異世界の航路に祝福を   作:サモアオランウータン

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やまねこ3417様より評価9を頂きました!

今回のイベントは結構小規模なイベントですね…
まあ、前哨戦も生放送も無かったですし、こんなものですか
ただ今回は次の大型イベントに繋がりそうなので、今から楽しみです!


221.楽しい捕虜生活

──中央歴1642年6月30日午後3時、ロデニウス連邦旧ロウリア王国東部──

 

《さあ、来るか…来た!4回転アクセル!正に氷上の踊り子…いえ、氷上の妖精と呼ぶべきでしょう!》

 

「ふへー…すっげぇ…」

 

ロデニウス大陸の内陸部、かつてロウリア王国東部と呼ばれていた地域にはロデニウス連邦とアズールレーンが共同で運営する捕虜収容所…通称『レインボーヤード』が存在する。

その一角ではグラ・バルカス帝国海軍航空隊の雷撃機乗りであったケルが目の前に置かれた画面を見て深く感心していた。

 

「いやー…本当にエミールさんはキレイだなぁ…。しかも、氷の上をあんな靴で自由自在に滑るなんて…」

 

ケルが見ている画面には、以前開催されたアズールレーンによる民間人との交流イベントで披露された、エミール・ベルタンの氷上演技…所謂フィギュアスケートが映し出されている。

実はケル、カルトアルパスで撃墜された後にエミール・ベルタンと出会ってから、彼女に夢中なのだ。

とは言っても恋愛的な意味ではなく、どちらかと言えば推しのアイドルに夢中といった感じなのだが…

 

「だけど、本当に凄いのはロデニウス連邦かもな…。こんな部屋、軍艦の艦長クラスじゃないともらえないぞ?」

 

エミール・ベルタンによる演技が終わったタイミングで一旦立ち上がり、伸びをしながら自らに与えられた部屋を改めて見渡すケル。

約2.3m四方の小さな空間であるが内部は木製のベッドやデスクや椅子が備え付けられており、小さいながらも2つの窓があるため採光も風通しも抜群である。

更には天井には電球とも蛍光灯とも違うコンパクトながらも明るい照明が取り付けられており、動画や音楽や書籍を楽しむ事が出来る"タブレット"とか言う未知の機械まで支給されており、空調まで完備されているのだ。

捕虜収容所という陰鬱なイメージとは真逆な快適で明るい設備を見ていると、ケルは自国の捕虜収容所がどれほど非人道的な施設であったかを理解する事が出来た。

 

「エミールさんの言う事は本当だったんだな。一人でゆっくり出来るし、飯は美味くて動画は面白くて、しっかり眠れる。もう最高だなぁ…戦争が終わってもここに居たいぐらいだ」

 

改めて感心したように述べるケル。

確かに捕虜収容所としては余りにも手厚く、余りにも豪華な設備であるが、それにはアズールレーンとロデニウス連邦のとある理念によるものが影響している。

それこそが"捕虜は罪人ではなく、ただ国の為に戦った兵士であり、ある意味で政治の被害者である。故に彼らに理不尽な苦難を背負わせる事はあってはならない"というものだ。

それ故にロデニウス連邦の捕虜収容所は可能な限り快適になってはいるが、それでいて可能な限りコストを抑えた作りになっている。

例えば捕虜一人一人に与えられた個室…これはアズールレーンやロデニウス連邦軍に所属する兵士達が寝泊まりする兵舎、あるいは自然災害や紛争等で住まいを失った被災者・難民の仮住まいとして用いられるコンテナハウスである。

海上輸送コンテナの規格で作られており、予め工場で生産して必要な場所まで船舶・鉄道・トラックで運べば後は水道や電線を繋ぐだけでよい為、非常に安上がりになっているのだ。

その他にも旧クワ・トイネ公国産の形や色が悪い作物を安く仕入れて食費を抑えたりしている為、収容所の運営経費は意外な程低く抑えられている。

だが、それにしてもそれなりの値段がするであろうタブレット端末まで与えているというのは、過剰な待遇と思われるだろう。

しかし、それにもとある思惑が存在するのだ。

 

──ピロンッ♪

 

「ん?今日のニュースが来たか。えー…っと、なになに?上院議員による政治資金横領が発覚、連邦捜査局が家宅捜索を開始…か…。ロデニウス連邦もそういうのあるんだな。だけど、ちゃんと悪い事したら捕まるんだな…」

 

賄賂や癒着が横行する自国との差を痛感し、嘆息するケル。

そう、捕虜達にタブレット端末が与えられている理由…それは、多くの情報を与える事で彼らの固定観念を打ち砕く為なのである。

例えば、我々の世界における中世時代の庶民が生涯で得られる情報量は新聞1部分と言われており、それ故に我々からしてみればあり得ないような情報でも、彼らにしてみればそれこそが常識であるのだ。

グラ・バルカス帝国のような近代的な国家であれば庶民でもそれなりに多くの情報を得られるだろうが、それでも現代人が一日で得られる情報量に比べれば非常に少ないと言わざるを得ない。

そんな中で、様々なプロパガンダや上官からの目がある軍隊内は特に情報の偏りが強く、明らかに敵が優れた兵器を持っていようが末端の兵士は下士官はそれを知る事も出来ずに命令のまま無謀な作戦に駆り出されて命を散らす事となるだろう。

しかし、それでも生き残った者達はケルのような捕虜となるが、捕虜達もそのような自国の軍のプロパガンダに染まりきったままだと力の差を理解出来ずに収容所内で暴動や脱走を企てるおそれがある。

その為、ロデニウス連邦では捕虜達に自国の優れた国力や文化を知らしめる事で、力を用いずに抵抗の意思を挫くという意図の下、彼らにタブレット端末を支給しているのだ。

 

──ピロンッ♪

 

「お、速報…?」

 

ややぎこち無い手付きでタブレットを操作してニュースサイトを閲覧していたケルであったが、画面の通知欄に速報が来た事を示すバナーが表示された。

 

「んー…グラ・バルカス帝国が世界のニュースにて捕虜を公開処刑……はぁぁぁぁ!?」

 

バナーをタップし、ニュースのタイトルを確認したケルは目玉が溢れそうな程に目を見開き、驚愕の声を上げた。

 

「ロデニウス連邦政府はこの蛮行に対して断固たる措置を取る、って…ま、まさか…!」

 

ニュース内容を斜め読みしたケルの脳裏に浮かぶのは、ロデニウス連邦による報復…つまり、グラ・バルカス帝国人であるケル達の処刑だ。

 

──ドンドン!ドンドン!

 

「ケル、居ますか!?」

 

「っ!?…ベローか!待ってろ、今出る!」

 

扉を強く叩かれた為、驚いてタブレットを取り落としてしまうが、扉の向こう側に居るのが幼なじみであるベローだと分かると慌ただしく扉を開ける。

 

「け…ケル、大変なんだよぉ〜!さっきのニュースで皆が…皆が!」

 

扉を開けると、ベローともう一人の幼なじみであるスーンが額に脂汗を浮かべてケルを待っていた。

 

「皆が…って、まさかロデニウスがもう!?」

 

「いえ、私もそれは考えましたが違います。ですが…事態はより深刻になるかもしれません」

 

早速、他の捕虜がロデニウス連邦軍の兵士により殺害されたのかと思ったケルだったが、ベローは彼の考えを否定した。

しかし、ベロー曰くより悪い事になっているらしい。

 

「と、とにかくケルが来てくれないとどうしようもないよぉ…」

 

「どうなってるか分からないが…よし、とにかく他の連中の所に行くぞ!」

 

慌てふためく二人の様子を見て只事では無いと判断したケルは、詳細を聞く事もなく収容所内にある広場へと走り出した。




そう言えば謎にフォーミダブルがピックアップされているので、次こそロイヤルイベントが来るのか!?

今後、お色気シーンは…

  • 今より増やせ
  • このぐらいでいい
  • もう少し減らしていい
  • もっと減らして
  • 無くていい
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