まあ一話一話が短いので、合計しても大した長さではないと思いますが
──同日午前10時30分頃、アイナンク空港空軍格納庫──
格納庫に静かに佇む飛行機械。
全体は白く、青いストライプが施されている。機首にはプロペラが取り付けられており、翼は上下に二枚ある複葉機であり、固定式の車輪には空気抵抗を低減させる為のカバーが取り付けられている。
また、機首には機銃が二丁取り付けられている。
「如何でしょうか、我が国の最新鋭戦闘機『マリン』です。最高時速は380km/h、空戦能力にも優れています。全ての性能がワイバーンロードを凌駕しています。」
(さあ、どうだ!)
自信満々にムーの技術の結晶とも言える最新鋭戦闘機、マリンを紹介するマイラス。
小型の機体に収まる高出力エンジンや、急激な機動に耐えうる構造はかなりの技術力を必要とするはずだ。
これなら、ロデニウス連邦の二人も……と考えたマイラスだったが。
「あら、複葉機なのね。サモアの倉庫に眠っているのと似てるわね。」
「『シーグラディエーター』か?確かに似てるな。速度もそっくりだし…あぁ、でも今は練習機として活躍してるぞ。複葉機は操縦しやすいからな。」
ダンケルクと指揮官、二人の言葉を聴きながらマイラスは驚愕した。
(なん…だと…?倉庫に眠ってる?今は練習機…?シー…なんとかに似てる?まさか…ロデニウス連邦はより優れた戦闘機を持っているのか!?)
「あ…あの、失礼を承知でお聞きしますが、貴国の戦闘機はどのような物なのでしょうか?」
マイラスの言葉に指揮官はダンケルクに目を向ける。
「貴方の判断に任せるわ、指揮官。」
穏やかな笑顔と共に答えが帰ってくると、肩を竦めて指揮官が口を開く。
「先ず、我々が使用する複葉機は特殊用途機のみであり、主力はどれも単葉機ですね。速度は…まあ、そちらが言ったからには此方もある程度は開示すべきでしょうね。」
(なんと!単葉機が主力なのか…やはりロデニウス連邦は…)
と、マイラスが心中で驚いている間にも指揮官の言葉は続いた。
「最新鋭機で700km/h位ですね。」
「何ィィィィィィィィィィィィ!?」
急なマイラスの叫びに、ダンケルクが思わず肩を跳ねさせる。
それに気付いたマイラスが、気不味そうにしながらも頭を下げる。
「も…申し訳ありません!驚き過ぎてつい…」
「い…いえ、大丈夫ですよ。」
困ったような笑顔でダンケルクが言葉を返した。
「そっ…それにしても700km/hとは…」
「爆撃機でも600km/h出る物もありますよ。廃業の危機にあった、造船所の木工職人の救済の為に作った物ですがね。」
指揮官の言葉が、追撃のようにマイラスに突き刺さる。
(ば…爆撃機でも600km/h!?しかも、木工職人救済の為!?まっ…まさか、木で出来ているのか!?)
そんな爆撃機で攻め込まれては最後、マリンでは迎撃出来ない。
しかも、木で作られているらしい…ロデニウス連邦の技術力の高さを実感したマイラスは早速、心が折れそうになっていた。
──同日午前11時頃、アイナンク空港前──
アイナンク空港の前に送迎用の自動車が停まった。
それを見た指揮官が、後部ドアの下に足を差し出した。
「……何をされているのですか?」
指揮官の行動を疑問に思ったマイラスが訊ねると、ダンケルクが苦笑し。
「指揮官、自動ドアじゃないわよ。」
「…あぁ、そうだった。見た目は、ロイヤルの車っぽいからつい…な?」
そうしている間に、運転手が降りてきて後部ドアを開ける。
そうすると、二人は運転手に会釈して慣れた様子で後部座席に乗り込む。
(まさか…ロデニウス連邦の自動車は我が国の自動車より発達しているのか!?)
マイラスも助手席に乗り込みながら心中で驚愕する。
自動車が動き出しても驚く素振りは無いし、やや遠くに見える高層ビルが見えても大して驚く様子は無い。
「ロデニウス連邦には、どのような自動車がどれ程走っているのですか?」
自動車は、技術力の結晶だ。どのような自動車があるのか、またそれがどれ程あるのかで技術力と生産力の予測が出来る。
「そうですね…私が個人所有している自動車は、最高速度300km/hぐらいですかね。そんな自動車ばかりではありませんが、200万台ぐらいでしょうか?二輪車も含めれば、どれ程かは分かりませんね。」
(なんと!地上を走る自動車が、試作型マリンに匹敵するスピードを出せるのか!?しかも…200万台も走っているなんて…ロデニウス連邦は列強国じゃないのか?)
運転手が戸惑う横で、マイラスは底知れぬロデニウス連邦の実力について考察するのだった。
──同日午後1時、ホテル・グランアイナンク──
ホテルの一室、指揮官とダンケルクは昼食を終えて談笑していた。
「しかし、マイラスと言ったか?かなり驚いていたな。」
「仕方ない話よ。私達は別の世界から来たんだもの、この世界からすればイレギュラー過ぎるわ。」
ダンケルクの言葉に頷きながらも、指揮官は言葉を続ける。
「それもそうだが…ムーも中々イレギュラーだな。ヴァルハルも言っていたが、この世界唯一の科学文明国だってさ。魔法ではなく、科学で発展とは…意外とムーも別の世界から転移してきてたりしてな。」
「私達という生き証人が居る以上、否定は出来ないわね。」
ふふっ、と優しげな微笑みを浮かべるダンケルクに釣られるように笑う指揮官。
二人は夕食まで談笑したり、持参したタブレット端末で動画を視聴しながら過ごした。
バイクはGAMAHAがシェアトップでしょうね