──中央歴1642年7月30日午後2時、神聖ミリシアル帝国エリア48──
砂漠地帯に存在する神聖ミリシアル帝国の秘密基地エリア48。
その屋外実験場は夏場という事もあって非常に気温が高く、赤銅色の地表には陽炎が揺らめいている。
──カシュゥンッ!ヒュイィィィィィィ…
そんな中、砂煙を上げながら疾走する青い人影…いや、その様は疾走というよりも"滑走"と言うべきだろうし、姿も人間に近いが人間とは言い難いシルエットである。
まず全高は凡そ4m程あり、全体的に青を基調として各所へ黄色のライン。
首は無く胴体に直接ヘルメットのような頭部が取り付けられ、その後頭部からは三日月状のブレードアンテナが生えており、顔面には目鼻口の変わりに緑色の四角いガラスのような物と、その下にそれぞれ赤と緑の丸いレンズのような物が取り付けられていた。
そして右腕には歩兵用ライフルをそのままスケールアップした物を携えており、左腕の前腕には楕円形の盾が取り付けられている。
そんな異形の巨人が脚に備え付けたローラーを高速回転させ、自動車並みの速度で滑走している姿は、何処か非現実的なものに見えてしまう。
「陛下、最新鋭装甲ゴーレム『スパルタクス』は如何でしょう?これまで開発してきたゴーレムを上回る実用性に、魔導装甲車を上回る運動性能と装甲。更には様々な武装を追加する事であらゆる作戦に投入可能な汎用性…これを大量配備する事が出来れば帝国陸軍はこれまでより遥かに強くなる事でしょう」
『スパルタクス』と名付けられた青い巨人が縦横無尽に駆け回る実験場を見下ろす小高い丘の上に建てられた監視所。
冷却魔石による冷房が効いた室内で、軍務大臣のシュミールパオが恭しく跪きながらそう述べた。
「ふむ…良い。実に良い」
その言葉を受けたミリシアル8世はゆっくりと頷き、満足そうに応えた。
「シュミールパオよ、これまでの我が帝国陸軍の欠点…理解はしておるか?」
「はっ!僭越ながら申し上げさせて頂きますと、陸軍は海軍・空軍に比べて貧弱…具体的には我が国の後塵を拝するムー、かの国の陸軍と比べて砲兵及び自動車部隊は大きく劣ると言わざるを得ません」
ミリシアル8世の質問にシュミールパオが答える。
実はシュミールパオの言う通り、神聖ミリシアル帝国の陸軍は弱い。
とは言っても文明国は勿論、下位列強ぐらいなら鎧袖一触に出来るだけの力はあるのだが、ライバルであるムー陸軍には敗北するであろうと言われてきた。
その原因が砲兵と自動車部隊である。
そもそも神聖ミリシアル帝国で軍民問わず広く使用されている魔導車は同国の魔石精製技術の限界からくる内包魔力量の問題で航続距離が短く、ある程度の航続距離を確保するには魔導車の搭載量を犠牲にして大量の魔石を積載する必要があった。
その点では現状の魔導車は科学文明の内燃機関車に劣り、大口径砲の牽引車両や運搬車両はムー製の車両に負けているのだ。
「うむ、左様。陸戦は砲兵火力と歩兵の進軍速度こそが肝心…何万もの歩兵を揃えようと砲兵の前には砕け散り、如何に防御を固めようが素早い部隊には翻弄されてしまう。しかし、"あれ"があればそれは解決するのであろう?」
「はっ!このスパルタクスは大口径砲の牽引は勿論、砲弾の装填作業も可能であり、装甲に関しては空軍にて採用されている25mm魔光砲に耐えられる強度を確保してあります。このため砲兵隊の補助や、敵歩兵部隊へ対する強襲も可能となります」
「しかし当面の敵となるグラ・バルカス帝国は、"戦車"なる強固な装甲と火砲を備えた戦闘車両を配備しているそうではないか。それに対抗する為の装備はどうだ?」
「それに関しても抜かりはありません。陛下にご覧頂いているスパルタクスですが、現在右腕に装備されている37mm対装甲ライフルは900m先から45mmの装甲を貫通可能であり、左腕に装備されている防盾は先程の対装甲ライフルの射撃に耐えうる強度を持っています。グラ・バルカス帝国の戦車の性能がアズールレーンによって算出された予測値と同等なら、本機の機動性によって側面や背面に回り込んで一方的に撃破出来るでしょう。もし、想定を上回る戦車…アズールレーンやロデニウス連邦が配備しているようなより高性能な戦車をグラ・バルカス帝国が投入したとしても、より大口径の低反動砲の装備によって火力は直ぐに増強可能です」
「ふむ…では生産体制はどうだ?」
「それに関しても大きな問題はありません。陛下もご存知の通り、本機はアズールレーンにて配備されている『スコープドッグ』を我が国の運用思想に合わせて各部に手を加えていますが、基本パーツはスコープドッグと共通となっております。その為、現在はロデニウスからパーツを輸入し我が国で組み立てを行っておりますが、もうじき生産ラインが完成しますので完全国産化は目前です」
ミリシアル8世の言葉にシュミールパオが跪いたまま応える。
彼らが交わす言葉からも分かる通り、神聖ミリシアル帝国はアズールレーンからの技術協力を得てアーマードトルーパーを国産化し、独自の改良を加えた上で陸軍装甲戦力の主力にしようとしているのだ。
その名も『スパルタクス』…開発コードネーム『ブルーナイト』はスコープドッグを上回る装甲と出力を持つヘヴィ級に属するアーマードトルーパーであり、その性能は今まで開発されていたゴーレムを圧倒するものとなった。
「うむ、よろしい。レイフォルに屯するかの国の陸軍を排除するには数を揃える必要がある。ムー大陸へ我が国の陸軍を派遣するのはグラ・バルカス帝国海軍を排除してからになるだろう。それまでにどれほどの機数を揃えられる?」
「はっ!現在はこのエリア48内の工廠にて先行量産型24機が製造中でありますが、先述した生産ラインが完成すれば月産120機を想定しております。また、生産ライン構築中もエリア48工廠にて輸入パーツを利用した製造を続けますので、9月にムー大陸へ派遣すると仮定した場合ですと、凡そ100機程度の配備が完了している事でしょう」
「左様か。それだけの戦力を派遣出来れば国民も納得するであろう」
満足そうに頷くミリシアル8世。
カルトアルパス空襲を防いだムー軍人の英雄的活躍により、神聖ミリシアル帝国内ではムーへ援軍を派遣すべしという世論が形成された事は以前にも話したが、最新鋭兵器を配備した部隊を派遣するとなれば世論も納得する筈だ。
「ですが、その為には先ずムー大陸周辺の制海権を確固たるものにする必要があります。アズールレーンから提供された航空写真によりグラ・バルカス帝国の海軍戦力は決して侮れない…いえ、非常に強力であると判明しています。正直に申しまして勝率は50%かと…」
「その件については余も懸念していた。ロデニウスから輸入した『ジグラント3』と新型機である『エピクロス』の配備によって海軍航空隊の戦力は向上したが、両機の配備数はまだ心許ない。艦艇に関しても第零式魔導艦隊が壊滅した事により、一線級の戦力が大きく数を減らしてしまった…。最新鋭戦艦である『オリハルコン級』の就役こそ間に合ったが、それでも余は十分ではないと考えている」
「私めもそう考えております。オリハルコン級は従来の主力戦艦であるミスリル級を上回る性能を持っていますが、主兵装である誘導魔光弾の配備数は両手の指で数えられる程しかありません。時間をかければそれなりの数を揃えられるでしょうが、そうなるとグラ・バルカス帝国へ軍備増強の時間を与えてしまう事になります」
「うむ、余も同じ考えだ。故に、発掘兵器を…空中戦艦『パル・キマイラ』を投入すべきだと判断しておる」
「なっ…!?」
ミリシアル8世の言葉に、シュミールパオは絶句した。
『パル・キマイラ』…それは神聖ミリシアル帝国が発掘した古の魔法帝国の超兵器の一つであり、正に同国の秘密兵器といえる物だ。
それを投入するという事は、ミリシアル8世はそれだけ本気でグラ・バルカス帝国を叩こうとしているのだ。
「シュミールパオよ。国防省並びに対魔帝対策省と緊密に連携し、必ずやグラ・バルカス帝国へ鉄槌を下すのだ。これは我が国だけの問題ではない。この世界、全ての誇りを懸けた戦である。その旨…しかと心に刻むがよい」
「ははーっ!」
ひたすらに平伏し、恭しく了承の意を示すシュミールパオ。
後に彼はこう語った。
──「普段、我々と接している陛下は厳しくも慈悲深いお方だ。しかし、あの時の陛下は正しく世界の皇帝に相応しい…正に神のようであった」
ミ帝版アーマードトルーパーですが…余りにも元ネタそのまま過ぎますかね?
でも、カラーリング的にミ帝にピッタリなんですよね
今後、お色気シーンは…
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今より増やせ
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このぐらいでいい
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もう少し減らしていい
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もっと減らして
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無くていい