仕事場であるビニールハウス内はもうサウナですよ…
──中央歴1642年7月20日午後6時、グラ・バルカス帝国領レイフォリア──
この世界におけるグラ・バルカス帝国の外交窓口である外務省レイフォリア出張所。
その中でも賓客を饗すための特別応接室では二人の男性と一人の女性が何やら話し合っていた。
「シエリアさん、件の話ですが…考えて下さいましたか?」
上等なソファーに座り、テーブルに置かれたコーヒーで唇を湿らせてから発言したのは近衛兵団所属のエルザンだ。
彼の目は自らの向かいに座るシエリアへと向けられている。
「…申し訳ありません。まだ…結論は…」
自らに投げ掛けられた問いに、シエリアは顔を伏せながら消え入りそうな声で応えた。
今の彼女は同僚の無惨な死を目の当たりにした事と、捕虜の処刑を命じてしまった事によるストレスで憔悴しきっており、少し前にエルザンから受けた"とある話"の返事を考える事すら出来なくなっている。
「シエリア君!ダメじゃないか、エルザン殿の気持ちを踏み躙っているのと同じだぞ?私が聞いた話によれば、エルザン殿は家系図を見ても由緒正しき純バルカス人の家系…更には帝国大学を主席で卒業し、近衛兵団の入団試験も最優秀成績で通過した秀才なのだ。彼のような優秀な男が君を見初めたと言うのに…」
そんなシエリアの隣に座るゲスタが彼女を叱責するような勢いでそう述べる。
そう実はエルザン、シエリアに惚れており彼女が捕虜の処刑を指示したその日に結婚を申し込んだのだ。
「いえいえ、ゲスタ殿。シエリアさんもかなりの才女ではありませんか。それに現地人の処分を命じた時に見せたあの冷徹さ…私はあの時、貴女の内に真の愛国心を!高潔なる優等民族バルカス人の在り方を見出したのです!正しく貴女こそ、模範的帝国臣民!貴女こそ、私の伴侶に相応しい!だからこそ私と婚姻を結び、未来の帝国の模範的となる子を成そうではありませんか!」
「シエリア君もいい歳ではないか。そろそろ結婚し、家庭に入って落ち着くべきではないか?このような機会は滅多にない…いや、寧ろエルザン殿との出会いは運命だろう。この話を逃せば、婚期を逃してしまうぞ」
熱烈に、なおかつ芝居がかった口調でシエリアへ求婚するエルザン。
それに便乗するようにゲスタもシエリアへ決断するように促す。
エルザンは純粋に─とは言っても歪んだ愛国心から来るものだが─シエリアを想っての言葉だが、ゲスタは違った。
(よしよし、その調子で押すのだ。今のシエリアは精神的に弱っている…そのような状態でお前へ嫁入りするという進路があるなら、退職もしやすくなるだろう。所詮、女なぞ男に寄生しなければ生きてはいけぬ。自分を養ってくれる男が居れば、そちらにコロッと行くだろうよ)
前時代的な男尊女卑思想剥き出しの考えを持ったゲスタは、エルザンがシエリアに惚れた事すらもシエリアを追い出す為に利用しようとしていた。
しかも、その野心にはとある思惑もあった。
(後は返事を引き伸ばした件について責めてやれば今度こそ折れるだろう。そうなれば、私は仲人として小僧に恩が売れる…。それをネタに上手いこと近衛兵団員の資格を持てさえすれば、私の地位は揺るがぬものに…ぐふふふ…)
心中で舌舐めずりするゲスタはシエリアへ熱烈にアプローチするエルザンを横目に、密かに下卑た笑みを浮かべるのだった。
──同日、女性職員宿舎──
間もなく日付が変わろうとする深夜、シエリアは省庁で働く女性職員が寝泊まりする宿舎の中にある自室へフラフラとした足取りで向かっていた。
結局、求婚は一旦保留としてエルザンには帰ってもらったのだが、その後はゲスタから優柔不断な態度を叱責され、更には追加の仕事まで押し付けられてこんな時間になってしまった。
(私は…こんな事をする為に外務省に入ったのか…?)
揺れる視界に酔いながら廊下の壁に肩を擦り付けながら歩く。
最近では食欲も無く、無理に食べては嘔吐するの毎日であり、亡くなった同僚の分の仕事もしなければならない為、睡眠時間も短くなってしまった。
正直言ってしまえばもう辞表を提出し、外務省から逃げ出してしまいたい…しかし、彼女がそうしないのは居場所を失うのが怖かったからだ。
というのも彼女は幼い頃に両親を亡くしており、親戚に預けられて育った。
しかし、親戚の彼女に対する態度は腫れ物を扱うようなよそよそしいものであり、高等学校を卒業すると同時に親戚の元を離れ、成績優秀者に給付される奨学金を利用して一人暮らししながら大学へ通っていたのだ。
その為、例え退職しても彼女には帰る場所はなく、次の就職先も男社会なグラ・バルカス帝国では彼女が如何に優秀だろうと見つかる可能性は低い。
(やはり…エルザン殿からの求婚を受け入れるべきだろうか…。しかし、彼は…"彼ら"には黒い噂がある…。いや…今となっては私も同類か…)
それならばさっさとエルザンからの求婚を受け入れ、家庭に入れば良いと思うが一生を左右する選択をそんな簡単に決める事なんて出来ない。
ましてや相手はかねてより交際をしていた訳でも無いし、更には色々と黒い噂のある近衛兵団の団員だ。
もし、選択を誤れば取り返しのつかない事になってしまうだろう。
(あぁ…頭が働かない…。シャワーを浴びて…いや、いいか。今は早く寝たい…)
どうにかこうにか自室まで辿り着くと、ドアを開けてすぐ近くにある電灯のスイッチに手を伸ばす。
──パチッ
スイッチが入り、電灯の回路に電気が流れた瞬間だった。
──ボンッ!
「…っ…っ!?きゃぁぁぁぁぁっ!?」
天井に取り付けられた電球が眩い光を放ち、ガラス片を撒き散らしながら爆ぜた。
それと同時に鼻を突くガソリンのような刺激臭と、額や頬に走る激痛…だが、シエリアの弱りきった体と精神は余りの衝撃により、その意識を強制停止してしまった。
──同日、サモア基地指揮官執務室──
「指揮官さ〜ん、"お友達"からお知らせなの〜」
ちょっとした騒動が起きているグラ・バルカス帝国より遥か東方に位置するサモア基地。
その中枢である総司令部の指揮官執務室に、ロングアイランドが執務室の主である指揮官へ一枚のメモ用紙を届けに来た。
「おう、何だって?」
「"花火は咲いた。観客は大盛りあがり"だって〜」
デスクで様々な書類を処理する指揮官からの問いかけに、ロングアイランドはメモ用紙を渡しながらその内容を読み上げる。
「流石いい腕だ。俺が見込んだだけの事はある」
内容を伝えられた指揮官は満足そうに頷き、パチパチと拍手をする。
もう察せられると思うが、シエリアを襲った災難…それは指揮官の差し金によるものなのだ。
電球の中に少量のガソリンを入れ、ターゲットの部屋の電球とすり替え、スイッチが入った瞬間に電球が破裂するという一部のマフィアが使う嫌がらせ手段を使い、シエリアへ危害を加えた。
そしてそれを実行したのは指揮官の"お友達"と呼ばれる直属の暗部である。
「相変わらず指揮官さんのやる事はえげつないの〜…。いっそ、暗殺の方が優しいかも〜…」
「それも考えたが、ただ殺すのはつまらん。あの女にも、あの国にも…"野蛮人"ってのはどんなモノかをしっかりと教えてやる。殺すのは全部終わって、連中を裁判所に引きずり出してからだ」
既に指揮官の"お友達"はムー経由、或いは潜水艦を用いてレイフォル各地に潜んでいるのだ。
今でこそ軽い"嫌がらせ"で留めてはいるが、アズールレーンが本格参戦する際には破壊工作や暗殺を行うように命令を下している。
「奴らに伝えておけ。"前菜は少し多めにしてくれ"ってな」
「別命あるまで同程度の嫌がらせ工作をしろ、って事だよね〜。ちゃんと伝えておくよ〜」
指揮官からの指示を受けたロングアイランドは、長い袖をヒラヒラと振りながら執務室を後にし、電信室へ向かって行った。
そう言えばパーシュースが復刻中なので手に入れてない指揮官諸君、これからアズレンを始めようとする皆さんはチャンスですよ!
パーシュースは色々と使えますからね
今後、お色気シーンは…
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今より増やせ
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このぐらいでいい
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もう少し減らしていい
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もっと減らして
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無くていい