愛してるかは分からないけど、仲良くはしてるみたいです
あと、独自設定入ります
──中央暦1638年11月23日午前10時、ムー歴史資料館──
「先ず、幾つか説明しておかないといけません。各国には、なかなか信じて信じてもらえないのですが…我々の先祖は、この星の住人ではありません。」
「…ほぅ」
「どういう事かしら?」
歴史資料館のロビーの休憩スペースで、マイラスが指揮官とダンケルクの二人に案内の前の説明をする。
二人がやや驚いたように目を見開くのを見て、マイラスはやっと此方が驚かせられる事に気を良くして説明を続ける。
「時は1万2千年前、大陸大転移と呼ばれる現象が発生しました。これにより、ムー大陸の殆どはこの世界に転移してきたのです。これは、同時の王政ムーの公式記録として残されています。」
そうしてマイラスは、資料館の職員が用意した台座から生えた棒で中心が貫かれた球体…地球儀を二人の前に置いた。
「これが、元々ムーが存在した世界…つまり惑星です。その名も…」
「「地球…」」
指揮官とダンケルク、二人の声が重なった。
指揮官が恐る恐る、と言った様子で地球儀に手を伸ばしゆっくりと回転させる。
「間違いない…ユニオンもロイヤルも鉄血も重桜も…東煌もアイリスもサディアも北連もある…」
「間違いないわね…この、色が違う大陸がムー大陸かしら?」
「この地球儀は斜めになっていないな…もしかしたら大陸一つ無くなったから地軸がずれたのかもな。南極もこの位置なら、氷漬けにはなってなかったんだろうな。」
二人が地球という言葉を知っている事を驚きつつも、マイラスは説明を続ける。
「その大陸は『アトランティス』と言いまして、かつてはムーと世界を二分した大国でした。ムーが居なくなった今、おそらくアトランティスが世界を征しているでしょうね。」
マイラスが、ムー大陸の北西にある大きな島が四つ連なった場所を示す。
「この国は『ヤムート』と言って我が国唯一の友好国だったそうです。転移で引き裂かれたため、今はアトランティスに吸収されているでしょうが…」
と、次にムー大陸の南部を示す。
「それと、ここは『サウ・ムー・アー』と言って転移に取り残されたとされる土地です。現在のムー大陸には、その痕跡である入江や湖が残るのみですが…かつてはサウ族と呼ばれる民族が自治していました。動物の革で作ったボールを奪い合うスポーツを嗜み、闘争心を養っていたそうです。」
マイラスの説明が一段落つくと、指揮官が小さく手を挙げた。
「よろしいですか?」
「はい、何でしょう?」
「我々を説明するのに、一番いい方法があります。」
そう言って指揮官が鞄からタブレット端末を取り出し操作する。
「我々も転移してきたのです…とは言っても、ロデニウス連邦がではありません。我々…ロデニウス連邦防衛軍の本拠地、サモアはこの世界から転移してきました。」
そう言って、タブレット端末をマイラスに見せる。
まるでテレビのように映像が表示されているタブレット端末のコンパクトさと映像の鮮やかさに驚くが、マイラスは表示されている物に更に驚愕した。
「ちっ…地球!?」
そう、タブレット端末に表示されていたのは立体的に地形を描いた世界地図…正に地球儀を平面にしたような地図であった。
「同じ世界なのかは不明ですが、おそらくはあなた方の居た惑星から転移してきた…そういった可能性もあります。」
指揮官が指でタブレット端末をタッチすると、重桜…ムーで言うところのヤムートが強調されるように明滅した。
「我々は元々の世界では、とある驚異に対抗する為の世界規模の軍事同盟が存在しました。もちろん、ヤムート…我々が重桜と呼んでいる国家も参加しています。そして、その拠点の一つ…この世界に転移してきた我々の本拠地こそ…」
続いてサモアをタッチして明滅させながら、地球儀のムー大陸南部を指差してマイラスに告げる。
「サモアです。サウ・ムー・アー…長い時の間に訛ってサモアになったのかもしれません。しかも、ラグビーという革製のボールを奪い合うスポーツが盛んです。…私としてはラグビー発祥がサモアらしいという事は驚きですがね。」
マイラスは、またもや驚愕した。昨日から驚愕し通しであるが、これは格別だ。
マイラスの記憶にあるサウ・ムー・アー跡地の入江や湖と形が殆ど同じだ。
わなわなと震えるマイラスを気にする事もなく、指揮官は続けた。
「我々の世界には1万2千年前に海底に没した大陸がある、超古代文明アトランティスが存在した。という伝説があります。ムー大陸は転移、アトランティスは地軸のズレによる気候変動により氷に閉ざされたのでしょう。」
「先程話したサウ・ムー・アー跡地の地形とそっくりです…まさか、こんな歴史的な発見があるとは…個人的には是非、あなた方と仲良くしたいものです。後で直ぐに上に報告しますよ。」
その後、気を取り直したマイラスは歴史資料館を案内しつつ、この世界でのムーの歴史を解説する。
転移後の混乱、周辺国との軋轢、魔法文明に比べての劣勢、科学文明としての出発、そして世界第二位の国家までの道のり…なかなかに苦難の道のりだったようだ。
また、それに応えるように指揮官が元の世界の歴史を知る限り説明した。
人類の90%が死滅した大戦争、荒廃からの復興と新たな国家の設立、未知の敵セイレーンと対抗するための人型兵器KAN-SEN、そしてセイレーンを撃退した第二次セイレーン大戦…復興の原動力となった『人類技術保全情報群』や、アズールレーンとレッドアクシズの抗争等々はややこしくなるため割愛したが。
「KAN-SEN…ダンケルクさんがですか?」
「ええ、私は動力学的人工海上作戦機構・自律行動型伝承接続端子…略してKAN-SEN、その一人です。」
「まあ、マイラス殿が信じられないのも無理はありません。人一人が巨大軍艦の力を持っているなんて荒唐無稽でしょう?」
「それは…その…はい、申し訳ありませんがとても…」
目の前に居る可憐な女性が、未知の敵に対抗する為の兵器である事は信じがたい事だった。
ムーの歴史を説明しても他国からは信じてもらえない。マイラスはそんな他国の心情を体験する事となった。
「この後は最新鋭戦艦の見学でしたね?海ならば、彼女がどのような者であるか証明出来ます。」
「そ…そうですね、少し時間が押しているので昼食の後に海軍基地のある港へ向かいましょう。」
混乱する頭で、どうにか笑顔を浮かべながら外務省が予約していた資料館近くのレストランに二人を案内する為に歩き出したマイラス。
だが、更なる驚愕が彼を待ち受けていた。
次回、マイラス驚愕!
マイラス君、驚き過ぎて脳が破裂するのでは?