──中央歴1642年6月30日午後3時、サモア基地アポリマ島──
──ガチャンッ!
サモア諸島に属するアポリマ島の一角に置かれたムー統括軍の先端技術研究局。
そこでは、サモア基地に運び込まれたラ・カサミの修理と改修を見届ける為に赴いたミニラルやマイラスといった面々が、モニターに映し出されたグラ・バルカス帝国の蛮行に啞然としていた。
誰一人身動ぎせず、誰かが取り落としたグラスが割れる音にすらも反応が無い。
「な…んと…」
自らの目が捉えた情報を漸く理解出来たマイラスがワナワナと震えながら口元を手で覆い、喉奥から絞り出すように呟く。
彼がこんなにも動揺しているのは、人の死を目の当たりにしたという事もあるのだが、処刑されたムー人…彼らはマイラスの部下であるのだ。
彼らはロデニウスから齎された技術を元に、前線へ人員や物資を安全かつ迅速に運ぶ為の装甲車輌の開発を担当していたチームであり、迅速な戦力化の為に先進的なテスト機材が豊富に存在するサモア基地へ、試作車を貨客船に搭載して運んでいた。
それに対しマイラスはグラ・バルカス帝国の攻撃があるかもしれないと反対したのだが、開発チームは祖国を護る為の兵器を一刻も早く前線の将兵へ完璧な形で届けたいと熱望し、結局マイラスはその熱意に圧されて許可してしまったのだ。
「ランダー…マザリグ…ベーナム…うぅっ…私が…もっと強く止めていれば…」
目の下に濃いクマを作りながらも生き生きとした様子で図面を引き、油塗れになりながら機材を弄っていた彼らの姿はもう見る事が出来ない。
愉快で気のいい彼らは凶弾に倒れ、冷たい死体となってしまった。
「主…そんなに自分を責めないで下さい…。悪いのは、あの国…グラ・バルカス帝国です。私が絶対に、奴らを吊るして差し上げますから…」
大粒の涙を溢しながら泣き崩れたマイラスを、傍らに居たラ・ツマサが抱き締めて慈愛に満ちた手付きで頭を撫でる。
しかしながら彼女の瞳の奥…エメラルドを思わせる瞳の奥底には、地獄の業火が焚き火に思える程に激しく巨大な憤怒の猛火が渦巻いていた。
──ダンッ!
勿論、怒りに燃えているのはラ・ツマサだけではない。
ラ・カサミの乗組員をサモアへ送り届ける為に派遣されたラ・アカギの艦長であるラッサンもまた、額に青筋を浮かべた憤怒の形相でモニターに映し出されたシエリアを睨み付け、壁に拳を打ち付けた。
「クソッタレェ…!あんな痛い目に遭ったってのに、連中はそんなに戦争がしたいのか!?クソッ!クソッ!従えば繁栄があるだと!?あんな簡単に人を殺す連中の靴を舐めて得られる繁栄なんざ、こっちから願い下げだ!」
──ダンッ!ダンッ!ダンッ!!
怒りのまま、何度も何度も壁に拳を打ち付けるラッサン。
硬いモルタルの壁に打ち付けられた彼の拳には血が滲み、やや黄ばんだ白い壁に赤黒いシミを幾つも作る。
「そうだ、そうだ!ラッサン中佐の言う通りだ!」
「連中こそが本物の蛮族だ!」
「ムーの力を見せてやる!今すぐ報復に…」
「落ち着け!」
ラッサンの怒りに感化された周囲の者が同調し、怒りのボルテージを更に上昇させる。
だが、それが最高潮に達する寸前でミニラルが鋭く一括した。
「一旦冷静になれ!…諸君らの気持ちはよく分かる…私も同じ気持ちだからな…。しかし、感情に飲み込まれて物事の本質を忘れてはならない!我々の主目標はあくまでもムー大陸を…世界を征服せんとするグラ・バルカス帝国の野心を挫く事であり、報復は二の次である!先ずは、今まさに侵略の手に怯える人々を救う事が先決であろう」
声を張り上げるミニラルの姿に、気炎を吐いていた者達はハッとした様子で静まり返る。
そう、ムー統括軍の基本戦略は国土防衛であり、積極的な報復攻撃は想定されていない。
その為、生半可な報復攻撃を行ったとしてもノウハウ不足で失敗してしまうだろうし、それによって戦力を損耗してしまえば国土防衛すらままならなくなるだろう。
そうなればムーの国土は侵略者に蹂躙され、モニター越しに行われた惨劇が祖国の各地で行われる事は想像に難くない。
「…申し訳ありません、ミニラル大佐。少々…いや、大いに冷静さを欠いてしまいました…」
1000人規模の乗組員を擁する戦艦の艦長という立場としては失格と言わざるを得ない態度を見せてしまった自らを恥じ、ミニラルに謝罪するラッサン。
しかし、ミニラルは怒鳴りつけたりせず、ラッサンに諭すように語り掛ける。
「確かに先程の君は艦長として相応しくないものだった。だが、それに気付けた事は大きな成長だ。…君はまだ若い。今の内に失敗を知り、それを糧に出来るのは若者の特権だよ」
「…ありがとうございます」
ミニラルによる年長者らしい含蓄のある激励に、ラッサンは感激しつつ深々と頭を下げる。
それに対し、ミニラルはゆっくりと大きく頷きながら応えた。
「うむ…だが、余り気に病む必要もない。私とて、君の事を言えたものではないからな」
苦笑と共に開かれたミニラルの手は鮮血が滲んでいた。
どうやら彼も怒りに身を震わせ、爪が皮膚を突き破る程に拳を握り締めていたらしい。
「しかし、ミニラル大佐。このまま何もしないという訳にはいかないでしょう。先程の犠牲者の中には、ミリシアル人もロデニウス人も居ました。ミリシアルは先進11ヶ国会議のホスト国として顔に泥を塗られた事もありますし、間違いなく報復攻撃を行うでしょう。それに、ロデニウスは防衛を基本としていますが…」
「アズールレーン…彼らに報復攻撃を要請するだろうな」
「はい、そんな中で我が国だけ参加しないというのはありえません。ですが、勝利を確実にするにはアズールレーンの戦力と技術が必要となります。政府首脳陣にアズールレーンへ加盟する事を要求しなければ…」
「それについては問題ないだろう。アズールレーンへの加盟を検討する議論は議会内で非公式ながら進んでいるらしい。それも今回の件でより深いものとなり、大々的に議会で取り上げられるだろう」
備品のティッシュで血を拭いながらラッサンとミニラルが言葉を交わしていた時だった。
──ジリリリリリッ!ジリリリリリッ!
レトロな黒電話のベルが鳴り響く。
「あ、私が出ますよ」
たまたま近くに居た技官の一人が受話器を取り、応対する。
「はい、こちらムー先端技術研究局…は?今なんと…?ぇ…?え?ふ、フレッツァ閣下!?少々お待ち下さい!今、ミニラル大佐…いや、このままでいいと仰られても…。はぁ…はい…はい…はぁ…?わ、分かりました。そのように……」
電話の主は、アズールレーンの最高指揮官である指揮官ことクリストファー・フレッツァだった。
そんな大物相手に電話対応する羽目になった技官は目を白黒させていたが、どうやら一方的に要件を伝えられて通話を切られてしまったようだ。
「君、今の電話はフレッツァ上級大将殿だったのか?」
「えぇ…何でも、ラ・カサミの改修計画を大幅に変更するのでその許可が欲しいとの事で…」
「改修計画の変更?確か現状の改修計画は、ラ・ツマサ君に似たものになると聞いていたのだが…。他に何か仰ってはいなかったか?」
ミニラルが電話応対をした技官に確認するが、技官も指揮官からの要件をイマイチ把握出来ていないようで、何とも歯切れの悪い言葉が返ってきた。
「姉上の…改修計画を…?」
「はい、何でも『封印指定技術第8号』?なる特殊な技術を用いて改修を行うとの事でして…。あ…そう言えば、ラ・ツマサさんにも同様の改修を行う準備があると言っていたような…」
「封印指定…技術?そう言えば、フレッツァ殿から聞いた事がある。なんでもサモア基地の最重要区画に封印された"イレギュラーな技術"があると…」
マイラスを慰めていたラ・ツマサだが、姉であるラ・カサミに関わる事を耳にしてそちらに興味を向け、マイラスも瞼を腫らしながらかつて指揮官から聞いた噂話を思い出す。
「とにかく、詳しい事は電話では話せないので、明日か明後日にでも総司令部に来てほしいとの事でして…えー…っと…どうしましょうか?」
世界有数の軍事組織の最高指揮官の言葉を伝えるという大役を押し付けられた技官は、冷や汗をかきながら気まずそうな笑顔を浮かべる事しか出来なかった。
ラ・カサミもラ・ツマサもとんでもない魔改造&ロマンを詰め込むつもりです
今後、お色気シーンは…
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今より増やせ
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このぐらいでいい
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もう少し減らしていい
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もっと減らして
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無くていい