異世界の航路に祝福を   作:サモアオランウータン

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ドレイクの竜骨編纂が来るとは…FDGの方が先に来ると思ってたので、強化ユニットが不足してます…


228.王者の緩み

──中央歴1642年8月25日午後2時、ムー大陸東方沖──

 

やや波のある外海を切り裂くように白波を立てて航行する艦隊があった。

現代に生きる我々から見ればどれもこれも近未来的なデザインをしており、人によっては中々にカッコイイと思うだろう。

この艦隊こそ、神聖ミリシアル帝国が不遜なるグラ・バルカス帝国を撃破する為に編成した報復艦隊『第一魔導艦隊』である。

戦艦4隻、空母2隻、巡洋艦6隻、小型艦20隻、補給艦3隻からなる艦隊は正しく世界最強を体現するようであり、更には最新鋭戦艦であるオリハルコン級魔導戦艦『コスモ』まで擁するという事もあって、それぞれの艦船の乗組員達は自分達がグラ・バルカス帝国艦隊を殲滅するという事に何の疑いも持っていない。

 

「ほぅ…これは素晴らしい空撮魔写…いや、写真と呼ぶべきでしたな。これなら敵艦隊の規模も丸わかりです」

 

コスモの艦橋の根本付近に設けられた司令部にて、机の上に広げられた数々の大判写真を前に感心したように声を上げたのは同艦の艦長であるイレイザ・ケーゴムだ。

 

「むむむ…何度見ても精巧な解像度…し、しかしっ!如何に情報を集めようとも、それを活かせるのは前線の将兵である!我が国の圧倒的戦力があるからこそ、貴殿らが集めた情報にも価値が出るというものだ!」

 

一方で悔しさを隠しもせずにそう述べるのは、艦隊司令のレッタル・カウランである。

彼が何故こんなに悔しがっているのか…それは机に置かれた写真こと、アズールレーンが撮影した空撮写真が原因であった。

 

「はい、それは重々承知しております。我々は現状戦力の派遣が出来ず、貴国を始めとした各国へ情報を与える事でしか貢献出来ません。それを踏まえれば…貴国の役割は非常に大きいものだと考えております」

 

そんな二人と机を挟んで対面に座るのは、アズールレーンより空撮写真を届けに来た重桜KAN-SEN『天城』だ。

何故彼女がわざわざミリシアル艦隊まで出向いて直接空撮写真を届けたのかと言うと、グラ・バルカス帝国の艦艇には何故か重桜艦との類似性が多く見られる為重桜艦について多くを知っている事、なお且つ重桜の軍師として数々の実績がある事と…あとは"面倒な輩"を相手にしても物腰柔らかに対応出来る事こそ彼女が連絡役に選ばれた理由である。

 

「ふふん、そうだろう。貴殿はよく分かっているではないか。しかし、貴殿らの情報収集能力も中々のものだ。あまり卑下する事はないぞ」

 

「レッタル閣下のお言葉、しかと肝に命じます」

 

自身の言葉を肯定した天城に対して好印象を抱いたのか、今更過ぎるフォローをするレッタル。

それに対して天城は謙るような態度で頭を下げた。

この状況をもし重桜の面々が…特に赤城が見れば抜け駆けをし、先にグラ・バルカス艦隊を撃滅してミリシアル艦隊に赤っ恥をかかせただろうが、幸いな事に彼女達は艤装の改装中である為そうする事は出来ない。

 

(この方は、今まで平和を謳歌してきたのでしょうね…。自国の力が最も優れていたが故の、仮初めの平和…私もこの方のような慢心には注意しないといけません)

 

心中でそんな事を考えつつも自戒していた天城へ、上官の態度に閉口していたイレイザが問いかける。

 

「天城殿、一応の確認なのですが…この敵艦隊の戦力は如何ほどなのですか?」

 

「はい、グラ・バルカス帝国艦隊…我々はかの国の名称を省略して"グ帝"と称していますが、グ帝艦隊は少なくとも戦艦10隻、空母9隻を主力としているようです。その随伴として巡洋艦クラスが40隻近く、駆逐艦…貴国でいうところの小型艦が約110隻、そして潜水艦が少なくとも50隻は確認されています。総数で約200隻もの大艦隊であり、その中にはカルトアルパスを襲撃したグレードアトラスターの同型艦が存在します。決して楽観視出来ない相手かと…」

 

イレイザへ応えながら白魚のような指で空撮写真に写し出されたレイフォリアの港から出港する多数のグ帝艦船を示す天城。

その中には一際大きな艦影も存在する。

 

「ふぅむ、確かに数はそれなりだな。しかし、我が国の艦隊戦力はこれだけではない!同程度の第二・第三艦隊、更には…」

 

「司令っ!」

 

天城から煽てられた事でいい気になったらしいレッタルが盛大に口を滑らせかけるが、どうにかイレイザが止めた。

しかし、どの道レッタルが口を滑らせなくてもミリシアル側がどのような戦略を組んでいるのか、天城は理解していた。

 

(レッタル殿の様子から察するに、おそらくは先行した艦隊は他国の艦隊と共に囮とする魂胆でしょう。我々に対しては、小規模艦隊を先行させて警戒に充てると説明していましたが…それでは艦隊を派遣した他国の信頼を損ないかねません。神聖ミリシアル帝国は覇権主義から脱却したと言いますが、それでも根幹は覇を唱えていた頃を忘れられないのでしょう)

 

天城から見ればミリシアルはどうにも他国を見下す…というよりは自国が最上であり、他国は有象無象でしかないという価値観で凝り固まっているようにしか見えない。

確かに自国に誇りを持ち、愛し、信じる事は尊い事だろう。

しかし、それも行き過ぎれば傲慢や慢心となり、国を滅ぼす毒となる。

そして、目の前にいるレッタルはそれを体現したような存在に見えてしまう。

 

(出来れば我々も力添えをしたいところですが、生憎指揮官様からそれは止められていますからね…。ですが、ミリシアル艦隊の戦力はかなりのものですし、ムー艦隊も供与した兵器で以前より遥かに増強されています。順当に行けば、辛勝か…悪くても惨敗は防げるでしょう)

 

そんは事を考えている天城へ再びイレイザが問いかける。

 

「そう言えば敵艦隊が保有している潜水艦という艦船についてですが…」

 

「そちらに関してはムー艦隊が頼もしい存在となって下さいます。我々の中でも古参の空母が対潜水艦戦闘を彼らに伝授しましたから」

 

「では、潜水艦に関してはムー艦隊へ…」

 

「天城殿、この戦いが終わったら是非とも我が息子に会ってはくれないだろうか?」

 

しかし、急にレッタルが割り込んできた。

 

「レッタル閣下の…ご子息様ですか?」

 

「うむ、貴殿は中々に気立ても良いし、顔も良い。息子はまだ独身でな…貴殿が嫁に来るなら、カウラン家も安泰だ。それに…ほら、アズールレーンとしても我が国の名家と繋りを持てるのは悪くない話だろう?」

 

レッタルの言葉に天城は思わず眉根を寄せた。

どうやらこの男、戦う前から勝った気でいるらしい。

これがもし、社交界のパーティー会場であったなら分からない話でもない。

どう客観的に見ても天城は容姿端麗で気立ても良く、教養に溢れている正に完璧な美女であり、年頃の子を持つ親なら彼女を嫁に迎え入れたいと思うのは当然だろう。

しかし、ここは今から死地に赴こうとする軍艦の艦上だ。

そのような脳天気な話をしている時間があれば、少しでも作戦を練るべきだろう。

 

「司令…このような話は全てが終わった時に…」

 

「閣下」

 

呆れたように述べるイレイザを遮るように天城が口を開く。

 

「申し訳ありませんが、私には心に決めた殿方が居りますので…そのお話はお断りさせて頂きます」

 

息を呑む程に美しい笑顔だが、それを前にした者は彼女が恐ろしい獣に見えたそうだ。

 

 

──同日、シルバー級魔導巡洋艦『ハルペー』──

 

第一魔導艦隊を構成する魔導巡洋艦の1隻、ハルペーの艦橋上部にある見張所では数名の見張員が双眼鏡を同じ方向へ向けていた。

 

「うぉぉ〜…すっげぇ美人…」

「獣人なのに毛深く見えないな…脱いだら毛深いのか?」

「って言うかデカいな…歩く度に揺れてるぞ」

 

彼らが見ているのは、旗艦であるコスモの艦橋から出てきた一人の美女こと天城であった。

というのも彼らは、アズールレーンから来た連絡員がとんでもない美女だと聞いて、彼女が姿を表すのを今か今かと待っていたのだ。

 

「うおっ!横から見るとヤベェ…あんなんにしゃぶりつきてぇ〜」

「お前、控え目な方が好きって言ってたじゃねぇか」

「いやいや、控え目な方も好きってだけだよ」

 

何とも緊張感が無いが、男社会な軍隊の中でも閉鎖的な環境で過ごす船乗り達だ。

気分転換となる娯楽も少ない中、天城のような極上の美女は正に目の保養になる事だろう。

 

「でも、話によればロデニウス連邦の船乗りはあんな美人達に訓練してもらってるらしいぞ?」

「あ、それ俺も聞いた事あるぞ。あとはムーの船乗りも…」

「マジかよ!クッソ〜…俺もロデニウスかムーに行きてぇ…。そして、夜の訓練も…」

 

──ゴチンッ!

 

「貴様ら、何をやっとるかぁぁぁっ!」

 

鼻の下を伸ばして猥談に花を咲かせていた見張員達だったが、彼らの脳天へ怒号と共に拳骨が着弾した。

 

「弛んどるっ!まったく以て嘆かわしい!誉れある神聖帝国艦隊の船乗り達が女を前にだらし無く鼻の下を伸ばすなぞ…」

 

「も…申し訳ありません、先任伍長…」

 

見張員達へ拳骨を落としたのは、ある意味艦長より怖いと言われている先任伍長であった。

 

「まったく…貴様らは未だに乳離れが出来んのか?乳ならこの艦にもついておろう…」

 

「乳って、あの新型防御兵装の事ですか?」

 

呆れた先任伍長が指差すのは、舷側に幾つも並べられた半球形の物体だった。

ぱっと見は接岸時に船体を傷付けない為のクッションにも見える。

 

「そうだ。グラ・バルカス帝国が運用する"魚雷"と呼ばれる自走式機雷に対処する為の物だ」

 

「確かに頼りになる兵装って話ですが…」

 

「あんな美女、滅多に見れませんよ!」

「あぁっ!もう迎えの飛行艇とかいう飛行機械が来ました!」

「何っ!?今のうちに目に焼き付けないと!」

 

艦隊の上空へと向かってくる船のような胴体を持つ大型飛行機械の姿を見て、天城がもうじき居なくなる事を察して最後に一目見ようと双眼鏡に齧り付く見張員達。

それを見た先任伍長は再び拳骨を…

 

「…本当に美人だな」

 

落とす事なく、自前の双眼鏡で天城の美貌を網膜に焼き付けるのだった。




露出の少ない天城じゃないとね、ミ帝船乗りには刺激が強すぎるよね
ヴィクトリア辺りを派遣したらある意味大変な事になるよね

今後、お色気シーンは…

  • 今より増やせ
  • このぐらいでいい
  • もう少し減らしていい
  • もっと減らして
  • 無くていい
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