、面舵一杯!船首を4時方向へ向け、機関全速で魚雷の間を走り抜けるんだ!」

 

「ザトー、私は上の見張所で見張りの手伝いをしてくる!」

 

「父上、どうかご無理はなさらずに!」

 

船長として素早く的確に命令を下すザトーの姿に頼もしさを覚えながらも、マッコーは自らが出来る事をやり遂げる為に船橋の階段を駆け上がっていった。

 

 

──同日、同海域海中──

 

「クソッ!クソッ!なんだあの船は!気持ち悪い動きで魚雷を躱してる!」

 

潜望鏡を覗きながらグルズは地団駄を踏み、顔を真っ赤にしていた。

それもそのはず…必中と思われた不意をついた雷撃は妙な動きで躱され、次こそはと放った2本の魚雷もまるで小型モーターボートのような動きでことごとく躱されてしまった。

その後も何本も魚雷を放ったが目標である白い船はまるで此方を嘲笑うようにヒョイヒョイと回避し、とうとうアスケラは発射管に装填した魚雷を使い果たしてしまったのだ。

 

「か…艦長、発射管に魚雷を再装填しなければ…」

 

「分かっている!さっさと再装填しろ!」

 

「し、しかし…」

 

怒髪天を突く勢いなグルズに萎縮しながらも、副長は無数に並んだ計器の一つに目を向ける。

それはバッテリーの電圧計であり、示す数値はかなり低いものであった。

この電圧では魚雷の再装填に必要な手順を行う為に使われる機器…つまり発射管から海水を排水する為のポンプや、予備魚雷保管庫から魚雷を運び出す為のウインチを動かすには心許ないものがある。

それ故バッテリーを充電する為に浮上し、水上航行用のディーゼルエンジンを稼働させる必要があるのだが…

 

「再装填に必要な電力を得るためには浮上する必要があります。ですが、浮上すれば敵艦の砲撃で…」

 

潜航中の潜水艦は確かに手強い相手だが、浮上中は駆逐艦どころかより小型の武装船にも負けかねない程ひ弱だ。

一応、甲板上に速射砲を装備してはいるが、防水処理が施されているため直ぐに使える訳ではない。

しかも、今のアスケラは発射管が空であるため非武装と言っても過言ではない。

普通に考えれば相手が比較的軽武装とは言え、そんな状態で浮上してしまえば自殺行為以外の何ものでもないだろう。

 

「それがどうした!奴は小口径砲しか持たない貧弱な船だ!それに、レイフォルに毛が生えたような列強国を滅ぼしただけでいい気になっているような新興国が、帝国並みの砲を持っている訳がない!どうせ射程は短く、威力も貧弱だ!」

 

魚雷を大量消費させられたグルズはすっかり頭に血が昇って、冷静な判断が出来なくなっていた。

そもそもこんな問答をする羽目になったのは、ヒートアップしたグルズがバッテリー容量の確認を怠った上に、機関士や副長の忠告を怒鳴り散らして流してしまったせいである。

 

「ですが…」

 

「口答えするな!艦長命令に逆らうな!」

 

「…承知しました」

 

必死に止めようとする副長を、グルズはとうとう権力を振りかざして封殺してしまった。

副長とてこんな命令には従いたくないが、もし生きて戻れたら抗命罪で軍法会議にかけられ、敗北主義として死罪になるか強制労働で死ぬまで働かされる運命が待っている。

 

「ふ…浮上せよ」

 

苦々しい表情で命令を伝達する副長を他所に、グルズは血走った目で潜望鏡を覗き込む。

 

「クソッ…クソッ…!ロデニウス連邦めぇぇぇ…たった一隻にこんなに魚雷を使ったと知れたら、戦艦連中や空母連中に笑われるではないか!この屈辱…ロデニウスの連中を徹底に…ん?」

 

潜望鏡から見える景色に敵艦の姿が無い。

白い目立つ姿をしているというのに、見当たらない。

 

(違う方向を見てしまったか?)

 

グルズはそう思い、潜望鏡を回して辺りを見渡すが…

 

──ガゴォォォォォンッ!

 

「うがっ…!?」

 

突如として襲いかかる激しい衝撃と共に、グルズの顔面は強かに潜望鏡の接眼部へ叩き付けられ、彼の脳は頭蓋の内部で激しく揺さぶられた。

 

「何だ!?いったい何が…」

「浸水発生!浸水!浸水だ!」

「ちくしょう!奴ら、体当たりを…」

 

意識が遠退き、フラッ…と倒れるグルズ。

しかし、彼を助ける者は居ない。

皆、艦内に現れた瀑布へと向かって走っている。

 

「ロデニウス連邦め…」

 

徐々に暗くなる視界の中、グルズは頬に海水の冷たさを感じながら最期まで敵への恨み言を吐いていた。

 

 

──同日、同海域海上──

 

「……圧壊音を確認。敵潜水艦、撃沈しました!」

 

「よぉぉぉしっ!」

 

「やったぁぁぁぁ!」

「へっ、ザマァみろってんだ!」

「ふう…ヒヤヒヤしたぁ…」

 

ヘッドフォンに耳を澄ませていたソナー手が歓喜の声をあげると共に、ザトーと乗組員が同じく歓喜する。

 

「ザトー、無事か?」

 

「えぇ、父上こそ大丈夫ですか?」

 

「手摺に腰をぶつけてしまったよ…。まさか体当たりをするとはな…無茶をする…」

 

歓声が渦巻く船橋へ、マッコーが見張所へ通じる階段を降りて足を踏み入れる。

ロマネスはコスト削減と、海軍への対潜兵器優先配備の影響で対潜兵器を搭載しておらず、敵潜水艦への積極的な攻撃が出来ない状態であった。

それ故、手を拱いている状態であったが回避運動を続けている内に至近距離に敵潜水艦の潜望鏡を発見、主砲の俯角の関係上砲撃が出来なかった為そのまま体当たりしたのだ。

その結果、敵潜水艦ことアスケラは自慢の水上機格納庫が押し出され、そのままセイルが玉突き事故のようにへし折れ大量の浸水が発生してそのまま沈没してしまった。

 

「問題ありませんよ。この船は漂流物を押し退ける為に船首が強固に作られています」

 

「そういう意味では…」

 

どこかズレた返答をする息子に、苦笑するマッコー。

だが、何はともあれ窮地は脱したのだ。

後は救助活動を再開し、一番近い友好国の港へ向かう。

それでロマネスの処女航海任務は完了である。

 

「いや、いいか…。ザトーよ、私は再び見張所へ行って遭難者の捜索を手伝うとしよう」

 

「では暗くなってきたのでサーチライトを使いましょう。くれぐれもライトの前に立たないよう…」

 

一応の注意事項をマッコーに伝えようとするザトーであったが、彼の言葉は最後まで続く事は無かった。

激しい衝撃…音すらも聴こえない程の衝撃がロマネスに襲いかかり、再び見張所へ向おうとしたマッコーはそのまま船外へ放り出された。

 

「ザトー!!」

 

宙を舞いながら必死に手を伸ばす。

だが、ロマネスは巨大な水柱に包まれながら真っ二つに折れてゆく。

 

「がっ…!」

 

驚愕に目を見開いたマッコーはそのまま海面に叩き付けられ、苦痛の声を上げる。

しかし幸運にも彼は気を失わず、救命胴衣を着用していた為、溺れずに済んだ。

 

「ろ…ロマネスが…」

 

暫し痛みに悶ていたマッコーだが、次の瞬間に彼の目に飛び込んできたのは痛みすらも忘れるような光景だった。

真新しいロマネスの船体は無惨にも真っ二つになり、船橋はその原型が分からない程に…まるでグシャグシャに丸めた紙切れのような有様となっている。

あれでは船橋にいた乗組員の生存は絶望的だろう。

 

──ザザザザザザザッ!

 

「な…んだ…?」

 

未だ混乱の中にあるマッコーの近くの海面が盛り上がり、巨大な黒光りする物体が姿を現す。

その物体は彼にも見覚えがあった。

 

「グラ・バルカスの…潜水艦…!」

 

サモアの研究施設で見学したグラ・バルカス帝国の潜水艦そのものだ。

そうして彼は漸く理解した。

グラ・バルカス帝国の潜水艦は2隻存在したのだ。

ロマネスが1隻と大立ち回りを演じている間にも、もう1隻は息を潜めて好機を窺い、此方が油断した瞬間に魚雷を放ったらしい。

 

「おやおや…生き残りがいましたか。…ふむ、まだ漂流者が居るなら好都合。手土産には十分でしょう」

 

浮上した潜水艦のハッチが開き、そこから一人の男が現れて海面に浮かぶマッコーを睥睨するように眺めながらそう述べる。

 

「貴様…グラ・バルカス帝国軍か!」

 

「いいえ、違いますよ。私達をあのような食い扶持目当ての粗野な人間と同じにしないで下さい」

 

マッコーの問いに男は呆れたように嘆息しながら答える。

その男は黒染めの軍服を乱れなく着こなし、丸い眼鏡をかけた冷酷な印象の顔立ちをした如何にもエリートといった風貌であった。

そして、一際目立つのは左腕に着けている赤地に白い十字が描かれた腕章である。

 

「哀れな貴方に教えて差し上げましょう」

 

男は芝居がかった大仰な仕草で深々と頭を下げると、貼り付いたような笑顔で名乗りを上げた。

 

「我々こそ真の愛国者にして帝王陛下の代弁者。世界最高民族たるバルカス人の模範にして尊き純血を保持する選ばれし優性者…グラ・バルカス帝国近衛兵団所属のエルザン・ドープルスと申します。短い間ですが、以後お見知りおきを」

 




そう言えば18日に生放送するようなのですが、やっぱり月末の大型イベントの発表ですかね?

今ちょうど北連イベントの復刻ライト版をやっているので新しい北連イベントか…
はたまた最近イベントが無いロイヤルか…
あと、今年はURを4隻実装するという話なので、ペースを考えると次のイベントで来そうですね

今後、お色気シーンは…

  • 今より増やせ
  • このぐらいでいい
  • もう少し減らしていい
  • もっと減らして
  • 無くていい
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